自閉症スペクトラム障害の小児への自家さい帯由来間葉系間質細胞の投与事例が紹介されました
自閉症スペクトラム障害の小児に、自家さい帯由来間葉系間質細胞を投与した事例が、Parent’s Guide*で紹介されました。
自閉症スペクトラム障害は、対人関係やコミュニケーション、行動などに特徴がみられる神経発達症の一つです。今回の記事では、その中でも言葉による自己表現が困難な失語性自閉症と診断された5歳男児に対し、出生時から保管されていた本人のさい帯を用いて間葉系間質細胞を調製し、投与した事例が取り上げられています。
本稿では、Parent’s Guideで紹介されたこの事例について、投与に至った経緯やさい帯からの細胞調製、その後の経過を含めてご紹介します。
*米国の非営利団体「Parent’s Guide to Cord Blood Foundation」が発信する、さい帯血・さい帯に関する情報記事
保管されていたさい帯から治療へ
5歳のX君(仮名)は、失語性自閉症と診断され、言葉による自己表現が困難な状態でした。X君の出生時、両親は南アフリカのさい帯血バンク「Netcells」にさい帯血とさい帯を保管予定でしたが、さい帯血は採取量が少なく、細胞数が保管基準を満たさなかったため、さい帯のみが保管されました。
X君が自閉症と診断された後、X君のお母さんから、保管しているさい帯を用いて治療できないか相談を受けたことをきっかけに、Netcellsは、神経発達を専門とする小児科医に相談しました。診察の結果、X君は間葉系間質細胞(Mesenchymal Stromal Cell:MSC)を用いた細胞治療の候補と判断され、並行してNetcellsでは、保管されていたさい帯から治療に必要な量のMSCを作製するためのプロトコル開発が進められました。
その後、このプロトコルに基づき、保管されていたさい帯からMSCを分離・培養して増殖させ、X君の髄腔に単回投与されました。
投与後の経過と広がる取り組み
X君への投与から約6週間後、Netcellsの担当者がお母さんへの聞き取り調査を行いました。お母さんやX君を担当する作業療法士からは、以前より集中して活動に取り組めるようになったことや、飲んでいるジュースについて言葉で伝えたこと、グループ活動に参加して最後まで取り組めたことなどが報告されました。これらは、投与前にはほとんど言葉を話していなかったX君にとって、大きな変化でした。さらに、投与から4カ月後には幼稚園のスペリング・ビー(単語のつづりを答える競技)に参加し、約1年後には、お母さんから「すっかりおしゃべりになり、友達もできた」と報告されています。
X君に用いられたプロトコルはその後、さらに6名の自閉症スペクトラム障害児にも用いられ、さい帯由来MSCが投与されました。各家庭からは、X君のケースと同様に、社会的な交流、意味のある会話を続ける力、感情を表現する能力などについて、改善がみられたとの報告がありました。X君の事例をきっかけに、同様の方法による治療が他の患者にも広がっています。
写真:治療から4か月後、幼稚園のスペリング・ビーに参加するX君
本稿で紹介された事例は、出生時に凍結保存された本人のさい帯から間葉系間質細胞を調製し、投与に用いた一例です。投与後には、お母さんや作業療法士から、言語や社会的な行動などに変化がみられたことが報告されています。その後、X君に用いられたものと同じプロトコルを用いて、さらに6名の自閉症スペクトラム障害児にさい帯由来細胞が投与されました。Netcellsでは、今後さらに多くの家族にさい帯由来細胞を用いた細胞治療を提供するためのプログラム構築を進めています。