極早産児への自家さい帯血細胞投与が 免疫や肺・腸内細菌叢に与える影響について報告されました
本稿では、中国の広東省婦幼保健院で実施された、極早産児に対する自家さい帯血細胞投与が、免疫や肺・腸内細菌叢などに与える影響を調べたフェーズⅠ臨床試験についてご紹介します。
早産児は、体の機能が十分に発達していない状態で生まれるため、出生後に呼吸、消化管、血管、免疫などに関わるさまざまな合併症を生じることがあります。代表的な合併症として、気管支肺異形成症、壊死性腸炎、頭蓋内出血、未熟児網膜症などが知られています。これらの合併症には、臓器の未熟性に加え、炎症反応や免疫バランスの乱れが関与していると考えられています。このような背景から、早産児の免疫環境を整え、複数の臓器に関わる合併症を軽減する新たな治療法が求められています。
さい帯血には、造血幹細胞をはじめとする多様な細胞や生理活性物質が含まれており、炎症や免疫の調節、組織修復への関与が期待されています。これまでに、超早産児における自家さい帯血の採取可能性や、自家さい帯血細胞投与の安全性が報告されており、早産児の合併症に対する新たな治療の可能性が示唆されています。
試験デザイン

免疫・炎症状態の変化

図A:ACB-MNCs投与後の制御性T細胞割合の変化
ACB-MNCs投与前後で、血液中の制御性T細胞(Treg)の割合を測定し、対照群と比較したところ、ベースライン時点では両群に差は認められなかったが、ACB-MNCs投与後には、ACB-MNCs群でTregの割合が対照群より有意に高かった。

図G:血中炎症性・抗炎症性因子の変化
ACB-MNCs投与前後で、血中の炎症性および抗炎症性マーカーを測定し、対照群と比較したところ、ACB-MNCs群では炎症促進因子であるIL-17Aが有意に低下した。また、介入後のACB-MNCs群では、対照群と比較して抗炎症マーカーであるIL-10が高く、炎症マーカーであるCRPは低かった。
肺内環境の変化

図3A:肺内細菌叢の多様性
ACB-MNCs投与前後で、肺内細菌叢の多様性を示す指標(sob,ACE,Chao1)を測定し、対照群と比較したところ、投与前の時点では両群に差は認められなかったが、投与後には対照群で多様性が低下し、ACB-MNCs群では肺内細菌叢の多様性が有意に高く保たれていた。

図4 A〜F:肺内サイトカインの変化
ACB-MNCs投与前後で、肺内の炎症性および抗炎症性サイトカインを測定し、対照群と比較したところ、投与前の時点では両群に差は認められなかったが、投与後には、ACB-MNCs群では抗炎症性サイトカインであるIL-10およびTGF-βが増加し、対照群より有意に高かった。一方、炎症性サイトカインであるIL-4、IL-17A、IL-6はACB-MNCs群で低下し、IL-1βを含む炎症性サイトカインはいずれも対照群より低い値を示した。
腸内環境の変化

図5D2:腸内Klebsiellaの変化
ACB-MNCs投与後の腸内細菌叢を対照群と比較したところ、炎症反応や合併症との関連が報告されているKlebsiella属は、対照群で多く認められ、ACB-MNCs群では対照群より有意に少なかった。

図5F2:腸内細菌叢の代謝機能の変化
ACB-MNCs投与前後で腸内細菌叢の機能を比較したところ、投与後には脂質代謝、糖質代謝、アミノ酸代謝、ヌクレオチド代謝など、複数の代謝プロセスの活性が投与前より上昇していた。
本研究では、極早産児へのさい帯血投与により、免疫状態が整えられ、肺・腸内細菌叢が改善し、体内のバランスにも全体として良好な変化が生じる可能性が示唆されました。
免疫状態については、投与後に制御性T細胞の増加や、免疫細胞の分化に関わる遺伝子発現の上昇が認められました。また、炎症促進因子は低下し、抗炎症因子は高い状態で保たれていました。
肺・腸内環境については、肺内細菌叢の多様性が保たれ、肺内の炎症性サイトカインは低下していました。また、腸内では炎症に関わる菌の増加が認められず、細菌叢に関連する代謝機能の上昇も認められました。
本研究は少数例を対象とした機序探索的研究であり、治療効果を確認するためには、今後さらに大規模な研究での検証が必要とされています。