超早産児への自家さい帯血細胞投与における安全性と早期神経発達の評価について報告されました
本稿では、オーストラリアのモナシュ小児病院で実施された 超早産児に対する自家さい帯血投与の安全性および実施可能性を検討したフェーズⅠ臨床試験と、その試験に参加した児の早期神経発達を評価した二次解析の結果についてご紹介します。
さい帯血には、造血幹細胞をはじめとする多様な細胞が含まれています。今日では世界的にさい帯血を用いた臨床研究が行われ、脳性麻痺に対する有効性が明らかとなってきています。超早産児は、未発達の状態で出生するため、出生後の炎症、感染、低酸素、循環動態といった変化の影響を受けやすく、脳室内出血や白質障害などの脳障害を生じるリスクが高いことが知られています。これらの脳障害は、その後の運動発達や認知発達に影響するため、神経発達予後を改善する新たな治療法の開発が期待されています。
試験デザイン

安全性評価

自家さい帯血投与前後の呼吸数、吸入酸素濃度、心拍数、平均動脈圧を測定したところ、いずれの指標にも投与前後で大きな変動は認められず、バイタルサインは安定していた。また、研究期間中に死亡例が1例と、投与後の製品培養検査で細菌が検出された事例が2例報告された。しかし、いずれも安全性評価委員会により、自家さい帯血細胞投与との関連はないと判断された。

自家さい帯血投与による生体への影響を確認するため、炎症・免疫・神経障害関連マーカーおよび血管新生・血管修復関連マーカーを解析した。解析は投与前、投与24時間後、および月経後年齢36~37週時点で行われた(月経後年齢とは最終月経開始日を起点とした週齢であり、36~37週は正期産に近い時期にあたる)。
その結果、さい帯血投与前後で炎症性・抗炎症性サイトカインに有意な変化は認められず、投与による明らかな炎症反応や免疫反応はみられなかった。一方で、一部の血管関連マーカーに変動が認められた。これらの結果は、自家さい帯血細胞投与による短期的な安全性を支持するものであったが、対照群を用いた検証が行われていないため、結果の解釈には慎重さが必要である。
早期神経発達評価

二次解析として、同時期に出生した非投与児93名を比較対象とし、自家さい帯血由来細胞の投与(生後9~15日)を受けた超早産児23名の早期神経発達転帰が評価された。評価項目には、正期産相当年齢時の脳MRI所見、および月経後年齢52~54週時点における標準化神経発達評価(姿勢・運動・神経学的所見の評価)と脳性麻痺リスク評価が含まれた。
その結果、脳MRI所見、運動評価および神経学的評価において、投与群と非投与群の間に統計学的な有意差は認められなかった。一方で、投与群では脳性麻痺の高リスクと判定された児は認められず、対照群では87例中6例(6.8%)が高リスクと判定された。ただし、この差は統計学的に有意ではなかった。
本試験では、超早産児においてもさい帯血の採取および細胞調製が可能であり、さい帯血採取を試みた症例のうち約70%で、投与に適した臨床グレードのさい帯血細胞を調製できることが示されました。
安全性評価では、自家さい帯血細胞投与に関連する重篤な有害事象は認められず、超早産児に対する自家さい帯血細胞投与の安全性が示されました。早期神経発達評価では、さい帯血投与群と対照群を比較した結果、脳画像所見および複数の神経発達評価において、群間に統計学的有意差は無かったものの、投与群では、将来的に脳性麻痺と診断される可能性が高いと判断された児はおらず、注目すべき所見です。