第25回日本再生医療学会総会のポスター発表にて長期保管さい帯血から臨床グレードのiPS細胞の樹立が可能であることが報告されました。
当社と株式会社iPSポータルの共同研究「臍帯血を用いた自家iPS細胞の製造及び保管プロセス開発と臨床応用に関する検討」の研究成果について、第25回日本再生医療学会総会で報告しました。本研究により、20年以上保管されていたさい帯血を用いて、iPS細胞の樹立が可能であることが実証されました。さい帯血は新生児由来の細胞であるため、成人に由来する細胞と比較し、iPS細胞の樹立効率が高く、本研究でもその有用性が確認されました。さらに、遺伝子変異が少ないことから、安全性の観点でも優れた細胞ソースとして注目されています。
今回の成果により、さい帯血は造血幹細胞移植や再生医療に加え、iPS細胞の原料としても活用できる可能性が示されました。将来的な再生医療の発展を見据え、自家さい帯血の保管意義は一層高まると考えられます。
iPS細胞とは

iPS細胞とは、人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell)のことで、体内のほぼすべての細胞に分化できる能力(多能性)を持っています。体細胞に多能性を誘導する因子を導入して培養することで作製されます。2006年に京都大学の山中伸弥教授らによって開発され、その功績により2012年にはノーベル生理学・医学賞が授与されました。
研究概要

長期保管したさい帯血を解凍し、前培養を行った後、多能性誘導因子を導入しました。培養中に出現したiPS細胞様コロニーを選択・回収し、継代培養によって細胞数を十分に増やした後、凍結保存しました。
得られた細胞については、臨床応用の可能性を評価するため、未分化性に加え、心筋や神経など多様な細胞へ分化する能力を確認する試験を実施し、品質を多面的に評価しました。
iPS細胞の樹立
<樹立したiPS細胞の形態>

凍結保存した細胞は、解凍直後では遺伝子導入効率が低下するため、数日間の前培養によって細胞の状態を整えます。今回使用したさい帯血細胞についても、解凍後に培養を行ったのち、遺伝子導入を実施しました。
樹立効率
遺伝子導入後、培養を進めるとiPS細胞様の形態を示す細胞が出現し、8日目にはiPS細胞様のコロニー形成が確認されました。さらに継代培養によって細胞は増殖し、Day 38には多数のコロニーを形成しました。樹立効率は細胞100個当たりのコロニー形成数により算出しており、本研究では、0.4%~14.5%となりました。長期保管したさい帯血からもiPS細胞の樹立が可能であることが示されました。
<未分化性の評価>

未分化な細胞に特異的なマーカーを用いて評価を行いました。
フローサイトメトリーではSSEA-4およびTRA-1-60陽性細胞が90%以上を占め、免疫染色ではOCT3/4の発現が確認されました。
<核型解析>

染色体異常は認められず、正常核型が維持されていることが確認されました。
<分化能の評価>

三胚葉への分化培養を行い、外胚葉マーカーであるTUJ1、中胚葉マーカーであるα-SMA、内胚葉マーカーであるSOX17の発現がそれぞれ認められ、三胚葉への分化能を有することが確認されました。
本研究により、長期間保管されたさい帯血からiPS細胞の樹立が可能であることが明らかとなりました。樹立されたiPS細胞は、染色体レベルでの安定性が確認されており、未分化性および分化能が確認され、臨床利用可能なiPS細胞としての特性を備えていることが示唆されました。今後、自家さい帯血由来iPS細胞を基盤とした新たな再生医療の開発が加速することが期待されます。