2024年8月29日
妊娠中期

妊娠中期に現れるおもな6つの症状とは?注意すべきポイントも解説

伊沢博美

記事監修者:伊沢博美

医学博士/日本再生医療学会再生医療認定医/日本抗加齢医学会専門医/遺伝子細胞治療認定医

「妊娠中期はいつからいつまでのことなのだろう」「どんな症状が現れるのだろうか」と考えていませんか。

厚生労働省が公表している資料によると「妊娠16〜27週」までが妊娠中期と定義されています(※1)。

つわりが落ち着いてくる安定期と呼ばれる時期ですが、体重増加やお腹の急成長など、さまざまな症状が現れます。

なかには、母子の命にかかわる症状も。

そこでこの記事では、おもに以下の内容を解説していきます。

・妊娠中期に現れるおもな7つの症状
・妊娠中期に注意したい2つの症状
・妊娠中期のよくある3つの質問

この記事を読むと、妊娠中期に知っておきたい基礎知識がわかり、安心して出産に臨めるようになりますよ。

(※1)出典:厚生労働省「妊娠・出産・子育て期の父親の役割」

妊娠中期に現れるおもな6つの症状

妊娠中期に現れる症状には個人差がありますが、代表的なものには以下の6つがあげられます。

・体重の増加
・お腹が目立つ
・胎動
・腰痛
・便秘
・頻尿

順番に見ていきましょう。

症状1:体重の増加

妊娠中期は、以下が要因で急激に体重が増えやすい時期です。

・胎児や胎盤の成長
・羊水や血液量の増加
・出産に備えた母体脂肪分増加

ただし体重が増えやすいからといっても加減はあります。

国立研究開発法人国立成育医療研究センターが公表しているデータによると、妊娠中期における適正な体重増加量は妊娠前のBMIによって異なり、以下のとおりです。

妊娠前のBMI(kg/m2) 体重増加量の目安
18.5未満(低体重) 約5kg
18.5以上25未満(普通体重) 約4.5kg
25以上30未満(肥満1度) 約4kg
30以上(肥満2度) 個別対応

出典:国立研究開発法人国立成育医療研究センター「妊娠中の体重増加曲線」より妊娠16週~27週のデータを抜粋して作成

症状2:お腹が目立つ

妊娠中期は胎児が大きく成長し始めるため、母体のお腹も目立ってくる時期です。

実際、岐阜県御嵩町の公式ホームページで公表されている資料によると、妊娠初期(妊娠0~15週まで)に胎児の体重は「約120g」しか増えませんが、妊娠中期では「約880g」増えるといわれています(※2)。

お腹が大きくなると、これまでに着ていたものがあわなくなるため、事前にマタニティ用の服を準備しておくとよいでしょう。

「いつから、どのような服装をしたらよいかわからない」という人は、下記の記事を参考にしてみてくださいね。

妊婦さんはどんな服装をしたらよい?重宝する服やおすすめの購入場所も紹介

また胎児の急成長に伴って、母体のお腹の皮膚が伸び、妊娠線ができる場合があります。

保湿クリームを塗って乾燥を防いだり、マッサージして妊娠線を予防しましょう。

(※2)出典:岐阜県御嵩町の公式ホームページ「◎妊娠~出産までの流れ」

症状3:胎動

胎動とは、胎児が母体のお腹の中で動くことです。

北海道大学が発表した研究論文によると、妊婦さんが胎動を感じる時期は「妊娠16〜20週ごろ」といわれています(※3)。

また同研究によると、胎動は妊婦さんの「80〜90%」が自覚する症状ともいわれています(※4)。

じつは妊娠初期から胎児は動き始めますが、筋肉が発達していない状態だと力が弱いため、頑張って動いても妊婦さんは気づかないのです。

(※3,4)出典:北海道大学学術成果コレクション|北海道大学 石川丹,南出江津子「胎動と新生児の活動能力」北海道大學教育學部紀要 1984 45号 p51-66

症状4:腰痛

前述したように妊娠中期は急激な体重増加が起こる時期であり、お腹が大きくなり重心が前へかかりやすくなります。

バランスを保つには背中を反らせる必要があるため、姿勢が変化し、腰痛が起こりやすくなるのです。

また、妊娠中期から分泌される「リラキシン」というホルモンには、関節を支えている靭帯を緩める作用があることも腰痛を引き起こす原因です(※5)。

腰痛をやわらげるためには、ストレッチやマッサージ、また骨盤ベルトを付けるだけでも効果はあります。

骨盤ベルトの効果や付け方について、くわしく知りたい人は下記を参考にしてみてくださいね。

妊婦さんはいつから骨盤ベルトをした方が良いの?付け方や効果も解説

(※5)出典:J-STAGE|東京大学大気海洋研究所・生理学分野 日下部 誠「真骨魚類リラキシンの生理作用の探索」比較内分泌学 2014年40巻153号 p.116-120

症状5:便秘

妊娠によって分泌量が増える「プロゲステロン」というホルモンには、体内に水分を蓄積する働きや腸の活動を鈍くする働きがあります。

とくに妊娠中期以降にはプロゲステロンの分泌量が増えてくるため、便秘になりやすいのです。

ただし便秘がつらいからといって、医療機関の診断なしに市販薬を使うのは厳禁です。

市販薬を使う際は、医療機関で相談しましょう。

また市販薬以外での便秘解消には、

・こまめな水分補給
・食事の見直し
・適度なスポーツ

が効果的です。

妊娠中期の便秘解消法について、くわしく知りたい人は下記も参考にしてみてくださいね。

妊婦さんは便秘薬を使っても大丈夫?薬に頼らない5つの解消法や体験談も紹介

症状6:頻尿

前述したように、妊娠中期以降は胎児が急成長する時期であり、それに伴い子宮も大きくなります。

大きくなった子宮によって膀胱が圧迫されるため、排尿回数が増えてしまうのです。

ほかにも、頻尿には以下のような要因があります。

・ホルモンが腎臓の働きを活発にして、尿の生成量が増加
・血液量が増加し、余分な水分が尿として排出される

「トイレに何度も行くのが面倒」と、排尿を我慢すると膀胱炎になる可能性があるため注意しましょう。

頻尿の症状をやわらげるには「就寝前の水分補給をひかえめにする」「カフェインの摂取量を減らす」といった対処が効果的です。

妊娠中期に注意したい2つの症状

妊娠中期には、胎児が成長する過程で腹痛を感じる場合があります。

しかし「出血と腹痛」などの症状が同時にみられる場合、

・常位胎盤早期剥離

・切迫早産

といった問題が起きている可能性も。

それぞれの症状について、順番に見ていきましょう。

注意1:常位胎盤早期剥離

ひとことでいうと、胎盤が子宮から剥がれ落ちてしまう症状をさします。

常位胎盤早期剥離が起こると、胎児に栄養素や酸素を与えられなくなるため「脳性麻痺」や最悪の場合「死亡」するケースもあるのです。

常位胎盤早期剥離が起こる確率は、国立研究開発法人国立成育医療研究センターが公表している資料によると「約100〜200分娩に1例(0.5〜1.0%)」といわれています(※6)。

そこから胎児が死亡する割合は「25〜30%」とも報告されています(※7)。

危険にさらされる可能性があるのは胎児だけではありません。

母体では大量出血が引き起こされ、命にかかわる場合もあるのです。

大量出血が起こる「産科危機的出血」で母体が死亡した症例のなかで、常位胎盤早期剥離が占める割合は「約8%」といわれています(※8)。

腹痛と同時に性器からの出血があるときや、そのほか体の異変を感じた際は、病院で受診しましょう。

出典:

(※6、7)国立研究開発法人国立成育医療研究センター「胎盤がはがれる、常位胎盤早期剥離について」

(※8)J-STAGE|順天堂大学医学部麻酔科学・ペインクリニック講座 稲田順一「産科危機的出血への対応」日本臨床麻酔学会誌 2018年 38巻 5号 p712-717

注意2:切迫早産

妊娠22週以降にお腹の張りや腹痛、出血などの症状がみられ、早産しかかっている状態を「切迫早産」といい、原因としては以下3つが考えられます(※9)。

・妊娠高血圧症候群
・胎盤の位置異常
・絨毛膜羊膜炎

切迫早産が起こる確率は、厚生労働省が公表している資料によると、妊婦さんの約14%(約7人に1人)と報告されています(※10)。

切迫早産では、胎児が未熟な状態で生まれてくるため、障がいや死亡などのリスクが高い状態です。

以下のような症状がみられた場合は、迷わず病院で受診しましょう。

・水っぽいおりもの
・下腹部の痛み
・お腹の張り
・出血

もし、切迫早産と診断されても心配し過ぎないようにしましょう。

適切な治療と安静で、妊娠は継続できることがほとんどです。

出典:

(※9)厚生労働省「妊娠中の症状等に対応する措置」

(※10)厚生労働省「第2回妊産婦に対する保健・医療体制の在り方に関する検討会2019年3月15日」

妊娠中期のよくある質問

妊娠中期について、よくある3つの質問をまとめました。

順番に見ていきましょう。

Q1:妊娠中期の胎児の重さの目安は?

岐阜県御嵩町の公式ホームページによると、

・妊娠6か月=メロンくらいの重さ(約600g)
・妊娠7か月=かぼちゃくらいの重さ(約1000g)

といわれています。

(※11)出典:岐阜県御嵩町 公式ホームページ「◎妊娠~出産までの流れ」

Q2:妊娠中期にやってはいけない動きはある?

血行不良や子宮収縮に伴う切迫症状など胎児への負担が大きくなるため、以下のような動きや作業はしないようにしましょう。

・前かがみ、しゃがみ込みで腹部を圧迫するような作業
・無理な姿勢、不意に力んだりする作業

負担の少ない動きを心がけましょう。

Q3:妊娠中期でもつわりが続くことはある?

妊娠中期でもつわりは続く可能性はありますが、確率は低いといえるでしょう。

株式会社エムティーアイが妊娠経験者を対象に行った調査によると「約83%」の妊婦さんが、妊娠23週までにつわりがおさまったと回答していたからです(※12)。

一方「出産までつわりが続いた」という妊婦さんは「約6%」いました(※13)。

(※12、13)出典:PRTIMES|株式会社エムティーアイ「「“つわり”について」の調査結果〜妊娠と共にやってくる“つわり”という試練を乗り越えよう!~」

まとめ

妊娠中期は妊娠16〜27週の期間をさし、おもに以下の症状が現れやすい時期です。

・体重の増加
・お腹が目立つ
・胎動を感じる
・腰痛
・便秘
・頻尿

腹痛も妊娠中期に現れる症状ではありますが、以下の症状が伴う場合は「常位胎盤早期剥離」「切迫早産」に注意が必要です。

病名 注意したい症状
常位胎盤早期剥離 ・腹痛と同時に性器からの出血がある
・そのほか体の異変
切迫早産 ・水っぽいおりもの
・下腹部の痛み
・お腹の張り
・出血

今回紹介した内容を参考に妊娠中期を乗り越え、大事な出産に備えましょう。

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この記事の監修者

伊沢博美

経歴

神宮外苑Woman Life Clinic 院長

獨協医科大学医学部卒業、医学博士。
日本再生医療学会再生医療認定医、日本抗加齢医学会専門医。順天堂医院、婦人科・内科健診施設、再生医療等提供機関に勤務。
2020年に『神宮外苑Woman Life Clinic』を開設。女性内科・不妊・更年期障害など女性特有の健康課題に対し、一人ひとりに合わせた医療ソリューションを提供。

資格

医学博士/日本再生医療学会再生医療認定医/日本抗加齢医学会専門医/遺伝子細胞治療認定医

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