妊娠後期の腰痛がつらい|原因と9つの対策を紹介

助産師 坂田陽子 先生

記事監修者:助産師 坂田陽子 先生

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

妊娠後期に入り、腰痛が激しくなってきたと感じていませんか。

妊娠後期の腰痛は「ホルモンの分泌」「体型の変化」などが原因で、あなたと同じように妊娠中に腰痛を感じる人は50〜70%いるといわれているため、珍しいことではありません(※1)。

しかし妊娠後期の腰痛はつらいものです。

そこで本記事では、以下のような内容を解説していきます。

  • 妊娠後期に感じる腰痛の原因
  • 腰痛対策
  • 妊娠後期の腰痛における注意点

この記事を読むと、腰痛を緩和させる方法がわかり、妊娠後期の生活を楽に過ごせるようになりますよ。

(※1)出典:宮崎大学医学部看護学科 小児・母性看護学講座(松岡あやか)「妊産褥婦における骨盤支持の目的と方法および効用に関する文献検討」南九州看護研究誌Vol.12 No.1(2014)

妊娠後期に感じる腰痛の原因3つ

妊娠後期に差し掛かると、「今までなかったのに腰痛が出てきた」または「もともとあった腰痛がひどくなった」と感じられる妊婦さんも多いのではないでしょうか。

腰痛を感じる原因は、主に3つあります。

  • ホルモンの分泌
  • 体型の変化
  • 下半身の血行不良

順番に原因を解説していきます。

原因1:ホルモンの分泌

妊娠中の腰痛は、妊娠初期から起こるケースがあります。

妊娠すると「リラキシン」と呼ばれるホルモンの分泌量が増加するためです。

リラキシンには、骨盤周りの靭帯を緩める作用があります(※2)。

そのため骨盤周辺の関節が不安定になり、筋肉に大きな負担がかかることで腰痛が引き起こされるのです。

(※2)出典:順天堂大学医学部附属静岡病院 産婦人科「こうのとりくらぶ」vol.46 2017 夏号

原因2:体型の変化

妊娠後期に入ると胎児の成長に伴い、お腹が前方に張り出した状態になります。

お腹が張ることにより体の重心も前方に移動し、無意識のうちに背骨を反らせ、お腹を突き出した姿勢になります。

結果、腰周辺の靭帯や関節、筋肉に負担がかかり、腰痛を引き起こすのです。

姿勢の変化は腰以外に、背中や足の付け根、お尻、太ももなどに痛みを与える場合があります。

原因3:下半身の血行不良

妊娠後期になると、大きくなった子宮がお腹や骨盤内で血管を圧迫するようになります。

血管が圧迫されると、血行不良により腰や足などが冷え、腰痛が起こりやすくなるでしょう。

【いますぐできる】妊娠後期の腰痛対策9つ

妊娠後期の腰痛は、妊娠による作用のため根本的に解消することはできません。

しかし、痛みを緩和させることは可能です。

日常生活で簡単にできる、9つの方法を紹介していきます。

対策1:運動

体を動かすことは「ストレスの発散」「体力の維持」「血液循環の回復」に繋がり、腰痛が緩和されます。

たとえば自宅で簡単にできるストレッチやウォーキングなどがおすすめです。

マタニティヨガやマタニティスイミング、マタニティビクスなど、妊婦さん向けの運動も効果的です。

体調を見ながら、少しずつチャレンジしてみましょう。

適度な運動は腰痛の予防や緩和だけでなく、出産に必要な体力の維持、急激な体重増加の予防、便秘や肩こりなど妊娠中のさまざまなトラブルの解消も期待できます。

ただし、切迫早産などの診断を受けている人の運動は、注意が必要です。

かならず主治医に確認しましょう。

対策2:腰痛対策グッズの利用

妊婦用の腰痛対策グッズには、下記2点のようなものがあります。

  • 骨盤ベルト:骨盤周りを支えて安定させ、上半身を支えるのをサポートしてくれる
  • マタニティガードル:お腹を包み込むようにサポートしてくれる

ホルモンの影響が原因である腰痛の場合、「骨盤ベルト」や「マタニティガードル」を着用すると、腰回りの筋肉の負担が減り、腰痛も改善されやすくなります。

大きなお腹を支える働きもあるため、妊娠後期や臨月の妊婦さんの強い味方になってくれるでしょう。

骨盤ベルトのメーカーや種類はさまざまで、締め方にも違いがあります。

巻く位置や使い方は助産師からの指導が必要な場合もあるため、使用前には医師や助産師に相談しましょう。

妊娠初期から産後まで使える骨盤ベルトが、多くの産院でもすすめられています。

骨盤ベルトの付け方は下記を参考にしてくださいね。

妊婦さんはいつから骨盤ベルトをした方がよいの?付け方や効果も解説

対策3:姿勢を正す

妊娠後期になり、お腹が大きくなると、どうしても反り腰の姿勢になりがちです。

反り腰の姿勢は、背中や腰への負担が大きいため、なるべく背筋をまっすぐにして正しい姿勢をとるように心がけてみましょう。

頭のてっぺんから糸が通り、上に引っ張られているイメージをもつとよい姿勢になります。

また「足を組んで座る」「いつも同じ方の手で荷物を持つ」「いつも同じ方を下に向けて横たわる」など、無意識に行っている悪い姿勢にも注意するようにしましょう。

対策4:寝方を変える

腰痛対策には寝方も重要です。横向き〜ややうつ伏せの状態になり、天井側の足や腕を軽く曲げる姿勢(シムス体位)は腰の負担を軽減し、身体の緊張を取る効果があります。

抱き枕も体の重みが分散されて、負担が減るためおすすめです。

対策5:腰に負担をかけない

「重いものを持つ」「前かがみになる」など、腰に負担のかかる行動を避けるようにしましょう。

長時間同じ姿勢を続けると、血行が悪くなり腰にも負担がかかります。

同じ姿勢で家事や仕事をする場合は、時々体を動かすようにしましょう。

対策6:体を温める

妊娠後期に起こる慢性的な腰痛は、体を温めることで血流がよくなり、痛みが緩和されることがあります。

「湯船にゆっくり浸かる」「体を温める食べ物や飲み物をとる」「ホットパックや使い捨てカイロを使う」などの対策で、腰回りや身体を温めてあげましょう。

冬場の冷えはもちろん、夏場のクーラーによる冷えにも注意が必要です。

腰痛がつらいときは、夏場でもできるだけ温かい飲み物を飲み、シャワーだけではなく湯船に浸かり体全体を温めるよう心がけましょう。

対策7:体重を管理する

お腹の赤ちゃんが大きくなるにつれて体重が増加し、腰への負担も増していきます。

急激な体重増加は、腰への負担を大きくするだけでなく「妊娠中毒症」「妊娠糖尿病」といった妊娠期の病気にも繋がるため、注意が必要です。

また難産にもなりやすいため、計画通りに体重管理をしましょう。

対策8:マッサージ

マッサージは血行がよくなるため、腰痛改善に効果があります。

家族などに協力してもらうのもひとつの手段です。

腰周りだけでなく、背中や肩など妊娠中に負担がかかりやすい部分を優しくさすってもらうのがおすすめです。

「マタニティ整体」を行っている整体もあるため、主治医に相談して利用するのもよいでしょう。

対策9:ストレッチ

ストレッチをすると、腰周りの筋肉がほぐれ、腰痛が緩和されます。

以下のような手順で、ストレッチを行いましょう。

  1. 座った姿勢で腰をゆっくり左右にひねる
  2. 脚を開いて座り、お腹に負担がかからない程度に、ゆっくり前屈
  3. 足の裏側やお尻を気持ちよいと感じる程度に伸ばす

【注意】妊娠後期の間違った腰痛対策

腰痛には「湿布を貼る」「薬を塗る」イメージがあるのではないでしょうか。

しかし湿布や塗り薬には、胎児に悪影響を及ぼす成分が入っている場合があります。

自己判断で使用せず、かならず主治医に相談するようにしてください。

妊娠後期の腰痛は出産後も続く場合がある

筑波大学などが公表している研究論文によると、産褥早期(出産直後)に腰痛の痛み加減は約5割まで減少するものの、その後1か月間はあまり改善しないというデータがあります(※3)。

また産後1か月が経過しても、約40%以上の女性に腰痛が残存するという報告も(※3)。

さらに長期的にみると、妊娠中に腰痛を経験した人の45%が産後も痛みを訴え、3年経過しても約17%の人に痛みが持続するといわれています(※4)。

ほとんどの場合、出産後半年以内に腰痛は消失することが多いですが、

  • 妊娠中の体重増加量
  • 分娩時の身体的負荷
  • 産後の体重減少率

などが回復に影響を与える可能性があります(※5)。

腰痛が持続する場合は、我慢せずに早めに医療機関で受診しましょう。

(※3)出典:J-STAGE|筑波大学大学院人間総合科学研究科ヒューマン・ケア科学専攻(楠見 由里子)茨城県立医療大学(加納 尚美)ほか「産褥期の腰痛の経日的変化と関連要因」日本助産学会誌2007 年 21 巻 2 号 p. 2_36-2_45

(※4)出典:宮崎大学医学部看護学科 小児・母性看護学講座(松岡あやか)「妊産褥婦における骨盤支持の目的と方法および効用に関する文献検討」南九州看護研究誌Vol.12 No.1(2014)

(※5)出典:札幌医科大学 産婦人科「産科部門Q&A」

妊娠後期の腰痛で注意すべき症状

妊娠中の腰痛でも、以下のような症状がある場合は早急に医療機関で受診しましょう。

 

受診が必要な症状

考えられる原因・注意点

お尻や腰から足へ響くような痛み

・坐骨神経痛の可能性

・神経が圧迫されている状態

持続する強い腰痛と腹痛

・常位胎盤早期剥離の可能性

・母体・胎児の命に関わることがあるため、緊急の受診が必要

尿に関する異常

(排尿時痛、排尿困難、血尿)

泌尿器系の問題や腎臓の異常が考えられる

発熱を伴う腰痛

感染症の可能性があり、特に妊娠中は注意が必要

周期的な下腹部痛を伴った腰痛

切迫早産のサインの場合もあるため早急な診察が必要

妊娠中は「様子を見よう」と痛みを我慢しがちですが、上記のような症状がある場合は自己判断せず、医療機関で相談しましょう。

とくに妊娠後期は、腰痛がほかの症状と紛れやすいため、違和感を感じたら、ためらわず相談してくださいね。

妊娠後期の腰痛で右側(左側)だけ痛むのはなぜ?

なぜか片側だけ痛みがある、とお悩みの妊婦さんも多いかと思います。

原因としては、妊娠によって骨盤の靭帯が緩んでいる状態で、利き手や利き足のどちらか一方に負担がかかってしまうことが考えられます。

普段からなるべく真っ直ぐな姿勢を心がけるとともに、左右どちらか片方だけで荷物を持つことがないように注意しましょう。

妊娠後期の腰痛に関するQ&A

ここでは妊娠後期の腰痛について、よくある3つの質問をまとめました。

順番に見ていきましょう。

腰痛緩和のためにマタニティマッサージを受ける際の注意点は?
坂田先生
マタニティマッサージを受ける際には、うつ伏せの姿勢を避け、お腹に圧力がかからないようにしましょう。

また体調が優れないときにはすぐに中断するなどの配慮が必要です。

医師の許可を得ると安心ですね。

産後の腰痛予防のために妊娠中からできることは?
坂田先生
妊娠中から、適度な運動やストレッチを行うことで腰痛予防に繋がります。

また、妊娠中は骨盤に負担がかかりやすいため、骨盤サポートベルトなどの使用も効果的な場合があります。

妊娠後期の腰痛と陣痛の違いはどう判断する?
坂田先生
妊娠後期の腰痛と陣痛の違いは、痛みの持続時間や痛みの場所によって判断します。

出産が近づくと、赤ちゃんの頭が下降することで腰痛が強くなる傾向があります。

一方、陣痛は子宮の収縮による痛みであり、下腹部から腰部、お尻にかけて痛みが出やすいです。

陣痛は痛みの大きさが時間の経過とともに増していき、痛みの間隔も短くなっていくのが特徴的です。

まとめ

妊娠後期の腰痛は、根本的な解消が難しい症状です。

しかし正しい対策を行えば、腰痛の緩和が期待できます。

対策

効果・方法

運動・ストレッチ

血液循環改善、筋肉のリラックス

骨盤ベルトの着用

骨盤周りを安定させ上半身をサポート

姿勢の改善

反り腰を避け、背筋をまっすぐに

体を温める

入浴や温かい飲み物で血行促進

今回紹介した対策を行うと、いまよりも楽に生活できる可能性が高まります。

自分ができるものから試してみてくださいね。

また産後も腰痛が続くケースがあるため、妊娠中から適切なケアを心がけることが大切です。

今回ご紹介した対策を無理のない範囲で取り入れて、快適な妊娠生活を送りましょう。

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この記事の監修者

助産師 坂田陽子 先生

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー