さい帯血とは?保管するメリットや活用例を解説

坂田陽子

記事監修者:坂田陽子

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

最近よく耳にするさい帯血、一体どのようなものなのか、興味のある人も多いのではないでしょうか。

さい帯血とは「妊娠中のお母さんと赤ちゃんをつなぐ、へその緒を流れる血液」のこと。

さい帯血には血液や体のさまざまなパーツのもととなる「幹細胞」が多く含まれており、さまざまな病気の治療に効果が期待されています。

しかし、そんな貴重なさい帯血を採取・保管できるのは出産時の一度きりなのです。

この記事では以下の内容を紹介します。

・さい帯血とは何か
・さい帯血を保管するメリット
・さい帯血の活用例
・さい帯血を保管する方法

この記事を読むと、さい帯血への理解が深まり、さい帯血を取ることの重要性がわかりますよ。

あのとき、さい帯血を取っていればよかった…」と後悔したくない人は、参考にしてくださいね。

さい帯血とはいったいどんなもの?

さい帯血とは、さい帯のなかを流れる血液のことです。

さい帯は、いわゆるへその緒のことで、お母さんの胎盤から伸び、おなかの赤ちゃんのおへそに繋がっています。

このさい帯を通じて、おなかの中の胎児は、母体から栄養や酸素を受け取っています。

さい帯は、まさにおなかの赤ちゃんの命綱なのです。

出生時のさい帯は太さが約2cmで、長さには個人差がありますが50cmほどです(※1)。

(※1)出典:日本産婦人科医会「25. 胎盤・臍帯の超音波像」

さい帯血は、さまざまな病気治療に効果が期待

さい帯血は、おもに以下のような疾患の治療に用いられています。

・白血病などの血液疾患
・免疫不全症
・代謝性疾患

ほかにも再生医療の分野での注目も集めており、将来的には以下のような疾患への応用が期待されています。

・ 脳性まひ
・ 自閉症スペクトラム障害(ASD)

実際に日本国内では、2017年から高知大学医学部附属病院において、脳性麻痺に対する自家さい帯血(患者本人のさい帯血)を用いた臨床研究が開始されました。

この研究では運動障害改善を6例中5例に認め、一部の例でコミュニケーション能力の改善も認められています(※2)。

さらに、2021年からは同じく高知大学にて、きょうだい間のさい帯血を用いた臨床研究も開始されました。

成果として、いままで自分の力で立てなかった患者さんが、さい帯血の投与1週間後には数十秒間立ち上がれるようになるといった例もあります(※3)。

(※2)出典:高知大学SDGsAction「小児脳性麻痺など脳障害に対する自家および同種(同胞)間臍帯血細胞輸血-細胞バンクで保管されている自家および同種(同胞)の臍帯血単核球細胞を用いた輸血の安全性研究―」

(※3)出典:高知大学医学部付属病院|おらんくの医大大学病院「臍帯血の未知なる可能性!全国に先駆けた脳性まひ治療へ、そして脳神経障害の解明へ、高知大学の静かなる挑戦!」

さい帯血を使った治療の実例

実際に、脳性まひの男の子に対して、姉のさい帯血を用いた治療例を見ていきましょう。

治療の詳細は以下のとおりです。

対象 妊娠31週で早産した男の子
診断結果 生後2か月頃に脳性まひと診断され、寝たきりの可能性が高いと医師から言われた
症状 ・舌の筋緊張が強く、歯磨きや発話が困難だった
・手の動きがスムーズでなかった
・歩行器なしでは歩けなかった
治療までの過程 ・ステムセル研究所にさい帯血を保管予定だったものの、早産でさい帯血が採取できなかった
・ステムセル研究所から、脳性まひに対して、自身やきょうだいのさい帯血を投与する臨床研究が始まったことを教えてもらった
・既に保管していた姉2人のさい帯血のうち、長女の型が一致し、投与された
投与後の効果 ・舌の筋緊張が緩和され、歯磨きがスムーズに
・滑舌が改善し、音声認識デバイスとの会話が可能に
・手の動きが向上し、文字を書いたり箸を使えるように
・歩行能力が大幅に向上し、杖なしで1分間歩けるように
・入浴やトイレなどの日常生活動作が自立した
・知性や感情面での成長が見られた
両親の声 親として想像以上の成長に驚いており、本人も自分に自信をもてるようになったと感じている

出典:ステムセル研究所「お姉ちゃんのさい帯血を投与した男の子の体験談」

【後悔しない選択を】さい帯血を採取するチャンスは出産時のみ

母体と胎児を繋ぐさい帯血は、母親の血液ではなく胎児の血液で、出産時にしか採取することができません。

献血や採血から取り出される血では得られず、出産したときにしか採取することのできない「特別な血液」なのです。

さい帯血は、出産する病院で医師・看護師によって採取されます。

また帝王切開でも採取可能で、採取する際に痛みは伴いません。

出産時にさい帯血を採取し、保管しておくことでさまざまなことに役立つ可能性があります。

さい帯血保管のメリットデメリットについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

知っていますか?さい帯とさい帯血を凍結保管する必要性とメリット

さい帯血はどこで保管できる?

さい帯血を保管する機関は2つあります。

・公的バンク
・民間バンク

1つは第三者のために役立てられる公的バンク、もう1つは赤ちゃん本人とその家族のために有料で保管する民間バンクです。

「公的バンク」は第三者のためのさい帯血保管

公的バンクは、出産時に善意によって寄付されたさい帯血を保管する機関で、公的バンクへの寄付は提携施設でのみ行えます。

公的バンクで保管されたさい帯血は、白血病や再生不良性貧血など、重い血液の病気をもつ患者さんの治療に用いられます。

それまで治療に用いられてきた骨髄移植と比べ、白血球の型が多少異なっても拒絶反応が起こりにくいこと、ドナーの負担が少ないなどメリットが多いといわれています。

なお日本赤十字社が公開している情報によると、公的バンクには2025年1月時点で「10,188本」のさい帯血が保管されています(※4)。

(※4)出典:日本赤十字社|造血幹細胞移植情報サービス「さい帯血バンク集計」

「民間バンク」は赤ちゃん本人と家族のためのさい帯血保管

一方、民間バンクでは、さい帯血を赤ちゃん本人とその家族の将来のために保管することができます。

自身のさい帯血は拒絶反応を起こしにくいというメリットもあります。

治療法が確立されていない病気に備える保険として利用できるのが、この民間さい帯血バンクです。

民間バンクは業務内容・さい帯血の管理方法などを厚生労働省に届け出ることが求められています。

現在、厚生労働省に届出がある国内民間バンクは、株式会社ステムセル研究所をはじめ2社のみです。(2025年1月現在)(※5)

(※5)出典:厚生労働省「赤ちゃんを出産予定のお母さんへ(臍帯血関連情報)」

さい帯血の保管にかかる費用

・公的バンク:無料
・民間バンク:有料

さい帯血保管の料金は、公的バンクの場合は善意での寄付となるので無料です。

民間バンクでは、ご自身の赤ちゃんとご家族の将来の保険として保管をするため、費用がかかります。

ステムセル研究所でさい帯血を保管する場合、細胞の分離作業や各種検査料を含めて、10年保管で月2,980円(税込)からとなりますが、年数や契約プラン、支払い方法などにより、費用は変わります。

さい帯血保管の料金については、以下の記事でも詳しく解説しています。

さい帯血保管にかかる料金を徹底解説!ステムセルの料金例も紹介

さい帯血を民間バンクへ保管するなら「ステムセル研究所」

・高い技術と品質管理
・選べる2つのプラン
・費用をおさえる割引サービス

高い技術と品質管理

ステムセル研究所は、厚生労働省より「特定細胞加工物製造許可」を取得しており、高い品質と安全性を確保しています。

また再生医療等安全性確保法の構造設備基準に基づいた安全・安心を追求した環境下で、お子様のさい帯血を適切に処理しております。

選べる2つのプラン

ステムセル研究所では、さい帯・さい帯血ファミリーバンク「HOPECELL」という保管サービスを提供しており、選べる2つのプランをご用意しています。

どちらのプランも、出産時にしか採取できない貴重な赤ちゃんの細胞である「さい帯(へその緒)」「さい帯血」を、どちらも採取します。

① ONEホーププラン…さい帯・さい帯血のどちらか一方を保管
② Wホーププラン…さい帯・さい帯血の両方を保管できるダブルで安心なプラン

費用をおさえる割引サービス

多胎妊娠やリピーターの方には特別割引があります。

その他、ステムセル研究所で保管をしたご知人からのご紹介特典もございます。

※ご契約費用やキャンペーンは予告なく変更・終了させていただく場合がございます。

ステムセル研究所の料金プランについて詳しくはこちら

さい帯血に関するQ&A

ここではさい帯血について、よくある3つの質問をまとめました。

順番に見ていきましょう。

質問
さい帯血の採取で母体や赤ちゃんに悪影響はない?
回答者
ステムセル
さい帯血は、赤ちゃんのご出産後に採取するため、母子ともに痛みや危険はありません
質問
さい帯血は最長で何年間保存できる?
回答者
ステムセル
さい帯血は、液体窒素を用いて半永久的に保管可能であると考えられています。

文献的には液体窒素で29年間保管したさい帯血幹細胞の有効性を示すデータが報告されています。

質問
さい帯血のこれまでの利用実績は?
回答者
ステムセル
さい帯血はこれまでに36例の使用実績があります。(2024年11月時点)

まとめ

へその緒の中を流れるさい帯血は、おなかの中にいる赤ちゃんに酸素や栄養を運び、老廃物や二酸化炭素などの不要なものを送り返す大事な役割をもっています。

赤ちゃんが生まれた際にさい帯血を保管しておくことで、その子の生命を救う可能性を秘めています。

さい帯血を採取できるのは出産時の一度きり。

さい帯血を保管しておくことは、赤ちゃんの将来の健康に備えるための有意義な方法です。

赤ちゃんへのお守りとして、ぜひさい帯血保管をご検討ください。

この記事の監修者

坂田陽子

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

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