公的バンクにさい帯血を提供する意味とは?デメリットや費用など基礎知識を解説

記事監修者:医学博士 伊沢博美 先生
医学博士/日本再生医療学会再生医療認定医/日本抗加齢医学会専門医/遺伝子細胞治療認定医

「公的バンク(さい帯血供給事業者)にさい帯血を提供するメリットは?」
「費用はかかる?」
「デメリットはあるのだろうか?」
さい帯血を保管できる機会は限られているため、いろいろと迷ってしまいますよね。
この記事では、そのような疑問を解消できるように以下の内容を解説していきます。
・公的バンクの特徴や役割
・公的バンクと民間バンクの違い
・治療事例と利用者の声
この記事を読むと、あなたの家族に最適な、さい帯血保管の選択ができるようになりますよ。
公的バンクにさい帯血を提供すると第三者の命を救える
公的さい帯血バンクは、白血病などの治療のための移植に用いられるさい帯血を供給する事業者です。
公的バンクにさい帯血を提供すると、見知らぬ誰かの命を救える可能性があるのです。
さい帯血の提供は無料で行えるため、経済的負担なしで、社会貢献できる貴重な機会だといえるでしょう。
なお公的バンクは全国に6か所(北海道、関東甲信越、近畿、九州、中部、兵庫)あり、厳格な基準でさい帯血の採取、調製、保存が行われています(※1)。
また公的バンクには、約1万本のさい帯血が保管されており、必要な患者さんに迅速に提供される体制が整っています(※2)。
さらに公的バンクでは、90%以上の人が移植に適したさい帯血を見つけられるとされ、多くの患者さんの治療に貢献しているのです(※3)。
(※1,2,3)出典:厚生労働省「赤ちゃんを出産予定のお母さんへ(臍帯血関連情報)」
公的バンクへ提供したさい帯血は個人利用不可
公的バンクに提供されたさい帯血は、提供者本人や家族が個人的に利用できず、民間バンクとのもっとも大きな違いといえるでしょう。
公的バンクのおもな目的は、白血病などの重篤な疾患で移植を必要とする第三者の命を救う点にあります。
つまり自分や家族のためではなく、社会全体の利益のために提供するという考え方が基本となっているのです。
そのため公的バンクは、多くの命を救う可能性がある一方で、提供者にとってはデメリットと感じられる場合もあるでしょう。
公的バンクへさい帯血を提供する際は、上記の特徴を十分に理解したうえで判断しましょう。
民間バンクなら本人・家族のためにさい帯血を使える
公的バンクは他者のために使用する一方で、民間バンク(さい帯血プライベートバンク)は、将来の自己利用や家族の治療のためにさい帯血を保管できます。
保管費用・期間の目安は以下のとおりです。
項目 | 詳細 |
利用目的 | 契約者とその家族のみが使用可能 |
保管期間 | 保管先による
ステムセル研究所の場合:10年 or 20年で選択可能(※4) |
費用 | 有料
ステムセル研究所の場合:10年間保管の場合、月々2,980円~(税込価格、120回分割払いの場合) |
(※4)出典:ステムセル研究所「採取から保管まで」
また民間バンクに保管されたさい帯血は、さまざまな症状の治療に活用されています。
具体的な治療事例として以下のとおりです。
・脳性まひ
・低酸素性虚血性脳症
・痙性四肢麻痺
順番に見ていきましょう。
治療事例1:脳性まひ
出生前から出産直後の脳の損傷により発症する脳性まひは、運動困難と筋肉のこわばりをおもな特徴とする疾患です。
高知大学での臨床研究において、
・左手足のまひあり
・歩行時に転倒を繰り返す
といった症状のある2歳5か月の子どもを対象に、出産時に保管していた本人のさい帯血輸血を実施しました。
結果、さい帯血の輸血を受けた翌日から転倒の頻度が減少し、両手でおもちゃを掴めるように。
その後の経過も良好で、最終的には集団登校で地域の小学校の普通級に通学できるまでに回復したのです。
ほかの症例でも、運動機能や知的能力において、同様の改善効果が確認されています。
出典:ステムセル研究所「さい帯血情報」2023年6月号Vol.126ステムセル研究所発行
治療事例2:低酸素性虚血性脳症
新生児の脳への酸素供給や血流が滞ることで生じる、低酸素性虚血性脳症。
デューク大学で実施された症例では、自力での寝返りや座位が困難で、てんかん発作のある7歳児に対し、さい帯血治療を実施しました。
さい帯血の投与後、それまで毎日発生していた部分痙攣が24時間ほど停止。
治療開始から1か月後には粗大運動が可能になりました。
また歩行器使用時においても、それまでの足を突っ張るだけの状態から、緊張・弛緩の動作が可能になるまでに回復。
さらには認知機能の向上も確認され、言葉に対する理解度も大きく改善したことが報告されています。
出典:ステムセル研究所「さい帯血情報」2022年8月号Vol.123ステムセル研究所発行
治療事例3:痙性四肢麻痺
手足の動きがぎこちなくものを持つことが困難で、
・歩行時の転倒を繰り返す
・言葉の発達に遅れが見られる
など、複数の症状を抱える2歳の女児がいました。
しかし、出産時に保管していた自身のさい帯血を投与したところ、
・投与からわずか2週間後に、走る・登るといった運動が可能に
・上手に言葉を話せるように
・筋肉のこわばりもほぼ消失
などの効果が見られたのです。
4歳になる頃には学校に通い、ダンスができるまでに回復。
担当医からは「同様の症状でここまでの改善を見たことがない」という評価を受けています。
出典:Parent’s Guide to Cord Blood「エイジアちゃんのさい帯血ストーリー」
さい帯血を民間バンクに保管した人の声
ここでは、実際にステムセル研究所でさい帯血を保管した人の声を見てみましょう。
以下は、保管した人の声を一部抜粋・編集したものです。
親として万が一のことを考え、民間バンクに保存しました。
ステムセル研究所のスタッフ皆様の親切、かつ丁寧なご対応に深く感謝いたします。
自宅出産というイレギュラーなさい帯血回収にご対応いただきました。
大変熱心に施設見学の際も説明いただいたりと、わが子のさい帯血を保存できたことに満足しております。
さい帯血移植をはじめ、再生医療が難治疾患に新たな希望を与えてくれることを願っております。
公的バンクへのさい帯血提供に関するQ&A
ここでは公的バンクへのさい帯血提供について、よくある質問をまとめました。
順番に見ていきましょう。

研究所
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/ishoku/saitaiketsu.html

研究所
まとめ
さい帯血の提供または保管には、公的バンクと民間バンクの2つの選択肢があります。
それぞれの特徴は以下のとおりです。
項目 | 公的バンク | 民間バンク |
費用 | 無料で提供可能 | 有料で保管可能 |
利用目的 | 第三者の命を救う可能性 | 本人や家族のために使用可能 |
個人利用 | 不可 | 可能 |
治療実績 | 白血病など | 脳性まひや痙性四肢麻痺など |
どちらにさい帯血を提供または保管するかは、個人の価値観や家族の状況によって異なります。
・社会貢献を重視するなら公的バンク
・将来の自己利用や家族の治療に備えたいなら民間バンク
が適しているでしょう。
あなたの大切な赤ちゃんのさい帯血。
その可能性を最大限に活かすため、公的バンクと民間バンクのメリット・デメリットをよく検討し、家族で話し合って最適な選択をしてくださいね。
赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?
赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。
幹細胞は新しい医療への活用が進められており、もしもの時に役立てられる可能性があります。
- 出産後わずか数分の間にしか採取できない貴重な赤ちゃんのものです。
- 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
- どちらにも幹細胞がたくさん含まれています。
- 再生医療分野など、さまざまな活用が進んでいます。
- それぞれ異なる幹細胞が含まれているため、両方を保管しておくことで将来の利用の選択肢が広がります。
実際に保管・利用した方のお声
出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。

高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま
さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています
元気に産まれたと思っていましたが、生後半年頃から左手をほとんど使おうとしないことに気付き、1歳頃にやはり何かおかしいと思ってMRIを撮ってもらうことにしました。結果1歳5ヶ月で脳性まひとわかりました。
2歳の誕生日にステムセルからハガキが届き、出産時に保管したさい帯血がもしや役に立つのではと思い至りステムセルに問い合わせました。ちょうど臨床試験への参加者を募集していて、運よく2歳5ヶ月のときに参加することができました。
輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。
さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。
その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。
医師からのメッセージ

総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生
応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療
近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。
さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
保管するなら、ステムセル研究所の「HOPECELL(ホープセル)」
株式会社ステムセル研究所が提供する「さい帯・さい帯血ファミリーバンクHOPECELL(ホープセル)」は、日本国内で最も選ばれている保管サービスです。
ステムセル研究所は、25年以上の保管・運営実績がある日本初のさい帯血バンクで、国内最多となる累計80,000名以上のさい帯血を保管しています。

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国内では脳性まひに対する、赤ちゃんご自身やごきょうだいのさい帯血投与の研究が行われています。海外の臨床研究では、投与により運動機能および脳神経回路の改善が報告されています。また自閉症スペクトラム障害(ASD)に対して、さい帯血の投与によりコミュニケーション能力や社会への順応性が向上する可能性が期待されており、大阪公立大学にてお子さまご自身のさい帯血を投与する臨床研究が開始されます。

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無料パンフレットをお送りします!
さい帯・さい帯血保管についてより詳しく知っていただけるパンフレットをご自宅へお送りします。
赤ちゃんの将来に備える「さい帯・さい帯血保管」をぜひ妊娠中にご検討ください。

この記事の監修者
医学博士 伊沢博美 先生
経歴
神宮外苑Woman Life Clinic 院長
獨協医科大学医学部卒業、医学博士。
日本再生医療学会再生医療認定医、日本抗加齢医学会専門医。順天堂医院、婦人科・内科健診施設、再生医療等提供機関に勤務。
2020年に『神宮外苑Woman Life Clinic』を開設。女性内科・不妊・更年期障害など女性特有の健康課題に対し、一人ひとりに合わせた医療ソリューションを提供。
資格
医学博士/日本再生医療学会再生医療認定医/日本抗加齢医学会専門医/遺伝子細胞治療認定医