陣痛促進剤とは?分娩までにかかる時間や費用の目安など紹介

坂田陽子

記事監修者:坂田陽子

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

出産を迎えるにあたって、いろんなことを準備したり、調べたりしますよね。

そのなかで「陣痛促進剤」の存在を初めて知ったという人もいるのではないでしょうか。

陣痛促進剤と聞いて、「なんとなく怖い」「薬を使わずに出産したい」そんな思いを持っている方もいるかもしれません。

でも、分娩には色々な経過があるので、もしかしたら陣痛促進剤のお世話になるかもしれませんよね。

この記事では主に、以下のような内容を解説していきます。

・陣痛促進剤の役割
・分娩までにかかる時間
・費用の目安

私が出産を迎えたとき、陣痛促進剤を使うことになりました。

しかしどのようなものなのかを知らなかったため、勉強しておけばよかったと後悔しました。

あらかじめ、どのようなものなのかをきちんと知って、心の余裕を作っておくことが安心な出産につながりますよ。

陣痛促進剤は2種類ある

陣痛促進剤には以下の2種類があり、それぞれ特徴や適応が異なります。

・オキシトシン
・プロスタグランジン

どちらを使用するかは、妊婦さんの状態や出産歴、分娩の進行状況によって異なります。

順番に見ていきましょう。

1:オキシトシン

オキシトシンは、分娩間近である妊婦さんの体内でも自然に分泌されるホルモンで、薬剤にも同じ成分を使用しています。

点滴で投与され、子宮の筋肉に直接作用して強い収縮を引き起こし、子宮収縮を促進する効果が高いのが特徴です。

子宮頸管がある程度開いている状態で使用される場合が多く、胎児を押し出す力を強めるのに適しています。

2:プロスタグランジン

プロスタグランジンも体内でつくられるホルモンの一種で、子宮の出口を柔らかくして開きやすくする効果があります。

内服薬、点滴、膣用剤(ペッサリー)の3種類があり、子宮の出口が固く閉じている場合など、陣痛を起こす前に産道の状態を改善する場合に使用されるケースが多いです。

陣痛促進剤は母子を守るために使われる

陣痛促進剤は、母子の健康や安全を守るために使用されます。
たとえば以下のような状態になったとき、陣痛促進剤の使用が検討されるでしょう。

・予定日を大幅に過ぎている
・感染症の疑いがある
・分娩に時間がかかる

予定日を大幅に過ぎた「過産期」になってしまうと、胎盤の機能が低下して胎児に酸素や栄養が届きにくくなり、胎児仮死などの危険性が高まります。

また、羊水過少による「低酸素症」「低血糖症」も発生しやすくなるのです。

また陣痛が始まってから微弱陣痛が続き、分娩に時間がかかる場合に、陣痛促進剤を使って子宮収縮を強めることも。

上記の観点から見ると、陣痛促進剤は赤ちゃんを守るためにも大切なものであるといえます。

陣痛促進剤は、母子の安全な分娩を助ける役割を果たしているのです。

陣痛促進剤のデメリット3つ

分娩時に役立つ陣痛促進剤ですが、以下3つのようなデメリットもあります。

・過強陣痛のリスク
・母体へのリスク
・緊急帝王切開の可能性

陣痛促進剤を使う際にはリスクも伴うため、本当に必要かどうかが十分に検討されます。

順番に見ていきましょう。

デメリット1:過強陣痛のリスク

過強陣痛とは、必要以上に陣痛が強くなる現象をさし、胎児への酸素供給不足を引き起こし、胎児機能不全をまねく可能性があります。

また子宮に過度な負担がかかるため、子宮破裂や頸管裂傷が起こる危険性もあり、重篤な場合は羊水塞栓症につながる場合も。

個人によってリスクの度合いは異なりますが、少量の投与でも過強陣痛になるケースが報告されているため、慎重な投与管理が必要です(※1)。

(※1)出典:富士製薬工業株式会社「適正使用に関するお願い」

デメリット2:母体へのリスク

母体にも、さまざまな副作用が現れる可能性があります。

一般的な症状として吐き気や血圧変動が挙げられますが、より深刻な問題としてアレルギー反応が起こる場合も。

アレルギー反応は、

・軽度の発疹
・発熱

などから始まり、重症な例では、

・急激な血圧低下
・意識レベルの低下

など、緊急対応が必要な状態に発展する可能性もあるのです。

そのため、投与中は母体の状態を継続的にモニタリングしています。

デメリット3:緊急帝王切開の可能性

陣痛促進剤を使用しても分娩が順調に進行しない場合、緊急帝王切開への移行を検討する必要が出てきます。

緊急帝王切開には、通常の予定帝王切開以上のリスクが伴います。

具体的には、

・大量出血
・血栓症の発症
・膀胱などの臓器損傷
・術後感染症

などです。

また緊急性が高いため、母体への身体的・精神的負担も大きくなるでしょう。

陣痛促進剤の使用から出産までにかかる時間は?

出産にかかる時間は個人差が大きく、陣痛促進剤を使用した場合でもその傾向は変わりません。

一般的な分娩所要時間の目安は、以下のとおりです。

対象 分娩所要時間
初産婦 平均13時間
経産婦 平均6時間

出典:日本助産師会(安達久美子)「全国助産所分娩基本データ収集システム2019集計結果報告」

上記はあくまで平均値であり、実際の分娩時間は個人によって大きく異なります。

また陣痛促進剤の効きやすさにも個人差があるため、出産にかかる時間は断定できません。

陣痛促進剤の使用には保険が適用されるケースもある

陣痛促進剤の保険が適用される例は、以下のとおりです。

・妊娠高血圧症候群や長時間微弱陣痛が続いている場合
・分娩前に破水してしまった場合など

早く胎児を出さなければならない「異常分娩」と判断されたときに使用する陣痛促進剤については、保険適用となります。

陣痛促進剤と誘発剤の違いとは?

何らかの理由で出産を促したいときに、プロスタグランジンやオキトキシンを使って「分娩誘発」または「陣痛促進」を行いますが、使う理由は違っても、いずれも同じ薬剤を使います。

つまり、使用目的によって「促進剤」と呼んだり、「誘発剤」と呼んだりするのです。

陣痛促進剤に関するQ&A

ここでは陣痛促進剤について、よくある3つの質問をまとめました。

順番に見ていきましょう。

土肥 聡
2004年北里大学医学部医学科卒業。 同年4月から2年間、東大和病院にて初期臨床研修を修了。 昭和大学病院、昭和大学横浜市北部病院、昭和大学江東豊洲病院で勤務した後、2023年に昭和大学医学部医学教育学講座客員教授に就任。 2024年2月、亀田総合病院臨床遺伝科顧問に就任。 同年1月、豊洲レディースクリニックを開業。
質問
陣痛促進剤が効かない確率はどのくらい?
回答者
土肥先生
Oboroらの研究(2007)によると、陣痛促進剤を使用した分娩で、帝王切開に移行する確率は約20~37%と報告されています。

この数値は、陣痛促進剤が効かない症例を含むものと考えられます。

また、陣痛促進剤の効果には個人差があり、規定の投与量でも陣痛が十分に強くならない場合があります。

そのような場合には、薬剤を一時的に中断し再開することで、分娩に繋がる強い陣痛が発生することがあります。

出典:

Oboro, V. O., Tabowei, T. O., & Jemikalajah, J. D. (2007). The role of oxytocin in the management of labor. International Journal of Gynecology & Obstetrics, 96(3), 186-189.

質問
陣痛促進剤が効かない原因は?
回答者
土肥先生
陣痛促進剤が効かない原因として、子宮頸管の「熟化」が十分でないことが重要な要因の一つとして挙げられます。

子宮頸管が十分に軟化しておらず、開大が不十分な場合、陣痛促進剤を使用しても陣痛の強度が増さないことがあります。

このため、陣痛誘発前に子宮頸管の成熟を促す薬剤(例:プロスタグランジン)を使用することが推奨される場合があります。

出典:

・Vogel, J. P., Souza, J. P., & Gülmezoglu, A. M. (2014). Patterns and outcomes of induction of labour in Africa and Asia: A secondary analysis of the WHO Global Survey on Maternal and Perinatal Health. PLoS One, 9(5), e95629.

・Royal College of Obstetricians and Gynaecologists (RCOG). (2021). Induction of labour at term. BJOG: An International Journal of Obstetrics and Gynaecology, 128(5), 825-832.

質問
陣痛促進剤にはどのくらい費用がかかる?
回答者
土肥先生
陣痛促進剤を使用した場合、分娩が「正常分娩」であれば保険適応外となり、1回あたり数万円の費用がかかります。

しかし、妊娠高血圧症候群や長時間微弱陣痛が続いている場合、分娩前に破水してしまった場合など、早く胎児を出さなければならない「異常分娩」と判断されたときに使用する陣痛促進剤については保険適用となります。

まとめ

陣痛促進剤を使わない自然陣痛を想像していた人は、戸惑ったり、ショックを覚えたりするかもしれません。

しかし医師が母子の状況から、さまざまなことを考慮したうえでベストな方法を判断した結果です。

大切なことは、どう産むかだけでなく「自分と赤ちゃんの命を守る」出産であるということです。

陣痛促進剤は、お産をサポートしてくれるものと考えられたらよいですね。

もし陣痛促進剤の使用をすすめられたら、医師の説明をしっかり聞きましょう。

それ以外に小さなことでも不安なことや疑問があれば、納得いくまで説明を受けてくださいね。

落ち着いた気持ちで出産の日を迎えるようにしましょう。

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この記事の監修者

坂田陽子

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

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