出産時の痛みを「鼻の穴からスイカを出すくらい」と例えることがありますが、出産は想像を絶するような痛みを伴います。
出産により引き起こされる痛みのことを総じて陣痛と呼びますが、麻酔を使って、陣痛の痛みを和らげながら出産する方法が「無痛分娩」です。
無痛分娩では脊髄と呼ばれる痛みを伝える神経の近くに麻酔薬を投与し、神経をブロックして痛みを軽くします。
今回はこの無痛分娩の流れを、準備から出産まで詳しく解説。
この記事を読むと、無痛分娩のイメージを把握できるようになりますよ。
無痛分娩は2種類ある
無痛分娩(和通分娩)には、自然に起こる陣痛を待って分娩する「自然無痛分娩」と、事前に出産予定日を決定し、人工的に陣痛を促して分娩を行う「計画無痛分娩」の2種類があります。
それぞれの特徴は以下のとおりです。
種類 |
特徴 |
自然無痛分娩 |
自然分娩に近い流れで進められる |
計画無痛分娩 |
出産予定日が決められるため、入院の予定をたてやすい |
ちなみに、それぞれどちらの方法で出産するのか選択が可能です。
【準備編】無痛分娩の流れ6ステップ
まずは無痛分娩前の準備について、流れを以下の6ステップで見ていきましょう。
1.家族で相談する
2.無痛分娩が受けられる施設を探す
3.病院に問い合わせる
4.病院を受診する/分娩予約をする
5.説明会に参加する
6.分娩日を決定する(計画無痛分娩の場合)
順番に解説していきます。
準備1:家族で相談する
出産には家族の理解と協力が不可欠です。
本当に自分に合った出産方法なのか、費用面や通院面はクリアできているか、無痛分娩のメリットやデメリットについて話し合った上で決めましょう。
準備2:無痛分娩が受けられる施設を探す
日本周産期・新生児医学会雑誌に掲載されている論文によると、2020年度における分娩施設数は「1,945施設」であり、そのうち無痛分娩を実施している施設は「505施設」であると報告されています(※1)。
つまり無痛分娩に対応している分娩施設は、全体の「約26%」しかないといえます。
そのため通院できる範囲に施設があるのか、里帰り先に施設があるのか、探しておく必要があります。
無痛分娩を行っている施設を探す方法として、無痛分娩関係学会・団体連絡協議会(JALA)が運営している「全国無痛分娩施設検索サイト」があげられます。
このサイトでは各施設からの提供情報を元に、全国の無痛分娩施設の検索が可能です。
日本地図全体を見ながら直感的に検索できる「地図検索」や、自身が住んでいる場所から検索可能な「地域検索」が利用できます。
簡単に検索できるため、下記ページからぜひ利用してみてください。
出典(※1)J-STAGE「わが国の無痛分娩の現状と今後」
準備3:病院に問い合わせる
無痛分娩を希望することが決まったら、候補の病院に問い合わせ、詳しい説明を受けることが大切です。
ほとんどの病院で、あらかじめ無痛分娩の日を決め陣痛促進剤を投与し、分娩を行う計画無痛分娩を行っています。
また、無痛分娩枠に制限を設けている病院もあります。
いずれにしても、知識と経験の十分な医師のいる施設で無痛分娩を受けることをおすすめします。
準備4:病院で受診する/分娩予約をする
病院が決まったら早めに受診し、医師に無痛分娩を希望する旨を伝え、分娩予約をしましょう。
無痛分娩の予約ができる時期は病院によって異なります。
たとえば日本医科大学 武蔵小杉病院では、初産婦で「妊娠14週以降」、経産婦で「妊娠12週以降」から予約受付を行っています(※2)。
上記を目安にしつつ、無痛分娩を検討している人は早めの予約が必要です。
出典(※2)日本医科大学武蔵小杉病院「無痛分娩のご案内」
準備5:説明会に参加する
無痛分娩の出産の流れや麻酔方法は病院により異なることがあるので、病院で実施される「無痛分娩説明会」にはできるだけ参加するようにしましょう。
安全に無痛分娩を行うために、参加が必須となる病院もあります。
準備6:分娩日を決定する(計画無痛分娩の場合)
計画分娩の場合、無痛分娩が安全に行えるかを事前の受診で確認して、出産予定日を決定します。
出産予定日の決定時期は、病院によって異なります。
たとえば横浜市立大学附属 市民総合医療センターでは「妊娠37週以降」に行う内診の結果によって出産予定日を決めているのです(※3)。
妊婦さん本人の希望を聞き、お母さんの体と赤ちゃんの状態を総合的に判断して、出産の準備が整う時期を予測します。
緊急性がある場合は、妊婦さんの希望に関わらず、安全性を考慮した予定日に実施されます。
出典(※3)横浜市立大学附属 市民総合医療センター「分娩を希望される方へ」
【出産編】無痛分娩の流れ9ステップ
次に、無痛分娩の出産の流れを見ていきましょう。
計画無痛分娩の場合、予定している日の前日または当日の朝から入院します。(下記1からの流れになります。)
計画無痛分娩ではない場合、陣痛が始まったら病院に連絡をして、指示に従って入院します。(下記1事前準備と4からの流れになります。)
1:事前準備
心電図、血圧計、胎児心拍数陣痛計装着など、帝王切開の手術準備と同様の準備が行われます。
当日の朝までにお通じがない場合には、座薬投入や浣腸を行う場合があります。
2:子宮口を広げる
子宮口を広げる必要がある場合には、バルーンと呼ばれる水風船のような器具を挿入します。
ゴム状のしぼんだバルーンを子宮口へ入れて滅菌した水を注入し膨らませることで子宮口を広げます。
この処置は前日から行う場合もあります。
3:陣痛促進剤を投与する
人工的に子宮収縮を起こして陣痛を促進させるために、陣痛促進剤を点滴で投与します。
効き目が弱ければ基準量の範囲内で投与量を増やしたり、陣痛促進剤の種類を変えることもあります。
4:麻酔を開始する
麻酔を開始するタイミングについては、妊婦さんの希望と分娩進行を合わせながら決めていきます。
無痛分娩では多くの場合、硬膜外麻酔が用いられます。
硬膜外麻酔というのは背骨にある硬膜外腔という場所に直径1mm程の細くて柔らかい管を入れ、そこから薬を投与する麻酔方法です(※4)。
硬膜外の管を入れる処置にかかる時間が5~10分程度、硬膜外の管から薬を注入し鎮痛効果が現れるまでにかかる時間が30分程度です(※5)。
背中に針を刺して薬を注射で投与する脊椎麻酔を併用する場合もあります(脊髄くも膜下硬膜外併用鎮痛)。
この場合、まず脊髄くも膜下腔に薬を投与し、その直後に硬膜外腔に管を入れます。
硬膜外麻酔のみで行う鎮痛法に比べて効果が早く現れ、数分後にはある程度の鎮痛効果が感じられます。
計画無痛分娩の場合には状況に応じて2~4の流れが前後することがあります。
出典:
(※4)独立行政法人 国立病院機構 敦賀医療センター「麻酔科」
(※6)独立行政法人 国立病院機構 京都医療センター「麻酔科」
5:分娩が進むのを待つ
ここからは分娩が進むのをひたすら待ちます。
出産までの時間は自然分娩と変わりません。
初産婦で12~16時間程度、経産婦でも5~8時間程度かかるのが一般的です(※7)。
出典(※7)奈良県立医科大学 麻酔科「無痛分娩教室」
6:麻酔を注入する
子宮口が4~5㎝開き、陣痛が強まってつらくなってきたら、硬膜外の管に麻酔薬を注入して痛みを和らげます(※8)。
麻酔が完全に切れる前に痛くなってきたなと思ったら、薬を追加してもらうこともあります。
赤ちゃんが大きい場合や、赤ちゃんの頭の向きがずれている場合には、麻酔薬を追加しないこともあります。
麻酔薬が赤ちゃんを押し出す力を弱めてしまう可能性があるためです。
出典(※8)順天堂大学医学部附属順天堂医院「順天堂医院での無痛分娩について」
7:助産師の合図に合わせていきむ
麻酔が効いていると痛みの感覚がないので、いきむタイミングが難しいと感じることもあります。
おなかの張りと助産師の合図を頼りにいきんでみましょう。
8:出産
待ちに待った出産の瞬間です。
痛みはなくても赤ちゃんが出た瞬間がわかったという方もいます。
赤ちゃんが誕生した時の感動は自然分娩と変わりません。
すぐに赤ちゃんを抱くこともできます。
9:産後
出産後2時間程で麻酔が切れます(※9)。
無痛分娩は分娩時の精神的な疲労感が少ない分、産後の回復が早いと言われています。
出典(※9)地方独立行政法人 りんくう総合医療センター「麻酔科」
まとめ
無痛分娩の流れ、何となくつかめたでしょうか?
無痛分娩の流れは施設ごとに異なる場合があります。
妊婦さんや赤ちゃんの状態によっても異なる場合がありますので、今回ご紹介した流れはおおまかな例として参考にしましょう。
みなさんが幸せな出産を迎えられますように。
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▼さい帯血保管について、もっと詳しく
この記事の監修者
坂田陽子
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー