新生児の食事 母乳の特長やミルクの成分について

坂田陽子

記事監修者:坂田陽子

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

新生児にとって母乳はフルコースの食事

新生児の食事は母乳やミルクのような乳汁です。新生児は乳汁以外の食事を摂ることができません。
今回は新生児の食事である母乳とミルクのお話、母乳の特長やミルクの成分についてもご紹介いたします。
母乳のもとはお母さんの血液です。お母さんの体内を流れる赤い血液が乳白色の母乳となり、赤ちゃんに届けられるのです。乳房には乳腺があり、母乳はその中にある乳腺葉で作られます。乳腺葉は毛細血管で取り囲まれ、ここで血液から必要な成分が細胞に取り込まれ合成されて母乳ができます。
母乳はたんぱく質や脂肪、ビタミンなど赤ちゃんの成長に必要な成分の全てが最適なバランスで含まれています。また、母乳の成分は赤ちゃんの成長や状況に応じて変化します。例えば低出生体重児のお母さんの母乳には小さな赤ちゃんに特に必要な成分が多く含まれていたり、赤ちゃんの離乳食が始まるころになると母乳中の脂肪分やたんぱく質が微妙に減ってきたりします。母乳はそのときどきの赤ちゃんにとって完全栄養食品になり得ます。
さらに、1回の授乳中にもその成分は変化します。飲み始めは低脂肪であっさり、授乳が終わるころには脂肪量が増えて濃厚な味になります。実は母乳を飲んでいる赤ちゃんは前菜、メインディッシュ、デザートと毎回フルコースの食事を楽しんでいるようなものなのです。

初乳は新生児の特別な食事

出産後2日頃までに出る母乳を初乳といいます。通常の母乳に比べて粘り気があり、黄色っぽい色をしています。初乳にはほぼ無菌状態の子宮の中から出てきた赤ちゃんを守るために免疫物質がたくさん含まれています。

分泌される量は少ないですが、IgAという分泌型免疫グロブリンが多く含まれていて、初乳を飲ませることで赤ちゃんに免疫を受け渡すことができます。IgAは赤ちゃんの消化器、中耳、気管支などの粘膜の表面を覆い、細菌、ウイルス、アレルギーの原因物質の血中への侵入を防ぐことで、消化器からの感染、中耳炎、気管支炎を起こりにくくする効果があります。初乳は新生児期の赤ちゃんにとって特別な食事といえます。ぜひ飲ませるようにしましょう。

ミルクだって新生児の大切な食事

赤ちゃんの発育はミルクでも母乳でも特に変わりありません。赤ちゃんの身体の具合やお母さんの事情などで母乳をあげられない場合、ミルクを与えることに後ろめたさを感じる必要はありません。母乳が不足した時には安心してミルクを飲ませましょう。状況に合わせてミルクを使用するなど、柔軟に授乳のスケジュールを組んでいきましょう。
ミルクには免疫物質は含まれていませんが、赤ちゃんはお母さんのおなかの中にいる時に胎盤を通して免疫を受け取っています。ミルクで育てたから免疫がなく病気になりやすいということはありません。現在市販されている乳児用ミルクの成分は牛乳を原料にして加工されたものですが、長年の研究で改良されています。

主要成分の組成には基準がありますが、より良いミルクを作るために各メーカー独自の開発、研究が重ねられているため、製品ごとに少しずつ特長が異なります。
また、先天的に栄養素の代謝異常がある乳児のための治療用ミルクやアレルギー用ミルクもあります。最近では作る手間がかからず、すぐに与えられる液体ミルクが販売されるようになりました。液体ミルクは水が不要で常温で長期保存ができるため、災害時にも役立ちます。

乳児用ミルクの主な成分

・たんぱく質

たんぱく質は筋肉や血液をつくり、その機能を調整する働きをします。牛乳も母乳もたんぱく質はカゼイン、ラクトアルブミンから成っていますが、配合比率が異なります。乳幼児用ミルクではたんぱく質の配合比率を母乳に近づけ、胃の中で消化されやすいようにしています。

・炭水化物

牛乳は母乳に比べて乳糖が少ないため、乳糖が添加されています。また、母乳オリゴ糖やシアル酸も配合されています。乳糖は脳の発達を助け、母乳オリゴ糖はおなかの調子を整え、シアル酸は病原菌の感染から守ってくれます。

・脂質

脂質はエネルギー源であり、必須脂肪酸の供給源でもあります。牛乳と母乳では脂肪の量はほとんど変わりませんが、含まれる脂肪酸の組成が異なります。牛乳には不飽和脂肪酸が少なく、腸壁を刺激して下痢を引き起こすとされる揮発性脂肪酸が多いため、乳幼児ミルクの脂肪は数種類の植物油を組み合わせて配合し、リノール酸やα-リノレン酸を強化しています。母乳にはドコサヘキサエン酸(DHA)なども含まれています。

・ビタミン

牛乳中のビタミンは母乳に比べてビタミンAとビタミンCが少なくなっています。そこで、乳児の所要量を満たすように強化されています。また、母乳に不足しがちなビタミンKも強化され、各ビタミンのバランスが調整されています。

・ミネラル

ミネラルは骨や歯を作る重要な成分で、牛乳には母乳の約3.5倍含まれています。特にリンとカルシウムが多く、鉄は少なくなっています。そのまま与えると腎臓に負担がかかります。また、新生児や乳児の腎臓は尿の濃縮力が弱いので過剰のミネラルがあるとこれらを排泄するのに水分が多く必要となり、水分不足を招くことになります。これらを防ぐため、ミネラルを減量してカルシウム、リン、カリウム、ナトリウムのバランスが調整されています。

・その他

初乳に多く含まれる感染防御物質であるラクトフェリンやビフィズス菌を増やす働きがあるラクツロースなども配合されています。

まとめ

新生児期の赤ちゃんの食事である母乳やミルクについて、おわかりいただけたでしょうか。母乳は完全栄養食品であり、免疫物質も含まれるため、新生児にとって最適な食事となっています。一方、ミルクも母乳に近い成分になるよう調整されており、様々な事情で母乳育児が難しい状況にある赤ちゃんにとって重要な食事です。

大切なことは赤ちゃんもお母さんも無理なく気持ちよく笑顔で過ごせることです。新生児期は短く赤ちゃんはあっという間に成長していきます。どうぞ楽しい食事の時間を過ごしてくださいね。

 

赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?

赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。

幹細胞は新しい医療への活用が進められており、もしもの時に役立てられる可能性があります。

さい帯・さい帯血保管のポイント!

  1. 出産後わずか数分の間にしか採取できない貴重な赤ちゃんのものです。
  2. 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
  3. どちらにも幹細胞がたくさん含まれています。
  4. 再生医療分野など、さまざまな活用が進んでいます。
  5. それぞれ異なる幹細胞が含まれているため、両方を保管しておくことで将来の利用の選択肢が広がります。

実際に保管・利用した方のお声

出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。

高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま

さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています

元気に産まれたと思っていましたが、生後半年頃から左手をほとんど使おうとしないことに気付き、1歳頃にやはり何かおかしいと思ってMRIを撮ってもらうことにしました。結果1歳5ヶ月で脳性まひとわかりました。
2歳の誕生日にステムセルからハガキが届き、出産時に保管したさい帯血がもしや役に立つのではと思い至りステムセルに問い合わせました。ちょうど臨床試験への参加者を募集していて、運よく2歳5ヶ月のときに参加することができました。
輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。

さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。

その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。

医師からのメッセージ


総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生

応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療

近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。

さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

保管するなら、ステムセル研究所の「HOPECELL(ホープセル)」

株式会社ステムセル研究所が提供する「さい帯・さい帯血ファミリーバンクHOPECELL(ホープセル)」は、日本国内で最も選ばれている保管サービスです。

ステムセル研究所は、25年以上の保管・運営実績がある日本初のさい帯血バンクで、国内最多となる累計80,000名以上のさい帯血を保管しています。

どうやって保管するの?
ステムセル
研究所
出産時に産科施設で採取されたさい帯・さい帯血は、ステムセル研究所の高レベルのクリーンな環境で専門スタッフが処理・検査を行います。国内最大級の細胞保管施設にて、約-190℃の液体窒素タンク内で長期間大切に保管されます。また、ステムセル研究所は厚生労働省(関東信越厚生局)より「特定細胞加工物製造許可」を取得しており、高品質と安全性を実現しています。
保管したさい帯血は何に使えるの?
ステムセル
研究所

国内では脳性まひに対する、赤ちゃんご自身やごきょうだいのさい帯血投与の研究が行われています。海外の臨床研究では、投与により運動機能および脳神経回路の改善が報告されています。また自閉症スペクトラム障害(ASD)に対して、さい帯血の投与によりコミュニケーション能力や社会への順応性が向上する可能性が期待されており、大阪公立大学にてお子さまご自身のさい帯血を投与する臨床研究が開始されます。

さい帯・さい帯血保管は高いと聞いたのですが…
ステムセル
研究所
さい帯またはさい帯血のどちらか一方を10年間保管する場合、月々2,980円(税込)で保管することができます。出産時にしか採取・保管することができない貴重な細胞なので、お子さまの将来に備えて保管される方が増えています。

無料パンフレットをお送りします!

さい帯・さい帯血保管についてより詳しく知っていただけるパンフレットをご自宅へお送りします。

赤ちゃんの将来に備える「さい帯・さい帯血保管」をぜひ妊娠中にご検討ください。

この記事の監修者

坂田陽子

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー