妊娠生活を送るなかで、切迫早産という言葉を聞いたが
「どういう状態なのだろう」「早産とは違うのだろうか」と疑問や不安に思っていませんか。
切迫早産とは、早産の可能性が高い状態をさします。
切迫早産になる原因はおもに5つあり、症状もさまざまです。
この記事では、おもに以下の内容を解説していきます。
・切迫早産とはなにか
・切迫早産になる5つの原因
・切迫早産の症状
・切迫早産の治療法や予防法
この記事を読むと、切迫早産とはなにかがわかり、原因や症状も把握できますよ。
切迫早産とは?【早産手前の状態】
妊娠22週~36週までの出産を早産といいます(※1)。
一方、切迫早産とは早産になる危険性が高いと考えられる状態、つまり早産の一歩手前の状態をさします。
具体的には子宮収縮(おなかの張りや痛み)が起こり、子宮口(子宮の出口)が開きかけているところで、かろうじて胎児がおなかの中にとどまっている状態です。
出血や破水を伴うケースもあります。
36週以下の切迫早産は、胎児が未熟な状態で生まれてくるため、合併症・障がい・死亡などのリスクが高くなります。
出典(※1) 国立成育医療研究センター「早産外来」
切迫早産は妊娠初期でも起こるのか?
妊娠22週未満の赤ちゃんはお母さんのお腹の外で生きていくことができません。
妊娠22週未満の出産は流産となります。
以下のように、妊娠週数によって切迫流産から切迫早産へと名称が変わります(※2)。
・切迫流産:妊娠22週未満
・切迫早産:妊娠22週以降
切迫流産とは、流産の一歩手前の状態をいいます。
少量の出血や腹部の張り・痛みなど症状はありますが、まだ正常妊娠への回復が可能な状態です。
ただし血腫が大きかったり、妊娠14週ごろに見られる場合はハイリスクと考え、慎重に対応します(※3)。
出典:
(※3)国立研究開発法人国立成育医療研究センター「妊娠中の出血!切迫流産っていったい何??」
切迫早産になる5つの原因
切迫早産の原因は大きく5つあります。
・子宮内感染
・子宮頸管無力症
・多胎妊娠
・低年齢の出産
・生活習慣
順番に解説していきます。
原因1:子宮内感染
もっとも多いのは子宮内感染です。
腟から子宮内へ侵入した細菌によって炎症が起こると、破水や子宮収縮が起こりやすくなり、切迫早産を引き起こすのです。
自分では気づきにくいため、定期的に妊婦健診を受けましょう。
原因2:子宮頸管無力症
子宮収縮がなくても子宮口が開いてしまい、破水しやすくなる病気です。
子宮頸管無力症の発生は、体質や子宮頸部の手術既往などが関係しています。
こちらも自覚症状がないため、健診をきちんと受けることが大切です。
原因3:多胎妊娠
多胎妊娠とは、子宮の中に複数の胎児が存在する状態をいいます。
多胎妊娠では、子宮が過度に大きくなるため子宮収縮が起こりやすく、切迫早産にもなりやすいです。
原因4:低年齢の出産
厚生労働省の資料によると、切迫早産は低年齢の出産に多い傾向があることがわかります。
とくに18歳以下での出産は、切迫早産を引き起こす割合が高いです。(※4)
低年齢であると切迫早産になりやすい理由として、子宮の未熟な発達や血流不全による、子宮内感染の増加や子宮収縮を促すプロスタグランシン産生の増加が考えられます。
出典(※4)厚生労働省「第3回「不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会」(2013年8月19日公表)」
原因5:生活習慣
以下のような生活習慣が切迫早産の原因になることもあります。
・ストレス
・痩せすぎ
・喫煙
・飲酒 など
切迫早産になる確率【約14%】
厚生労働省の資料によると、妊娠者の約14%(約7人に1人)に切迫早産が発生することがわかります(※5)。
ただし切迫早産のリスクは、
・妊婦の年齢
・過去の妊娠歴
・現在の妊娠状況
・生活習慣
などによって異なります。
あくまでも目安として考えましょう。
出典(※5)厚生労働省「第2回妊産婦に対する保健・医療体制の在り方に関する検討会2019年3月15日」
切迫早産のおもな症状4点
切迫早産のおもな症状には、以下の4点があげられます。
・下腹部の張り
・生理痛に似た下腹部や腰の痛み
・性器からの出血
・妊娠22週~36週までの破水
安静にしていても規則的に、あるいは頻繁に張りや痛みが続く場合には、すぐにかかりつけの産院に相談してください。
また、性器出血がある、破水したかもしれないというときにも、すぐに産院へ連絡しましょう。
【命を守る】切迫早産の治療とは
切迫早産になった場合、できる限りおなかの中で成長できる期間を延ばすことが大切です。
胎児が母体の中にいる期間が短くなるにつれ、生存率や予後に悪影響を及ぼすからです。
切迫早産の治療は第一に安静にすることで、状況に応じて投薬を行います。
子宮収縮の程度が軽く、子宮口があまり開いていない場合は自宅で安静にし、外来通院による治療が行われます。
しかし子宮収縮が強く認められ、子宮口の開大が進んでいるような重症の場合は入院が必要です。
安静を保ちつつ子宮収縮を抑える子宮収縮抑制薬(はり止め)などによる処置を行ないます。
細菌による感染が疑われる場合や破水した場合には、赤ちゃんに細菌が感染するのを防ぐために抗菌薬を使用することも。
妊娠34週より前に破水した場合は、赤ちゃんが自分で呼吸できる状態になるまで抗菌薬を投与し感染を抑えます。
妊娠34週以降であれば、赤ちゃんは自分で呼吸できる可能性が高いため、出産後に治療を行います。
切迫早産の症状が重く早産が避けられないと判断した場合は、新生児集中治療室(NICU)のある施設へ救急搬送されることも。
また子宮頸管無力症では、どんどん子宮口が開き、流産や早産になる可能性があるため、状況により子宮頸管縫縮術を行うことがあります。
出典:国立保健医療科学院「感染予防の立場からみた前期破水の管理」
切迫早産を予防するためにできること
切迫早産の予防のためには、日頃から無理のない妊娠生活を心がけることがもっとも大切です。
なるべくストレスを溜めずに、疲れたときにはしっかりと休憩をとりましょう。
また、感染症にも注意が必要です。
精液の中には細菌がふくまれているため、妊娠中における性行為の際には、コンドームなどを使用し、性感染症を予防しましょう。
切迫早産の起こる仕組みはまだ不明な点も多く、子宮頸管無力症のように予防ができない場合もあります。
現在(2023年9月時点)では、早産予測のために、妊娠中期に経膣エコーで子宮頸管長(子宮の出口の長さ)を測定することが多くなりました。
妊婦健診をきちんと受けるようにし、切迫早産の状態で早期発見して、早産にならないよう対処していきましょう。
切迫早産のQ&A
切迫早産について、よくある2つの質問をまとめました。
順番に見ていきましょう。
Q1:切迫早産に兆候はある?
切迫早産の兆候には「尿もれ」「発熱」のように、気づきにくいものがあります。
尿もれは、大きくなった子宮による膀胱への圧迫が原因で起こるケースも。
尿もれと破水による羊水の区別がつきにくい場合もあるため、注意が必要です。
破水とは、赤ちゃんを包む羊水の膜が破れ、羊水が流れ出る状態をさします。
破水により子宮内の羊水量が減ると、赤ちゃんへの圧迫が増えるのです。
また少量の破水に気づかないまま放置すると、細菌感染のリスクが高まるため、注意が必要です。
発熱は「細菌性腟炎」や「絨毛膜羊膜炎」などの細菌感染を疑う重要なサインであるため、見逃さないようにしましょう。
体温が「38℃以上」である場合、細菌感染を引き起こしている可能性が高まります。
ただし発熱がなくても、感染を引き起こしているケースがある点は覚えておきましょう。
参考:公益財団法人日本医療機能評価機構「子宮内感染について」
Q2:切迫早産になりやすい人はいるの?
厚生労働省が公表している資料において、妊娠中に「長時間の立ち仕事」「重量物を扱う仕事」をする人は、切迫早産・切迫流産になりやすいと報告しています(※6)。
具体的には、以下のような作業があげられます。
長時間の立ち仕事 | 重量物を扱う仕事 |
・売場の見回り ・商品の陳列 ・レジ打ち ・工場でのライン作業 など |
・家具の組み立て ・商品の陳列 ・品出し ・荷卸し など |
ほかにも「激しい全身運動を伴う作業」「精神的負担の大きい作業」も避けたい仕事です。
妊娠初期の場合、まだお腹が大きくないため、妊娠中だと気付いてもらえないケースは多いでしょう。
職場には妊娠していることを伝え、業務内容を見直してもらうようにしましょう。
ほかにも、早産を経験したことのある人は、切迫早産になりやすいといわれています(※7)。
出典:
(※6)一般財団法人 女性労働協会「働きながら安心して妊娠・出産を迎えるために」
まとめ
切迫早産とは、
・おなかの張りや痛み
・出血
・子宮口の開大
・破水
などが起こり正期産よりも早い段階で胎児が出てきてしまいそうな「早産になりかけている」状態のことをさします。
切迫早産と診断された場合、安静にして胎児ができるだけ長くおなかの中で成長できるようにすることが大切です。
妊娠中は日頃から無理のない生活を心がけましょう。
チャンスは出産時の一度きり。赤ちゃんの将来の安心に備えるさい帯血保管とは
うまれてくる赤ちゃんやその家族のために、おなかに赤ちゃんがいる時しか準備できないことがあるのをご存知ですか?
それが「さい帯血保管」です。
さい帯血とは、赤ちゃんとお母さんを繋いでいるへその緒を流れている血液のことです。
この血液には、「幹細胞」と呼ばれる貴重な細胞が多く含まれており、再生医療の分野で注目されています。
このさい帯血は、長期にわたって保管することができ、現在は治療法が確立していない病気の治療に役立つ可能性を秘めています。
保管したさい帯血が、赤ちゃんやご家族の未来を変えるかもしれません。
しかし採取できるのは、出産直後のわずか数分間に限られています。
採血と聞くと痛みを伴うイメージがあるかと思いますが、さい帯血の採取は赤ちゃんにもお母さんにも痛みはなく安全に行うことができます。
民間さい帯血バンクなら、赤ちゃん・家族のために保管できる
さい帯血バンクには、「公的バンク」と「民間バンク」の2種類があり、公的バンクでは、さい帯血を第三者の白血病などの治療のために寄付することができます。
一方民間バンクでは、赤ちゃん自身やそのご家族の将来のために保管できます。
現在治療法が確立されていない病気に備える保険として利用できるのが、この民間さい帯血バンクです。
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ステムセル研究所が選ばれる理由
・1999年の設立以来20年以上の保管・運営実績あり
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さい帯血を保管した人の声
■出産の時だけのチャンスだから(愛知県 美祐ちゃん)
■さい帯血が本当の希望になりました(東京都 M・Y様)
※ほかの保管者の声はこちらから
▼さい帯血保管について、もっと詳しく
この記事の監修者
坂田陽子
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー