妊娠後期の息苦しさは「貧血」が原因?症状や対処法をご紹介

記事監修者:助産師 坂田陽子 先生
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

妊娠後期に入って、息苦しさに悩まされる妊婦さんも多いのではないでしょうか?
実はその息苦しさ、「貧血」が原因かもしれません。
お腹が大きくなってくることに加え、赤ちゃんの成長と共に、妊婦さんの身体にもさまざまな変化が起こっています。
今回は妊娠後期に多い息苦しさと、その原因「貧血」について、さらにその対処法までお伝えします。
妊娠後期の息苦しさの原因は?
妊娠初期からなんだか息苦しいなぁと感じる人もいます。
おなかが大きくなってからは、一つ一つの行動に「ふぅ~」っと息を吐いてしまう姿は想像できますが、まだおなかが大きくない初期に、なぜ息苦しく感じてしまうのか疑問に思いますよね?
原因はいくつかあります。
①プロゲステロンと呼ばれる女性ホルモンの分泌が増えることによる自律神経の乱れから動悸が起こり、息苦しく感じる。
女性ホルモンの分泌は通常卵巣からなので、本人の体調などにも影響していますが、14週頃には胎盤が完成し、女性ホルモンの分泌が胎盤からになるので、母体への影響が減り体調も落ち着いてきます。
②血圧の変化による症状。
妊娠初期は血圧が下がり、妊娠中期は正常値になり、妊娠後期には血圧が上がりやすくなります。
「低血圧で朝起きるのがつらい」と聞いたことがあるかもしれませんが、今まで低血圧ではなかった人にとっては、このだるさが苦しさに感じるかもしれません。
③ストレスや不安による自律神経の乱れ。
女性ホルモンの影響だけではなく、妊娠がわかった時から生活の変化に不安を感じたり、悪阻によるつらさや睡眠不足など、いろいろなストレスを女性は感じてしまいますよね。
ストレスを感じると、呼吸が浅くなったり、ため息が多くなり、うまく呼吸ができていなかったりします。その影響で息苦しく感じることがあります。
④甲状腺機能による症状。
妊娠初期は甲状腺ホルモンも多く分泌されます。14週頃には正常値になりますが、妊娠初期に過剰になりすぎ、甲状腺機能亢進(バセドウ病)を発症すると流産や早産の原因になりやすいので、すぐに受診が必要です。
症状としては、汗をかきやすくなったり、体重の減少、手の震え、動悸や息切れなどがあります。
私は軽度の甲状腺機能低下症(橋本病)だったので、通常はホルモンが不足しているのですが、妊娠初期の多く分泌されている時期は正常値になっていました。しかし中期以降には通常値になるので、橋本病の症状としての息苦しさや倦怠感を感じる日もありました。
⑤切迫流産、切迫早産と診断された時に処方される『ウテメリン』の副作用。
子宮収縮を抑える薬ですが、副作用として頻脈(脈が速くなる)、息切れ、動悸、手の震え、だるさなどがあります。
⑥貧血による症状。
息苦しさの原因として一番多いのが貧血のようです。
全期間で起こりやすいためずっとダルさ、動悸、息苦しさが続く方もいるかもしれません。
血液は赤ちゃんに栄養や酸素を送る為にとても大切です。
妊娠中期以降は大量に血液を作るために水分量が増えるのですが、血液の濃度は薄まってしまうので貧血の症状が出ます。
妊娠後期は赤ちゃんへの血液供給が増えるので、妊婦さん自身が鉄分不足になります。
妊娠後期の息苦しさの対処法は?
息苦しさの原因が
①女性ホルモン分泌増加による自律神経の乱れ
②血圧の変化
③ストレスや不安による自律神経の乱れ
によって起こっている場合はリラックスして過ごすのが一番です。
自宅で過ごせる方は、座ったり横になって、ゆっくり過ごしてみてくださいね。
お仕事のある方は、出来るだけ負担のかからないよう、座ってできる仕事や重労働は避けるようにして過ごしましょう。
悪阻の軽い方は、散歩など軽く体を動かすことで自律神経が整いやすくなります。
息苦しさの原因が
④甲状腺機能
⑤ウテメリンの副作用
⑥貧血
の場合は医師の診断、処方が必要になりますので、自己判断はせず、必ず受診をしてください。
薬の副作用なども相談し薬を変更してもらったり、副作用を抑える別の薬を処方して貰うことで症状を改善、軽減させることができると思います。
最初は息苦しさの原因が何かわからないという場合がほとんどだと思いますので、かかりつけの医師に相談してみましょう。
妊娠後期の息苦しさの原因に多い「貧血」。その症状や対策は?
妊娠後期の息苦しさに悩むに妊婦さんは多いのですが、その原因で意外に多いのが「貧血」です。
私も2人の子供を妊娠中、2回とも9か月頃から妊婦検診で「貧血」と診断されました。
妊娠後期の貧血にはどんな症状があり、どんな対処法があるのでしょうか?
辛い息苦しさ解消のためにも、貧血の正しい対処法を知っておきましょう。
妊娠後期の「貧血」はなぜ起こる?
妊娠後期は必要な血液量が増え、妊娠前に比べて血液量が約1.5倍に増加します。このとき赤血球も増えますが、それ以上に液体の部分が増えるため、血液が水っぽい状態に薄くなってしまいます。
また妊娠後期になり赤ちゃんが大きくなると、必要な栄養も多くなります。赤ちゃんへ優先的に栄養や鉄分が送られることで、母体はどうしても貧血気味になってしまいます。
血液を作るのに重要な鉄分が、日本人の食生活では常に不足気味にも関わらず、妊娠によってさらに不足してしまうのです。
妊娠後期の「貧血」の症状は?
貧血になると以下のような症状が現れることが多いです。
・めまい、立ちくらみ
・動悸、息切れ
・頭痛
・眠気
・吐き気
赤血球に含まれるヘモグロビンには体中に酸素を運ぶ役割がありますが、貧血で不足してしまうと酸素が行き届かず、動悸や息切れ、めまいなどの症状がおこります。
また脳貧血状態になると眠気や吐き気、頭痛が起こる場合もあります。妊娠中は市販薬の頭痛薬を使用できなくなるため、産婦人科で相談して処方してもらいましょう。
妊娠後期の「貧血」対策
・ヘム鉄が多く含まれる食品を摂る
ヘム鉄は体内に吸収されやすい成分なので積極的に摂るとよいでしょう。ヘム鉄が多い食品は肉や魚などの動物性たんぱく質で、レバー、卵黄、あさり、しじみなどです。
・ビタミンCで鉄分の吸収アップ
またビタミンCを一緒に摂ると、鉄分の吸収が良くなります。レモンやブロッコリー、パプリカ、かぼちゃなどを鉄分と一緒に上手く取り入れましょう。
・鉄剤の内服
貧血の状態によっては、病院で鉄剤処方がされます。医師の指示のもと服用して、貧血を改善しましょう。
鉄剤を内服するときの副作用としては、吐き気がする、便秘になる、便の色が黒くなる、などがあります。吐き気などでどうしても内服ができない場合には医師へ相談しましょう。
■妊婦さんは貧血対策の「食べ物の量」に気をつけて!
「貧血ならレバーやほうれん草を食べなきゃ!!」と思いますよね。しかし、どちらも食べる量に気をつけないといけない食材なのです。
確かにレバーはとても多くの鉄分を含んでいます。串焼き1本でも5切れくらいは刺さっていますよね。
実はレバーには妊娠中に過剰摂取を控えるべき「ビタミンA」が驚くほど多く含まれています。
ビタミンAの過剰摂取は赤ちゃんの器官形成異常の原因になりますので、特に妊娠初期には気をつけて欲しいです。
1週間に1本食べただけでは影響はほぼありませんが、適正摂取量は1日2切れ程度(20g)なので、食べすぎないように注意しましょう。
ほうれん草も鉄分を多く含んでいますが、過剰摂取をするとシュウ酸が溜まり、尿路結石の原因になります。シュウ酸は茹でることで減らせますので、生食は控え、お浸しなどにすると良いと思います。同時にカルシウムを摂取することでシュウ酸の吸収を抑えてくれます。
鉄分の吸収を妨げる飲み物(コーヒー、紅茶、緑茶など)を控えることも大事です。
まとめ
妊婦さんを見かけると、なんだかほんわかした優しい気持ちになれるんですよね。
無意識におなかに手を当ててさすっていたり、おなかを眺めている姿を見かけるだけで微笑んでしまいます。
我が子はもう小学生なので反抗期真っ只中!!「あ~あんな風に優しい顔をしていた頃に戻りたい~!!」
そんな周りからの微笑ましい眼差しとは違い、妊婦さん自身はハッピーな気持ちばかりではないですよね。
眠さ、だるさ、悪阻、浮腫み、腰痛、息苦しさ、食事にも気を使って、いつでもどこにでも行けるわけではなくなって、ちょっぴりマタニティーブルーになっちゃう時だってありますよね。
今回はその中で「息苦しさ」と、その原因に多い「貧血」について詳しくお話しました。
一度の妊娠で妊婦さんとして過ごせる時間はたったの10カ月です。
産後は育児に追われ、休む時間なんてほとんどなくなってしまいますので、体がつらい時は、ぜひゆっくり休んで、体が楽な時は体を動かしてリフレッシュしてくださいね。
チャンスは出産時の一度きり。赤ちゃんの将来の安心に備えるさい帯血保管とは
赤ちゃんがおなかにいる間にしかできない準備、それが「さい帯血保管」です。さい帯血は、へその緒を流れる血液で、再生医療に役立つ幹細胞が豊富に含まれています。この血液は長期保管が可能なため、将来、治療法が確立していない病気に役立つ可能性を秘めています。採取は出産後の数分間のみで、痛みなく安全に行えます。さい帯血バンクには「公的バンク」と「民間バンク」があり、民間バンクでは赤ちゃんや家族の未来に備えるために保管できます。国内最大の民間さい帯血バンクであるステムセル研究所では、99%のシェアを誇ります。
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医師からのメッセージ

総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生
応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療
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一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
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さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
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この記事の監修者
助産師 坂田陽子 先生
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー