妊娠後期にむくみが起きる原因とは?6つの対策や解消方法も紹介

助産師 坂田陽子 先生

記事監修者:助産師 坂田陽子 先生

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

妊娠後期に入ってから「むくみが気になる」「手足がむくんで痛い」と悩んでいませんか。

妊娠後期に入ると「プロゲステロン」と呼ばれるホルモンや血液量が増加するため、むくみが生じやすくなっています。

妊娠中のひどいむくみは痛みが伴うこともあり、つらい生活を送っている人もいるかと思います。

しかし妊娠後期のむくみには、解消する方法、対策があります。

この記事では主に、以下のような内容を解説していきます。

・妊娠後期にむくむ原因
・6つの対策
・解消方法

この記事を読むと、むくみの痛さから解放され、妊娠後期を楽に過ごせるようになりますよ。

妊娠後期にむくみが生じる3つの原因

妊娠後期にむくみが生じる原因は、おもに3つあります。

原因1.ホルモンバランス

妊娠後期にむくんでしまうのは、アルドステロンやコルチゾールという体に水分を保持させるホルモンが副腎から多く分泌されるようになるためだといわれています。

原因2.血液量の増加

妊娠後期には血管の中の血液量は増加しますが、血球の量は変わらないため、血液が薄まった状態になります。

そのため、水分が血管外に出ることでむくみが生じます。

原因3.子宮の成長

大きくなった子宮が足から心臓への血流を圧迫し、体液が貯留することで水分が足の静脈にたまり、むくみが生じやすくなります。

妊娠後期のむくみを予防・改善する6つの対策

むくみの対策を大きく分けて6つ紹介します。

・運動
・食事
・水分補給
・入浴
・着圧ストッキングの活用
・足を高い位置に置く

順番に解説していきます。

対策1:運動

運動不足はむくみを悪化させます。

むくみ対策には、軽い運動を取り入れるのが効果的です。

以下4点の運動がおすすめです。

・ウォーキング
・ストレッチ
・ヨガ
・水中歩行

ウォーキング

軽いウォーキングは足の血行を促進します。

血行が改善されることでむくみの対策になります。

1回30分〜1時間程度を目安に行ってみましょう(※1)。

ただし、これまでに運動の習慣がなかった人は、15分程度から始めて、徐々に運動量を増やすとよいでしょう(※2)。

ストレッチ・ヨガ

ストレッチも血行改善に効果的で、いつでもどこでも簡単に行えるむくみ対策です。

ヨガは血行改善に加え、ホルモンバランスの改善も期待できます。

水のめぐりを促すポーズも多数あり、むくみの対策にはおすすめです。

妊娠中にやってはいけないポーズもあるので、妊婦専用のマタニティヨガを行うようにしましょう。

水中歩行

また、プールなどでの水中歩行もおすすめです。

水圧で血行が促進されるため(※3)、むくみ改善が期待できるのはもちろん。

妊婦の水中歩行運動が、短期的ではあるものの、腎機能改善による妊娠高血圧症候群の予防につながるという研究報告(※4)もあります。

プールでの水中歩行は発汗に気付きにくいため、こまめに水分補給も行ってくださいね。

出典:

(※1,2)こども家庭庁 出生前検査認証制度等啓発事業「妊婦のからだの変化」

(※3,4)財津將嘉、吉原達也、久保田史郎「妊娠中のプール歩行による腎機能改善:短期効果」日本健康開発雑誌 第41号 2020年

対策2:食事

食事面では塩分の過剰な摂取を控えるよう気をつけましょう。

塩分を多く取ると、血中成分のバランスが乱れむくみにつながります。

むくみの防止には原因となる塩分を体の外に出す働きのある「カリウム」を積極的に摂取すると有効的です。

厚生労働省によると、妊婦のカリウム摂取量の目安は「2,000mg/日」、目標摂取量は「2,600mg/日以上」といわれています(※5)。

ただし腎臓疾患がある人は、カリウムの代謝に影響が出る可能性があるため、医療機関の指導のもとでカリウム摂取を調整するようにしましょう。

以下にカリウムを多く含む食材をまとめました。

種類
食材
穀類・穀製品
玄米・大麦(押し麦など)・オートミール(えんばく)・ライ麦・雑穀など
芋類・芋製品
さつま芋・里芋・山芋・じゃがいもなど
豆類・豆製品
あずき・いんげん豆・大豆製品(納豆など)など
種実類・
種実製品
アーモンド・栗・くるみ・ごま・ピスタチオ・落花生・マカダミアナッツなど
野菜類
豆苗・えだまめ・かぼちゃ・カリフラワー・かんぴょう・ごぼう・小松菜・ししとう・春菊・そらまめ・筍・菜の花・にら・人参・ブロッコリー・ほうれん草・モロヘイヤなど
果物類
アボカド・キウイフルーツ・バナナ・レーズン・メロンなど
きのこ類
えのき茸・きくらげ・しめじ・なめこ・マッシュルームなど
海藻類
てんぐさ(寒天・ところてんなど)・昆布・ひじき・わかめ・めかぶなど
魚介類
あじ・いわし・しらす・かつお・鮭・さば・さわら・たい・ブリ・ホタテ貝・えび・いかなど
肉類
牛もも肉・牛ヒレ・牛ランプ・豚もも肉・豚ロース肉・豚ヒレ肉など

(※5)出典:厚生労働省「対象特性」

対策3:水分補給

むくみを気にして、水分補給の制限をするのではなく、積極的に水分補給を行うようにしましょう。

ただし、水分のとり過ぎは逆にむくみの原因となるため、飲みすぎには気をつけましょう。

こまめに少しずつ飲むようにすると、体への負担が少ないです。

糖分が多く含まれる清涼飲料水を飲むのはできるだけ避け、お腹や体を冷やさないためにも白湯や、常温のお茶などを摂取しましょう。

対策4:入浴

入浴には全身を温めて血行を改善する効果があるため、むくみの対策につながります。

38〜40℃くらいのぬるめのお湯に10分程度浸かるのがおすすめです(※6)。

妊娠中は全身の血流量が増えてのぼせやすいため、長湯は控えましょう。

家族がいる時間に入浴すると安心です。

(※6)出典:福島県伊達市公式ホームページ「水道水を有効活用!お風呂のすすめ」

対策5:着圧ストッキングの活用

妊娠中専用の着圧ストッキングやサポートタイツの活用は、足首や太ももなど下肢のむくみ対策に効果的です。

着圧ストッキングは、足全体を包み込んで血液やリンパ液の循環を促進します。

とくに長時間立っていたり座っていたりなど、同じ姿勢を続ける必要のある妊婦さんに効果的です。

ただし正しいサイズ選びが重要で、きつ過ぎたり緩すぎたりすると、効果は見込めません。

医療用ストッキングを使用する場合は医療機関で相談のうえ、適切なものを選びましょう。

対策6:足を高い位置に置く

足を心臓よりも高い位置に上げると、むくみ解消に効果的です。

具体的には、足の下に枕やクッションなどを置いて「10〜15cm」程度高くするとよいでしょう(※7)。

仕事をしている人は、デスクワーク中に足置きを使用したり、休憩時間に短時間でも足を上げて休むと効果的です。

ただし、長時間同じ姿勢を続けることは避け、適度に体を動かすことも忘れないようにしましょう。

(※7)出典:東北大学院医学系研究科 周産期医学分野╱婦人科学分野|古澤 義人,坪田 毅ほか「カトレアの森だより」Vol.27 2013年 初夏号

【部位別】むくみ解消に効果的なマッサージ

むくんでいる場所によってマッサージの方法は変わります。

むくみの解消に効果的なマッサージを部位別に紹介します。

部位1:足

足のマッサージをする場合は、以下の手順で進めていきます。

1.左右の手でグーをつくり、リンパの流れに沿って足の付け根をさする
2.足首から膝の裏へ向かってさすり上げる
3.下から上へ行い、心臓に向かって血液を流す

マッサージする際は、痛すぎない程度に行いましょう。

あぐらをかいて行うと、お腹に負担がかかりません。

なお、足の裏や足の指は、子宮にかかわるツボが集まる場所なので、自分で強く押すのは避けましょう。

部位2:手

手をマッサージする手順は、以下のとおり。

1.リンパの流れに沿うように、ひじから胸に向かってわきの下をさする
2.手の先からをわきの下まで一気にさする

手の先の血流をよくして心臓に戻すことで、手指のむくみが改善されます。

ただのむくみではない?妊娠高血圧症候群に注意

妊娠時に高血圧を発症した場合、妊娠高血圧症候群といいます。

高血圧または高血圧と尿蛋白を認める場合、妊娠高血圧症候群と診断されます。

妊娠高血圧症候群の症状のなかには、むくみも含まれていますが、むくみだけの症状であれば妊娠高血圧症候群とは診断されません。

妊娠後期特有のむくみであれば、健康上の問題はありませんが、むくみの症状が気になる場合、妊婦健診で血圧や尿蛋白に異常がないことを確認しておくと安心です。

妊娠後期のむくみに関するQ&A

妊娠後期のむくみについて、よくある3つの質問をまとめました。

順番に見ていきましょう。

Q1:どんな姿勢で寝るとよいですか?

むくみ解消には「左側を下にして寝る」と効果的です。

なぜなら、体の右側には「大静脈」と呼ばれる血管が心臓に向かって通っているため、圧迫されると血行が悪くなり、むくみの原因になるからです。

Q2:むくみで入院することがあると聞いたのですが本当ですか?

正確にいうと、むくみなどの症状があらわれやすい妊娠高血圧症候群などで、入院することがあります。

むくみによって入院するのではなく、妊娠高血圧症候群が原因で入院するケースが多いです。

Q3: むくみと体重増加は関係ありますか?

むくみは体内の水分貯留によるものであるため、体重増加と関連があります。

ただし、急激な体重増加は要注意です。

適正体重と管理について、くわしく知りたい人は下記を参考にしてみてください。

まとめ

妊娠後期はホルモンの分泌や血液量の増加などで、むくみやすい状態です。

むくみ対策として、母体や胎児の負担にならない程度の運動を行い、バランスのよい食事を心掛けましょう。

むくみの解消には、マッサージが効果的です。

今回紹介したものを取り入れて、むくみのつらい症状を解消・予防しましょう。

きっと妊娠後期を楽に過ごせるようになりますよ。

ひどいむくみが継続する場合は、妊娠高血圧症候群などの病気が隠れている可能性もあります。

気になることがあれば、すぐに医師へ相談しましょう。

チャンスは出産時の一度きり。赤ちゃんの将来の安心に備えるさい帯血保管とは

赤ちゃんがおなかにいる間にしかできない準備、それが「さい帯血保管」です。さい帯血は、へその緒を流れる血液で、再生医療に役立つ幹細胞が豊富に含まれています。この血液は長期保管が可能なため、将来、治療法が確立していない病気に役立つ可能性を秘めています。採取は出産後の数分間のみで、痛みなく安全に行えます。さい帯血バンクには「公的バンク」と「民間バンク」があり、民間バンクでは赤ちゃんや家族の未来に備えるために保管できます。国内最大の民間さい帯血バンクであるステムセル研究所では、99%のシェアを誇ります。

ステムセル研究所が選ばれる理由

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  • 厚生労働省(関東信越厚生局)より特定細胞加工物製造許可を取得
  • 2021年6月東京証券取引所に株式を上場

医師からのメッセージ


総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生

応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療

近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。

さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

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この記事の監修者

助産師 坂田陽子 先生

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー