安定期はいつから始まる?現れやすい5つの症状や注意点も解説

記事監修者:伊沢博美 先生
医学博士/日本再生医療学会再生医療認定医/日本抗加齢医学会専門医/遺伝子細胞治療認定医

妊婦さんの多くが
「安定期はいつからなのだろうか」
「安定期に入って、早く安心したい」
「つわりの辛さから解放されたい」
と考えているのではないでしょうか。
安定期とは、一般的に妊娠初期から続いているつわりの症状がやわらぎ、胎盤が完成することで流産のリスクが低くなる時期をさします。
正式な医学用語ではないので、「いつから」「いつまで」と明確に決まっているわけではありませんが、妊娠12~16週頃から27週目頃まで(おおよそ妊娠中期)が目安といわれています。
しかし、安定期でも注意しなければいけないことはあるのです。
そこで、この記事では、おもに以下の内容を解説していきます。
・安定期は12〜16週頃に始まる
・安定期は妊娠27週頃まで続く
・安定期にみられる5つの症状
・安定期でも流産に注意
この記事を読むと、安定期に入る目安がわかり、安心して妊娠生活を送れるようになりますよ。
安定期はいつから?12〜16週頃に始まる
冒頭で説明したように、個人差があるため明確にはいえませんが、安定期は12〜16週頃に始まるといわれています。
一般財団法人女性労働協会(厚生労働省委託事業)が発行している資料によると、妊娠12~15週頃には胎盤が完成し、流産の心配がほとんどなくなるとされています。(※1)
また株式会社エムティーアイが運営する情報メディア「 ルナルナ」の調査によると、妊娠12~19週の間に「つわりがおさまった」と答えた人の割合が多くなりました。(※2)
つわりがおさまった時期 | 割合 |
妊娠16~19週 | 33.2% |
妊娠12~15週 | 28.6% |
妊娠20~23週 | 13.4% |
妊娠8~11週 | 8.2% |
出産まで続いた | 6.3% |
胎盤の完成時期や、つわりに関する妊婦さんの生の声からも、安定期は「妊娠12〜16週頃」から始まる場合が多いといえるでしょう。
ただし、アンケート結果からもわかるように、安定期に入ってもつわりが続くケースもある点は覚えておきましょう。
(※1)出典:一般財団法人女性労働協会(厚生労働省委託事業)「職場における母性健康管理パンフレット働きながら安心して妊娠・出産を迎えるために」令和元年11月
(※2)出典:PR TIMES|株式会社エムティーアイ「「“つわり”について」の調査結果〜妊娠と共にやってくる“つわり”という試練を乗り越えよう!~」
安定期は妊娠27週頃まで続く
安定期にも終わりはあります。
安定期は妊婦27週頃=妊娠中期の終わり頃まで続き、以降は妊娠後期に入っていくのです(※3)。
また妊娠後期には「後期つわり」と呼ばれる症状が現れ、妊娠初期と同様の「吐き気」「嘔吐」などの症状が現れるケースも。
「後期つわり」について、くわしく知りたい人は下記の記事を参考にしてみてくださいね。
(※2)出典:石巻市ホームページ「妊婦歯科健康診査事業」
安定期にみられる5つの症状
安定期は流産リスクが低くなり、心身が安定する時期とはいえ、胎児の成長とともに体の負担が増える時期でもあります。
安定期にみられる具体的な症状は、以下の5つです。
・お腹の膨らみがわかりやすくなる
・体重が急増する
・腰痛が起きやすくなる
・便秘しやすくなる
・胎動を感じやすくなる
順番に見ていきましょう。
症状1:お腹の膨らみがわかりやすくなる
安定期以降期は胎児の成長が著しく、母体のお腹の膨らみがわかりやすくなります。
岐阜県御嵩町の公式ホームページが発行している資料によると、妊娠初期の間、胎児の体重は「約120g」しか増えませんが、妊娠中期では「約1,000g」まで増加するといわれているのです(※3)。
カボチャくらいの大きさと比喩されることも。
お腹が膨らみ出すと困るのが「服装」です。
妊娠初期までに着ていたサイズの服があわなくなります。
「着る服がない…」と焦らないためにも、いまのうちからマタニティウェアを準備しておきましょう。
「具体的にどんな服装がよいのか知りたい」という人は、下記の記事を参考にしてみてくださいね。
(※3)出典:岐阜県御嵩町 公式ホームページ「◎妊娠~出産までの流れ」
症状2:体重が急増する
安定期は胎児の成長はもちろん「羊水や血液量の増加」「胎盤の成長」など、複数の要因で体重が急増します。
安定期(妊娠16週~27週頃)における適性な体重の増加量は妊娠前のBMIによって異なり、国立研究開発法人国立成育医療研究センターの発行資料によると、以下のとおりです。
妊娠前のBMI(kg/m2) | 安定期における体重増加量の目安 |
18.5未満 | 約5kg |
18.5以上25未満 | 約4.5kg |
25以上30未満 | 約4kg |
30以上 | 個別対応 |
出典:国立研究開発法人国立成育医療研究センター「妊娠中の体重増加曲線」より妊娠16週~27週のデータを抜粋して作成
妊娠前の体格が痩せ気味だった人の場合は、適正な体重増加量は大きくなり、太り気味だった人は小さくなるイメージです。
なお、BMIは以下の計算式で算出できます。
[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]
「計算方法がよくわからない」「計算が面倒」だという人は、下記の厚生労働省が提供している自動計算ツールを利用しましょう。
「身長(cm)」「体重(kg)」の2点を入力するだけで、即座にBMIがわかります。
また妊娠中の体重管理について知識をつけたい人は、下記を参考にしてみてくださいね。
症状3:腰痛が起きやすくなる
上記のように、安定期は体重が急増するため、腰痛が起きやすい状況になります。
お腹がせり出して、重心が前方に傾くことで姿勢が変化することも、腰痛が起こりやすくなる原因です。
また、社会医療法人中山会宇都宮記念病院が発表した研究論文によると、リラキシンを代表とするホルモンの分泌が腰痛に影響を与えているともいわれています(※4)。
安定期の腰痛には、マッサージや骨盤ベルトの着用が効果的です。
骨盤ベルトの着用法や効果などについて、くわしく知りたい人は下記を参考にしましょう。
(※4)出典:J-STAGE|社会医療法人中山会宇都宮記念病院リハビリテーション科 竹沢 友康「妊娠と腰痛─妊婦の腰痛発生メカニズムの検討─」2015 年 5 巻 1 号 p. 1-4
症状4:便秘しやすくなる
安定期は、
・プロゲステロンの分泌量が増えること
・子宮の成長によって腸が圧迫されること
が原因で、便秘を発症しやすくなる時期でもあります。
安定期の便秘解消には、以下の行動が適しています。
・散歩やストレッチなどの軽度な運動
・こまめな水分補給
・食生活の見直し
さらに便秘解消法をくわしく知りたい人は、下記を参考にしてみてくださいね。
症状5:胎動を感じやすくなる
胎動とは、胎児が母体のお腹で動くことをさし、妊婦さんの「80〜90%」が自覚する症状といわれています(※5)。
胎動の感覚には個人差がありますが、以下のような感覚です。
・コロコロとなにかが転がっているような感覚
・指でつつかれたような感覚
・筋肉の収縮に似た感覚
また胎動は妊娠週数によって感じ方が異なります。
違いを知りたい人は、下記も覗いてみてくださいね。
(※5)出典:北海道大学学術成果コレクション|北海道大学 石川丹,南出江津子「胎動と新生児の活動能力」北海道大學教育學部紀要 1984 45号 p51-66
安定期でも流産に注意
安定期に入ったからといって流産のリスクが完全になくなったわけではありません。
全妊娠の約15%が流産になりますが、そのうち「妊娠12〜22週未満」に起こる後期流産の確率は「約1.6%」といわれているからです(※6)。
安定期に入っても、これまでと同様に
・喫煙
・アルコールの摂取
・カフェインの過剰摂取
などは控えるようにしましょう。
公益社団法人 日本産婦人科医会が公表している情報では、とくに「喫煙」は、後期流産と関連が高いという報告もあります(※7)。
出典:
(※6)厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)「反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)の相談対応マニュアル」平成24年3月発行
安定期のQ&A
安定期について、よくある3つの質問をまとめました。
順番に見ていきましょう。
Q1:飛行機に乗っても大丈夫?
一般的に危険はないといわれています。
藤田医科大学 中部国際空港診療所の回答では、妊婦ならびに胎児への影響を考慮すると、飛行機利用のもっとも適している妊娠時期は「妊娠12〜28週頃まで」とされているからです(※8)。
ただし、自己判断で飛行機の利用はせず、医療機関で確認をとってからの搭乗が無難です。
(※8)出典:藤田医科大学 中部国際空港診療所「健康アドバイス」
Q2:安定期に入るとつわりがおさまるのはなぜ?
安定期に入るとつわりがおさまる理由として、おもに以下の2つが考えられます。
理由 | 詳細 |
胎盤の完成 | 胎盤の完成によって、
・ヒト絨毛性ゴナドトロピン のホルモン分泌量やバランスが安定する |
母体の適応 | ・代謝や消化機能が妊娠にあわせて調整され、免疫系が安定 ・精神的な不安がやわらぐ |
Q3:運動しても大丈夫?
負荷の低い運動であれば問題ありません。
たとえば、以下のような運動です。
・マタニティヨガ
・ウォーキング
・ストレッチ
近所の公園を散歩するだけでも気分転換になります。
運動をするときは、パートナーや家族と一緒だと安心して行動できます。
自身の体調にあわせて、適度に運動を取り入れてみましょう。
まとめ
安定期は「妊娠12〜16週」頃から始まるケースが多く、一般的に流産のリスクが低くなり、つわりの症状もやわらぐことが多いでしょう。
ただし安定期に入り妊娠が進むと、以下のような症状が現れます。
・お腹の膨らみがわかりやすくなる
・体重が急増する
・腰痛が起きやすくなる
・便秘しやすくなる
・胎動を感じやすくなる
また安定期でも、流産の可能性が完全にはなくならないため、
・喫煙
・アルコールの摂取
・カフェインの過剰摂取
といった行動は、引き続きとらないようにしましょう。
安定期は比較的落ち着いた時期ではありますが、胎児の成長に伴う体の変化や症状に注意が必要です。
安定期でも個人によって現れる症状が異なるケースがあるため、気になる症状がある場合は医療機関に相談しましょう。
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高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま
さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています
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さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。
その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。
医師からのメッセージ

総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生
応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療
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一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。
さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
保管するなら、ステムセル研究所の「HOPECELL(ホープセル)」
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ステムセル研究所は、25年以上の保管・運営実績がある日本初のさい帯血バンクで、国内最多となる累計80,000名以上のさい帯血を保管しています。

研究所

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国内では脳性まひに対する、赤ちゃんご自身やごきょうだいのさい帯血投与の研究が行われています。海外の臨床研究では、投与により運動機能および脳神経回路の改善が報告されています。また自閉症スペクトラム障害(ASD)に対して、さい帯血の投与によりコミュニケーション能力や社会への順応性が向上する可能性が期待されており、大阪公立大学にてお子さまご自身のさい帯血を投与する臨床研究が開始されます。

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この記事の監修者
伊沢博美 先生
経歴
神宮外苑Woman Life Clinic 院長
獨協医科大学医学部卒業、医学博士。
日本再生医療学会再生医療認定医、日本抗加齢医学会専門医。順天堂医院、婦人科・内科健診施設、再生医療等提供機関に勤務。
2020年に『神宮外苑Woman Life Clinic』を開設。女性内科・不妊・更年期障害など女性特有の健康課題に対し、一人ひとりに合わせた医療ソリューションを提供。
資格
医学博士/日本再生医療学会再生医療認定医/日本抗加齢医学会専門医/遺伝子細胞治療認定医