出生前診断は受けるべき?後悔しないための判断ポイントも解説
記事監修者:助産師 坂田陽子 先生
助産師/看護師/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

「出生前診断って受けたほうがいいのかな?」
「検査を受けて後悔しないか不安…」
「どうやって判断すればいいの?」
上記のように悩んでいるのではないでしょうか。
検査を受けたい気持ちがある一方、結果次第でむずかしい決断を迫られる可能性があるため、慎重になりますよね。
出生前診断は受けるべきという正解はなく、家族それぞれの価値観が尊重されるものです。
後悔のない選択をするためにも、出生前診断を受けるかの判断ポイントをおさえることが大切です。
そこでこの記事では、おもに以下の内容を解説していきます。
・出生前診断は受けるべきか
・出生前診断で後悔しない判断をするための4つのポイント
この記事を読むと、家族にとって最良の選択ができるようになりますよ。
出生前診断は受けるべきか?

出生前診断を受けるかどうかは、妊婦さんとパートナーが自分たちの価値観に基づいて決める個人的な選択です。
「受けるべき」という正解はなく、それぞれの家庭の考え方が尊重されるべきものです。
参考に厚生労働省が公表している資料によると、2020年に出生前診断のひとつである「NIPT」を受ける人の割合は、以下のとおりでした(※1)。
| 年齢 | NIPTを受けた人の割合 | どの出生前検査も受けなかった人の割合 |
| 35歳未満 | 2.4% | 82.9% |
| 35~39歳 | 10.2% | 65.3% |
| 40歳以上 | 22.7% | 40.9% |
検査を受けることで胎児の状態を事前に知り、心の準備や医療体制を整えられる一方、結果によってはむずかしい決断を迫られる可能性も。
また検査を受けずに出産を迎えたい、と考える人も多くいます。
大切なのは、
・検査の種類
・検査の目的
・検査でわかること
を理解したうえで、パートナーや家族と話し合い、納得して決めることです。
迷ったときは、産婦人科医や遺伝カウンセラーに相談することで、より納得のいく決断ができるでしょう。
「そもそも出生前検査ってなに?」「検査にどんな種類があるのか知りたい」という人は、下記を参考にしてみてくださいね。
(※1)出典:厚生労働省「女性から見た出生前検査」令和2年11月20日
出生前診断で後悔しない判断をするための4つのポイント

出生前診断を受けるのか迷ってしまうこともあるでしょう。
ここからは、出生前診断で後悔しない判断をするための4つのポイントを紹介します。
・遺伝カウンセリングを受ける
・検査でわかることとわからないことを理解する
・認証された医療機関を選ぶ
・検査後の対応を事前に考えておく
順番に見ていきましょう。
ポイント1:遺伝カウンセリングを受ける
出生前診断を受ける際には、検査の前後に遺伝カウンセリングを受けるとよいでしょう。
遺伝カウンセリングとは、検査の医学的な内容だけでなく、心理的な影響や家族への影響も含めて理解でき、自律的な選択ができるよう支援するものです。
遺伝カウンセリングを受けると、検査の意義や限界、検査でわかる疾患の理解を深めたうえで、家族にとって最良と思われる選択を一緒に考えられます。
またカウンセリングを受けたからといって、かならず検査を受ける必要はありません。
ポイント2:検査でわかることとわからないことを理解する
出生前診断にはさまざまな種類があり、それぞれの検査でわかることは限られています。
たとえば「NIPT」は13番、18番、21番染色体のトリソミーという特定の染色体異常を調べる検査であり、すべての先天性疾患を見つけられるわけではありません(※2)。
検査の感度(実際に病気がある場合に正しく陽性と判定できる確率)は90%強と高い一方で、偽陽性(実際には異常がないのに陽性と出る)の可能性も(※3)。
またNIPTは確定診断ではないため、陽性の結果が出た場合には、羊水検査などの確定的検査を受ける必要があることも理解しておきましょう。
(※2)出典:佐賀大学医学部附属病院「NIPT(新型出生前診断、非侵襲性出生前遺伝学的検査)」
(※3)出典:こども家庭庁|周産期委員会報告 「第3回NIPT等の出生前検査に関する専門委員会」令和5年12月14日
ポイント3:認証された医療機関を選ぶ
出生前診断であるNIPTを受ける際には、日本医学会の出生前検査認証制度等運営委員会が認証した医療機関を選ぶとよいでしょう。
認証施設には、
・産婦人科専門医
・小児科専門医
・臨床遺伝専門医
などの専門家が在籍しています。
これらの施設では、出生前検査に関する正しい情報が得られ、妊婦さんの不安や悩みに寄り添った支援体制が整えられているのです。
非認証施設では、十分な説明やカウンセリングが行われない場合があるため、認証施設を選択するとよいでしょう。
以下からは、出生前検査認証制度等運営委員会が認証している医療機関を検索できるため、参考にしてください。
こども家庭庁 出生前検査認証制度等啓発事業|妊娠中の検査に関する情報サイト「NIPTを実施する認証施設」
ポイント4:検査後の対応を事前に考えておく
検査結果が出たあとの決断について、事前に考えておくことが大切です。
陽性の結果が出た場合には、確定的検査を受けるかどうか、また妊娠を継続するかどうかなどの決断を迫られることになります。
これらの判断は妊婦とそのパートナーの自由意思が尊重されるべきものであり、医師から特定の選択を勧められたり強制されたりするものではありません。
検査を受ける前の段階で、さまざまな可能性について夫婦で話し合っておくことで、診断結果を受け取った際に冷静に対応できるようになります。
出生前診断に関するQ&A
ここでは出生前診断について、よくある3つの質問をまとめました。
順番に見ていきましょう。
検査を受けるかどうかは、年齢や家族の考え方、妊娠の経過などによって異なります。
たとえば、過去の検査や超音波で指摘があった場合、または遺伝的な病気の家族歴がある場合には、医師から出生前診断について情報提供されることがあります。
医学的な理由がある際は、検査を選択肢として提示される場合もあります。
一方で、「赤ちゃんの状態を詳しく知りたいかどうか」という気持ちの面も大切です。
夫婦で話し合い、納得できる選択をすることが一番です。
ただし、「必ず受けたほうがいい」というわけではありません。
検査にはメリットもありますが、結果の受け止め方によっては心の負担になることもあります。
自分や家族がどう感じるかを大切にし、医師やカウンセラーと相談しながら決めるのがよいでしょう。
若い方でも、過去の検査で異常を指摘されたり、赤ちゃんの状態をより詳しく知りたいと考えたりする場合があります。
ただし、20代では染色体異常の確率は比較的低く、受けるかどうかは「望むかどうか」によって決めて良い検査で、すべての方が受ける必要はありません。
検査結果をどう受け止めたいかを考えたうえで選択することが大切です。
まとめ
出生前診断を受けるかは個人の価値観によるため「受けるべき」という正解はありません。
参考として出生前診断のひとつである「NIPT」の受検率は、年齢とともに上昇していますが、いずれの年齢層でも検査を受けない選択をする人が多数を占めています。
| 年齢 | NIPTを受けた人の割合 | 検査を受けなかった人の割合 |
| 35歳未満 | 2.4% | 82.9% |
| 35~39歳 | 10.2% | 65.3% |
| 40歳以上 | 22.7% | 40.9% |
出典:厚生労働省「女性から見た出生前検査」令和2年11月20日
後悔しない判断をするためには、以下のポイントをおさえることが大切です。
・遺伝カウンセリングを受けて、検査の意義や限界を理解する
・検査でわかることとわからないことを把握する
・認証された医療機関を選ぶ
・検査後の対応を事前に家族で話し合っておく
これらのポイントをおさえると、家族で納得できる決断をできるでしょう。
▼生まれてくる赤ちゃんの「もしも」のために、再生医療で備える方法とは
赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?
赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。
幹細胞は新しい医療への活用が進められており、もしもの時に役立てられる可能性があります。
- 出産後わずか数分の間にしか採取できない貴重な赤ちゃんのものです。
- 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
- どちらにも幹細胞がたくさん含まれています。
- 再生医療分野など、さまざまな活用が進んでいます。
- それぞれ異なる幹細胞が含まれているため、両方を保管しておくことで将来の利用の選択肢が広がります。
実際に保管・利用した方のお声
出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。
高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま
さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています
元気に産まれたと思っていましたが、生後半年頃から左手をほとんど使おうとしないことに気付き、1歳頃にやはり何かおかしいと思ってMRIを撮ってもらうことにしました。結果1歳5ヶ月で脳性まひとわかりました。
2歳の誕生日にステムセルからハガキが届き、出産時に保管したさい帯血がもしや役に立つのではと思い至りステムセルに問い合わせました。ちょうど臨床試験への参加者を募集していて、運よく2歳5ヶ月のときに参加することができました。
輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。
さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。
その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。
医師からのメッセージ
総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生
応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療
近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。
さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
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研究所
研究所
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研究所
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この記事の監修者
助産師 坂田陽子 先生
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー
