無痛分娩は初産だとできない?その事実や理由を解説
記事監修者:助産師 坂田陽子 先生
助産師/看護師/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

「初産だと無痛分娩はできないって聞いたことがあるけど本当?」
「初めての出産で無痛分娩を選んでも大丈夫?」
「初産婦が無痛分娩を受けられる条件を知りたい」
上記のように悩んでいるのではないでしょうか。
初めての出産で不安があるなか、無痛分娩を選択できるかどうかは大切な判断ポイントですよね。
初産婦でも無痛分娩は可能ですが、施設によって対応が異なるなど注意すべき点があります。
そこでこの記事では、おもに以下の内容を解説していきます。
・無痛分娩は初産でも可能である
・初産婦だと無痛分娩できない施設
・初産で無痛分娩ができないケース
この記事を読むと、初産婦として無痛分娩を選択する際の正しい知識が身につきますよ。
無痛分娩は初産でも可能

結論として、初産であっても無痛分娩はできます。
無痛分娩を希望している妊婦さんで、初産の人の選択率は高い傾向にあるのです。
実際、2021年に関西医科大学で行われた無痛分娩158件のうち、初産婦は「114件(約72%)」でした(※1)。
さらに、初産婦が無痛分娩を選ぶ割合は年々増加傾向にあります(※1)。
ただし無痛分娩の実施率は「約13~14%」とそこまで高くないため、一般的とはいえない状況です(※2)。
(※2)厚生労働省「令和5(2023)年 医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」令和6年11月22日
初産婦だと無痛分娩できない施設

初産であっても無痛分娩が可能である、という事実がある一方で、初産婦に対しては意図的に実施していない施設もあります。
実際に東京都が行った実態調査によると、無痛分娩を行っている85施設のうち、初産婦を対象としている施設は「70施設(82.4%)」にとどまり、15施設(17.6%)は初産婦を受け入れていません(※3)。
これは経産婦と比べて初産婦の分娩時間が長く、無痛分娩の管理がより複雑になる傾向があるためです。
たとえば群馬大学医学部附属病院では、初産婦は医学的適応のある人や母体合併症のため他院での対応がむずかしい人に限定している一方、経産婦は希望があれば医学的適応を問わず受け入れています(※4)。
また、無痛分娩を経産婦のみに対応している医療機関や、初産婦の場合は妊娠40週以降か子宮口が開大している場合に限るなど、実施時期に条件を設けている施設も。(※5,6,7)
これらの内容を踏まえて、無痛分娩を希望する場合は、初産婦に対応しているか、どのような条件があるかを確認しておくことが大切です。
(※3)出典:東京都「無痛分娩に関する医療機関実態調査結果」令和6年 実施
(※4)出典:群馬大学医学部附属病院「無痛分娩について」
(※5)出典:社会医療法人 母恋 天使病院「無痛分娩」
(※6)出典:社会福祉法人賛育会 賛育会病院「賛育会病院での無痛分娩について」
(※7)出典:たかせ産婦人科「無痛分娩」
初産で無痛分娩ができないケース

初産婦、経産婦にかかわらず無痛分娩ができないケースとして、以下の6つがあげられます。
| ケース | できない理由 |
| 血液凝固障害がある | 硬膜外血腫ができて神経麻痺を起こす危険性がある |
| 抗凝固薬・抗血小板薬を使用中 | 出血のリスクが高まり硬膜外血腫の危険性がある |
| 穿刺部位の感染・敗血症がある | 細菌が体内に入り硬膜外膿瘍や髄膜炎を引き起こす危険性がある |
| 脊椎の変形・脊髄疾患がある | カテーテルを正確に挿入できず、神経を傷つけるリスクがある |
| 高度肥満 | 硬膜外腔へのカテーテル挿入が困難になる |
| 一部の心疾患がある | 麻酔薬による血圧低下で心臓に大きな負担がかかる |
| 局所麻酔薬アレルギーがある | アナフィラキシーショックなど命にかかわるアレルギー反応を起こす危険性がある |
| 大量出血・脱水がある | 麻酔薬による血圧低下でさらに危険な状態になる |
| 本人の同意が得られない | 医療行為には本人の希望と同意が必須 |
上記に該当する場合、母体と胎児双方の安全を守るため無痛分娩は実施できません。
また上記であげたケース以外でも、医療機関によっては無痛分娩ができない場合があります。
そのため、無痛分娩を希望する場合は早めに医療機関で相談し、事前の血液検査や健康状態の確認を受けましょう。
上記に該当する場合でも、代替方法を検討できる可能性があります。
初産の無痛分娩に関するQ&A
ここでは初産の無痛分娩について、よくある3つの質問をまとめました。
順番に見ていきましょう。
呼吸法やリラックス法(ラマーズ法など):呼吸に集中することで痛みをやわらげ、気持ちを落ち着かせます。
温罨法(おんあんぽう):腰やお腹を温めることで筋肉の緊張をやわらげます。
アロマや音楽を使ったリラックス法:香りや音でリラックスすることで、痛みの感じ方が軽くなることもあります。
水中出産:温かい水の中で出産することで体の緊張をほぐし、痛みをやわらげる効果があります。ただし、水中出産ができる施設は限られています。
どの方法が合うかは人によって違うため、出産前に病院で相談してみましょう。
安全性は母体の年齢や出産の進み方、医療体制によって決まります。
ただし、初産は分娩に時間がかかる傾向があり、麻酔の効き方やタイミングの調整が難しいことがあります。
そのため、経験豊富な医師や麻酔科医がいる病院で行うことが大切です。
リスクを理解した上で適切な管理がされていれば、安全に受けることができます。
そのため「効きが弱い」と感じる人もいますが、実際には麻酔の調整次第でしっかりと痛みを和らげることができます。
医師や助産師と相談しながら、痛みの程度を伝えることで、より快適にお産を進めることができます。
まとめ
初産であっても無痛分娩は可能で、実際に無痛分娩実施者の約72%が初産婦という医療機関もあります。
しかし、すべての施設で初産婦に対応しているわけではなく、東京都では約18%の施設は初産婦の無痛分娩を受け入れていません。
これは初産婦の分娩時間が長く、管理がより複雑になるためです。
無痛分娩ができないケースとして、
・血液凝固障害
・抗凝固薬使用中
・穿刺部位の感染
・脊椎の変形
・高度肥満
・一部の心疾患
・局所麻酔薬アレルギー
・大量出血や脱水
・本人の同意が得られない場合
などがあげられます。
無痛分娩を希望する場合は、早めに医療機関で初産婦対応の可否や実施条件を確認し、事前の血液検査や健康状態のチェックを受けましょう。
▼無痛分娩の準備や流れについて詳しい記事はこちら
赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?
赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。
幹細胞は新しい医療への活用が進められており、もしもの時に役立てられる可能性があります。
- 出産後わずか数分の間にしか採取できない貴重な赤ちゃんのものです。
- 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
- どちらにも幹細胞がたくさん含まれています。
- 再生医療分野など、さまざまな活用が進んでいます。
- それぞれ異なる幹細胞が含まれているため、両方を保管しておくことで将来の利用の選択肢が広がります。
実際に保管・利用した方のお声
出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。
高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま
さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています
元気に産まれたと思っていましたが、生後半年頃から左手をほとんど使おうとしないことに気付き、1歳頃にやはり何かおかしいと思ってMRIを撮ってもらうことにしました。結果1歳5ヶ月で脳性まひとわかりました。
2歳の誕生日にステムセルからハガキが届き、出産時に保管したさい帯血がもしや役に立つのではと思い至りステムセルに問い合わせました。ちょうど臨床試験への参加者を募集していて、運よく2歳5ヶ月のときに参加することができました。
輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。
さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。
その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。
医師からのメッセージ
総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生
応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療
近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。
さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
保管するなら、ステムセル研究所の「HOPECELL(ホープセル)」
株式会社ステムセル研究所が提供する「さい帯・さい帯血ファミリーバンクHOPECELL(ホープセル)」は、日本国内で最も選ばれている保管サービスです。
ステムセル研究所は、25年以上の保管・運営実績がある日本初のさい帯血バンクで、国内最多となる累計80,000名以上のさい帯血を保管しています。

研究所
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国内では脳性まひに対する、赤ちゃんご自身やごきょうだいのさい帯血投与の研究が行われています。海外の臨床研究では、投与により運動機能および脳神経回路の改善が報告されています。また自閉症スペクトラム障害(ASD)に対して、さい帯血の投与によりコミュニケーション能力や社会への順応性が向上する可能性が期待されており、大阪公立大学にてお子さまご自身のさい帯血を投与する臨床研究が開始されます。
研究所
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赤ちゃんの将来に備える「さい帯・さい帯血保管」をぜひ妊娠中にご検討ください。
この記事の監修者
助産師 坂田陽子 先生
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー
