妊娠後期における下腹部痛の5つの原因とは?危険な症状や対処法も解説

記事監修者:助産師 坂田陽子 先生
助産師/看護師/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

「妊娠後期に入って下腹部が痛む…」
「この痛みは危険な症状なのかな?」
「どう対処すればいいの?」
上記のように悩んでいるのではないでしょうか。
妊娠後期の下腹部痛は多くの妊婦さんが経験する症状ですが、生理的なものから緊急性の高いものまで、さまざまな原因があるため、適切な判断と対処が重要です。
なかには母子ともに生命に関わる危険な状態もあり、早期発見と迅速な対応が求められる場合も。
そこでこの記事では、以下の内容を解説していきます。
・妊娠後期における下腹部痛の5つの原因
・妊娠後期における下腹部痛への3つの対処法
この記事を読むと、適切な対処法を身につけられ、母子ともに安全に出産を迎えられるようになりますよ。
妊娠後期における下腹部痛の5つの原因
妊娠後期における下腹部痛の原因として、おもに以下の5つがあげられます。
・前駆陣痛
・便秘・ガスが溜まる
・切迫早産
・常位胎盤早期剥離
・子宮筋腫の変性・壊死
順番に見ていきましょう。
原因1:前駆陣痛
前駆陣痛は出産予定日が近づくと起こる腹痛で、本格的な陣痛の前段階として現れる生理的な現象といえるでしょう。
子宮が不規則に収縮することで起こり、体が出産の準備をしているサインでもあります。
痛みの特徴として、生理痛のような下腹部の鈍い痛みを感じる場合が見られます。
1回の痛みの持続時間は短く、しばらくすると自然に治まるでしょう。
しかし痛みとともに、出血や破水がある場合は、すぐに医療機関で受診してください。
▼臨月に出血したときの対処法は?詳しい記事はこちら
原因2:便秘・ガスが溜まる
妊娠中はホルモンの影響や大きくなった子宮による腸の圧迫により便秘が起こりやすくなり、腸内にガスが溜まると、下腹部の膨満感や痛みを引き起こします。
便秘を放置すると痔の原因にもなるため、早めの対処が必要です。
症状がひどい場合は、自己判断で市販薬を服用せず、医療機関で相談しましょう。
▼妊娠中の便秘解消法について詳しい記事はこちら
原因3:切迫早産
切迫早産は、規則的な子宮収縮などにより早産しかかっている状態で、以下のような症状が現れます。
・下腹部の張り
・規則的な痛み
・性器出血
上記のような症状が見られる場合は、早急に医療機関で受診する必要があります。
▼切迫早産について詳しい記事はこちら
原因4:常位胎盤早期剥離
常位胎盤早期剥離は、胎盤が正常な位置にありながら、お産が始まる前に剥がれてしまう状態をさします。
この状態では激しい下腹部痛が現れ、胎児は仮死状態または死亡に至る可能性があり、母体にとっても危険な状態です(※1)。
症状が現れた場合は、医師の判断によって開腹手術が行われる場合も。
常位胎盤早期剥離は母子ともに生命に関わる状態であるため、早期発見と迅速な対応が不可欠です。
(※1)出典:国立国会図書館デジタルコレクション|京都大学医学部(佐川典正)「妊娠末期の性器出血と腹痛」
原因5:子宮筋腫の変性・壊死
妊娠後期に下腹部痛を伴う婦人科疾患として、子宮筋腫の変性・壊死もあげられます(※2)。
子宮筋腫は妊娠中にホルモンの影響で大きくなる場合があり、血流が悪くなると変性や壊死を起こして痛みを引き起こすのです。
性器出血を伴わないことが特徴的で、痛みは筋腫の大きさや位置によって程度が異なります。
症状が強い場合は、早急に医療機関で受診しましょう。
(※2)出典:国立国会図書館デジタルコレクション|京都大学医学部(佐川典正)「妊娠末期の性器出血と腹痛」
妊娠後期における下腹部痛への3つの対処法
妊娠後期に下腹部痛を感じた際の対処法として、以下の3点があげられます。
・安静にして体を休める
・体を温めて血行を改善する
・食生活を整える
順番に見ていきましょう。
対処法1:安静にして体を休める
妊娠後期の下腹部痛や、子宮の張りに対する基本的な対処法は安静にすることです。
まず体を横にして休みましょう。
仕事をしている人の場合も、休憩時間にできるだけ体を横にして休息をとるよう心がけましょう。
重たい物の持ち運びや長時間の立ち仕事、頻繁な階段の上り下りなど、お腹に負担をかける動作も控えてください。
対処法2:体を温めて血行を改善する
体の冷えは子宮の張りを強くする原因となるため、妊娠後期はとくに体を温めることが大切です。
・靴下を履く
・腹巻を着用する
・ひざ掛けを使用する
など、身体を温める工夫を積極的に取り入れましょう。
職場では、夏の冷房や冬の寒さ対策も意識しましょう。
体を冷やさないようにすると、血液の流れが改善して、子宮の張りや下腹部痛の軽減につながります。
温かい飲み物を摂取したり、温かいお風呂に浸かることも効果的です。
対処法3:食生活を整える
前述したように、妊娠後期はホルモンの影響や子宮の圧迫によって腸の動きが鈍くなり、便秘やガスが溜まりやすくなります。
これらの対処法として、食物繊維を豊富に含む野菜や果物を積極的に摂取しましょう。
消化のよい食事を心がけ、一度に大量に食べるのではなく、少量ずつ回数を分けて食事をとることが大切です。
油っこい食事や刺激の強い食べ物は控えめにし、胃腸に負担をかけないよう注意しましょう。
便秘がつづく場合は市販薬を使用せず、医療機関で相談してください。
▼妊娠後期におすすめの食事について詳しい記事はこちら
妊娠後期の下腹部痛に関するQ&A
ここでは妊娠初期について、よくある3つの質問をまとめました。
順番に見ていきましょう。

妊娠後期の下腹部痛には、以下のような「心配しなくてもよいケース」と「すぐに受診した方がよいケース」があります。
よくある・心配ない痛みの例:
・子宮が大きくなることで起こる張り感・キューッとする痛み
・前駆陣痛(不規則で短時間の下腹部のズキズキや鈍痛)
・便秘やガスによるチクチク・キリキリした痛み
すぐに相談した方がいい痛み:
・10分間隔など、規則的に訪れる強い張りや痛み(陣痛の可能性)
・キューッと締めつけるような痛みに出血を伴う(切迫早産などの可能性)
・波のある痛みではなく、痛みが持続し、お腹がカチカチになる(常位胎盤早期剝離の可能性)
・ズキズキと続く痛みで、体を動かすのもつらいほど強い
「なんとなくおかしいかも…」と感じたときが受診のサインです。
痛みの種類よりも「痛み方の変化」や「いつもと違う感覚」を大切にしましょう。

例えば、激しい腹痛を伴う場合には 子宮の緊張や前駆陣痛の可能性があり、胎動がいつもより弱い場合には胎児のストレスサインのこともあります。
「痛みがあるけど胎動があるから大丈夫」と自己判断せず、心配なときはすぐ相談してください。
特に、「痛みが強い・定期的・出血を伴う・胎動が急に減った」などのサインがあれば、一刻も早く受診しましょう。

・子宮が膀胱・腸・靭帯を圧迫し、引っ張られるような痛みが出る
・ホルモン(リラキシン)で骨盤まわりが緩み、腰や恥骨が痛む
・前駆陣痛(不規則な陣痛のような痛み)が始まる
・運動不足・同じ姿勢の長時間維持による筋肉疲労
多くは赤ちゃんが産まれる準備をしている証拠でもあるため、 痛みが軽度で、休むとやわらぐ・続かない・日常生活に支障がない場合は、あまり心配しすぎなくて大丈夫です。
まとめ
妊娠後期における下腹部痛は、おもに以下5つの原因が考えられます。
原因 | 特徴 |
前駆陣痛 | 出産準備の生理的現象 |
便秘・ガス | ホルモンの影響や子宮の増大で起こりやすい |
切迫早産 | 規則的な子宮収縮 |
常位胎盤早期剥離 | 激しい下腹部痛 |
子宮筋腫の変性・壊死 | ホルモンの影響で筋腫が大きくなる |
このうち、切迫早産や常位胎盤早期剥離は母子ともに生命に関わる可能性があるため、規則的な痛みや出血がある場合は早急に医療機関での受診が重要です。
そのほかの症状への対策としては、以下が有効です。
・安静にする:体を横にして休息をとる
・体を温める:靴下や腹巻を使用し、血行を改善
・食生活を整える:食物繊維を摂取し、消化のよい食事を心がける
妊娠後期の下腹部痛は、生理的なものから緊急性の高いものまで幅広い原因があります。
症状が強い場合や出血・破水を伴う場合は、自己判断せずに医療機関で相談しましょう。
赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?
赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。
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- 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
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実際に保管・利用した方のお声
出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。

高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま
さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています
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輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。
さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。
その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。
医師からのメッセージ

総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生
応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療
近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。
さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
保管するなら、ステムセル研究所の「HOPECELL(ホープセル)」
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ステムセル研究所は、25年以上の保管・運営実績がある日本初のさい帯血バンクで、国内最多となる累計80,000名以上のさい帯血を保管しています。

研究所

研究所
国内では脳性まひに対する、赤ちゃんご自身やごきょうだいのさい帯血投与の研究が行われています。海外の臨床研究では、投与により運動機能および脳神経回路の改善が報告されています。また自閉症スペクトラム障害(ASD)に対して、さい帯血の投与によりコミュニケーション能力や社会への順応性が向上する可能性が期待されており、大阪公立大学にてお子さまご自身のさい帯血を投与する臨床研究が開始されます。

研究所
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赤ちゃんの将来に備える「さい帯・さい帯血保管」をぜひ妊娠中にご検討ください。

この記事の監修者
助産師 坂田陽子 先生
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー