解熱鎮痛薬が妊娠後期に与える影響とは?服用したときの対処法や症状の緩和方法も紹介

記事監修者:助産師 坂田陽子 先生
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

「妊娠後期に解熱鎮痛薬を飲んでも大丈夫?」
「胎児への影響が心配で不安になってしまう…」
「薬以外で頭痛や痛みを和らげる方法はないの?」
上記のように悩んでいるのではないでしょうか。
妊娠後期は頭痛や体の痛みに悩まされることが多いものの、薬の服用による胎児への影響が気になり、どう対処すればよいか迷ってしまいますよね。
解熱鎮痛薬の中でも、アセトアミノフェンを主成分とするものは妊娠中でも比較的安全とされていますが、妊娠後期の使用には注意点があり、適切な知識と対処法を知っておくことが大切です。
そこでこの記事では、おもに以下の内容を解説していきます。
・解熱鎮痛薬が妊娠後期に与える具体的な影響
・服用してしまった場合の適切な対処法
・薬に頼らない安全な症状緩和方法
この記事を読むと、妊娠後期の解熱鎮痛薬服用について正しく理解でき、安心して症状に対処できるようになりますよ。
解熱鎮痛薬が妊娠後期に与える影響
解熱鎮痛薬の主成分には、アセトアミノフェン・イブプロフェン・ロキソプロフェンなど、さまざまな種類があります。
そのうちイブプロフェンやロキソプロフェンは、「出産予定日12週以内の妊婦」には禁忌とされています。(※1)
一方、アセトアミノフェンを主成分とする解熱鎮痛剤は、妊娠中でも比較的安全として広く使用されています。
しかし妊娠後期においては、注意が必要な場合も。
厚生労働省が公表している資料によると、妊娠後期のアセトアミノフェン投与により、胎児に動脈管収縮が起こるリスクが指摘されているためです(※2)。
動脈管とは胎児期に心臓と肺をつなぐ血管で、収縮すると胎児の血流に影響を与える可能性があります。
実際にラットを用いた実験では、妊娠後期の投与で弱い胎児の動脈管収縮が確認されています(※2)。
多くの薬剤は胎盤を通じて胎児に移行するため、妊娠後期でも薬剤の過剰摂取は胎児の成長を妨げる恐れがあるのです。
医療機関で相談すれば、症状に応じて、妊娠後期に安心して服用できる種類・量の薬を処方してもらえます。
解熱鎮痛薬を服用する際は自己判断は避け、かならず医療機関で相談しましょう。
(※1)出典:厚生労働省「市販の解熱鎮痛薬の選び方」
(※2)出典:厚生労働省「「使用上の注意」の改訂について」平成24年4月24日薬食安発0424第1号
妊娠後期に解熱鎮痛剤を自己判断で服用してしまったら
妊娠後期に解熱鎮痛剤を自己判断で服用してしまった場合、まずは慌てずに、現在の体調や胎動の変化がないかを観察してください。
そして、かかりつけの医療機関ですぐに受診してください。
服用した薬の種類・量・期間、現在の週数などを総合的に判断し、今後の対応についてアドバイスを提供してくれるでしょう。
また、自己判断で処方薬の服用を中止することもやめましょう。
妊娠中に医療機関で処方される解熱鎮痛薬は、妊娠中でも比較的安全に使用できます。
自己判断で服用を中止すると、母子の健康に危険を及ぼすリスクがあるため、心配なことがあれば医療機関で相談することが大切です。
妊娠後期でもできる|解熱鎮痛薬以外の2つの症状緩和方法
妊娠後期の頭痛や発熱に対して、薬に頼らない安全で効果的な緩和方法として、以下の2点があげられます。
- 温熱療法とマッサージ
- 漢方薬(呉茱萸湯)の活用
順番に見ていきましょう。
方法1:温熱療法とマッサージ
足浴は妊娠後期の症状緩和に有効な温熱療法です。
お湯を張ったバケツに足を浸けるだけでも実践できる簡単な方法で、妊婦さんに適した対処法といわれています。
また東京都立大学総合研究推進機構によると、足湯は痛みや筋肉の緊張状態を和らげるだけでなく、妊婦さんの出産前後のストレス緩和にも有効といわれているのです(※3)。
足浴の場合、静水圧によるマッサージ効果も期待でき、足が軽く感じられる効果も得られます。
(※3)出典: 東京都立大学総合研究推進機構 TMU Research Portal「温熱刺激が脳を活性化させる科学的根拠を看護に活かす」
方法2:漢方薬(呉茱萸湯)の活用
妊娠後期の頭痛治療において、呉茱萸湯(ごしゅゆとう)は比較的安全性と有効性がある対処法です。
呉茱萸湯は体力虚弱で、汗が出にくく、手足が冷えて体がこわばる方の関節痛や神経痛に適用される漢方薬として知られています。
とくに首や肩のこり、嘔吐などを伴う頭痛の場合に効果を発揮しやすいとされています。
また慢性頭痛にも効果があり、副作用も少なく妊婦さんに使用しやすい特徴も。
産婦人科漢方研究会が行った研究によると、妊娠に伴い増悪した片頭痛に対して呉茱萸湯が効果を示した症例もあります(※4)。
そのため、妊娠期間中の片頭痛治療における重要な選択肢として位置づけられています。
ただし、自己判断で服用せず、かならず医療機関で相談しましょう。
妊娠後期の解熱鎮痛薬服用に関するQ&A
ここでは妊娠後期の解熱鎮痛薬服用について、よくある3つの質問をまとめました。
順番に見ていきましょう。

ただし、市販薬と処方薬では含有量や錠数が異なるため、自己判断で増量・継続服用しないことがとても大切です。
熱や痛みがつらいときは、「服用のタイミング」や「食事・水分との関係」も含めて、必ずかかりつけの産婦人科に相談しましょう。

・胎児の動脈管(肺と心臓をつなぐ血管)が早期に閉じてしまう
・羊水過少(赤ちゃんの腎機能に影響)
・分娩の遅延、出血リスクの増加
そのため、妊娠後期(28週以降)には原則として使用してはいけない薬とされており、産婦人科では処方も避けられます。

妊娠中は、薬の成分が胎盤を通って赤ちゃんに影響する可能性があるため、市販薬は“自己判断で使わず”、必ず薬剤師または医師に確認しましょう。
とくに「風邪かな?」と思ったときは、冷え対策・加湿・水分補給でまず様子を見ることも大切です。
まとめ
妊娠後期における解熱鎮痛薬の服用は、アセトアミノフェンを主成分とするものであれば比較的安全とされています。
ただしアセトアミノフェンも、ラットを用いた実験では胎児の動脈管収縮リスクなどが報告されているため、自己判断での服用は危険です。
もし自己判断で服用してしまった場合は、速やかに医療機関で相談しましょう。
また薬に頼らない症状緩和方法として、以下の選択肢があります。
方法 | 特徴 |
温熱療法(足浴) | 痛みや筋肉緊張の緩和、ストレス軽減効果 |
漢方薬(呉茱萸湯) | 慢性頭痛に効果的、副作用が少ない |
漢方薬を服用する際も、医療機関での相談が前提です。
また、薬の服用が心配だからといって、医療機関で処方された薬を自己判断で中止することも危険です。
母体と胎児の健康を守るためにも、心配なことがあればかならず医療機関で相談し、安全性を最優先に考えた選択をしましょう。
赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?
赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。
幹細胞は新しい医療への活用が進められており、もしもの時に役立てられる可能性があります。
- 出産後わずか数分の間にしか採取できない貴重な赤ちゃんのものです。
- 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
- どちらにも幹細胞がたくさん含まれています。
- 再生医療分野など、さまざまな活用が進んでいます。
- それぞれ異なる幹細胞が含まれているため、両方を保管しておくことで将来の利用の選択肢が広がります。
実際に保管・利用した方のお声
出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。

高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま
さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています
元気に産まれたと思っていましたが、生後半年頃から左手をほとんど使おうとしないことに気付き、1歳頃にやはり何かおかしいと思ってMRIを撮ってもらうことにしました。結果1歳5ヶ月で脳性まひとわかりました。
2歳の誕生日にステムセルからハガキが届き、出産時に保管したさい帯血がもしや役に立つのではと思い至りステムセルに問い合わせました。ちょうど臨床試験への参加者を募集していて、運よく2歳5ヶ月のときに参加することができました。
輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。
さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。
その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。
医師からのメッセージ

総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生
応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療
近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。
さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
保管するなら、ステムセル研究所の「HOPECELL(ホープセル)」
株式会社ステムセル研究所が提供する「さい帯・さい帯血ファミリーバンクHOPECELL(ホープセル)」は、日本国内で最も選ばれている保管サービスです。
ステムセル研究所は、25年以上の保管・運営実績がある日本初のさい帯血バンクで、国内最多となる累計80,000名以上のさい帯血を保管しています。

研究所

研究所
国内では脳性まひに対する、赤ちゃんご自身やごきょうだいのさい帯血投与の研究が行われています。海外の臨床研究では、投与により運動機能および脳神経回路の改善が報告されています。また自閉症スペクトラム障害(ASD)に対して、さい帯血の投与によりコミュニケーション能力や社会への順応性が向上する可能性が期待されており、大阪公立大学にてお子さまご自身のさい帯血を投与する臨床研究が開始されます。

研究所
無料パンフレットをお送りします!
さい帯・さい帯血保管についてより詳しく知っていただけるパンフレットをご自宅へお送りします。
赤ちゃんの将来に備える「さい帯・さい帯血保管」をぜひ妊娠中にご検討ください。

この記事の監修者
助産師 坂田陽子 先生
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー