妊娠初期の飲酒が与えるリスクとは?気づかず飲酒してしまったときの対処法も解説

記事監修者:助産師 坂田陽子 先生
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

「妊娠初期に飲酒をしてしまった…」
「お腹の赤ちゃんに影響はないのか心配」
このように悩んでいるのではないでしょうか。
妊娠中に飲酒をつづけると、胎児や母体に悪影響を与えるリスクがあります。
しかし、妊娠に気づかず飲酒してしまった、という妊婦さんもいるでしょう。
そこで本記事では、以下の内容を解説していきます。
- 妊娠初期の飲酒が胎児に与える2つのリスク
- 妊娠初期の飲酒が母体に与えるリスク
- 受動飲酒が胎児に与える影響
- 妊娠初期に飲酒してしまった場合の2つの対処法
この記事を読むと、妊娠初期の飲酒に対する正しい知識が身に付きますよ。
妊娠初期の飲酒が胎児に与える2つのリスク
妊娠初期の飲酒が胎児に与えるリスクとしては、大きく分けて以下の2つあげられます。
- 胎児性アルコール・スペクトラム障害
- 長期的な発達・学習への影響
順番に解説していきます。
リスク1:胎児性アルコール・スペクトラム障害
妊娠初期の飲酒で、もっとも深刻な影響です。
母体が摂取したアルコールは胎盤を通じて胎児に対して、低体重や顔面を中心とする「形態異常」「脳障害」などを引き起こします。
とくに胎児アルコール症候群では、
- 薄い上口唇や平坦な人中といった特徴的な顔つき
- 発育の遅れ
- 小頭症や脳梁欠損
などの脳の形態異常が現れます(※1)。
妊娠初期の飲酒では特異顔貌や奇形が発生するリスクがあり、これらの障害には治療法がありません。
妊娠中は全期間、たとえ少量の飲酒でも胎児に影響をおよぼす可能性があるため、妊娠がわかった段階での完全な禁酒が必要です。
(※1)出典:e-ヘルスネット(厚生労働省)「胎児性アルコール・スペクトラム障害」
リスク2:長期的な発達・学習への影響
妊娠初期の飲酒による影響は出生後も長期間にわたってつづき、子どもが思春期を迎えるまでさまざまな形で現れます。
具体的には、以下の症状が現れる可能性があります。
- 成長遅滞
- 先天奇形
- 脳の形成異常
- 睡眠障害
- 神経学的機能障害
- 認知力低下
- IQや学習能力の低下
- 言語発達遅滞
- 注意欠陥
- 問題行動
上記のように、多岐にわたる影響が報告されているのです(※2)。
また妊娠中期以降の飲酒では脳の萎縮や胎児発育遅延、中枢神経障害などを生じる可能性もあるため、妊娠に気づいた時点で禁酒する必要があります。
妊娠中の安全な飲酒量や飲酒時期はないため、妊娠を計画する段階からの禁酒が胎児の健全な発達を守る唯一の方法です。
妊娠初期の飲酒が母体に与えるリスク
妊娠中に日本酒1合、もしくはビール大瓶1本程度の飲酒を毎日つづけると、飲酒をしていない妊婦に比べて「妊娠高血圧症候群」のリスクは「3.45倍」と高くなるといわれています(※3)。
妊娠高血圧症候群は、母体や胎児の死亡の原因となる危険な病気です。
とくに家庭血圧が160/110mmHgを超えたり、タンパク尿を伴う場合は入院管理が必要となり、場合によっては緊急で分娩を誘発したり、帝王切開による妊娠中断が検討される場合も(※4)。
妊娠初期からの徹底した禁酒が、母体と胎児の安全を守る対策です。
(※3)出典:国立大学法人 東北大学「妊娠期間中の飲酒の継続は 妊娠高血圧症候群リスクを高める」2018年11月5日
(※4)出典:公益社団法人 日本産科婦人科学会「妊娠高血圧症候群」
妊娠初期におけるパートナーの飲酒も胎児に影響する可能性あり
妊婦がいる家庭でパートナーが飲酒する場合、妊婦の受動飲酒による胎児への悪影響が及ぶ可能性もあります。
そもそも受動飲酒とは、家庭や宴会場などの空間中に存在するエタノールを慢性的に吸い込むことです。
近畿大学九州短期大学が行った研究によると、受動喫煙と同様に妊婦が直接アルコールを摂取していなくても、空気中のアルコール成分を吸い込むことで胎児に影響を与える可能性があるといわれています(※5)。
妊娠期間中は胎児の健康を考慮して、家庭内での飲酒は控えたほうが無難です。
(※5)出典:科学研究費助成事業|近畿大学九州短期大学(辻雅善)「室内空気中エタノール濃度からみた「受動飲酒」の実態とその対策に関する研究」
妊娠初期に飲酒してしまった場合の2つの対処法
妊娠初期に飲酒してしまったときの対処法としては、以下の2つがあげられます。
- 気持ちを切り替える
- 医師に相談する
順番に見ていきましょう。
対処法1:気持ちを切り替える
妊娠に気づかずに飲酒した場合でも、過剰に心配する必要はありません。
飲酒してしまったことを思い悩めば、ストレスがたまるだけ。
ストレスもまた、胎児に悪い影響をおよぼします。
「いま気づいてよかった」と、気持ちを切り替えましょう。
妊娠初期に飲酒してしまったからといって、必ずしも胎児に影響が出るわけではありません。
大切なのは、過去の飲酒を悔やみつづけることではなく、これからの行動を変えることです。
気持ちを前向きに切り替え、妊娠生活を健やかに過ごして母子の健康につなげましょう。
対処法2:医師に相談する
妊娠初期の飲酒について不安がある場合は、医師に相談してみましょう。
母体に悪影響があると知っても飲酒をつづけてしまう場合は、アルコール依存症の可能性があるため早急な相談が大切です。
医師との相談により、個人の状況に応じた対処法を見つけられるでしょう。
妊娠初期の飲酒に関するQ&A
ここでは妊娠初期の飲酒について、よくある3つの質問をまとめました。
順番に見ていきましょう。

ただし、少量の飲酒を1〜2回してしまった程度で、胎児に重大な異常が出る可能性は極めて低いとされています。
妊娠が分かった時点で禁酒を始めたのであれば、ほとんどの場合、赤ちゃんに影響はないと考えられています。
また、定期的な妊婦健診や超音波検査(エコー)では、胎児の発育や臓器の形成に異常がないかを確認できます。
必要であれば、胎児ドックや超音波精密検査などの追加検査を医師が提案してくれることもありますので、不安な気持ちは一人で抱えず、産婦人科で相談してくださいね。

特に妊娠初期は、赤ちゃんの重要な器官が作られる大切な時期。
「1回くらい…」と思うかもしれませんが、安心して妊娠生活を送るためにも、ノンアルコール飲料などに切り替えるのが安心です。

妊娠初期は赤ちゃんの中枢神経や臓器が形成されるデリケートな時期。
ごく微量とはいえ、“ゼロではない”アルコール摂取を避けるに越したことはありません。
一方で、「うっかり一口食べてしまった」「気づかず食べた」といった場合に、すぐに赤ちゃんへ深刻な影響が出る可能性はほとんどありません。
気づいた時点でやめれば問題ありませんので、あまり自分を責めず、これからの食生活を見直していきましょう。
まとめ
妊娠初期の飲酒は胎児・母体ともに悪影響をおよぼす可能性があるため、妊娠が判明した時点で完全に禁酒しましょう。
妊娠中の安全な飲酒量や時期は存在せず、少量でも胎児に悪影響を与える可能性があるためです。
また、パートナーの飲酒による受動飲酒も胎児への悪影響が懸念されるため、家庭内でも禁酒するのが無難です。
妊娠初期に飲酒してしまった場合の対処法は、以下のとおり。
対処法 | 内容 |
気持ちを切り替える | 過度に心配してストレスを溜めない |
医師に相談する | 専門家のアドバイスを受ける |
妊娠初期の禁酒により妊娠高血圧症候群のリスクも低減できることが研究で示されており、母子の健康を守るためには妊娠計画段階からの禁酒が唯一の予防策といえます。
過去の飲酒を悔やむよりも、これからの健康的な妊娠生活を心がけることが大切です。
赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?
赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。
幹細胞は新しい医療への活用が進められており、もしもの時に役立てられる可能性があります。
- 出産後わずか数分の間にしか採取できない貴重な赤ちゃんのものです。
- 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
- どちらにも幹細胞がたくさん含まれています。
- 再生医療分野など、さまざまな活用が進んでいます。
- それぞれ異なる幹細胞が含まれているため、両方を保管しておくことで将来の利用の選択肢が広がります。
実際に保管・利用した方のお声
出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。

高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま
さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています
元気に産まれたと思っていましたが、生後半年頃から左手をほとんど使おうとしないことに気付き、1歳頃にやはり何かおかしいと思ってMRIを撮ってもらうことにしました。結果1歳5ヶ月で脳性まひとわかりました。
2歳の誕生日にステムセルからハガキが届き、出産時に保管したさい帯血がもしや役に立つのではと思い至りステムセルに問い合わせました。ちょうど臨床試験への参加者を募集していて、運よく2歳5ヶ月のときに参加することができました。
輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。
さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。
その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。
医師からのメッセージ

総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生
応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療
近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。
さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
保管するなら、ステムセル研究所の「HOPECELL(ホープセル)」
株式会社ステムセル研究所が提供する「さい帯・さい帯血ファミリーバンクHOPECELL(ホープセル)」は、日本国内で最も選ばれている保管サービスです。
ステムセル研究所は、25年以上の保管・運営実績がある日本初のさい帯血バンクで、国内最多となる累計80,000名以上のさい帯血を保管しています。

研究所

研究所
国内では脳性まひに対する、赤ちゃんご自身やごきょうだいのさい帯血投与の研究が行われています。海外の臨床研究では、投与により運動機能および脳神経回路の改善が報告されています。また自閉症スペクトラム障害(ASD)に対して、さい帯血の投与によりコミュニケーション能力や社会への順応性が向上する可能性が期待されており、大阪公立大学にてお子さまご自身のさい帯血を投与する臨床研究が開始されます。

研究所
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赤ちゃんの将来に備える「さい帯・さい帯血保管」をぜひ妊娠中にご検討ください。

この記事の監修者
助産師 坂田陽子 先生
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー