さい帯血は何に使える?使い道や治療事例を紹介

医学博士 伊沢博美 先生

記事監修者:医学博士 伊沢博美 先生

医学博士/日本再生医療学会再生医療認定医/日本抗加齢医学会専門医/遺伝子細胞治療認定医

「さい帯血は何に使える?」
「保管するメリットはある?」
「実際の治療例も知りたい」

上記のように考えているのではないでしょうか。
実際さい帯血は、血液疾患の治療や再生医療の分野で注目を集めており、その活用範囲は年々広がっています。

公的バンクでは白血病などの治療に使用され、民間バンクでは脳性まひや自閉症スペクトラム障害(ASD)などの治療に活用する研究も進んでいるのです。

この記事では、以下の内容を解説していきます。

・さい帯血の使い道
・さい帯血を保管している人の割合
・さい帯血による治療事例

この記事を読むと、さい帯血の重要性がわかり、保管するのか判断できるようになりますよ。

【保管先別】さい帯血の使い道

さい帯血の保管先は、以下の2種類に分けられます。

・公的バンク(さい帯血供給事業者)
・民間バンク(さい帯血プライベートバンク)

それぞれ特徴が大きく異なるため、順番に詳細を説明していきます。

公的バンク(さい帯血供給事業者)

公的バンクに保管されたさい帯血は、おもに「白血病」「再生不良性貧血」などの血液疾患の治療に使用されます。

公的バンクの最大の特徴は、提供が無償で行われることで、第三者の命を救う役割がある点です。

しかし、誰でも簡単に保管できるわけではありません。

厳格な基準があり、母体や新生児の健康状態、採取されたさい帯血の品質などが審査されます。

保管場所は全国に6か所あり、

・北海道
・関東甲信越
・中部
・近畿
・兵庫
・九州

の各地域をカバーしています(※1)。

公的バンクへの提供は社会貢献のひとつの形であり、多くの人の健康と命を救っているのです。

(※1)出典:厚生労働省「赤ちゃんを出産予定のお母さんへ(臍帯血関連情報)臍帯血移植と造血幹細胞移植法について」

民間バンク(さい帯血プライベートバンク)

民間バンクでは、さい帯血を将来の自己利用や家族の治療のために保管します。

効果が期待される疾患には、

・脳性まひ
・自閉症スペクトラム障害(ASD)
・低酸素性虚血性脳症

などの再生医療の対象となる疾患が含まれます。

保管には費用がかかり、保管を依頼する機関によって異なりますが、ステムセル研究所で保管する場合「2,980円/月〜(税込)」が目安です(※2)。

基本的に誰でも保管できますが、採取時の母子の状態や、さい帯血の品質などの基準があります。

2025年2月時点で、国内の民間バンク企業は2社のみで、ひとつがステムセル研究所です(※3)。

(※2)出典:ステムセル研究所「プランと料金」

(※3)出典:厚生労働省「赤ちゃんを出産予定のお母さんへ(臍帯血関連情報)臍帯血移植と造血幹細胞移植法について」

さい帯血を保管している人の割合

民間バンクである「ステムセル研究所」が公表している決算説明資料と、2024年の出生数を考慮すると、民間バンクにさい帯血を保管する人の割合は以下のとおりです。

保管する人の割合 約1.2%
2024年のさい帯血検体数 8,706件(※4)
2024年の国内出生数 72万988人(※5)

さい帯血を使った自閉症スペクトラム障害(ASD)治療に対する研究が進行中であるため、今後はさらに保管の需要が伸びる見込みです。

(※4)株式会社ステムセル研究所「株式会社ステムセル研究所 2025年3月期 決算説明資料」2025年5月13日より、2024/03期4Q+2025/03期1Q~3Qのさい帯血検体数

(※5)厚生労働省「人口動態統計速報」(令和6年12月分)

さい帯血の活用による治療例

実際にさい帯血によって病気が治療された実例を「公的バンク」「民間バンク」に分けて見ておきましょう。

それぞれ順番に解説していきます。

公的バンクのさい帯血活用実績

公的バンクのさい帯血活用実績は、年々増加傾向にあります。

2020年には、非血縁者間造血幹細胞移植の57.8%(1,497件)がさい帯血移植で行われ、骨髄移植の42.2%(1,091件)を上回りました(※6)。

つまり、さい帯血移植による白血病などの血液疾患に対する治療の需要が伸びているのです。

また毎年1,000人以上の人が、さい帯血移植を受けており、多くの命を救う重要な資源となっています(※7)。

(※6)出典:J-STAGE|日本赤十字社北海道ブロック血液センター(内藤 友紀,秋野 光明ほか)「日本赤十字社北海道さい帯血バンクにおける臍帯血提供者の増加を目指した普及啓発活動」2023 年 69 巻 3 号 p. 484-490

(※7)出典:政府広報オンライン「「臍帯血(さいたいけつ)」は、赤ちゃんからの贈り物。臍帯血移植とは?」

民間バンクのさい帯血活用実績

まだまだ使用実績の少ない民間バンクのさい帯血ですが、臨床研究は確実に進み、成果も出ています。

ここでは例のひとつとして「脳性まひ」の治療実績を紹介します。

運動困難と筋肉のこわばりをおもな症状とする脳性まひは、出生前から出産直後における脳の損傷によって引き起こされる疾患です。

高知大学での臨床研究で、左手足のまひがあり、歩行時に頻繁な転倒が見られる2歳5か月の子どもに対し、さい帯血輸血を実施しました。

その結果、輸血翌日から転倒の頻度が低下

さらに、それまでできなかったおもちゃを両手で掴む動作も可能になりました。

回復は順調に進み、最終的には地域の小学校の普通級へ集団登校できるまでに改善した事例です。

出典:ステムセル研究所「さい帯血情報」2023年6月号Vol.126ステムセル研究所発行

民間バンクにさい帯血保管した人の声

ここでは、実際にステムセル研究所でさい帯血を保管した人の声を見てみましょう。

以下は、保管した人の声を一部抜粋・編集したものです。

我が家にとってさい帯血は、生命保険のようなもの。

でも、それは単なる生命保険ではなく、万が一の命を救ってくれるかけがえのない保険です。

ニュースなどで、さい帯血の話題が頻繁に取り上げられているため、多少の興味や知識はありました。

しかしあらためて病院の母親学級でさい帯血の説明を聞いたとき、その重要性や安全性、高い治療効果に驚きました。

そして将来的にその価値がさらに高まることを期待して、さい帯血を保管することに。

私たち夫婦は、子どもの命を全力で守ることは、何よりも重要な親としての役目だと考えています。

出典:ステムセル研究所「実際のご利用者のお声」

さい帯血には、家族の命を守る重要な役割がありますが、デメリットもあります。

両方を知って、納得できる決断をしましょう。

知っていますか?さい帯とさい帯血を凍結保管する必要性とメリット

民間バンクに保管したさい帯血の使い道に関するQ&A

ここではさい帯血の使い道について、よくある3つの質問をまとめました。

順番に見ていきましょう。

さい帯血は、なぜ治療に使えるの?
ステムセル
研究所
さい帯血には幹細胞などが豊富に含まれており、まだ治療法のないさまざまな疾患の治療に役立つことが期待されています。
さい帯血を治療に使うまでにどのくらいの日数がかかる?
ステムセル
研究所
治療に必要なタイミングに支障が出ないよう、医療機関と連携のうえ、出庫対応を行っています。
さい帯血だけでなく、さい帯も保管できるって本当?さい帯は何に使えるの?
ステムセル
研究所
ステムセル研究所では、日本で唯一、さい帯血とさい帯をセットで保管していただけます。

さい帯には、さい帯血とは異なる種類の幹細胞が豊富に含まれており、さまざまな再生医療への活用が期待されているだけでなく、お子さまのさい帯からファミリー上製(幹細胞培養上製液)を製造することも可能です。

まとめ

さい帯血は、血液疾患や再生医療の分野で役立ち、その保管方法は公的バンクと民間バンクの2種類に分かれ、異なる特徴があります。

項目 公的バンク 民間バンク
実績 白血病などの血液疾患に使用 脳性まひやASDなどの再生医療に期待
用途 第三者のために提供 自身や家族の治療のために保管
費用 無償 月額2,980円~(税込)(※ステムセル研究所の場合)

さい帯血保管は、子どもの未来を守る重要な選択肢のひとつです。

将来の医療技術の進歩を見据え、さい帯血保管について今一度考えてみてくださいね。

赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?

赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。

幹細胞は新しい医療への活用が進められており、もしもの時に役立てられる可能性があります。

さい帯・さい帯血保管のポイント!

  1. 出産後わずか数分の間にしか採取できない貴重な赤ちゃんのものです。
  2. 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
  3. どちらにも幹細胞がたくさん含まれています。
  4. 再生医療分野など、さまざまな活用が進んでいます。
  5. それぞれ異なる幹細胞が含まれているため、両方を保管しておくことで将来の利用の選択肢が広がります。

実際に保管・利用した方のお声

出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。

高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま

さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています

元気に産まれたと思っていましたが、生後半年頃から左手をほとんど使おうとしないことに気付き、1歳頃にやはり何かおかしいと思ってMRIを撮ってもらうことにしました。結果1歳5ヶ月で脳性まひとわかりました。
2歳の誕生日にステムセルからハガキが届き、出産時に保管したさい帯血がもしや役に立つのではと思い至りステムセルに問い合わせました。ちょうど臨床試験への参加者を募集していて、運よく2歳5ヶ月のときに参加することができました。
輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。

さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。

その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。

医師からのメッセージ


総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生

応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療

近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。

さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

保管するなら、ステムセル研究所の「HOPECELL(ホープセル)」

株式会社ステムセル研究所が提供する「さい帯・さい帯血ファミリーバンクHOPECELL(ホープセル)」は、日本国内で最も選ばれている保管サービスです。

ステムセル研究所は、25年以上の保管・運営実績がある日本初のさい帯血バンクで、国内最多となる累計80,000名以上のさい帯血を保管しています。

どうやって保管するの?
ステムセル
研究所
出産時に産科施設で採取されたさい帯・さい帯血は、ステムセル研究所の高レベルのクリーンな環境で専門スタッフが処理・検査を行います。国内最大級の細胞保管施設にて、約-190℃の液体窒素タンク内で長期間大切に保管されます。また、ステムセル研究所は厚生労働省(関東信越厚生局)より「特定細胞加工物製造許可」を取得しており、高品質と安全性を実現しています。
保管したさい帯血は何に使えるの?
ステムセル
研究所

国内では脳性まひに対する、赤ちゃんご自身やごきょうだいのさい帯血投与の研究が行われています。海外の臨床研究では、投与により運動機能および脳神経回路の改善が報告されています。また自閉症スペクトラム障害(ASD)に対して、さい帯血の投与によりコミュニケーション能力や社会への順応性が向上する可能性が期待されており、大阪公立大学にてお子さまご自身のさい帯血を投与する臨床研究が開始されます。

さい帯・さい帯血保管は高いと聞いたのですが…
ステムセル
研究所
さい帯またはさい帯血のどちらか一方を10年間保管する場合、月々2,980円(税込)で保管することができます。出産時にしか採取・保管することができない貴重な細胞なので、お子さまの将来に備えて保管される方が増えています。

無料パンフレットをお送りします!

さい帯・さい帯血保管についてより詳しく知っていただけるパンフレットをご自宅へお送りします。

赤ちゃんの将来に備える「さい帯・さい帯血保管」をぜひ妊娠中にご検討ください。

この記事の監修者

医学博士 伊沢博美 先生

経歴

神宮外苑Woman Life Clinic 院長

獨協医科大学医学部卒業、医学博士。
日本再生医療学会再生医療認定医、日本抗加齢医学会専門医。順天堂医院、婦人科・内科健診施設、再生医療等提供機関に勤務。
2020年に『神宮外苑Woman Life Clinic』を開設。女性内科・不妊・更年期障害など女性特有の健康課題に対し、一人ひとりに合わせた医療ソリューションを提供。

資格

医学博士/日本再生医療学会再生医療認定医/日本抗加齢医学会専門医/遺伝子細胞治療認定医