さい帯血保管は本当に必要?治療実績や費用など3つの判断基準を解説

医学博士 伊沢博美 先生

記事監修者:医学博士 伊沢博美 先生

医学博士/日本再生医療学会再生医療認定医/日本抗加齢医学会専門医/遺伝子細胞治療認定医

「さい帯血が必要になるときは来るのだろうか?」
「さい帯血を保管すべきか迷っている…」
「治療実績や費用を知りたい」

このように悩んでいるのではないでしょうか。

さい帯血保管は、赤ちゃんや家族の将来の医療に備えるための選択肢として注目されています。

しかし必要性やメリットを具体的に理解しない状態で、さい帯血の保管を決断するのはむずかしいですよね。

さい帯血保管が本当に必要かどうかを判断するためには、治療実績や費用などのポイントをおさえることが重要です。

そこで本記事では、以下の内容をくわしく解説します。

・さい帯血は「何のため」に必要なのか
・「誰のため」に使えるのか
・「費用」はかかるのか

この記事を読むと、さい帯血保管が自分にとって必要かどうか、納得して判断できるようになりますよ。

さい帯血保管の必要性について判断する3つのポイント

自分にとって、さい帯血保管が必要かどうか判断するためには、以下3つのポイントについて理解を深めておくことが重要です。

・さい帯血は「何のため」に必要なのか(治療実績)
・さい帯血は「誰のため」に使えるのか
・さい帯血保管に「費用」はかかるのか

上記について理解が深まれば、さい帯血が必要なのか判断できるようになるでしょう。

それぞれ解説していきます。

さい帯血は「何のために」必要?3つの治療実績

さい帯血が何のために必要なのか、まずは治療に使われた実績から見ていきましょう。

さい帯血が治療に使われた主な実績は、以下の3つです。

・脳性まひ
・低酸素性虚血性脳症
・自閉症スペクトラム障害(ASD)

いずれも、民間バンクのステムセル研究所に保管していたさい帯血を、本人またはきょうだいの治療に使用している実績です。

順番に解説していきます。

事例1:脳性まひ

脳性まひとは、在胎期間中や出産時における脳損傷が原因で生じる運動障害をさします。

高知大学では以下の症例に対して、さい帯血治療の臨床研究を実施しました。

・31週での早産で脳性まひと診断を受けた男児
・寝たきりになる可能性が高いと予測された症例

姉のさい帯血を用いた治療の結果、さまざまな改善が観察されました。

・舌の緊張緩和により歯磨きが容易に
・発音が明瞭になり、音声認識デバイスでの会話が可能に
・手の運動機能が向上し、文字の執筆や箸の使用が可能に

歩行機能も改善し、歩行器の前輪固定なしでの歩行が可能となり、筋肉量の増加も確認。

治療開始から3年後には、杖を使用せずに1分間の歩行ができるまでに回復しました。

さらに入浴やトイレなども自力でこなせるようになり、自立心も育ちました。

現在では、きょうだい間で通常の家庭と変わらない関係を築けるまでになっています。

出典:ステムセル研究所「お姉ちゃんのさい帯血を投与した男の子の体験談」

事例2:低酸素性虚血性脳症

低酸素性虚血性脳症は、新生児が脳への酸素供給や血流不足により発症する脳障害です。

デューク大学が行った、さい帯血治療の対象となったのは、

・てんかん発作がある
・7歳で寝返りや座位が自力では不可能

という症例でした。

さい帯血投与後、次のような改善が見られました。

・毎日起きていた部分痙攣が約24時間消失
・1か月後には粗大運動機能の回復を確認

歩行器使用時には、それまでの単なる足の突っ張りから、筋肉の緊張・弛緩を制御できるようになるなど、顕著な進歩が見られたのです。

認知面でも改善が確認され、とくに言葉に対する理解力の向上が観察されました。

出典:ステムセル研究所「さい帯血情報」2022年8月号Vol.123ステムセル研究所発行

事例3:自閉症スペクトラム障害(ASD)

さい帯血を用いた治療は、自閉症スペクトラム障害(ASD)に対しても広がっています。

デューク大学では、平均4.6歳のASD患者25例に対して、自家さい帯血を用いた臨床研究を実施。

治療効果として、以下が確認されました。

・対人関係や話の理解度が6か月後に改善
・改善状態が12か月後も継続
・視覚的・空間的情報処理能力を示す非言語性知能指数の向上

これらの研究成果により、ASDに対するさい帯血治療の可能性が注目されています。

また国内においても、ステムセル研究所の保管さい帯血を使用したASDへの臨床研究がスタートしています。

出典:ステムセル研究所「自閉症スペクトラム障害に対するさい帯血を用いた再生医療の有望な結果報告」

さい帯血は「誰のために」使える?赤ちゃん本人や家族のために使うには

さい帯血の保管場所には「公的バンク」「民間バンク」の2種類があり、以下のように利用目的や保管期限が異なります。

種類 さい帯血の利用目的 保管期限
公的バンク 第三者の患者のために使用 最長10年(※1)
民間バンク 赤ちゃん本人とその家族のみが使用可能 保管先による。

ステムセル研究所の場合:10年 or 20年で選択可能(※2)

(※1)出典:政府広報オンライン「「臍帯血(さいたいけつ)」は、赤ちゃんからの贈り物。臍帯血移植とは?」
(※2)出典:ステムセル研究所「採取から保管まで」

公的バンクに保管するさい帯血は善意の寄付で、第三者の患者の治療に使われます。

一方で民間バンクに保管するさい帯血は、赤ちゃん本人とその家族のために使えるメリットがあるのです。

たとえば、生まれてきた赤ちゃんに脳性まひなどの障がいがあった場合や、きょうだいに障がいがある場合の治療などに使用できます。

自身のさい帯血は、拒絶反応を起こしにくい点もメリットのひとつです。

さい帯血保管に「費用」はかかる?民間バンクは必要

「公的バンク」は第三者用に保管されるため、保管料は無料です。

しかし「民間バンク」は赤ちゃんと、その家族ために使用されるため保管料がかかります。

たとえば「ステムセル研究所」で、さい帯血を保管した場合の料金は以下のとおりです。

プラン名 詳細 料金
ONEホーププラン さい帯・さい帯血のどちらかを保管 ・10年保管:月々2,980円(税込)
・20年保管:月々3,530円(税込)
Wホーププラン さい帯・さい帯血の両方を保管 ・10年保管:月々3,980円(税込)
・20年保管:月々5,080円(税込)

出典:ステムセル研究所「プランと料金」

さい帯血保管は必要だった?実際に保管した人の声

実際に、ステムセル研究所でさい帯血を保管した人の声を覗いてみましょう。

以下は、保管した人の声を一部抜粋・編集したものです。

長男は新生児黄疸が原因で、脳性まひになりました。

そのあと長女を妊娠しましたが、万が一脳性まひになったときを想定して、さい帯血を保管しました。

もともと長男は自分で歩けましたが、不安定で転びやすく、また重い言語障害もあり、家族でないと聞き取れないくらい発音が不明瞭だったのです。

しかし、さい帯血を投与してからは歩行が安定し転ばなくなり、現在はジャンプまでできるように。

言語障害も改善し、学校の先生や友達と会話を楽しめるくらい発音もよくなりました。

オムツも卒業でき、本当にたくさんのことが自分でできるようになってとても嬉しそうです。

まひが改善し日常的な介助がかなり減ったことで、将来的にも自立への道が拓け、家族全員にとっても、さい帯血を保管して本当によかったです。

出典:ステムセル研究所「実際のご利用者のお声」

さい帯血保管についてのQ&A

ここではさい帯血保管について、よくある3つの質問をまとめました。

順番に見ていきましょう。

他人ではなく、自分のさい帯血を使うことに治療上のメリットはある?
ステムセル
研究所
脳性まひに対してさい帯血投与を行う場合、白血球の型(HLA)が適合している必要があります。

適合率は血縁関係のない他者の場合は数百~数万分の1の確率ですが、きょうだい間では1/4、本人は100%の確率で適合します。

民間バンクに保管されているさい帯血が、実際に治療に使われる確率はどれくらい?
ステムセル
研究所
ステムセル研究所では約80,000名以上のさい帯血を保管しており、これまでに 38例の利用実績があります。

半数以上がここ数年での投与であり、さい帯血を利用する機会は、脳障害に対する臨床研究を中心に、ますます増え続けていくものと考えられています。

これからも治療できる病気の範囲は広がっていく?
ステムセル
研究所
現在、さい帯血を使った臨床研究が世界各国で行われており成果をあげています。

これまでに確立した治療法のなかった病気に対する新しい治療法として期待が高まっています。

まとめ

さい帯血保管は、将来の医療に備える重要な選択肢です。

その必要性を判断する際には、以下の3つのポイントから判断するとよいでしょう。

・さい帯血は「何のため」に必要なのか
・さい帯血は「誰のため」に使えるのか
・さい帯血保管に「費用」はかかるのか

実際にさい帯血を保管して、治療に使用した家族の体験談からは、脳性まひの症状改善など、その効果が実感されています。

さい帯血保管は、将来に対する一種の保険と考えられます。

個々の家族の状況や価値観に基づいて、後悔のない判断をしましょう。

赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?

赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。

幹細胞は新しい医療への活用が進められており、もしもの時に役立てられる可能性があります。

さい帯・さい帯血保管のポイント!

  1. 出産後わずか数分の間にしか採取できない貴重な赤ちゃんのものです。
  2. 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
  3. どちらにも幹細胞がたくさん含まれています。
  4. 再生医療分野など、さまざまな活用が進んでいます。
  5. それぞれ異なる幹細胞が含まれているため、両方を保管しておくことで将来の利用の選択肢が広がります。

実際に保管・利用した方のお声

出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。

高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま

さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています

元気に産まれたと思っていましたが、生後半年頃から左手をほとんど使おうとしないことに気付き、1歳頃にやはり何かおかしいと思ってMRIを撮ってもらうことにしました。結果1歳5ヶ月で脳性まひとわかりました。
2歳の誕生日にステムセルからハガキが届き、出産時に保管したさい帯血がもしや役に立つのではと思い至りステムセルに問い合わせました。ちょうど臨床試験への参加者を募集していて、運よく2歳5ヶ月のときに参加することができました。
輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。

さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。

その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。

医師からのメッセージ


総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生

応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療

近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。

さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

保管するなら、ステムセル研究所の「HOPECELL(ホープセル)」

株式会社ステムセル研究所が提供する「さい帯・さい帯血ファミリーバンクHOPECELL(ホープセル)」は、日本国内で最も選ばれている保管サービスです。

ステムセル研究所は、25年以上の保管・運営実績がある日本初のさい帯血バンクで、国内最多となる累計80,000名以上のさい帯血を保管しています。

どうやって保管するの?
ステムセル
研究所
出産時に産科施設で採取されたさい帯・さい帯血は、ステムセル研究所の高レベルのクリーンな環境で専門スタッフが処理・検査を行います。国内最大級の細胞保管施設にて、約-190℃の液体窒素タンク内で長期間大切に保管されます。また、ステムセル研究所は厚生労働省(関東信越厚生局)より「特定細胞加工物製造許可」を取得しており、高品質と安全性を実現しています。
保管したさい帯血は何に使えるの?
ステムセル
研究所

国内では脳性まひに対する、赤ちゃんご自身やごきょうだいのさい帯血投与の研究が行われています。海外の臨床研究では、投与により運動機能および脳神経回路の改善が報告されています。また自閉症スペクトラム障害(ASD)に対して、さい帯血の投与によりコミュニケーション能力や社会への順応性が向上する可能性が期待されており、大阪公立大学にてお子さまご自身のさい帯血を投与する臨床研究が開始されます。

さい帯・さい帯血保管は高いと聞いたのですが…
ステムセル
研究所
さい帯またはさい帯血のどちらか一方を10年間保管する場合、月々2,980円(税込)で保管することができます。出産時にしか採取・保管することができない貴重な細胞なので、お子さまの将来に備えて保管される方が増えています。

無料パンフレットをお送りします!

さい帯・さい帯血保管についてより詳しく知っていただけるパンフレットをご自宅へお送りします。

赤ちゃんの将来に備える「さい帯・さい帯血保管」をぜひ妊娠中にご検討ください。

この記事の監修者

医学博士 伊沢博美 先生

経歴

神宮外苑Woman Life Clinic 院長

獨協医科大学医学部卒業、医学博士。
日本再生医療学会再生医療認定医、日本抗加齢医学会専門医。順天堂医院、婦人科・内科健診施設、再生医療等提供機関に勤務。
2020年に『神宮外苑Woman Life Clinic』を開設。女性内科・不妊・更年期障害など女性特有の健康課題に対し、一人ひとりに合わせた医療ソリューションを提供。

資格

医学博士/日本再生医療学会再生医療認定医/日本抗加齢医学会専門医/遺伝子細胞治療認定医