さい帯血で治療できる病気とは?実績や最新の動向もあわせて解説

記事監修者:医学博士 伊沢博美 先生
医学博士/日本再生医療学会再生医療認定医/日本抗加齢医学会専門医/遺伝子細胞治療認定医

「さい帯血で治療できる病気とは?」
「最新の研究ではどんな可能性が広がっているだろう?」
「さい帯血を保管する価値はある?」
このような疑問をもっている人も多いのではないでしょうか。
さい帯血は、おもに再生医療の分野で注目を集めており、さまざまな疾患の治療に期待が寄せられています。
しかし、その可能性と実績についてくわしく知る機会は少ないでしょう。
そこで本記事では、以下の内容を中心に解説していきます。
・さい帯血で治療が期待される病気の一覧
・さい帯血を用いた治療実績と最新の研究動向
・さい帯血を保管した人の声
この記事を読むと、さい帯血で治療できる病気と将来性がわかり、さい帯血を保管するか判断できるようになりますよ。
さい帯血で治療が期待されている病気一覧
さい帯血での治療が期待されている病気は、以下のとおりです。
・低酸素性虚血性脳症
・小児脳性麻痺
・自閉症スペクトラム障害(ASD)
・先天性横隔膜ヘルニアでの脳障害
・左心低形成症候群
・先天性心疾患と脳障害
・Ⅰ型糖尿病
・感音難聴
上記は2024年12月時点で臨床研究が行われたもので、現在もさまざまな症例に対しての研究が進められています。
さい帯血で治療を行った2つの実績例
実際にさい帯血で治療を行った例を2つ紹介します。
・低酸素性虚血性脳症
・脳性まひ
順番に見ていきましょう。
実績例1:低酸素性虚血性脳症
脳への酸素や血流が不足することで生じる新生児の脳障害が、低酸素性虚血性脳症です。
デューク大学で実施されたさい帯血治療は、
・自力での寝返りや座位ができない7歳児
・てんかん発作を伴う症例
を対象としました。
治療後、以下のような改善効果が確認されました。
・毎日見られた部分痙攣が24時間ほど停止
・粗大運動機能が1か月後には回復
歩行器使用時の変化も顕著で、単に足を突っ張るだけだった状態から、筋肉の緊張と弛緩をコントロールできるようになりました。
また言葉の理解力が向上するなど、認知機能の改善も観察されました。
出典:ステムセル研究所「さい帯血情報」2022年8月号Vol.123ステムセル研究所発行
実績例2:脳性まひ
脳性まひは、在胎時や出産時の脳損傷による運動障害です。
高知大学の臨床研究では、
・31週で早産し、脳性まひと診断された男の子
・寝たきりの可能性が高いと言われていた症例
に対して、姉のさい帯血を用いた治療を行いました。
さい帯血を投与した結果、
・舌の緊張が緩み、歯磨きがスムーズになった
・滑舌が改善して、音声認識デバイスとの会話が可能に
・手の動きが向上し、文字を書いたり箸が使えるように
などの改善が見られたのです。
歩行器使用時も、前輪固定なしで歩行可能になり、筋肉量も増加。
3年後には杖なしで1分間歩けるまでに進歩しました。
さらに自立心も芽生え、入浴やトイレも自力でできるように。
できることが増えるようになったことで、障がいのある弟に対して遠慮がちだった姉たちとの関係性にも、ほほえましい変化があったそうです。
いまでは本気のきょうだいゲンカもするような、一般の家庭と変わらないきょうだいの関係性になれました。
出典:ステムセル研究所「お姉ちゃんのさい帯血を投与した男の子の体験談」
【最新】さい帯血で治療できる病気の研究動向
自閉症スペクトラム障害(ASD)は、社会的コミュニケーションの困難さや限定的・反復的な行動を特徴とする発達障害です。
現在さい帯血治療が、ASDの症状改善に効果がある可能性が示されています。
デューク大学で行われた臨床研究では、自己さい帯血を投与したASDの子どもに、社会性・コミュニケーション・順応的行動などの向上が見られました(※1)。
ただし研究はまだ初期段階であり、臍帯血治療のASDに対する効果を確立するためには、さらなる臨床研究が必要です。
実際に国内では、ステムセル研究所で保管しているさい帯血を、ASDに利用する臨床研究が進行しています(※2)。
出典:
(※1)ステムセル研究所「自閉症スペクトラム障害に対するさい帯血を用いた再生医療の有望な結果報告」
(※2)ステムセル研究所「「自閉症スペクトラム障害に対する自家臍帯血有核細胞を用いた治療法の開発」研究者主導臨床研究に関するお知らせ」2024年10月29日
ステムセル研究所でさい帯血保管した人の声
ここでは、実際にステムセル研究所でさい帯血を保管した人の声を見てみましょう。
以下は、保管した人の声を一部抜粋・編集したものです。
初めて妊娠がわかったとき、この命を守ってあげたいと思いました。
そして彼女に初めて会ったとき「この子を守らなければならない」とあらためて強く思いました。
さい帯血は未知数の宝箱です。
私が彼女に与えた初めての財産であると同時に彼女の持ち物でもあります。
彼女が使い道を決められるまで大切に保管してあげたいと思い、ステムセル研究所にお願いしました。
さい帯血の保管には、上記のようなメリットだけでなくデメリットもあります。
くわしく知りたい人は、下記を確認してみてくださいね。
さい帯血で治療できる病気に関するQ&A
ここではさい帯血で治療できる病気について、よくある3つの質問をまとめました。
順番に見ていきましょう。

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一般的には、骨髄バンクや公的さい帯血バンク、ご家族の骨髄の細胞が使用されます。
保管者(お子さま)のごきょうだいの白血病に対しては、白血球の型(HLA)が適合すれば利用の可能性はございます。

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詳しくはステムセル研究所へお問い合わせください。

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きょうだい間のHLAは、完全に適合する確率が25%、半分が適合する確率が50%です。
きょうだい間では血縁関係のない場合と比較して高い確率で適合することから、再生医療・細胞治療の備えとして大変有意義であると言われています。
まとめ
さい帯血は、再生医療の分野で大きな可能性を秘めており、以下のような疾患の治療に期待が寄せられています。
・低酸素性虚血性脳症
・小児脳性麻痺
・自閉症スペクトラム障害(ASD)
実際の治療実績では、低酸素性虚血性脳症や脳性まひなどで改善効果が報告されています。
最新の研究動向では、自閉症スペクトラム障害(ASD)に対するさい帯血治療の可能性が注目されており、国内でも臨床研究が進行中です。
さい帯血治療は今後さらなる発展が期待される分野であり、研究と臨床応用が拡大されていくでしょう。
赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?
赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。
幹細胞は新しい医療への活用が進められており、もしもの時に役立てられる可能性があります。
- 出産後わずか数分の間にしか採取できない貴重な赤ちゃんのものです。
- 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
- どちらにも幹細胞がたくさん含まれています。
- 再生医療分野など、さまざまな活用が進んでいます。
- それぞれ異なる幹細胞が含まれているため、両方を保管しておくことで将来の利用の選択肢が広がります。
実際に保管・利用した方のお声
出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。

高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま
さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています
元気に産まれたと思っていましたが、生後半年頃から左手をほとんど使おうとしないことに気付き、1歳頃にやはり何かおかしいと思ってMRIを撮ってもらうことにしました。結果1歳5ヶ月で脳性まひとわかりました。
2歳の誕生日にステムセルからハガキが届き、出産時に保管したさい帯血がもしや役に立つのではと思い至りステムセルに問い合わせました。ちょうど臨床試験への参加者を募集していて、運よく2歳5ヶ月のときに参加することができました。
輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。
さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。
その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。
医師からのメッセージ

総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生
応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療
近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。
さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
保管するなら、ステムセル研究所の「HOPECELL(ホープセル)」
株式会社ステムセル研究所が提供する「さい帯・さい帯血ファミリーバンクHOPECELL(ホープセル)」は、日本国内で最も選ばれている保管サービスです。
ステムセル研究所は、25年以上の保管・運営実績がある日本初のさい帯血バンクで、国内最多となる累計80,000名以上のさい帯血を保管しています。

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国内では脳性まひに対する、赤ちゃんご自身やごきょうだいのさい帯血投与の研究が行われています。海外の臨床研究では、投与により運動機能および脳神経回路の改善が報告されています。また自閉症スペクトラム障害(ASD)に対して、さい帯血の投与によりコミュニケーション能力や社会への順応性が向上する可能性が期待されており、大阪公立大学にてお子さまご自身のさい帯血を投与する臨床研究が開始されます。

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無料パンフレットをお送りします!
さい帯・さい帯血保管についてより詳しく知っていただけるパンフレットをご自宅へお送りします。
赤ちゃんの将来に備える「さい帯・さい帯血保管」をぜひ妊娠中にご検討ください。

この記事の監修者
医学博士 伊沢博美 先生
経歴
神宮外苑Woman Life Clinic 院長
獨協医科大学医学部卒業、医学博士。
日本再生医療学会再生医療認定医、日本抗加齢医学会専門医。順天堂医院、婦人科・内科健診施設、再生医療等提供機関に勤務。
2020年に『神宮外苑Woman Life Clinic』を開設。女性内科・不妊・更年期障害など女性特有の健康課題に対し、一人ひとりに合わせた医療ソリューションを提供。
資格
医学博士/日本再生医療学会再生医療認定医/日本抗加齢医学会専門医/遺伝子細胞治療認定医