さい帯血は自閉症スペクトラム障害(ASD)に有効?研究結果や治療例を紹介

記事監修者:医学博士 伊沢博美 先生
医学博士/日本再生医療学会再生医療認定医/日本抗加齢医学会専門医/遺伝子細胞治療認定医

「さい帯血は自閉症スペクトラム障害(ASD)の治療に使えるって本当?」
「本当に効果はある?」
「研究事例を知りたい」
このような疑問や悩みを抱えているのではないでしょうか。
自閉症スペクトラム障害(以下ASD)の治療法として、さい帯血の可能性が注目されています。
実際に、さい帯血を用いた治療研究が進められており、有効性が示され始めてるのです。
そこで本記事では、さい帯血とASDに関する以下の内容をくわしく解説していきます。
・さい帯血によるASD治療の現状
・研究事例の紹介
・さい帯血保管の選択肢
この記事を読むと、さい帯血の重要性がわかり、保管するか判断できるようになりますよ。
【研究結果】さい帯血は自閉症スペクトラム障害(ASD)の治療に期待されている
ASDは、社会性や言語能力、認知能力に影響を与える発達障害のひとつです。
現在ASDに対する確立された原因療法はありませんが、さい帯血を用いた新しい治療法の開発が進められています。
さい帯血には、免疫を調整する細胞や神経系の再生を促進する可能性のある幹細胞が含まれており、ASDの症状改善が期待されているのです。
日本でも2024年10月に、大阪公立大学医学部附属病院において、国内初の臨床研究「自閉症スペクトラム障害に対する自家臍帯血有核細胞を用いた治療法の開発」が始まっています。(※1)。
(※1)出典:臨床研究等提出・公開システム 大阪公立大学医学部附属病院 中村 博亮「自閉症スペクトラム障害に対する自家臍帯血有核細胞を用いた治療法の開発」
さい帯血の投与による自閉症スペクトラム障害(ASD)治療の3つの研究事例
実際にASDに対して、さい帯血を利用した研究を3つ紹介します。
順番にくわしく見ていきましょう。
研究事例1
ひとつめの事例は、アメリカの研究チームによって行われた研究です。
平均年齢4.6歳のASDの症状がある子ども25人を対象として、自身の臍帯血を投与する臨床試験が実施されました。
投与前、投与後6か月、12か月の時点で行動や機能のテストを実施した結果、
・安全性が高い
・子どもへの負担も少ない
ことが確認され、
・社会的コミュニケーション能力
・言語能力
など、さまざまな面で改善が観察されました。
また非言語的知能指数の高い子どもほど、大きな改善効果が見られる傾向がありました。
研究事例2
ニコロズは3歳でASDと診断された男児です。
従来の療法では大きな改善が見られなかったため、両親はさい帯血を使った治療を選択しました。
さい帯血治療の結果、ニコロズの状態は大きく改善して、
・語彙が増えた
・短い文で会話ができるようになった
・読み書きや計算もできるようになった
・感情の爆発もなくなった
などの効果が見られ、通常の学校に通えるように。
今後のさらなる研究が期待されています。
研究事例3
デューク大学が行った研究では、180人のASD児を対象にさい帯血の効果を調査しました。
この研究では、知的障害のないASD児(非言語性IQ70以上)に対して、さい帯血の投与が効果的である可能性が示されています。
具体的には、
・コミュニケーション能力の向上
・注意力の改善
が観察されました。
一方でIQ70以下のASD児には大きな改善が見られなかったため、今後、より大規模な研究が計画されています。
さい帯血の投与による治療例は「ASD」だけではありません。
ほかの症例に関する事例(再生医療)を知りたい人は、下記も参考にしてくださいね。
本人・家族のためにさい帯血を使うなら、民間バンク
さい帯血の保管方法には、公的バンクと民間バンクの2種類があります。
「公的バンク」は、第三者のために無償でさい帯血を提供する事業者であり、提供者本人や家族は使用できません。
そこで、本人や家族の将来の治療のためにさい帯血を使用したい場合は「民間バンク」への保管が必要です。
民間バンクは有料ですが、長期間(目安20年)保管され、必要時に本人や家族のために使用できます。
どちらにさい帯血を保管するかは、家族の将来や経済的な問題を考慮して判断しましょう。
民間バンクへのさい帯血保管費用について、くわしく知りたい人は下記も参考にしてください。
民間バンクにさい帯血保管をしたの声
ここでは、実際にステムセル研究所でさい帯血を保管した人の声を見てみましょう。
以下は、保管した人の声を一部抜粋・編集したものです。
1人目の出産前に、さい帯血のことを知りました。
生まれて来る子がこの先、何十年と生きていくうえで、ほんの数%の確率かもしれないけれど病気になったとき、保管しなかったことを後悔するという思い。
生まれてくる子どものために、初めてなにかしてあげられるという思いで保存を決めました。
この先、2人の子どもに何があるかわかりませんが、保存したさい帯血を使うことなく健康で元気に育ってくれればと思っています。
さい帯血の保管には、上記のように家族の命を守るといった大切な役割がありますが、デメリットも存在します。
くわしく知りたい人は下記も見てくださいね。
自閉症スペクトラム障害(ASD)とさい帯血に関するQ&A
ここではASDとさい帯血について、よくある3つの質問をまとめました。
順番に見ていきましょう。

研究所

研究所

研究所
国内では、さい帯とさい帯血をあわせて保管できるのはステムセル研究所のみです。
まとめ
さい帯血を用いた自閉症スペクトラム障害(ASD)の治療研究が進展しています。
おもな研究成果は以下のとおりです。
・社会的コミュニケーション能力の向上
・言語能力の改善
・注意力の向上
ただし、知的障害を伴うASD児には大きな改善が見られないなど、効果には個人差があることも事実です。
本人や家族のためにさい帯血を使用したい場合は「民間バンク」への保管が必要です。
費用はかかりますが、必要なときに使用できます。
さい帯血の保管は、将来の治療の可能性を広げる選択肢のひとつです。
ASDの研究は日々進んでおり、さい帯血を用いた治療法の開発も期待されています。
子どもや家族の将来のために、さい帯血の保管を検討してみてくださいね。
赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?
赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。
幹細胞は新しい医療への活用が進められており、もしもの時に役立てられる可能性があります。
- 出産後わずか数分の間にしか採取できない貴重な赤ちゃんのものです。
- 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
- どちらにも幹細胞がたくさん含まれています。
- 再生医療分野など、さまざまな活用が進んでいます。
- それぞれ異なる幹細胞が含まれているため、両方を保管しておくことで将来の利用の選択肢が広がります。
実際に保管・利用した方のお声
出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。

高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま
さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています
元気に産まれたと思っていましたが、生後半年頃から左手をほとんど使おうとしないことに気付き、1歳頃にやはり何かおかしいと思ってMRIを撮ってもらうことにしました。結果1歳5ヶ月で脳性まひとわかりました。
2歳の誕生日にステムセルからハガキが届き、出産時に保管したさい帯血がもしや役に立つのではと思い至りステムセルに問い合わせました。ちょうど臨床試験への参加者を募集していて、運よく2歳5ヶ月のときに参加することができました。
輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。
さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。
その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。
医師からのメッセージ

総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生
応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療
近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。
さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
保管するなら、ステムセル研究所の「HOPECELL(ホープセル)」
株式会社ステムセル研究所が提供する「さい帯・さい帯血ファミリーバンクHOPECELL(ホープセル)」は、日本国内で最も選ばれている保管サービスです。
ステムセル研究所は、25年以上の保管・運営実績がある日本初のさい帯血バンクで、国内最多となる累計80,000名以上のさい帯血を保管しています。

研究所

研究所
国内では脳性まひに対する、赤ちゃんご自身やごきょうだいのさい帯血投与の研究が行われています。海外の臨床研究では、投与により運動機能および脳神経回路の改善が報告されています。また自閉症スペクトラム障害(ASD)に対して、さい帯血の投与によりコミュニケーション能力や社会への順応性が向上する可能性が期待されており、大阪公立大学にてお子さまご自身のさい帯血を投与する臨床研究が開始されます。

研究所
無料パンフレットをお送りします!
さい帯・さい帯血保管についてより詳しく知っていただけるパンフレットをご自宅へお送りします。
赤ちゃんの将来に備える「さい帯・さい帯血保管」をぜひ妊娠中にご検討ください。

この記事の監修者
医学博士 伊沢博美 先生
経歴
神宮外苑Woman Life Clinic 院長
獨協医科大学医学部卒業、医学博士。
日本再生医療学会再生医療認定医、日本抗加齢医学会専門医。順天堂医院、婦人科・内科健診施設、再生医療等提供機関に勤務。
2020年に『神宮外苑Woman Life Clinic』を開設。女性内科・不妊・更年期障害など女性特有の健康課題に対し、一人ひとりに合わせた医療ソリューションを提供。
資格
医学博士/日本再生医療学会再生医療認定医/日本抗加齢医学会専門医/遺伝子細胞治療認定医