さい帯血は脳性まひに有効?研究結果や治療実績を紹介

記事監修者:医学博士 伊沢博美 先生
医学博士/日本再生医療学会再生医療認定医/日本抗加齢医学会専門医/遺伝子細胞治療認定医

「さい帯血は脳性まひの治療に有効?」
「赤ちゃんの将来のために、さい帯血を保管すべき?」
「本当に効果があるの?」
このように考えているのではないでしょうか。
さい帯血治療では、脳性まひをはじめとするさまざまな疾患の治療に活用される可能性が注目されています。
しかし、その効果や実用性については不明確な部分も多いですよね。
そこで本記事では、以下の内容をくわしく解説していきます。
・脳性まひに対するさい帯血治療の最新の研究結果
・実際の治療事例と効果
・保管したさい帯血の利用法
この記事を読むと、さい帯血の有効性がわかり、保管するか判断できるようになりますよ。
【最新】脳性まひに対するさい帯血の臨床研究結果
高知大学が実施した国内初の臨床研究で、脳性まひの子どもに対するさい帯血投与の効果が明らかになりました。
研究には1歳半から6歳までの6名が参加し、3年間の経過観察が行われています。
歩行やジャンプといった全身の動きを数値化した「GMFM-66スコア」が、年を追うごとに着実に向上。
さらに発達検査においても、
・言語・社会性の向上
・知能指数の上昇
が認められています。
深刻な副作用は報告されておらず、安全性も確認できています。
高知大学では、治療効果をより確実に証明するために、より多くの子どもたちを対象とした研究が進行中です。
また、兄弟姉妹のさい帯血を使用する新たな研究も始まっています。
出典:ステムセル研究所「さい帯血情報」Vol.125(詳細版)
脳性まひの治療にさい帯血を使用した3つの事例
実際に、脳性まひに対してさい帯血が使われた治療実績を3つ紹介します。
順番に見ていきましょう。
事例1
ひとつめの事例は、きょうだいの臍帯血を使用するオーストラリア初となった治療例です。
対象となったのは、生後18か月の男の子で、臨床研究の内容は以下のとおり。
症状 | 左半身(足や手など)をうまく使えない |
診断結果 | ・胎内で脳卒中を起こしていたことが判明 ・左片脳性麻まひと診断される |
治療までの過程 | 2人目の子どもを出産する際に、さい帯血を採取して投与 |
投与後の効果 | ・左腕の力が入るようになり、動きが目に見えてよくなった ・知的能力が高まった ・積極的になった |
両親の声 | 息子にはできないのでは、と心配していたすべてのことができるようになったと考えている |
出典:Parent’s Guide to Cord Blood Foundation「ブローディの脳性麻痺へのきょうだい臍帯血療法」
事例2
2つめに、高知大学で行われた臨床研究をご紹介します。
対象となったのは妊娠40週で生まれた女の子で、臨床研究の内容は以下のとおり。
症状 | ・左手をほとんど使おうとしない ・左手と左足にまひがあり、歩行時に転倒を繰り返す |
診断結果 | 1歳5か月で脳性まひと診断 |
治療までの過程 | 出産時に保管していたさい帯血の活用を検討し、2歳5か月で臨床研究に参加 |
投与後の効果 | ・投与翌日から転倒回数が減少 ・両手でおもちゃを掴めるようになった ・まひ症状が大幅に改善 ・現在は地域の小学校の通常学級に通学中 |
両親の声 | 出産時のさい帯血保管を保険のつもりで行っていたが、実際に治療に活用できてよかったと感じている |
出典:ステムセル研究所「さい帯血情報」2023年6月号 Vol.126
事例3
米国デューク大学の「拡大アクセス制度」で治療を受けた事例をご紹介します。
拡大アクセス制度は、通常の臨床試験の基準に満たない、脳性まひや脳障害をもつ「26歳未満」の子どもにさい帯血投与の機会を提供する特別な制度です。
詳細を確認していきましょう。
症状 | 脳障害による機能障害 |
治療までの過程 | ・長期間待機を経て渡米 ・デューク大学の小児科で、保管していた本人のさい帯血投与を実施 |
投与後の効果 | ・2か月後から足の動きが活発化 ・自力での移動が可能に ・認識力の向上 ・表情が明るくなり、笑顔が増加 |
両親の声 | ・投与から3~6か月以降でさらなる効果が期待できると説明を受けた 温かく対応してくれたデューク大学スタッフへの感謝と共に、治療の有効性が証明され、未来の治療につながることを願っている |
※ステムセル研究所調べ
脳性まひなどの治療にさい帯血を利用したいとき
さい帯血の利用法は、保管を依頼した組織や機関によって異なります。
たとえば「ステムセル研究所」の場合では、治療や疾患によって異なりますが、国内では臨床研究の実施期間や条件に合えばさい帯血の利用が可能です。
臨床研究に参加できない場合、米国デューク大学でさい帯血投与を受けられる「拡大アクセス制度」もあります。
病状や要望をもとに、今後実施する可能性のある医療施設へ紹介することも可能です。
また、さい帯血を本人やその家族に使うためには「民間バンク」への保管が必要です。
「民間バンク」と「公的バンク」の違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
ステムセル研究所でさい帯血保管をした人の声
ここでは、実際にステムセル研究所でさい帯血を保管した人の声を見てみましょう。
以下は、保管した人の声を一部抜粋・編集したものです。
初めて妊娠がわかったとき、この命を守ってあげたいと思いました。
さい帯血は未知数の宝箱です。
彼女が使い道を決められるまで大切に保管してあげたいと思い、ステムセル研究所にお願いしました。
将来は公的、民間の区切りなく、いろいろな形で使えるといいなと思っています。
さい帯血には、赤ちゃんや家族の命を守る大きなメリットがありますが、同時にデメリットもあります。
デメリットも知って、納得したうえでさい帯血を保管しましょう。
脳性まひに対するさい帯血利用のQ&A
ここでは脳性まひに対するさい帯血利用について、よくある3つの質問をまとめました。
順番に見ていきましょう。

研究所
国内の臨床研究に参加できない場合は、米国デューク大学でさい帯血投与を受けられる「拡大アクセス制度」もあります。

研究所
国内でも、高知大学にて脳性麻痺への投与が行われ、リハビリ単独以上の運動能力の改善の可能性が報告されています。

研究所
保管者(お子様)のごきょうだいの白血病に対しては白血球の型(HLA)が適合すれば利用の可能性がございます。
また、自閉症スペクトラム障害に対して、大阪公立大学により、当社で保管をされている方を対象とした臨床研究が開始されています。
まとめ
脳性まひの治療におけるさい帯血の有効性が、最新の研究結果や実際の治療事例から明らかになってきています。
高知大学の臨床研究では、さい帯血投与後に全身の動きや言語・社会性、知能指数の向上が確認されました。
実際の治療事例では、以下のような効果が報告されています。
・まひ症状の改善
・運動機能の向上
・知的能力の向上
・表情の明るさや積極性の増加
さい帯血の利用には、臨床研究への参加や海外の拡大アクセス制度の活用など、複数の選択肢があります。
将来の可能性に備え、子どもの健康と未来を守るための選択肢のひとつとして、さい帯血保管を検討しましょう。
赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?
赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。
幹細胞は新しい医療への活用が進められており、もしもの時に役立てられる可能性があります。
- 出産後わずか数分の間にしか採取できない貴重な赤ちゃんのものです。
- 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
- どちらにも幹細胞がたくさん含まれています。
- 再生医療分野など、さまざまな活用が進んでいます。
- それぞれ異なる幹細胞が含まれているため、両方を保管しておくことで将来の利用の選択肢が広がります。
実際に保管・利用した方のお声
出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。

高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま
さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています
元気に産まれたと思っていましたが、生後半年頃から左手をほとんど使おうとしないことに気付き、1歳頃にやはり何かおかしいと思ってMRIを撮ってもらうことにしました。結果1歳5ヶ月で脳性まひとわかりました。
2歳の誕生日にステムセルからハガキが届き、出産時に保管したさい帯血がもしや役に立つのではと思い至りステムセルに問い合わせました。ちょうど臨床試験への参加者を募集していて、運よく2歳5ヶ月のときに参加することができました。
輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。
さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。
その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。
医師からのメッセージ

総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生
応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療
近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。
さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
保管するなら、ステムセル研究所の「HOPECELL(ホープセル)」
株式会社ステムセル研究所が提供する「さい帯・さい帯血ファミリーバンクHOPECELL(ホープセル)」は、日本国内で最も選ばれている保管サービスです。
ステムセル研究所は、25年以上の保管・運営実績がある日本初のさい帯血バンクで、国内最多となる累計80,000名以上のさい帯血を保管しています。

研究所

研究所
国内では脳性まひに対する、赤ちゃんご自身やごきょうだいのさい帯血投与の研究が行われています。海外の臨床研究では、投与により運動機能および脳神経回路の改善が報告されています。また自閉症スペクトラム障害(ASD)に対して、さい帯血の投与によりコミュニケーション能力や社会への順応性が向上する可能性が期待されており、大阪公立大学にてお子さまご自身のさい帯血を投与する臨床研究が開始されます。

研究所
無料パンフレットをお送りします!
さい帯・さい帯血保管についてより詳しく知っていただけるパンフレットをご自宅へお送りします。
赤ちゃんの将来に備える「さい帯・さい帯血保管」をぜひ妊娠中にご検討ください。

この記事の監修者
医学博士 伊沢博美 先生
経歴
神宮外苑Woman Life Clinic 院長
獨協医科大学医学部卒業、医学博士。
日本再生医療学会再生医療認定医、日本抗加齢医学会専門医。順天堂医院、婦人科・内科健診施設、再生医療等提供機関に勤務。
2020年に『神宮外苑Woman Life Clinic』を開設。女性内科・不妊・更年期障害など女性特有の健康課題に対し、一人ひとりに合わせた医療ソリューションを提供。
資格
医学博士/日本再生医療学会再生医療認定医/日本抗加齢医学会専門医/遺伝子細胞治療認定医