「帝王切開とはどのような出産方法なのだろうか」
「帝王切開はどんなときに適用されるのだろう」
「リスクはあるの?」
と心配になっていませんか。
帝王切開とは、母体の腹部と子宮を切開して胎児を外科的に取り出す手術です。
「自然分娩では危険が伴う」と医師によって判断されたとき、または母体と赤ちゃんに迫った危険を回避するための手段ともいえます。
帝王切開が適用されるケースは「母子の健康状態」「分娩進行の遅れ」などさまざまです。
またリスクは大きく分けて4つあり、帝王切開を行う前に確認しておきたい内容です。
この記事では、おもに以下の内容を解説していきます。
・帝王切開が適用される理由
・4つのリスク
・適用される確率
この記事を読むと、帝王切開に関する知識を身につけられ、帝王切開が適用された場合も落ち着いて対応できるようになりますよ。
【種類別】帝王切開になる理由
帝王切開には、あらかじめ日程を決めて手術する「予定帝王切開」、自然分娩での出産がむずかしいと医師が判断した場合に適応される「緊急帝王切開」の2種類があります。
それぞれ帝王切開をする理由には、以下のようなものがあげられます。
種類 | 理由 | 詳細 |
予定帝王切開 | 逆子 | 胎児の頭が母体の骨盤に対して上の位置にある状態 |
帝王切開の経験あり | 過去の傷が開く可能性がある | |
前置胎盤 | 胎盤が子宮の出口を塞いでいる状態 | |
多胎妊娠 | 双子以上を妊娠している状態 | |
母子の健康状態 | 母体の心疾患や胎児の先天性疾患など | |
緊急帝王切開 | 子宮内感染 | 破水から時間経過している状態 |
胎児心拍異常 | 胎児の心拍数が安定しない状態 | |
臍帯脱出 | 胎児より先にへその緒が外へ出ている状態 | |
常位胎盤早期剝離 | 胎児が生まれる前に胎盤が剥がれる状態 | |
遅延分娩 | 子宮口が開かないなどの理由で分娩が遅れている状態 |
帝王切開を行う4つのリスク
前述したように帝王切開を行うと、
・傷跡が残る
・次回出産時も帝王切開
がリスクとしてあげられます。
胎児と胎盤がお腹から出たあと、子宮の収縮によって止まるはずの出血が続いてしまう「弛緩出血」が起こるリスクも高まります。
止血できない場合は輸血が行われるケースも。
また最悪の場合は子宮摘出の可能性がありますが、1万人に1人(0.01%)と確率はかなり低いため、大きな心配は不要です(※1)。
また「血栓症」のリスクも高い傾向にあります。
血栓症は静脈に血液の小さな塊ができて、血管を詰まらせてしまう病気です。
ただでさえ妊娠中は血栓症になりやすい状態にもかかわらず、帝王切開では約1時間ベッドに横になっているため、発症しやすい傾向にあるのです。
最悪の場合は呼吸困難や心肺停止になる可能性も。
対策として術中や術後に弾性ストッキングの着用、マッサージが行われます。
出典(※1)国立研究開発法人国立成育医療センター「弛緩出血」
帝王切開になる確率=22%
厚生労働省が令和4年に報告した資料によると、一般病院と一般診療所における帝王切開の件数は約15,000件であり、分娩全体件数のうち割合は「22%」でした(※2)。
施設の種類 | 分娩全体の件数 | 帝王切開の件数 |
一般病院 | 38,086 | 10,417 |
一般診療所 | 31,847 | 4,671 |
合計 | 69,933 | 15,088 |
また帝王切開による分娩は年々増加傾向であるとも報告されています。
出典(※2) 厚生労働省「令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況」
【入院から退院】帝王切開の流れ
病院によって段取りが異なる場合がありますが、おおまかな予定帝王切開の流れは以下のとおりです。
タイミング | 詳細 |
1.手術前日 | ・同意書の確認 ・入院生活、手術の説明 ・母体のバイタルサインのチェック ・胎児の健康チェック ・手術部位の剃毛とシャワー ・夕食後は絶食 |
2.手術当日 | ・母子の健康状態チェック ・手術着へ更衣 ・麻酔をかける ・尿管カテーテルを入れる ・切開手術 |
3.手術後 | 手術から8日目を目安に退院 |
出典:国立研究開発法人国立成育医療センター「帝王切開ってどんな手術なの?」
帝王切開にかかる時間は出産工程全体で「1.5〜2時間」ですが、麻酔後から出産までは5〜10分程度です(※3)。
予定帝王切開の一連の流れについて、さらにくわしく知りたいという人は下記も参考にしてみてください。
また緊急帝王切開の流れについて知りたいという人は、下記を参考にしてみてくださいね。
出典(※3)順天堂大学医学部附属静岡病院「こうのとりくらぶ」
帝王切開中は痛みを感じない
帝王切開の最中は下半身の麻酔が効いているため痛みはありませんが、触覚は残ります。
万が一、途中で麻酔の効果が薄れてきた場合は下半身の麻酔を追加、もしくは全身麻酔に切り替えたりすることもあるでしょう。
帝王切開後は切開部の痛みだけでなく子宮収縮に伴う痛み、つまり後陣痛を感じる場合もあります。
帝王切開後の痛みやケアの方法について知りたい人は、下記も参考にしてみてください。
帝王切開に対する不安が軽減できるようになりますよ。
帝王切開の費用=約50万円
厚生労働省が令和4年に公表した資料によると、帝王切開にかかる費用(吸引分娩など異常分娩含む)の目安は約50万円と報告されています(※4)。
また帝王切開にかかる費用の内訳は以下のとおりです。
内訳 | 費用 |
入院費 | 約20万円 |
分娩費 | 約6万円(自己負担額) |
新生児管理保育料 | 約10万円 |
産科医療補償制度 | 1.2万円 |
胎児の検査費用 | 約5万円 |
各内訳についてくわしく知りたい人は、下記を下記を参考にしてださい。
きっと帝王切開にかかる費用のイメージをしやすくなりますよ。
出典(※4)厚生労働省「出産費用の実態把握に関する調査研究(令和3年度)の結果等について」
産科医療保障制度とは?ステムセル研究所×創設者インタビュー
産科医療補償制度は、産科医不足の改善や産科医療提供体制の確保を背景に、妊産婦と医療機関が安心して分娩に臨めるよう整備された制度です。
分娩に関連して発症した重度脳性まひの子どもと家族の経済的負担を補償したり、予期せぬトラブルの再発防止や原因分析にも役立てられています。
出産を扱う分娩機関が入る民間の保険制度となっており、現在99.9%の分娩機関が加入。
2009年に制度運用が開始されてから、医療訴訟の件数は半減しており、妊産婦と医療機関双方の安心と信頼を支える制度となっています。
そんな産科医療補償制度の創設に携わった石渡勇先生に、ステムセル研究所が
・制度誕生の背景と思い
・制度開始の成果
について伺ったインタビューの内容を、一部抜粋しました。
“分娩にはリスクがあるものですが、妊婦さんやそのご家族のほとんどが「分娩はうまくいって当たり前」ととらえています。
そのため、思わぬ結果になると医療訴訟に発展するケースが多かったのです。
そこへ過重労働も重なり、産科医も産科医を志す学生も減少し、産科医療は当時、危機を迎えていました。
患者さんにとっても分娩トラブルに対する保障や救済がないのは不安ですよね。
そこで、医療に過失があれば賠償し、過失がなければ救済するシステムを作ることになったのです。
(中略)
一つは医療訴訟が減ったことです。医事紛争や医療訴訟のほとんどは不信感によるもの。
思わぬ結果になったとき、患者さん側からは何がどうだったのかが見えにくいため、「医療に過失があったのでは」と考えてしまいます。
この制度では、不測の事態が起こった際に、原因分析委員会が原因分析報告書を作成し、その内容を別の委員会がしっかり精査した上で、患者さんと医療側にお渡ししています。
医療側と同じ報告書ですから、専門用語の説明も添えています。
その結果、患者さんに状況を正しく理解してもらえるようになり、医療に対する不信感が払拭されたことで、2007年に108件あった産婦人科の訴訟件数は約半数に減りました。
引用:ベビーカレンダー「産科医療の未来を開いた医療現場の思いと制度 - ステムセル研究所設立25周年記念 特別インタビュー -」から一部抜粋”
帝王切開で利用できる保険制度例
帝王切開で出産した場合に利用可能な保険や公的な制度として、大きく以下の6つがあげられます。
項目 | 内容 |
出産育児一時金 | ・健康保険や国民健康保険の被保険者などが出産したときに一時金を受け取れる ・金額=50万円(条件によっては48.8万円) |
高額療養費制度 | 1か月間に支払った医療費が一定の金額以上のとき、超過分を払い戻してもらえる |
限度額適用認定証 | 帝王切開にかかる費用が自己負担限度額の範囲内で精算できる |
医療保険の給付金 | 個人で加入している医療保険の保障内容を確認 |
医療費控除の還付金 | 自己負担額が10万円以上の場合(所得が200万未満の場合はその5%を超えた場合)、還付金が受け取れる |
そのほか保険制度、給付金など | ・育児休業給付金(育休手当) ・傷病手当金 ・出産手当金 |
出典:厚生労働省「出産育児一時金の支給額・支払方法について」「高額療養費制度を利用される皆さまへ」、国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
各制度の利用方法や対象者について、くわしく知りたい人は下記を参考にしてみてください。
損をしないためにも目をとおしておくことをおすすめします。
帝王切開のQ&A
帝王切開について、よくある3つの質問をまとめました。
順番に見ていきましょう。
Q1:どのような麻酔をするの?
帝王切開時に行う麻酔には以下2種類があり、それぞれの特徴は以下のとおりです。
母体への影響 | 胎児への影響 | |
局部麻酔 | 意識あり | ほとんどなし |
全身麻酔 | 意識なし | 出産直後の呼吸が弱くなるケースがある |
全身麻酔の場合、生まれたばかりの胎児の呼吸が弱くなることがありますが、一次的な症状であるため過剰な心配は不要です。
ほとんどの場合、母体・胎児ともに負担の少ない「脊髄くも膜下麻酔」を行いますが、緊急の場合は「全身麻酔」を行うケースもあります。
Q2:傷跡は残るのか?
体質などにより個人差はありますが、傷口は「術後3日」くらいで閉じ、肌の色に近い傷痕になるまで「3か月から1年」かかるといわれています(※5)。
傷跡を目立ちにくくするポイントは、傷口周辺の皮膚を引っ張ったりせず、できるだけ安静にしておくことです。
傷跡ケア専用のテープを使用すると、皮膚の動きをおさえられるでしょう。
傷跡が赤く盛り上がる「肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)」、硬い傷跡ができる「ケロイド」を防げます。
抜糸や抜鈎が終わったら、早めにケアを始めるようにしましょう。
出典(※5)ニチバン株式会社「知っておきたい!手術後の傷あとケア」
Q3:帝王切開の判断はいつする?
「予定帝王切開」「緊急帝王切開」では、それぞれ判断する時期が異なります。
あらかじめ日程を決めて手術する予定帝王切開の場合、分娩する病院にもよりますが「38週前後」を目安に行われます(※6)。
緊急帝王切開は自然分娩中、もしくは妊娠24週以降(病院により異なる)に母子の状態を診て行われるケースも(※7)。
出典(※6、7)国立研究開発法人国立成育医療センター「どうして帝王切開をするの ?」
まとめ
帝王切開とは、母体の腹部と子宮を切開して胎児を外科的に取り出す方法で、母子を守るために行われる手術です。
帝王切開の痛みについて、手術中は麻酔をしているため感じられませんが、術後は傷の痛みや子宮収縮の痛みを感じるでしょう。
また帝王切開の費用相場は「約50万円」といわれていますが、出産育児一時金により50万円(もしくは48.8万円)が支給されるため相殺されます。
さらに人によっては、医療保険やそのほか保険制度も適用されるため、経済的な負担は軽いといえるでしょう。
ただし帝王切開には、以下4つのようなリスクが伴うことも覚えておきましょう。
・傷跡が残る
・血栓症
・弛緩出血
・次回出産時も帝王切開が推奨
帝王切開を行う確率は「約22%」と決して低いといえる数字ではありません。
今回紹介した内容を参考に、帝王切開に備えておきましょう。
チャンスは出産時の一度きり。赤ちゃんの将来の安心に備えるさい帯血保管とは
うまれてくる赤ちゃんやその家族のために、おなかに赤ちゃんがいる時しか準備できないことがあるのをご存知ですか?
それが「さい帯血保管」です。
さい帯血とは、赤ちゃんとお母さんを繋いでいるへその緒を流れている血液のことです。
この血液には、「幹細胞」と呼ばれる貴重な細胞が多く含まれており、再生医療の分野で注目されています。
このさい帯血は、長期にわたって保管することができ、現在は治療法が確立していない病気の治療に役立つ可能性を秘めています。
保管したさい帯血が、赤ちゃんやご家族の未来を変えるかもしれません。
しかし採取できるのは、出産直後のわずか数分間に限られています。
採血と聞くと痛みを伴うイメージがあるかと思いますが、さい帯血の採取は赤ちゃんにもお母さんにも痛みはなく安全に行うことができます。
民間さい帯血バンクなら、赤ちゃん・家族のために保管できる
さい帯血バンクには、「公的バンク」と「民間バンク」の2種類があり、公的バンクでは、さい帯血を第三者の白血病などの治療のために寄付することができます。
一方民間バンクでは、赤ちゃん自身やそのご家族の将来のために保管できます。
現在治療法が確立されていない病気に備える保険として利用できるのが、この民間さい帯血バンクです。
ステムセル研究所は、国内シェア約99%を誇る国内最大の民間さい帯血バンクです。
ステムセル研究所が選ばれる理由
・1999年の設立以来20年以上の保管・運営実績あり
・民間バンクのパイオニアで累計保管者数は7万名以上
・全国各地の産科施設とのネットワークがある
・高水準の災害対策がされた国内最大級の細胞保管施設を保有
・厚生労働省(関東信越厚生局)より特定細胞加工物製造許可を取得
・2021年6月東京証券取引所に株式を上場
詳しい資料やご契約書類のお取り寄せは資料請求フォームをご利用ください。
さい帯血を保管した人の声
■出産の時だけのチャンスだから(愛知県 美祐ちゃん)
■さい帯血が本当の希望になりました(東京都 M・Y様)
※ほかの保管者の声はこちらから
▼さい帯血保管について、もっと詳しく
この記事の監修者
坂田陽子
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー