NIPTとは?検査でわかる病気や的中確率も解説
記事監修者:助産師 坂田陽子 先生
助産師/看護師/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

「NIPTって何を調べる検査なの?」
「検査でどんな病気がわかるのか知りたい」
「費用や精度はどれくらいなんだろう?」
上記のように悩んでいるのではないでしょうか。
出生前検査について調べ始めたばかりだと、専門用語も多く不安になりますよね。
NIPTは妊婦さんの採血のみで受けられる検査で、胎児の染色体異常の可能性を調べられる有用な検査です。
ほかにも本記事では、以下のような内容を解説していきます。
・NIPTでわかる病気一覧
・NIPTの検査精度
・NIPTの費用相場
この記事を読むと、NIPTの基本的な知識が理解でき、検査を受けるかどうかの判断材料を得られますよ。
NIPTとは|3つの染色体異常を調べる検査

NIPT(エヌ・アイ・ピー・ティー)とは、「非侵襲性出生前遺伝学的検査」という正式名称を持つ検査です。
妊婦さんの採血を行い、血液の中に含まれる胎児由来のDNA断片を分析します。
一般的に妊娠10〜16週の間に受けられ、
・21トリソミー(ダウン症候群)
・18トリソミー
・13トリソミー
という3つの染色体の病気の可能性を調べます(※1)。
トリソミーとは、通常2本ある染色体が3本ある状態をさします。
検査結果は「陽性」「陰性」「判定保留」のいずれかで報告され、「陽性」とは染色体の病気の可能性が高いという意味です。
ただし、NIPTはスクリーニング検査であり、診断を確定するものではありません。
陽性という結果が出たときでも、実際には染色体の病気ではない場合もあるため、診断を確定するには羊水染色体検査などの確定検査が必要です。
(※1)出典:佐賀大学医学部附属病院「NIPT(新型出生前診断、非侵襲性出生前遺伝学的検査)」
NIPT検査でわかる病気一覧

NIPTでわかる病気は、前述したように3つの染色体の異常です。
以下は、NIPTで調べられる3つの染色体の病気の基本的な情報をまとめたものです。
| 21トリソミー
(ダウン症候群) |
18トリソミー
(エドワーズ症候群) |
13トリソミー
(パトウ症候群) |
|
| 染色体の特徴 | 21番染色体が3本 | 18番染色体が3本 | 13番染色体が3本 |
| 出生頻度 | 600~800人に1人 | 3,500~8,500人に1人 | 5,000~1万2,000人に1人 |
| 平均寿命 | 約60年 | 生後1年の生存率約10% | 多くは生後1か月未満 |
| おもな身体的特徴 | ・発達の遅れ ・低身長 ・顔貌の特徴 |
・成長障害 ・握り手 |
・小頭症 ・口唇口蓋裂 ・多指症 |
| 主な合併症 | ・心疾患 ・消化管疾患 |
・先天性心疾患 ・呼吸障害 |
・心疾患 ・全前脳胞症 |
出典:厚生労働省「NIPTの対象とされるトリソミーについて」令和元年11月27日
それぞれの病気には異なる特徴があり、出生頻度や症状の重さも異なります。
NIPTの検査精度は90%強

NIPT検査の精度は高く、それぞれの染色体異常の「感度」「特異度」は下表のとおりです。
なお「感度」とは、実際に病気がある場合に正しく陽性と判定できる確率をさし「特異度」とは、病気がない場合に正しく陰性と判定できる確率を意味します。
| 21トリソミー | 18トリソミー | 13トリソミー | |
| 感度 | 99.3% | 97.4% | 97.4% |
| 特異度 | 99.9% | ||
出典:こども家庭庁|周産期委員会報告 「第3回NIPT等の出生前検査に関する専門委員会」令和5年12月14日
しかし一定の頻度で偽陽性が発生し、とくに若い妊婦さんでは陽性的中率が低くなる傾向があります。
陽性的中率とは、検査で陽性と判定された場合に実際に染色体の病気である確率です。
たとえば35歳の妊婦さんで、21トリソミー陽性と出た場合でも、実際に胎児がダウン症候群でない確率が「約20%」あります(※2)。
(※2)出典:厚生労働省|日本産科婦人科学会「NIPT受検者のアンケート調査の結果について」令和3年1月15日
NIPTの費用相場

前提として、NIPTは健康保険の適用外で、全額自己負担の自費診療です。
検査費用は医療機関によって異なりますが、約10万円が相場といえるでしょう。
たとえば国立成育医療研究センターでは約10万円、別府医療センターでは約11万円で検査を受けられます(※3、4)。
ただし検査費用とは別に遺伝カウンセリング料が必要となり、国立成育医療研究センターの例でいうと、
・初回:約1万円
・再診:約5,000~7,000円
かかります。
またNIPT検査の費用は、原則として医療費控除の対象外です(※5)。
NIPTを検討する場合は、費用について受診予定の医療機関に事前に確認しましょう。
(※3)出典:国立研究開発法人国立成育医療研究センター「周産期遺伝外来から検査料金、遺伝カウンセリング料変更のお知らせ(2021年11月)」
(※4)出典:独立行政法人国立病院機構 別府医療センター「出生前検査」
(※5)出典:国税庁「母体血を用いた出生前遺伝学的検査の費用」
NIPTに関するQ&A
ここではNIPTについて、よくある3つの質問をまとめました。
順番に見ていきましょう。
まず医療機関でカウンセリングを受け、検査の目的や結果の意味について説明があります。
その後、採血を行い、約1〜2週間ほどで結果が出ます。結果は医師から直接説明を受け、必要に応じて追加検査や専門的な相談が行われることもあります。
痛みはほとんどなく、採血だけで完了します。
多くの認定施設では、35歳以上の妊婦さんや、超音波検査などで指摘があった方などを対象としています。
ただし、最近では年齢制限を設けず、希望すれば誰でも受けられる医療機関も増えています。
検査の受け方や対象は施設によって違うため、事前に確認することが大切です。
赤ちゃんのDNAが十分に検出できる時期だからです。
検査自体は妊娠中期まで受けられる場合もありますが、結果をもとに次の検査(羊水検査など)を検討することを考えると、できるだけ早い時期に受ける方が多いです。
まとめ
NIPTは、妊婦の血液から胎児のDNA断片を分析し、おもに3つの染色体異常の可能性を調べるスクリーニング検査です。
妊娠10〜16週に実施され、結果は「陽性」「陰性」「判定保留」で報告されますが、確定診断ではないため陽性の場合は羊水検査などの確定検査が必要になります。
| 21トリソミー | 18トリソミー | 13トリソミー | |
| 出生頻度 | 600~800人に1人 | 3,500~8,500人に1人 | 5,000~1万2,000人に1人 |
| 感度
(正しい陽性確率) |
99.30% | 97.40% | 97.40% |
| 特異度
(正しい陰性確率) |
99.90% | ||
| おもな特徴 | ・発達の遅れ ・心疾患 |
・成長障害 ・先天性心疾患 |
・口唇口蓋裂 ・多指症 |
費用は医療機関により異なりますが「10万円」が相場で、カウンセリング料(初回約1万円、再診約5,000〜7,000円)が別途必要です。
健康保険の適用外で、原則として医療費控除の対象にもならない点は留意しておきましょう。
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▼再生医療の力で、生まれてくる赤ちゃんの「もしも」に備える方法
赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?
赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。
幹細胞は新しい医療への活用が進められており、もしもの時に役立てられる可能性があります。
- 出産後わずか数分の間にしか採取できない貴重な赤ちゃんのものです。
- 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
- どちらにも幹細胞がたくさん含まれています。
- 再生医療分野など、さまざまな活用が進んでいます。
- それぞれ異なる幹細胞が含まれているため、両方を保管しておくことで将来の利用の選択肢が広がります。
実際に保管・利用した方のお声
出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。
高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま
さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています
元気に産まれたと思っていましたが、生後半年頃から左手をほとんど使おうとしないことに気付き、1歳頃にやはり何かおかしいと思ってMRIを撮ってもらうことにしました。結果1歳5ヶ月で脳性まひとわかりました。
2歳の誕生日にステムセルからハガキが届き、出産時に保管したさい帯血がもしや役に立つのではと思い至りステムセルに問い合わせました。ちょうど臨床試験への参加者を募集していて、運よく2歳5ヶ月のときに参加することができました。
輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。
さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。
その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。
医師からのメッセージ
総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生
応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療
近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。
さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
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ステムセル研究所は、25年以上の保管・運営実績がある日本初のさい帯血バンクで、国内最多となる累計80,000名以上のさい帯血を保管しています。

研究所
研究所
国内では脳性まひに対する、赤ちゃんご自身やごきょうだいのさい帯血投与の研究が行われています。海外の臨床研究では、投与により運動機能および脳神経回路の改善が報告されています。また自閉症スペクトラム障害(ASD)に対して、さい帯血の投与によりコミュニケーション能力や社会への順応性が向上する可能性が期待されており、大阪公立大学にてお子さまご自身のさい帯血を投与する臨床研究が開始されます。
研究所
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赤ちゃんの将来に備える「さい帯・さい帯血保管」をぜひ妊娠中にご検討ください。
この記事の監修者
助産師 坂田陽子 先生
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー
