分娩室に入ってから赤ちゃんが産まれるまでの平均時間は?出産までの流れも紹介

記事監修者:助産師 坂田陽子 先生
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

分娩室に入ってから赤ちゃんが産まれるまで、どれくらいの時間がかかるのだろうかと疑問に思っていませんか。
分娩にかかる時間(分娩所要時間)は初産婦で「平均13時間」といわれています。
また分娩は、第1期から第3期までの過程に分かれ、出産は進んでいくのです。
この記事では、おもに以下の内容を解説していきます。
- 分娩室に入ってから出産するまでにかかる平均時間
- 自然分娩の進み方
- 分娩に関するよくある質問
この記事を読むと、分娩本番への心構えができるようになりますよ。
分娩所要時間は平均13時間
日本助産師会が、2019年中に出産した人の分娩所要時間についてデータを集計したところ、
- 初産婦:約13時間
- 経産婦:約6時間
という結果が報告されています(※1)。
ただし出産までにかかる時間には、個人差があります。
イメージした流れやペースで進まないのが出産です。
分娩のタイミングは赤ちゃん次第であるため、どちらの場合になってもよいように心構えをしておきましょう。
(※1)出典:日本助産師会「全国助産所分娩基本データ収集システム2019集計結果報告」
自然分娩の進み方【3ステップ】

分娩は以下のように、分娩第1期から3期までの3つの過程に分かれています。
分娩過程 |
説明 |
第1期 |
陣痛が起こり始めてから子宮口が全開になるまで |
第2期 |
いきみから赤ちゃん誕生まで |
第3期 |
赤ちゃんが生まれたあと、さい帯や胎盤が出てくるまで |
各過程の所要時間や進み方を順番に紹介していきます。
分娩第1期
陣痛が起こり始めてから子宮口が全開になるまでを分娩第1期といいます。
初産婦で10〜12時間、経産婦で5〜6時間かかるというのが平均的です(※2)。
このような差が生じる理由として、経産婦は過去の出産経験により産道が拡張しやすくなっていることがあげられます。
子宮口が0〜3cmの間は痛みの感じ方に個人差があり、痛みのないまま進むケースもあります。
痛みがあったとしてもまだまだ序の口。
散歩や食事もできますし、破水していなければ入浴も可能です。
陣痛が10分おき(経産婦は15分おき)、規則的になってきたら、病院に連絡して入院の指示を待ちます(※3)。
子宮口が7〜8cmになると陣痛の間隔は3〜4分になり、背中や腰の痛みが強くなり陣痛中は会話もできないほどに(※4)。
そして痛みはどんどん下方へ移動していきます。
子宮口が9〜10cmでは陣痛が1〜2分おきにやってきます(※5)。
こうなると陣痛の度に力一杯出してしまいたい感覚、いきみの感じがでてきます。
しかし子宮口が全開になる前にいきんでしまうと産道や会陰が傷つく可能性があるため、助産師の指示を待ちましょう。
入院してからは陣痛室で痛みと闘いますが、子宮口が全開になると分娩室へ移動します。
なお、陣痛~分娩まで1部屋で行える「LDR」の場合は、移動不要です。
(※2)出典:和歌山県立医科大学 麻酔科学教室「硬膜外麻酔が赤ちゃんと分娩経過に与える影響は?」
(※3)出典:春日部市役所「~ お産のサインと入院について ~」
(※4)出典:国立成育医療研究センター「出産に際して知っておきたいこと」
(※5)出典:独立行政法人国立病院機構 東広島医療センター「37週になったら」
分娩第2期
いままで出たりひっこんだりしていた赤ちゃんの頭がひっこまなくなると、もうすぐ産まれてくるサインです。
分娩第2期の所要時間は初産婦で2〜3時間、経産婦で1時間程度といわれています(※6)。
陣痛の合間に分娩室へ移動し分娩台に上がり、内診のときのように足を広げて、手元のグリップをしっかり握ります。
助産師の指導のもと陣痛のタイミングに呼吸を合わせてできるだけ長くいきみましょう。
無事赤ちゃんの頭が出ると、お母さんの大仕事は終わりです。
あとは力を入れずに短く呼吸をして、赤ちゃんの身体がすべて出てくるのを待ちます。
必ず終わりがあると信じて痛みに耐えて頑張ってください。
(※6)出典:独立行政法人国立病院機構 東広島医療センター「37週になったら」
分娩第3期
赤ちゃん誕生から、さい帯・胎盤などの排出が完了するまでの時間を分娩第3期といい、初産婦・経産婦ともに所要時間は10~20分です。
さい帯や胎盤は、赤ちゃんが産まれた後3~5分程で出てきます(※7)。
会陰の処置などをしたら、2時間ほどは子宮の収縮や産道の裂傷などによる出血がないか、といったことに注意しながら身体を休める時間です(※8)。
陣痛に耐えた身体は予想以上に負担がかかっています。
しっかり休んで赤ちゃんとの生活に備えてくださいね。
(※7)出典:独立行政法人国立病院機構 東広島医療センター「37週になったら」
(※8)出典:伊勢崎市ホームページ「お産の流れ」
分娩所要時間に影響する重要な3つの要因
分娩所要時間に影響を与えるおもな要因は以下の3点です。
- 母体の年齢
- 体重
- 母体の身長
それぞれの要因について詳しく解説していきます。
要因1:母体の年齢
母体の年齢は分娩所要時間に大きく影響します。
大分大学が行った研究によると、初産婦・経産婦ともに高年齢の方が分娩第2期(いきんで赤ちゃんを産み出す段階)に時間を要するといわれています(※9)。
とくに初産婦の場合、高年齢であるほど分娩第2期が遷延するリスクが高まります(※9)。
年齢による体力や筋力の変化が分娩の進行に影響を与えるためです。
要因2:母体の体重
妊娠中の体重増加量も、分娩所要時間に影響を与える要素です。
妊娠中の過度な体重増加が、全体の分娩所要時間と分娩第1期(子宮口が開く段階)の両方に影響すると研究で示されています(※9)。
赤ちゃんの体重も分娩所要時間に関係し、とくに初産婦では新生児の体重が大きいほど分娩第2期に時間がかかる傾向があります。
過度な体重増加により産道周囲に余分な脂肪がつくことや、大きな赤ちゃんが産道を通過するのに時間を要することが原因と考えられています。
要因3:母体の身長
低身長の経産婦は、分娩所要時間が長引くリスクが高まると証明されています(※9)。 骨盤の大きさや、産道の形状が身長と関連していることが理由として考えられます。
(※9)出典:科学研究費補助金研究成果報告書|大分大学(穴井 孝信)「遷延分娩定義の再評価」平成23年5月27日
分娩所要時間に関するよくある質問
ここでは分娩所要時間について、よくある3つの質問をまとめました。
順番に見ていきましょう。


また、骨盤底筋群の協調的な使い方に慣れていないことや、分娩時の緊張・不安といった心理的要因も影響することがあります【ACOG Practice Bulletin No. 49, 2003】【Caughey AB, Am J Obstet Gynecol. 2009】。

また、産前から呼吸法やリラクゼーション法を練習しておくことで、陣痛時の過緊張を防ぎ、分娩の進行を妨げにくくする効果が報告されています【Artal R, Clin Obstet Gynecol. 2003】【WHO Recommendations on Antenatal Care for a Positive Pregnancy Experience, 2016】。

また、胎児側では、出生直後に一時的な呼吸適応の遅れ(湿性肺や一過性多呼吸など)がみられることがあります【Zhang J, Obstet Gynecol. 2010】【Royal College of Obstetricians and Gynaecologists (RCOG) Green-top Guideline No. 42, 2012】。
まとめ
分娩所要時間は初産婦で平均約13時間、経産婦で約6時間です。
分娩は赤ちゃん次第で進行するため、個人差が大きいのが特徴です。
分娩は第1期から第3期までの3つのステップで進行し、各段階で陣痛の間隔や強さが変化します。
分娩段階 |
初産婦 |
経産婦 |
特徴 |
第1期 |
10~12時間 |
4~6時間 |
陣痛開始から子宮口全開まで |
第2期 |
2~3時間 |
0.5~1時間 |
いきみから赤ちゃん誕生まで |
第3期 |
10~20分 |
10~20分 |
胎盤排出まで |
また分娩時間は母体の、
- 年齢
- 体重
- 身長
に影響され、高年齢や過度な体重増加は分娩時間延長のリスクがあります。
子宮口の開き具合と出産の流れをあらかじめ頭に入れておき、陣痛を上手に乗り越えてください。
どのような出産でも分娩室で迎えるその瞬間は、赤ちゃんにとってもお母さんにとっても命がけの素晴らしい経験になります。
赤ちゃんに会えるその日まで、体を大切にして過ごしましょう。
赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?
赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。
幹細胞は新しい医療への活用が進められており、もしもの時に役立てられる可能性があります。
- 出産後わずか数分の間にしか採取できない貴重な赤ちゃんのものです。
- 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
- どちらにも幹細胞がたくさん含まれています。
- 再生医療分野など、さまざまな活用が進んでいます。
- それぞれ異なる幹細胞が含まれているため、両方を保管しておくことで将来の利用の選択肢が広がります。
実際に保管・利用した方のお声
出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。

高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま
さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています
元気に産まれたと思っていましたが、生後半年頃から左手をほとんど使おうとしないことに気付き、1歳頃にやはり何かおかしいと思ってMRIを撮ってもらうことにしました。結果1歳5ヶ月で脳性まひとわかりました。
2歳の誕生日にステムセルからハガキが届き、出産時に保管したさい帯血がもしや役に立つのではと思い至りステムセルに問い合わせました。ちょうど臨床試験への参加者を募集していて、運よく2歳5ヶ月のときに参加することができました。
輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。
さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。
その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。
医師からのメッセージ

総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生
応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療
近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。
さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
保管するなら、ステムセル研究所の「HOPECELL(ホープセル)」
株式会社ステムセル研究所が提供する「さい帯・さい帯血ファミリーバンクHOPECELL(ホープセル)」は、日本国内で最も選ばれている保管サービスです。
ステムセル研究所は、25年以上の保管・運営実績がある日本初のさい帯血バンクで、国内最多となる累計80,000名以上のさい帯血を保管しています。

研究所

研究所
国内では脳性まひに対する、赤ちゃんご自身やごきょうだいのさい帯血投与の研究が行われています。海外の臨床研究では、投与により運動機能および脳神経回路の改善が報告されています。また自閉症スペクトラム障害(ASD)に対して、さい帯血の投与によりコミュニケーション能力や社会への順応性が向上する可能性が期待されており、大阪公立大学にてお子さまご自身のさい帯血を投与する臨床研究が開始されます。

研究所
無料パンフレットをお送りします!
さい帯・さい帯血保管についてより詳しく知っていただけるパンフレットをご自宅へお送りします。
赤ちゃんの将来に備える「さい帯・さい帯血保管」をぜひ妊娠中にご検討ください。

この記事の監修者
助産師 坂田陽子 先生
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー