赤ちゃんと母体をつなぐさい帯の役割とは?出産後の活用例も紹介

記事監修者:坂田陽子
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

胎児と自分をつなぐさい帯(へその緒)には、どんな役割があるのだろうかと不思議ですよね。
さい帯は、血液や栄養を胎児へ運ぶ重要な役割があります。
また出産後のさい帯は、病気の治療に役立つなど、医療分野への活用もできるのです。
この記事では主に、以下のような内容を解説していきます。
・さい帯がもつ2種類の役割
・さい帯の構造
・自宅でさい帯を保管する方法
この記事を読むと、さい帯の役割がわかり、出産後のさい帯の有効な活用方法も知れますよ。
さい帯の構造【頑丈にできている】
さい帯の血管周囲には、ゼリー状の物質が取り巻いていて、血管が絡まったり、狭まって血液の流れが悪くなったりしないように保護しています。
個人差はありますが、太さは直径1~2cmほど、長さは50cmほどです(※1)。
さい帯は羊水の中で赤ちゃんが自由に動き回ったり、手足を動かしたりして引っ張っても、切れない伸縮性のある頑丈なつくりになっています。
また通常さい帯には、2本の動脈と1本の静脈がありますが、まれに動脈が1本しかない「単一臍帯動脈」の赤ちゃんもいます(※2)。
胎児の成長に影響を及ぼす可能性があるため、妊婦健診で経過観察されますが、多くの場合は正常に発育し、問題なく出産を迎えられます。
そのため、過度な心配をしないようにしましょう。
なお葛飾赤十字産院産婦人科が発表した論文によると、単一臍帯動脈が発生する頻度は「0.2~1%」と報告されています(※3)。
出典:
(※2,3)J-STAGE|葛飾赤十字産院産婦人科(鈴木 俊治,松橋 智彦ほか)「当科における臍帯異常と妊娠予後の検討」日本医科大学医学会雑誌 2007年3巻1号p.20-24
【状況別】さい帯がもつ2種類の役割
さい帯は「妊娠中」には、母体から胎児に酸素や栄養を運ぶ役割と、胎児から母体へと老廃物や二酸化炭素を送る役割を果たします。
また、「出産後」には再生医療の分野で活用が期待できる存在となります。
順番に内容を解説していきます。
状況1:妊娠中
妊娠中のさい帯には、以下3つの役割があります。
・ 呼吸器
・ 消化器
・ 泌尿器
さい帯は、細い「さい帯動脈」2本と、太い「さい帯静脈」1本の血管が螺旋状に絡み合って収納されています。
さい帯静脈には母体から胎児へと流れる血液が通り、胎児に必要な栄養や酸素を胎盤から運ぶ役割があります。
一方さい帯動脈には、胎児から母体へと流れる血液が通っていて、胎児から出た老廃物や二酸化炭素を母体へ送る役割があるのです。
また、さい帯静脈とさい帯動脈を流れる血液は、胎児の血液になります。
さい帯は赤ちゃんの命綱。
少しの異常が大きな危険に繋がる恐れもあるのです。
そのため妊婦健診では超音波を使って、さい帯内の血流を確認する検査も行われます。
状況2:出産後
さい帯には免疫調整作用や抗炎症作用、組織修復作用のある「間葉系細胞」が多く含まれています。
間葉系細胞は、現在は十分な治療法がない病気の治療に役立てることができると期待されており、再生医療の分野でさまざまな臨床試験が行われているのです。
実際に神経性の疾患や呼吸器疾患、細胞治療後の合併症など、多岐にわたる治療での利用が注目されています。
さい帯を医療分野で活用するために、さい帯の保管サービスも開始されました。
さい帯を保管すると、将来の家族が治療を必要とした際に、いつでも取り出して利用できます。
ステムセル研究所のさい帯を用いた医療
ステムセル研究所はさい帯を用いた医療の可能性を追求して、将来的な治療法の開発を目指しています。
具体的な取り組みは以下のとおりです。
取り組み | 詳細 |
ファミリー上清 | 保管したさい帯からエクソソームやサイトカインなどを含む幹細胞培養上清液を製造し、家族で使用する |
再生医療研究 | ・半月板損傷への治療適用(大阪大学との共同研究) ・口蓋裂への治療適用(東京大学医学部附属病院との共同研究) |
出典:ステムセル研究所「ファミリー上清製造サービスのご案内」「2022年3月期 第2四半期 決算説明資料」
さい帯はいつ切るの?
日本では出産後に赤ちゃんの呼吸を確認したら、すぐにさい帯を切ります。
出産後すぐにへその緒を切らなければ、赤ちゃんに血液が行き過ぎて「黄疸」になりやすいという考えがあるからです。
黄疸とは、赤血球に含まれるビリルビンという物質により皮膚が黄色っぽく見える状態のことです。
産院によっては、赤ちゃんのさい帯の拍動が自然に止まるのを待ってから切るケースもあります。
さい帯を通じて血液をお母さんから赤ちゃんに送り終えるのを待つためです。
さい帯を切るときは、血流を専用のクリップなどで止め、臍帯剪刀と呼ばれる医療用のハサミで赤ちゃんのおへそから1cmあたりのところを切ります(※4)。
さい帯には神経が通っていないため、切るときに痛みを感じることはありません。
(※4)出典:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「JMS臍帯クリップ 」
自宅でさい帯を保管する方法
さい帯は胎盤とくっついているため、出産後、胎盤と一緒に体外に排出されます。
赤ちゃんのさい帯(へその緒)は、生後1~2週間前後で自然に取れるでしょう(※5)。
さい帯を保管するポイントは、下記の3点です。
・ 湿気が少ない場所で乾燥、保管する
・ 乾燥、保管の際はガーゼや脱脂綿を使用
・ 保管する際は、乾燥剤も一緒に入れておく
取れたてのさい帯には水分が含まれているため、そのまま保管すると、カビが生えたり虫がわいたりします。
保管前にガーゼや脱脂綿の上で、しっかり乾燥させましょう。
手で触れてみて、カラカラに干からびていれば大丈夫です。
乾燥させたあとは、ケースにガーゼや脱脂綿を敷いて保管しましょう。
カビ防止のために、乾燥剤を入れておくと安心です。
さい帯のケースは小さいため、しまった場所を忘れないようにしてくださいね。
さい帯の保管方法については、以下の記事でも詳しく解説しています。
(※5)出典:東広島医療センター 産婦人科病棟「母親学級パンフレット」
さい帯に関するQ&A
ここではさい帯について、よくある3つの質問をまとめました。
順番に見ていきましょう。

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ただし、出血量が増える、膿が出る、臭いが強くなる、赤ちゃんが痛がる、赤みがある、などの場合は、病院を受診しましょう。

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ステムセル研究所では、10年または20年の保管プランがあり、保管期間を更新することも可能です。

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さい帯は分娩の状況に左右されにくく、比較的保管に至りやすい特徴があります。
まとめ
さい帯は、妊娠中は大切な赤ちゃんとママを繋ぐ命綱の役割を果たしています。
出産後も、現在治療法のない病気に対して、本人や家族の健康を守る役割を果たせる可能性があります。
今までの風習で、出産後は自宅での記念保管のみを考えていた人も、将来へのお守りとしてさい帯血バンクに「保管」する事をあわせて検討してみましょう。(さい帯血バンクに保管しても、自宅用に記念保管するさい帯は残ります。)
さい帯の保管に迷ったら、下記の記事も参考にしてみてください。
赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?
赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。
幹細胞は新しい医療への活用が進められており、もしもの時に役立てられる可能性があります。
- 出産後わずか数分の間にしか採取できない貴重な赤ちゃんのものです。
- 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
- どちらにも幹細胞がたくさん含まれています。
- 再生医療分野など、さまざまな活用が進んでいます。
- それぞれ異なる幹細胞が含まれているため、両方を保管しておくことで将来の利用の選択肢が広がります。
実際に保管・利用した方のお声
出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。

高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま
さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています
元気に産まれたと思っていましたが、生後半年頃から左手をほとんど使おうとしないことに気付き、1歳頃にやはり何かおかしいと思ってMRIを撮ってもらうことにしました。結果1歳5ヶ月で脳性まひとわかりました。
2歳の誕生日にステムセルからハガキが届き、出産時に保管したさい帯血がもしや役に立つのではと思い至りステムセルに問い合わせました。ちょうど臨床試験への参加者を募集していて、運よく2歳5ヶ月のときに参加することができました。
輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。
さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。
その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。
医師からのメッセージ

総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生
応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療
近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。
さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
保管するなら、ステムセル研究所の「HOPECELL(ホープセル)」
株式会社ステムセル研究所が提供する「さい帯・さい帯血ファミリーバンクHOPECELL(ホープセル)」は、日本国内で最も選ばれている保管サービスです。
ステムセル研究所は、25年以上の保管・運営実績がある日本初のさい帯血バンクで、国内最多となる累計80,000名以上のさい帯血を保管しています。

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国内では脳性まひに対する、赤ちゃんご自身やごきょうだいのさい帯血投与の研究が行われています。海外の臨床研究では、投与により運動機能および脳神経回路の改善が報告されています。また自閉症スペクトラム障害(ASD)に対して、さい帯血の投与によりコミュニケーション能力や社会への順応性が向上する可能性が期待されており、大阪公立大学にてお子さまご自身のさい帯血を投与する臨床研究が開始されます。

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無料パンフレットをお送りします!
さい帯・さい帯血保管についてより詳しく知っていただけるパンフレットをご自宅へお送りします。
赤ちゃんの将来に備える「さい帯・さい帯血保管」をぜひ妊娠中にご検討ください。

この記事の監修者
坂田陽子
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー