妊娠後期に起こる貧血の原因とは?対処法や胎児への影響も解説

助産師 坂田陽子 先生

記事監修者:助産師 坂田陽子 先生

助産師/看護師/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

「妊娠後期に入ってから、めまいや立ちくらみがひどい…」
「この貧血って、赤ちゃんに影響はないのかな?」
「妊娠中の貧血はどう対策すればいいの?」

上記のように悩んでいるのではないでしょうか。

妊娠中の貧血は、症状が辛いだけでなく、赤ちゃんへの影響も気になって心配になりますよね。

じつは妊娠後期の貧血には明確な原因があり、適切な対策をとることで症状を改善できます。

そこでこの記事では、おもに以下の内容を解説していきます。

・妊娠後期に貧血が起こる3つの原因
・妊娠後期に起こる貧血の症状
・妊娠後期の貧血対策と胎児への影響

この記事を読むと、貧血の原因が理解でき、安心して妊娠後期を過ごせるようになりますよ。

妊娠後期に貧血が起こる3つの原因

前提として、妊娠後期に貧血が起こる原因には、

・血液疾患
・腎疾患
・ビタミン不足

などがあげられますが、妊婦さんが貧血になる原因の「90%以上」が鉄分不足によるものです(※1)。

鉄分不足になる原因として、おもに以下の3つがあげられます。

・血液量の増加により血液が薄まるため
・胎児の成長に鉄分が必要となるため
・食事から吸収できる鉄分だけでは不足するため

順番に見ていきましょう。

(※1)出典:公益社団法人 日本産婦人科医会「第四回:妊産婦の鉄欠乏性貧血 -産科編-知識のアップデートとより良い診療を目指して」

原因1:血液量の増加により血液が薄まるため

妊娠すると、胎児を育てるために、母体の中を流れる血液の量が大きく増えていきます。

妊娠していないときと比べると、妊娠8〜9か月頃には血液量が約1Lも増え、これは普段の30〜40%も多い量です。(※2)

しかし、血液の中にある赤血球という成分はすぐには増えないため、結果として血液が水で薄めたような状態になってしまうのです。

専門的には「生理的血液希釈」と呼ばれるもので、血液の中の赤血球やヘモグロビンの濃度が薄くなることで、貧血の状態になりやすくなるのです。

じつは血液が薄まること自体は妊娠中の自然な変化ですが、薄くなり過ぎると日常生活に支障が出るため注意が必要になります。

(※2)出典:働く女性の健康応援サイト 妊娠出産・母性健康管理サポート(厚生労働省委託事業)「妊婦貧血」

原因2:胎児の成長に鉄分が必要となるため

妊娠後期に入ると、胎児は大きく成長している段階です。

そのため胎児の血液を作ったり、胎児と母体をつなぐ胎盤を育てるために、多くの鉄分が必要になるのです。

具体的には、妊娠期間全体を通して「約1,000mg」の鉄分が必要で、その内訳は胎児や胎盤の発育に使われる分と、母体の血液量が増える分が含まれます(※3)。

なお鉄分1000mgは、ほうれん草「約50kg分」になる計算です(※4)。

さらに、分娩時の出血による鉄分の喪失にも備える必要があるため、妊娠中はいつも以上に鉄分を蓄えておかなければなりません。

胎児は優先的に母体から栄養をもらうため、自身の体に蓄えられていた鉄分が使われていき、結果として貧血になりやすくなるのです。

(※3)出典:公益社団法人 日本産婦人科医会「第四回:妊産婦の鉄欠乏性貧血 -産科編-知識のアップデートとより良い診療を目指して」

(※4)出典:国立研究開発法人 国立がん研究センター「貧血がある方のお食事」2018月5月23日

原因3:食事から吸収できる鉄分だけでは不足するため

毎日の食事から鉄分をとっていても、じつは体が吸収できる量は限られています。

消化管から吸収される鉄分は、1日当たりわずか1〜2mg程度です(※5)。

しかし、妊娠中に必要な鉄分は妊娠前の「約3倍」にもなるため、普段どおりの食事では追いつきません。

そのため、意識的に鉄分を多く含む食品を選んだり、場合によっては医師から処方される鉄剤を飲む必要が出てくるのです。

実際に妊婦さんの「約4割」が貧血状態にあるというデータもあり、多くの人が鉄分不足に悩まされている現状があります(※5)。

(※5)出典:公益社団法人 日本産婦人科医会「第四回:妊産婦の鉄欠乏性貧血 -産科編-知識のアップデートとより良い診療を目指して」

妊娠後期に起こる貧血の症状

貧血になると、以下のような症状が現れることが多いです。

・めまい、立ちくらみ
・動悸、息切れ
・頭痛
・眠気
・吐き気

赤血球に含まれるヘモグロビンには体中に酸素を運ぶ役割がありますが、貧血で不足してしまうと酸素が行き届かず、動悸や息切れ、めまいなどの症状が起こります。

また脳貧血状態になると眠気や吐き気、頭痛が起こる場合もあります。

妊娠中は市販の頭痛薬を使用できなくなるため、産婦人科で相談して処方してもらいましょう。

妊娠後期の貧血対策

妊娠後期の貧血対策として、おもに以下の3つが重要です。

・ヘム鉄が多く含まれる食品をとる
・ビタミンCをとる
・鉄剤の摂取

ヘム鉄は体内に吸収されやすい成分なので積極的にとるとよいでしょう。

なかでもヘム鉄が多い食品は、肉や魚などの動物性たんぱく質で、レバーや卵黄、あさり、しじみなどにも含まれます。

またビタミンCを一緒にとると、鉄分の吸収がよくなります。

レモンやブロッコリー、パプリカ、かぼちゃなどを鉄分と一緒に取り入れましょう。

貧血の状態によっては、病院で鉄剤処方がされます。

医師の指示のもと服用して、貧血を改善しましょう。

鉄剤を内服するときの副作用として、

・吐き気
・便秘
・便の色が黒くなる

などがあります。

吐き気などでどうしても内服ができない場合には医師へ相談しましょう。

妊娠後期の貧血が胎児へ与える影響

妊娠後期の貧血は、胎児の成長にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。

母体が貧血になると、血液中のヘモグロビンが不足するため、胎児へ十分な酸素や栄養が届きにくくなります。

昭和女子大学の研究論文では、妊娠中の貧血があると、低出生体重児や早産のリスクが増加するという報告も(※6)。

また、鉄分は胎児の神経系の発達にとって欠かせない栄養素ですが、母体の鉄欠乏が重度になると、優先的に胎児へ鉄分を届ける体の仕組みが働かなくなります。

このように、妊娠後期の貧血は胎児の発育や健康にまで影響を与える可能性があるため、適切な管理が大切です。

(※6)出典:J-STAGE|昭和女子大学食健康科学部管理栄養学科(小西 香苗)「妊娠中の鉄剤処方と妊娠前体格との関連」栄養学雑誌,Vol.82 No.5 121-134(2024)

妊娠後期の貧血に関するQ&A

ここでは妊娠後期の貧血について、よくある3つの質問をまとめました。

順番に見ていきましょう。

妊娠後期の貧血の基準値は?
坂田先生
妊娠後期は血液量が増えて血が薄くなるため、軽い貧血になりやすい時期です。

一般的に、血液検査でヘモグロビン値が10.5g/dL未満になると「貧血」と診断されます。

軽度のものから治療が必要なものまで幅がありますが、多くは鉄分を補うことで改善できます。

妊娠後期の貧血をセルフチェックする方法は?
坂田先生
自宅で正確な判断をすることは難しいですが、次のようなサインがあるときは注意が必要です。

・立ちくらみやめまいがする
・動くとすぐに息切れする
・顔色や唇の色が白っぽい
・疲れやすい、だるい

こうした症状が続く場合は、健診のときに医師へ伝えてください。

血液検査で貧血の程度を確認できます。

妊娠後期の貧血で具体的にどんな食べ物をどれだけとったらいい?
坂田先生
鉄分を多く含む食材を意識して取り入れることが大切です。

レバー、赤身の肉、まぐろやかつお、ひじき、ほうれん草、大豆製品などがおすすめです。

吸収をよくするために、ビタミンCを多く含む野菜や果物と一緒に食べると効果的です。

鉄分を多く含む食事を1日2回ほど取り入れるとよいでしょう。

サプリメントを使う場合は、医師に相談してから始めてください。

まとめ

妊娠後期の貧血は、妊婦さんの約4割が経験する症状で、その90%以上が鉄分不足によるものです。

妊娠後期に貧血になりやすい理由は、

・血液量が増加して血液が薄まること
・胎児の成長に鉄分が必要となること
・1日に吸収できる鉄分が1〜2mg程度と限られている

ことなどがあげられます。

貧血になると、

・めまい
・動悸
・息切れ
・頭痛

などの症状が現れ、重度の場合は早産や低出生体重児のリスクが増加します。

対策としては、レバーや卵黄などのヘム鉄が多い食品の摂取や、ビタミンCとの併用による吸収促進が大切です。

貧血が疑われる場合は、医療機関で相談して、鉄剤処方の対策も考えられます。

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この記事の監修者

助産師 坂田陽子 先生

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー