2022年1月31日
切迫早産

誰にでも起こりうる切迫早産!原因は何?

坂田陽子

記事監修者:坂田陽子

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

【ハッピーマタニティライフとはほど遠い!?】

妊娠がわかり幸せな気持ちになったのもつかの間。妊娠初期には多くの人が悪阻や微熱、倦怠感や眠気などに悩まされますよね。妊娠初期は流産にも気を付けなければいけませんが、流産の原因のほとんどは胎児の染色体異常のためお母さんがどれだけ気をつけても防げないことがあります。

妊娠中期になると安定期とも言われ、まだおなかも大きくないので動きやすく悪阻も落ち着き妊娠生活の中で一番心穏やかに生活できる時期ではないでしょうか。
しかし妊娠中期からは早産のリスクも出てきます。

【早産・切迫早産とは】

早産とは、22週以降~37週未満で出産することです。

22週以降であれば肺の機能が発達し始めます。万が一出産になってもNICU(新生児集中治療室)にて治療をすることができます。肺の機能は34週頃には完成しますが、未発達の場合は新生児呼吸窮迫症候群や未熟児無呼吸発作を起こしてしまいます。
28週頃には網膜が完成し光を感じることができるようになりますが、28週未満で生まれてしまうと、網膜の発達が未熟であり、未熟児網膜症を起こしてしまうことがあります。
他にも早産のリスクとして、脳性麻痺、難聴、発達障害になる可能性があります。

28週以降の早産では生存率が95%と高くなるので一つの目安ともされています。

切迫早産とは、22週以降~37週未満で子宮口が開いてしまったり、子宮頚管が短くなってしまったり、おなかの張りや痛み、出血や破水が起き早産になりかけている状態のことをいいます。

上記のように、週数によっては赤ちゃんへの影響もあるため、1日でも長くお母さんのおなかの中で成長できるように安静にしたり治療や手術をしたりします。

【早産・切迫早産の原因】

・多胎妊娠

双子以上の場合、早い段階から子宮が大きくなるのでおなかが張りやすくなります。
また母体、胎児の安全の為に人工早産(人工的に出産させる)になることもあります。

・感染症

早産・切迫早産のおよそ8割は何らかの感染症が原因です。
その中でも『絨毛膜羊膜炎』は誰にでも膣内に常在している善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れて、細菌性膣症を起こすことがあります。
感染症は膣炎→子宮頚管炎→絨毛膜羊膜炎→羊水感染→臍帯炎→胎児感染の順に感染していき感染が広がってきている状態です。
母体や胎児の症状によっては正産期をまたずに出産することになります。
このほか性感染症のクラミジア感染症にも注意が必要です。
おりものの増加や異臭、下腹部痛、頻回なおなかの張りがあるときはすぐに受診するようにしましょう。
膀胱炎の悪化による腎盂腎炎も妊娠中は起こしやすいので注意が必要です。

・妊娠高血圧症候群

血圧が高くなり140/90mmHgを超える状態になります。血流が悪くなるため、胎児に十分な栄養や酸素がいきわたらず発育不良、胎児低酸素を起こしやすくなります。母体にも影響があり脳出血や胎盤早期剥離の原因になり命の危険を伴います。
そのため母子の状態によっては早期に緊急帝王切開になることもあります。

・子宮頚管無力症

陣痛もなく子宮口が開き始め胎児が出そうになっている状態です。
子宮頸がんなどで円錐切除手術をうけたことのある人はリスクが高いと言われています。
子宮頚管を縛る手術をすることで早産を防ぎます。

・子宮の病気、異常

子宮筋腫や子宮の形に異常がある場合は早産のリスクが高くなります。
また前置胎盤の場合は子宮内の中央から上方にある胎盤が子宮口側にあるため正常に出産することができません。妊娠中期から出血を繰り返すことがあり、突然大量出血を認め、母子ともにとても危険な状態になることがあります。前置胎盤と診断されたら医師の指示に従い少量の出血でもあればすぐに受診して下さい。

・高齢出産

胎児の染色体異常、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病(巨大児になりやすい)、前置胎盤、胎盤早期剥離などは年齢が上がるとリスクが高くなると言われています。

・生活環境

無理なダイエットによる栄養不足は胎児の発達不全に繋がります。
喫煙は血流が悪くなり十分な栄養や酸素が胎児に届かないだけでなく、胎盤早期剥離の原因にもなり早産リスクが高くなります。
妊娠前には風邪も引かないほど元気だった人も妊娠中は睡眠不足やストレスで免疫力が下がっていることもあり感染症にかかりやすくなります。
また長時間の立ち仕事や重い荷物の持ち運び、家事や育児でもおなかは張りやすく切迫早産になることがあります。

【最後に】

切迫早産は誰にでも起こります。
事前に気をつけることができるのは規則正しい生活を送り、栄養の偏らない食事をし、禁煙をすることくらいです。ストレスを感じることもあるでしょうし、家族の為に無理をしてしまう時もあるでしょう。
しかし、おなかの中にももう一人大切な家族がいることを理解してもらい、できるだけ無理のない日々を送れることを願っています。

この記事の監修者

坂田陽子

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

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