ご妊娠おめでとうございます。
出産の準備は整いましたか?赤ちゃんが産まれてから必要なベビー用品について、いろいろ頭を悩ませているお母さんも多いでしょう。
それらベビー用品は赤ちゃんが産まれた後に買い足すこともできますが、今回は赤ちゃんがおなかの中にいる間にぜひ知っておいて欲しいお話をご紹介します。
臍帯血とは
「臍帯血」という言葉を知っていますか?
赤ちゃんと繋がっているへその緒は胎盤に繋がっていて、その中を赤ちゃん自身の血液が流れています。この血液が臍帯血です。臍帯血によって酸素や栄養が赤ちゃんに届けられ、老廃物や二酸化炭素は胎盤を通してお母さんに戻されます。この臍帯血の中には、体のさまざまな種類の細胞に分化することができる幹細胞(ステムセル)が含まれています。
臍帯血は出産時に採取して凍結保管しておくことができます。へその緒から臍帯血を採取することができるのは赤ちゃんが産まれた後の数分間です。
通常、へその緒は分娩が終わると切り取られ、一部を記念にもらえる場合以外は廃棄されてしまいます。臍帯血を保管することができるのは赤ちゃんの一生に一度のチャンスなのです。
公的バンクと民間バンク
臍帯血を保管する方法は2つあります。
①公的バンクに寄付をする
全国の一部の提携病院で出産した際、臍帯血を公的バンクに無償で提供することができます。公的バンクで保管された臍帯血は主に白血病などの血液疾患で臍帯血移植が必要な方の治療に役立てられます。
骨髄移植よりもリスクなく採取することができ、解凍してすぐに使えるのがメリットで、現在は移植実績の数に対して十分な保管数が確保されています。その他、血液に関する研究やiPS細胞の作成などの研究に利用されているようです。
なお、公的バンクに提供した時点で所有権を放棄することになるので、自身の赤ちゃんに使うことはできません。
②民間バンクで保管する
民間バンクと事前に契約をし、有償で臍帯血を保管することができます。民間バンクで保管する最大のメリットは赤ちゃん自身(またはその家族)のために使えるということです。
保管している臍帯血は主に再生医療への利用を目的とし、現在、低酸素性虚血性脳症や脳性麻痺などの治療に役立てられようとしています。
臨床研究の段階ではありますが、脳性麻痺のお子様に臍帯血を投与した結果、麻痺が改善し、運動能力やコミュニケーション能力が向上した例も報告されています。
臨床研究では自身の臍帯血を用いることが基本で、現在、治療法の見つかっていない重大な病気に対して使用するという新たな可能性を持っているといえます。臍帯血は長期で凍結保管しておくことも可能ですので、再生医療の発展を期待して保管を継続することができます。
赤ちゃんが健康に産まれたら使わなくて済むものですが、もしもの時のお守り、保険という意味で保管するご家族が増えています。
臍帯血の保管
では、実際に臍帯血はどのように保管されるのでしょうか?
まず無事に出産が終わり、お母さんがほっとしている数分間、まだ胎盤が子宮内に残っているうちに採取します。へその緒にある血管に針を刺して採取しますが、痛みはありません。つまり、お母さんにも赤ちゃんにも痛みや危険がなく採取することができるのです。
採取された臍帯血は速やかにバンクに送られ、必要な検査や処理を行い、超低温の液体窒素タンク内で保管されます。
さいごに
臍帯血について、ご存知なかった方にも臍帯血の可能性が伝わったでしょうか。
臍帯血を採取できるのは一生に一度しかない貴重な機会となります。
第三者のために公的バンクで寄付をしたい、自身の赤ちゃんのために民間バンクで保管したいと思われた方は、ぜひおなかの中に赤ちゃんがいるうちにご家族と話し合ってみてください。
この記事の監修者
坂田陽子
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー