高齢出産のリスクとは?受けられる検査や費用について

坂田陽子

記事監修者:坂田陽子

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

不妊治療の技術の進歩などから、最近は40代で出産をされる方も多くなってきました。
ただ、適齢期の出産とは違って、高齢出産に伴うリスクや注意点など、デメリットは少なからずあります。その反面、それだけ経験が豊富であるという面もありますので、トラブルに対して、慌てずに行動できたり、若い世代とは違って、安定した収入があり経済的にも余裕がありますので、必ずしもデメリットだけではありません。

より安全な出産を迎えるため、高齢出産のリスクについて正しい理解を持ち、これまでの人生経験を生かして、大きな気持ちで出産を迎えていただきたいと思います。

妊活中の方、これからご出産の方向けに

・高齢出産の定義

・高齢出産において配慮することや心構え

・高齢出産で受けられる検査や費用

なども含め、気になる点をまとめてみましたので、高齢出産について、一緒に勉強してみませんか?

 

高齢出産とは?

高齢出産と聞くと、なんとなく30代後半くらいかな?という印象です。では、具体的に何歳から高齢出産といわれ、その割合はどのくらいになるのでしょうか?

・高齢出産とは、何歳から?

日本産婦人科学会によると、初めて出産する35歳以上の人を高齢初産婦とされ、一般的には35歳以上の妊婦が初めて出産することを高齢出産とし、初産婦35歳以上、経産婦40歳以上の妊娠を高齢妊娠としています。

一般的にいわれる高齢出産は、医学用語ではありません。

・高齢出産の割合は?

厚生労働省の調査によると、高齢出産は1990年代には出産数全体の数%でしたが、2010年には20%台、2019年には約30%になり、3〜4人に1人は高齢出産となっています。

 

高齢妊娠・出産でのさまざまな心構えとは?

高齢出産となった場合に一番気になる点、それはリスクや注意点ですよね。また、年齢とともに体の変化もあり、いくつかのリスクは伴います。若いときに比べると、良い部分も悪い部分もあるでしょう。

①高齢出産だからできること

・豊かな人生経験を生かす。

より豊かな人生経験を重ねていらっしゃった上での妊娠、出産です。精神的な豊かさが、ご妊娠生活や出産を支えてくれるはずです。

また、社会人経験が豊富ですと、経済的な余裕も大きくなりますので、より選択肢や自由度のある妊娠、出産、育児生活が可能かと思います。

②リスクや注意点

20代の妊娠、出産に比べると、さまざまな先天的な障害や病気が起こりやすくなります。

例えば、以下のような疾患などです。

・ダウン症

母親の年齢が高くなると、卵子も老化し、染色体の異常が起こりやすくなるといわれています。

私たちの体をつくる細胞の中には、遺伝情報がつまった染色体があります。父親と母親からもらう染色体が対になり、全部で23対、46本の染色体を持つのが普通です。受精卵ができるときに、なんらかの異常が生じ、21番染色体が余分にある場合をダウン症といいます。

ただし、母体の年齢にかかわらず、先天性異常を持つ赤ちゃんは生まれます。その割合は、新生児全体のおよそ3~5%といわれています。障害や病気の程度や種類はさまざまですが、珍しいこととは言い切れません。

・心疾患

血液の流れがスムーズにいかず、呼吸機能や運動機能に問題が生じる、動脈管開存症、心室中隔欠損症、心房中隔欠損症などの先天的な心臓病の可能性が増えるといわれています。

・流産の可能性が高くなる

高齢妊娠では、染色体の異常が起きやすくなるため、母親の年齢が高いほど流産の可能性が高くなるといわれています。妊娠初期に起きる流産の多くは、胎児(受精卵)の染色体異常といわれています。

高齢出産で受けられる検査と費用

このように、高齢出産では胎児にさまざまな先天性リスクが起こる可能性が高くなります。高齢出産で赤ちゃんをお迎えする予定の方は、「私の赤ちゃんは大丈夫?」と不安な気持ちもありますよね。そんな時、赤ちゃんの先天的な障害や病気を知る方法として、赤ちゃんがおなかにいる時に受けられる「出生前診断」をご存じですか?出生前診断の種類や、気になる費用について解説していきます。

出生前診断、どんな検査がある?

・血清マーカー検査

妊娠15週からおよそ18週までに母体血液中の3つまたは4つの物質を測定し、胎児がダウン症、18トミソリー、神経管閉鎖不全に罹患している確率をそれぞれ数字で得られるものです。

・新型出生前診断NIPT

母体から採取した血液によって、胎児の染色体の数の異常を調べる検査です。この検査

は、妊娠初期に受けることができ、母体の血液を採取することだけで検査することができる点、偽陽性率が高くないことが特徴です。しかし、検査費用が高額です。

・羊水検査、絨毛検査

母体のおなかに針を刺す方法で行われ、胎児のDNAや染色体の変化を調べます。染色体異常の有無、異常がある場合には種類までほぼ正確に診断できます。ただし、流産をひきおこす危険性を伴います。

高齢出産の検査にかかる費用と補助金

出生前診断は、自由診療となるため保険が適用となりません。そのため全額自己負担となり、また医療費控除の対象にもならないため高額な出費となることが多いです。

それぞれのおおよその費用は、

・血清マーカー検査:2~3万円

・新型出生前診断NIPT:8~20万円

・羊水検査:8~15万円

・絨毛検査:10~20万円

となっています。

病院によっては、血液検査で陽性と診断され追加で羊水検査等の確定診断を実施する場合に、補助金が出たり追加検査費用が無料になることもあります。実施する検査項目や病院選びの際には、ホームページで十分に情報収集をしましょう。

 

より安全な高齢出産を迎えるために

では、高齢出産となったら、どんな点に配慮をしたら良いのでしょうか。

・妊婦健診を利用し、体調管理を行う

妊婦健診では、体重測定、血圧測定、尿検査など、ママの健康状態を確認します。また、高齢妊娠の場合は、妊娠高血圧症候群(※1)や、妊娠糖尿病(※2)などの合併症が起こりやすいといわれているので、きちんと状態を把握しておくことが必要です。

より安心して出産の日を迎えるために、妊婦健診でのさまざまな状態チェックが何より大切になってきます。

※1 妊娠高血圧症候群

妊娠20週以降、分娩後12週までに高血圧(140/90mmHg)がみられる場合、または高血圧に蛋白尿(1日300mg以上)を伴う場合をいう。

※2 妊娠糖尿病

血糖値が高くなってしまう状態で、食前血糖値100mg/dl以下、食後2時間血糖値120mg/dl以下を目標に、食事療法を中心に血糖コントロールを行う。

・妊娠前から持病がある場合の適切な対応

婦人科系の病気や(子宮筋腫等)、内科的な持病のある方は、産科的なリスクが複合的に高まるといわれています。先ほどの妊婦健診に加えて、主治医と産科の連携が大切になりますので、よく相談をされるのが良いでしょう。

 

さいごに

妊娠、出産はママの心や体に沢山の変化が起こりながら、おなかの中の赤ちゃんを育んでいきます。また、さまざまなリスクも伴います。これらは、どんな年齢においても変わらない事実と思いますが、高齢出産の場合は、より慎重な配慮やケアが求められます。

お体を大切になさって、素晴らしい出産の日をお迎えください。

赤ちゃんの産声を聞いた瞬間、すべての苦労を洗い流す幸せな時間が待っています。

 

◆参考

松峯寿美『やさしく知る 産前・産後ケア』高橋書店

中山攝子『35歳からの妊娠・出産』講談社

赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?

赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。

幹細胞は新しい医療への活用が進められており、もしもの時に役立てられる可能性があります。

さい帯・さい帯血保管のポイント!

  1. 出産後わずか数分の間にしか採取できない貴重な赤ちゃんのものです。
  2. 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
  3. どちらにも幹細胞がたくさん含まれています。
  4. 再生医療分野など、さまざまな活用が進んでいます。
  5. それぞれ異なる幹細胞が含まれているため、両方を保管しておくことで将来の利用の選択肢が広がります。

実際に保管・利用した方のお声

出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。

高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま

さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています

元気に産まれたと思っていましたが、生後半年頃から左手をほとんど使おうとしないことに気付き、1歳頃にやはり何かおかしいと思ってMRIを撮ってもらうことにしました。結果1歳5ヶ月で脳性まひとわかりました。
2歳の誕生日にステムセルからハガキが届き、出産時に保管したさい帯血がもしや役に立つのではと思い至りステムセルに問い合わせました。ちょうど臨床試験への参加者を募集していて、運よく2歳5ヶ月のときに参加することができました。
輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。

さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。

その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。

医師からのメッセージ


総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生

応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療

近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。

さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

保管するなら、ステムセル研究所の「HOPECELL(ホープセル)」

株式会社ステムセル研究所が提供する「さい帯・さい帯血ファミリーバンクHOPECELL(ホープセル)」は、日本国内で最も選ばれている保管サービスです。

ステムセル研究所は、25年以上の保管・運営実績がある日本初のさい帯血バンクで、国内最多となる累計80,000名以上のさい帯血を保管しています。

どうやって保管するの?
ステムセル
研究所
出産時に産科施設で採取されたさい帯・さい帯血は、ステムセル研究所の高レベルのクリーンな環境で専門スタッフが処理・検査を行います。国内最大級の細胞保管施設にて、約-190℃の液体窒素タンク内で長期間大切に保管されます。また、ステムセル研究所は厚生労働省(関東信越厚生局)より「特定細胞加工物製造許可」を取得しており、高品質と安全性を実現しています。
保管したさい帯血は何に使えるの?
ステムセル
研究所

国内では脳性まひに対する、赤ちゃんご自身やごきょうだいのさい帯血投与の研究が行われています。海外の臨床研究では、投与により運動機能および脳神経回路の改善が報告されています。また自閉症スペクトラム障害(ASD)に対して、さい帯血の投与によりコミュニケーション能力や社会への順応性が向上する可能性が期待されており、大阪公立大学にてお子さまご自身のさい帯血を投与する臨床研究が開始されます。

さい帯・さい帯血保管は高いと聞いたのですが…
ステムセル
研究所
さい帯またはさい帯血のどちらか一方を10年間保管する場合、月々2,980円(税込)で保管することができます。出産時にしか採取・保管することができない貴重な細胞なので、お子さまの将来に備えて保管される方が増えています。

無料パンフレットをお送りします!

さい帯・さい帯血保管についてより詳しく知っていただけるパンフレットをご自宅へお送りします。

赤ちゃんの将来に備える「さい帯・さい帯血保管」をぜひ妊娠中にご検討ください。

この記事の監修者

坂田陽子

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー