私はいま、子育てに奮闘し、日々幸せを感じながら我が子を授かった奇跡を大切に育んでいます。
現在、日本では5人に1人が帝王切開での出産をしているようです。私もそのひとりで、3人の可愛い子どもたちを帝王切開で出産しています。
私がまだ独身の頃、破水し親友が緊急手術になったことがあり、恐怖で泣いている姿を見ました。どんな言葉をかけたらいいのか分からず帝王切開はマイナスなイメージとして私の心に根深い印象を残しました。その時はまだ私も親友と同じ気持ちを抱えることになろうとは考えてもいませんでした。
いきなり知らされた、明日は帝王切開
1人目妊娠初期からつわりに襲われ「赤ちゃん育ってる!」と自分を奮い立たせて後期まで乗り切り37週目の検診で体重増加、血圧上昇、浮腫、3拍子そろった為に管理入院。我が子との対面を心待ちに新生児室の赤ちゃんを何度も見に行ったりきたり、それを見ていた看護師さんが「明日楽しみだね!」と声をかけてくださいました。 「ん?明日??」と私。「ん?聞いてない?赤ちゃんおりてくる気配がなかったら明日手術かもしれないって、、」私は、管理入院したから陣痛が来るその日まで管理され何の疑いもなく自然分娩で出産するつもりでいたのです。それが明日?えぇえー明日??部屋に戻り改めて私は陣痛を経験できないのかと、母親学校で習った呼吸法とか、旦那さんと力を合わせてとか、テニスボールを使ってとか、陣痛の時に必要だと準備していたものを使うこともないのかな、、何より、母がお腹を痛めて私を産んでくれたように私はできないのか、、ものすごく女性として置いていかれたような、赤ちゃんに申し訳ないような複雑な気持ちがしました。翌日になっても赤ちゃんはおりては来てくれず帝王切開が決まりました。シャワーを浴び、歯磨きを済ませ病室待機。看護師さんが迎えに来てくれ処置室へ、剃毛、血管確保を済ませあとは手術室に入るだけ、「数時間後には赤ちゃんに会えますね~」と、同室の 産後ママからの何気ない言葉に、(陣痛なら何時になるか分からない赤ちゃんとの対面 が手術なら時間が読めるということかぁ~)などと、偏屈な解釈をしていました。
いよいよ手術室です。手術台にのり、「自分のおへそを見て背中をエビのように丸くしてください」「お腹きついよね~もう少し頑張って~」(苦しいぃ…)そう思っているとチクッッと針が入り液体が入っていくのがわかりました。医療器具を置く音、空調の音、看護師さんや先生の息遣い、普段なら気にならない音が気になって仕方ありませんでした。そうしていると胸から下の感覚がなくなってきて、先生から「これは痛 い?」と何度も聞かれました。触る感じはあるけど感覚がない麻痺している、まさに麻酔とはそんな感じでした。その確認が終わると手術台に腕、足首、胴体、胸の下をくくられます。見えていた下半身も布が被せられ見えなくなりました。「さぁ、赤ちゃんに 会えるよ~」と先生の掛け声とともにお腹を触る感覚が始まりました。痛みは全くありません引っ張る感じがわかりました、その引っ張りが左右に揺れてる感じがしたと思ったら、お腹の中から何かドゥルルと出たような感覚がありました。先生が「赤ちゃん産ま れたよ~~」との声と同時にか細い声で赤ちゃんが泣きました。ホッとしました。「五 体満足ですか?」私の第一声です。「はい、手も足もしっかりありますよ」と…。今となっては、なぜそんな質問をしたのか?と思いますが、はじめての帝王切開後の私の聞きたい事だったのだと思います。赤ちゃんを私の頬に連れてきてくださいました。顔をしわくちゃにし、か細い声で泣いています。「はじめまして、産まれてきてくれてありがとう!」月並みですが、まさにこの言葉がしっくりきました。
喜びに満ちている間に私の閉腹処置が始まっていました。お腹を引っ張る感覚が続き縫 合されていきます。痛みはありません。無事産まれてきてくれた安堵感とこれからの子 育てへの期待感でいっぱいでした。病室に戻り、そこからが痛みとの闘いでした。傷の 痛み、産後子宮が元の状態に戻ろうとする収縮の痛み、その痛みに合わせて傷が波打っ て痛む…その繰り返し。後の2人目、3人目はもっと痛みが強かったが、帝王切開という 大仕事を終え早く赤ちゃんを自分の胸で抱きしめたいという思いのほうが勝っていて自 分で自分を勇気づけ翌朝を迎えるのでした。
産むのは経膣分娩も帝王切開も同じ
私は3度帝王切開を経験しました。1人目が帝王切開だったので後の2人は計画帝王切開となりました。陣痛が経験したいと申し出ましたがそれは叶いませんでした。産院も3人それぞれです。帝王切開が決まった時から子どもたちが大きくなるまでは、友人が泣い ていたように手術への恐怖感、産後の体調、お腹を痛めて産めなかった背徳感、そして 何より赤ちゃんのタイミングで産んであげれなかったこと、気持ちよくお腹の中で過ご していたのに急に麻酔液を入れられ、いきなり眩しくなって引っ張り出されて…ごめん ね、ごめんね、と幾度となく自分を責めました。
子育ては泣いたり、笑ったり、悩んだり、怒ったり、悲しみに暮れ歯がゆい思いもしま す。ひとりで抱えて辛い思いをされることもあるでしょう。現に私も帝王切開が決まっ た時の不安や悩みからどうにもならない歯がゆさを経験してきました。これからも親で ある限り永遠に続くでしょう。しかし、子育てを通して今思うことは、出産方法はどう であれ主人と私のもとに宿ってくれた大切な命を胸に抱けること、可愛い子どもたちに 出会いその笑顔をそばで見届けられること、子どもを授かるのは奇跡であるというこ と。全てに幸せを感じます。
【危険な目に遭い、痛い思いをし、産むのは経膣分娩も帝王切開も同じです】 2人目を出産した時に母乳指導の先生がおっしゃってくださった言葉です。
私の心にストンと入ってきました。 産後すぐからはじまる子育ての中で少しずつ母親になり子どもたちから沢山の奇跡と希望、幸せを学ばせてもらえます。この世界にこんなに愛おしい存在があること、私の人生に子育てという経験を与えてく れたこと。
出産方法なんて気にもしない、どんなお産も命がけ! 赤ちゃんと私の命を救ってくれた帝王切開はとても幸せなお産でした。
この記事の監修者
坂田陽子
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー