妊娠発覚後に男性がやるべきことチェックリスト|家庭での役割から会社への説明まで
                記事監修者:助産師 坂田陽子 先生
助産師/看護師/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

初めて妻が妊娠したら、夫として妻を助けてあげられることはないのか、また、急な欠勤の可能性に備えて、会社にどう説明すればいいか、動き方を知りたいという人もいると思います。
父親になるのだから、家庭でも社会でもしっかりしたいという思いを持つ人に、ここでは妻が妊娠したら夫がやるべきことをチェックリストにして、項目ごとに解説していきます。
妊娠発覚後に男性がやるべきことチェックリスト

妊娠発覚後に夫がやるべきこととして、おもに以下の7つがあげられます。
・妊娠中の妻のからだとこころの変化を知る
・家事をする(覚える)
・感染症対策をする
・喫煙をやめる
・会社の育児休暇について調べる
・収支を見直す
・母親・父親学級に参加する
順番に見ていきましょう。
1.妊娠中の妻のからだとこころの変化を知る
妊娠中の女性は、子宮の中で胎児を育てるため、さまざまなホルモンが分泌されます。
そのホルモンの影響で、
・つわり
・眠気
・倦怠感
・情緒不安定
・頭痛
・便秘や下痢
・腰痛
など、さまざまな身体的症状や精神的な不調が起こるのです。
たとえば、多くの妊婦さんが悩まされるつわりは、妊娠中に分泌されるホルモンが、脳内の嘔吐中枢に働きかけることで起こると考えられています。
妊娠中のおもなホルモンのはたらきと、つわりへの影響は以下のとおりです。
| ホルモン | 妊娠中のはたらき | つわりへの影響 | 
| ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG) | ・妊娠初期に、胎盤から大量に分泌される
 ・胎児の胎盤への着床を助ける  | 
臭いなどに敏感になる | 
| エストロゲン(卵胞ホルモン) | ・子宮への血流増加・子宮増大など、妊娠の維持を助ける ・出産前には子宮頸管を柔らかくするなど、出産の準備を助ける  | 
吐き気・嘔吐などを引き起こす | 
| プロゲステロン(黄体ホルモン) | ・基礎体温の上昇・子宮内膜を厚くする ・水分や栄養素を体内にためこむなど、妊娠の維持を助ける  | 
腸のはたらきを弱め、お腹の張り・便秘・体内にガスを発生させる原因になる | 
妊娠中はホルモンバランスの分泌に加え、身体の不調・将来への不安・思うように動けないストレスなどから、精神的に不安定になることもあります。
いわゆるマタニティブルーです。
妊娠中のからだとこころの変化を知り、妻の体調や情緒に理解を示し、寄り添ってあげることが大切です。
▼妊娠初期のつわりについて詳しい記事はこちら
また妊婦さんに対して、
・妊娠は病気じゃない、甘えている
・自分も仕事で疲れている
・最低限の家事はするべき
・〇〇(自分の母親や、知人)は妊娠中もっと元気だった
など、これらの言動や行動は、特に情緒が不安定な時期である妊娠中の女性を傷つけてしまう可能性があります。
2.家事をする(覚える)
つわりが酷い、切迫流産で絶対安静など、妊娠中に妻が動けなくなる可能性は高いです。
そのため夫が家事を分担すれば、妻の負担を大きく軽減できます。
とくに重いものを持つ作業や、かがむ姿勢が必要な掃除などは、夫が積極的に担当しましょう。
また買い物・洗い物・洗濯・掃除など、一通りの家事はできるようにしておくとよいでしょう。
妻の普段の家事のやり方を覚えておくのもポイントです。
妊娠中だけでなく、産後も、夫が家事で活躍できる場面は非常に多いので、ぜひ率先して覚えましょう。
3.感染症対策をする
マスク、手洗いうがいを徹底しましょう。
風邪・インフルエンザ・コロナウイルス・胃腸炎などの感染症にかからない、持ち込まないという気持ちで行動しましょう。
感染症によっては、胎児に影響が出るため、とくに注意すべきものもあります。
妊婦は予防接種が受けられないものがあるため、夫が予防接種を受け、家庭内に持ち込まない対策が重要です。
| とくに注意すべき感染症 | 胎児への影響 | 
| 風疹 | 白内障や心疾患、難聴などの先天性風疹症候群を発症する恐れ | 
| はしか | 流産・早産・死産の原因になる恐れ | 
| 水ぼうそう・帯状疱疹 | 目や手足の異常などが起こる先天性水痘症候群を発症する恐れ | 
| 梅毒・クラミジア | ・流産・早産・死産の原因になる恐れ
 ・神経や骨などに異常をきたす先天梅毒を発症する恐れ  | 
| トキソプラズマ・リステリア | ・流産・早産・死産の原因になる恐れ
 ・脳や目に障害が起こる恐れ  | 
| りんご病 | 胎児水腫や、流産・早産・死産の原因になる恐れ | 
参考:東京都福祉局「母子感染について~妊娠中・これから妊娠を考えている方へ~」
4.喫煙をやめる
タバコを吸う男性は、妊娠発覚と同時に禁煙を始めましょう。
妊婦さん本人が吸わなくても、周りの人のタバコの煙を吸ってしまう「受動喫煙」が、胎児に悪影響を与えるためです。
タバコの煙に含まれる有害物質は、血管を縮ませて血流を悪くしたり、酸素を運ぶ力を弱め、胎児が十分な酸素や栄養を受け取れなくなってしまいます。
結果として、喫煙する妊婦さんから生まれる胎児は、そうでない場合と比べて低出生体重児になる確率が「約2倍」も高くなるといわれているのです(※1)。
さらに受動喫煙は、早産や乳幼児突然死症候群のリスクなども高めます(※2)。
生まれてからも、赤ちゃんが喘息や中耳炎にかかりやすくなるなど、長期的な健康への影響も心配されます(※3)。
妻と赤ちゃんの健康を守るため、今すぐ禁煙を始めましょう。
(※1)出典:厚生労働省「-たばことお酒の害から赤ちゃんを守りましょう-」
(※2)出典:厚生労働省「なくそう!望まない受動喫煙。」
(※3)出典:厚生労働省委託事業|働く女性の心とからだの応援サイト「たばこを吸っているお母さんは、禁煙しましょう」
5.会社の育児休暇について調べる
会社の育児休暇制度について調べ、準備しておくのも大切です。
2025年4月からは従業員が300人を超える企業に対して、男性労働者の育児休業取得率の公表が義務化されるなど、制度が充実してきています(※4)。
育児休業には、子どもが生まれてから8週間以内に取得できる「産後パパ育休」と、1歳まで取れる通常の「育児休業」があります(※5)。
産後パパ育休では「最大28日間」休むことができ、その間は休業前の「給与の67%」が支給されるのです(※5)。
また育児休業中は「最大10日」まで一時的に会社で働けるため、仕事の引き継ぎや重要な業務に対応しながら、育児にも参加できます(※5)。
早めに人事部門などに相談して、申請方法や必要な書類についても確認しておきましょう。
夫が育児休暇を取ることで、妻の負担を減らし、家族の絆を深めることもできます。
(※4)出典:厚生労働省「2025年4月から、男性労働者の育児休業取得率等の公表が従業員が300人超1,000人以下の企業にも義務化されます」
(※5)出典:厚生労働省「Q&A~育児休業等給付~」
6.収支を見直す
出産が近付くと、ベビー服・ベビーカー・ベビーベッドなどの産後準備をはじめ、子育て関連の支出が多くなります。
妻の妊娠中から、保険の見直し、学資保険への加入、住宅の購入など家計を見直しておくことが大切です。
出産は保険適用ではないため、産院・入院期間・出産方法によっては、思わぬ支出が必要になる場合もあります。
国から受け取れる出産一時金などの補助金額なども調べておくとよいでしょう。
▼出産時の費用について詳しくはこちら
7.母親・父親学級に参加する
妊娠中の妻のことや、産後の赤ちゃんの世話まで学べます。
これらの学級は産院や、赤ちゃん用品店でも開催されていることが多いので、ぜひ参加してみましょう。
慶應義塾大学が行った研究では、父親の育児参加度が高いほど、子どもの社会性の発達や小学校生活への適応によい影響を与えることがわかっています(※6)。
さらに父親の育児参加は母親の育児負担を軽減し、養育の質を向上させる効果も(※6)。
母親・父親学級では、
・沐浴の方法
・おむつ交換
・抱っこの仕方
など、実際の育児に必要な技術を学べます。
また妊娠中から出産、産後の母体の変化についての理解を深められ、妻をよりサポートできるようになるでしょう。
第一子の出生時に父親の育児参加度が高い夫婦は、第二子以降を持つ確率も高くなるという研究結果もあります(※6)。
仕事で忙しくても、できるだけ時間を作って参加し、父親としての準備を整えましょう。
▼母親・父親学級について詳しくはこちら
(※6)出典:厚生労働科学研究費補助金(政策科学総合研究事業)慶應義塾大学(駒村康平)「父親の育児参加が出生率と子どもの育ちに及ぼす影響」
妊娠発覚に男性がやることに関するQ&A
ここでは妊娠発覚時に夫がやることについて、よくある3つの質問をまとめました。
順番に見ていきましょう。
      基本的には妻が行うことが多いですが、夫が付き添うことで安心できます。
その他にも、健康保険の確認や、出産育児一時金、出産手当金、育児休業給付金などの制度について調べておくとスムーズです。
      無理に食べさせようとせず、妻が「食べられるもの」を聞いて用意してあげるのが大切です。
また、家事や買い物などを代わりに行い、妻が休める時間を作ることも大きなサポートになります。
つわりは「気の持ちよう」ではなく体の変化によるものなので、理解して寄り添う気持ちが何よりの支えになります。
      妻の話を遮らずに傾聴することを心がけましょう。
また、「大丈夫?」「ありがとう」「一緒に頑張ろうね」といった安心できる言葉をかけることが大切です。
反対に、「気にしすぎじゃない?」「まだ大丈夫でしょ」といった軽い言葉は不安を強めてしまうことがあります。
気持ちを受け止めてあげることが一番のコミュニケーションになります。
まとめ
「妊娠した妻を、夫として助けてあげたい」その気持ちが、すでに立派な夫・父親の第一歩です。
その気持ちが空回りして夫婦とも悲しい思いをしないよう、妊娠中の妻に夫がするべきことリストを参考にしましょう。
妊娠中のからだとこころの調子は人それぞれです。
あなたの妻に合ったサポートを心がけましょう。
赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?
赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。
幹細胞は新しい医療への活用が進められており、もしもの時に役立てられる可能性があります。
- 出産後わずか数分の間にしか採取できない貴重な赤ちゃんのものです。
 - 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
 - どちらにも幹細胞がたくさん含まれています。
 - 再生医療分野など、さまざまな活用が進んでいます。
 - それぞれ異なる幹細胞が含まれているため、両方を保管しておくことで将来の利用の選択肢が広がります。
 
実際に保管・利用した方のお声
出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。
        高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま
さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています
元気に産まれたと思っていましたが、生後半年頃から左手をほとんど使おうとしないことに気付き、1歳頃にやはり何かおかしいと思ってMRIを撮ってもらうことにしました。結果1歳5ヶ月で脳性まひとわかりました。
2歳の誕生日にステムセルからハガキが届き、出産時に保管したさい帯血がもしや役に立つのではと思い至りステムセルに問い合わせました。ちょうど臨床試験への参加者を募集していて、運よく2歳5ヶ月のときに参加することができました。
輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。
さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。
その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。
医師からのメッセージ
        総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生
応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療
近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。
さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
保管するなら、ステムセル研究所の「HOPECELL(ホープセル)」
株式会社ステムセル研究所が提供する「さい帯・さい帯血ファミリーバンクHOPECELL(ホープセル)」は、日本国内で最も選ばれている保管サービスです。
ステムセル研究所は、25年以上の保管・運営実績がある日本初のさい帯血バンクで、国内最多となる累計80,000名以上のさい帯血を保管しています。

      研究所
      研究所
国内では脳性まひに対する、赤ちゃんご自身やごきょうだいのさい帯血投与の研究が行われています。海外の臨床研究では、投与により運動機能および脳神経回路の改善が報告されています。また自閉症スペクトラム障害(ASD)に対して、さい帯血の投与によりコミュニケーション能力や社会への順応性が向上する可能性が期待されており、大阪公立大学にてお子さまご自身のさい帯血を投与する臨床研究が開始されます。
      研究所
無料パンフレットをお送りします!
さい帯・さい帯血保管についてより詳しく知っていただけるパンフレットをご自宅へお送りします。
赤ちゃんの将来に備える「さい帯・さい帯血保管」をぜひ妊娠中にご検討ください。
                この記事の監修者
助産師 坂田陽子 先生
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー
