妊婦さんが低血圧になる原因とは?現れる症状や対処法を解説

記事監修者:助産師 坂田陽子 先生
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

「妊娠してからめまいがする…」
「立ち上がるとふらつくのは低血圧のせい?」
「血圧が低いと、胎児への影響が心配…」
上記のように悩んでいるのではないでしょうか。
妊娠中の低血圧は珍しくない現象ですが、めまいや立ちくらみによって日常生活に支障が出ると心配になりますよね。
じつは妊娠中の血圧低下にはホルモンバランスの変化や子宮の成長など、妊娠特有の理由があり、適切な対処法で症状が和らぎます。
そこでこの記事では、おもに以下の内容を解説していきます。
- 妊婦さんが低血圧になる3つの原因
- 妊婦さんの低血圧に現れる症状
- 妊婦さんの低血圧対策3選
この記事を読むと、妊娠中の低血圧症状への対処法がわかり、安心して妊娠生活を送れるようになりますよ。
妊婦さんが低血圧になる3つの原因
妊婦さんが低血圧になる原因として以下の3つが考えられます。
- 妊娠によるホルモンバランスの変化
- 子宮の成長による血管の圧迫
- 仰臥位低血圧症候群
順番に解説していきます。
原因1:妊娠によるホルモンバランスの変化
妊娠すると女性ホルモンのバランスが大きく変化します。
なかでも黄体ホルモン(プロゲステロン)には血管を広げる作用があります。
血管が広がると血液が流れる空間が広くなるため、自然と血圧が下がりやすくなるのです。
またホルモンの影響で自律神経も乱れやすくなり、血圧調節機能がうまく働かないことも原因のひとつです。
原因2:子宮の成長による血管の圧迫
妊娠が進むにつれて胎児が成長して、子宮が大きくなります。
大きくなった子宮は骨盤内の血管を圧迫して、下半身から心臓へ戻る血液の流れを悪くすることがあるのです。
血液の流れが悪くなると、心臓から送り出される血液量も減少するため、結果的に血圧が低下します。
この現象はとくに妊娠中期から後期にかけて起こりやすくなります。
原因3:仰臥位低血圧症候群
仰臥位低血圧症候群とは、妊婦さんが仰向けに寝たときに起こる急激な血圧低下です。
妊娠中期以降、大きくなった子宮が下大静脈という重要な血管を圧迫することで発生します。
下大静脈は下半身から心臓へ血液を戻す大きな血管で、母体の背骨の右側に位置しています。
この血管が圧迫されると、心臓へ戻る血液量が減少して、全身へ送り出される血液も減るため、急に血圧が下がるのです。
とくに妊娠後期に仰向けで長時間過ごすと発生しやすく、血圧低下により妊婦さんだけでなく、胎児への酸素供給も一時的に不足する可能性があります。
妊婦さんが低血圧になると現れる症状
一般的な症状としては、急に立ち上がったときに感じる「めまい」「立ちくらみ」があげられます。
立ちくらみがひどい場合、目の前が真っ白になったり、最悪の場合は意識を失って倒れたりする場合も。
とくにつわりが重い時期は、食事摂取量の減少による「低血糖」「水分不足」も症状を悪化させる要因となります。
ほかにも、
- 動悸
- 息切れ
- 全身のだるさや倦怠感
なども低血圧に伴う症状として現れる場合があります。
妊娠中の低血圧症状は通常深刻なものではありませんが、
- 症状が強く、持続する
- 頭痛がつづく
- 目がチカチカする
といった症状が併発する場合は、医療機関への相談が必要です。
とくに妊娠高血圧症候群との区別が大切であり、適切な診断を受けることが母子の健康を守ります。
低血圧が妊婦さんと胎児に与える影響
妊娠中の低血圧は、一般的に妊娠に適応する自然な変化の一部であるため、胎児への直接的な悪影響はありません。
ただし低血圧によるめまいやふらつきで転倒し、お腹を強打してしまうリスクには注意が必要です。
症状が強い場合や長時間つづく場合は、胎児の状態に影響する可能性もあるため、医師への相談をおすすめします。
妊婦さんの低血圧対策3選
妊娠中の低血圧対策としては、以下の3つが効果的です。
- 姿勢の工夫
- 栄養の摂取
- 睡眠と運動
順番に見ていきましょう。
対策1:姿勢の工夫
左側を下にして横向きに寝る姿勢(左側臥位)を心がけましょう。
この体位は子宮による血管の圧迫を軽減して、血液循環を改善します。
また立ち上がる際は急な動作を避け、ゆっくりと体勢を変えることで起立性低血圧を予防できます。
長時間同じ姿勢でいることも避け、とくに立ちっぱなしの状態がつづくときは適度に休憩を取りましょう。
万が一、めまいや立ちくらみを感じたら、無理に動かず安全な姿勢で休み、症状が回復するまで待つことが大切です。
対策2:栄養の摂取
栄養面では、バランスのとれた食事が基本です。
とくに鉄分は貧血予防のために重要な栄養素で、妊娠中の低血圧と貧血は症状が似ているため、両方に気を配る必要があります。
主食、主菜、副菜をバランスよく摂取し、つわりがない時期は三食きちんと食べることを心がけましょう。
炭水化物や砂糖の摂りすぎは避け、血糖値の急な変動を防ぐことも低血圧対策につながります。
妊娠中の食事について、不安のある人は下記も参考にしてください。
対策3:睡眠と運動
質のよい睡眠は低血圧対策に効果的です。
早寝早起きを基本として、なるべく同じ時間帯に就寝・起床すると、生体リズムが整います。
夜間にぐっすり眠れない場合は、昼寝を上手に取り入れるなどの工夫も有効です。
朝日を浴びることも、自律神経を整えるために効果的な習慣です。
体内時計がリセットされ、血圧調整機能が安定します。
また無理なくつづけられる範囲で、定期的に体を動かすことも妊娠中の血圧管理につながります。
妊婦さんの低血圧に関するQ&A
ここでは妊婦さんの低血圧について、よくある3つの質問をまとめました。
順番に見ていきましょう。


妊娠中は黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響で血管が拡張し、特に妊娠初期から中期にかけて一時的に血圧が下がることがあります【ACOG Practice Bulletin No. 222, 2020】。
ただし、血圧の値だけで判断するのではなく、「立ちくらみ」「ふらつき」「倦怠感」などの症状があるかどうかも含めて評価されます。
血圧が低めでも症状がなく、胎児発育に問題がなければ基本的に治療の必要はありません。

- 低血圧:血液の循環圧が低く、脳や臓器への血流が一時的に低下することで、立ちくらみ、ふらつき、冷え、全身倦怠感などがみられます。起立性低血圧として現れることもあります【日本循環器学会・看護ケアガイド2022】。
- 貧血:赤血球中のヘモグロビンが不足することで、酸素の供給が不十分になり、動悸、息切れ、顔面蒼白、頭痛などがみられます。妊娠中は血液の液体成分(血漿)が増加することで「希釈性貧血」が生じやすく、鉄欠乏性貧血が最も一般的です【WHO Guideline 2012】。
正確な診断には血圧測定と採血(ヘモグロビン値、血清フェリチンなど)が必要です。

症状が軽度であれば、以下のような生活習慣の見直しが中心になります。
- 朝は急に立ち上がらず、ゆっくり起きる
- 水分と塩分を十分に摂取する
- 貧血や脱水を防ぐための栄養管理
- 軽い運動で血流を促す(主治医の許可がある場合)
症状が重く、日常生活に支障をきたす場合には、基礎疾患(副腎不全など)や病的低血圧の可能性も考慮して、医師が個別に対応しますが、低血圧を目的とした薬物治療は極めてまれです【ACOG Practice Bulletin No. 222, 2020】【日本内科学会雑誌2019】。
まとめ
妊婦さんの低血圧は、おもに3つの原因で発生します。
- 妊娠によるホルモンバランスの変化
- 子宮の成長による血管の圧迫
- 仰臥位低血圧症候群
低血圧になると以下のような症状が現れることがあります。
- めまい・立ちくらみ
- 動悸・息切れ
- 全身のだるさや倦怠感
効果的な対策法としては以下のとおり。
対策 | 方法 |
姿勢の工夫 | 左側を下にして横向きに寝る、急な動作を避ける |
栄養摂取 | バランスのよい食事、鉄分の摂取 |
生活習慣 | 質のよい睡眠、適度な運動、朝日を浴びる |
通常、妊娠中の低血圧は自然な変化で胎児への直接的な悪影響はありませんが、症状が強い場合や長時間つづく場合は医師に相談しましょう。
とくに転倒リスクに注意し、めまいを感じたら無理せず安全な姿勢で休むことが大切です。
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高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま
さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています
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さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。
その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。
医師からのメッセージ

総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生
応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療
近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
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一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。
さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
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研究所

研究所
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研究所
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この記事の監修者
助産師 坂田陽子 先生
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー