妊婦さんの旅行はいつからいつまで?時期・行き先・持ち物リスト

記事監修者:助産師 坂田陽子 先生
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

「子どもが生まれる前にゆっくり旅行をしたい」
「マタニティ生活の思い出を作りたい」
と考えているのではないでしょうか。
しかし旅行中に何かあって後悔したくないですよね。
そこで今回は、
- 妊婦さんはいつからいつまで旅行できる?
- 妊婦さんの旅行の行き先
- 妊婦さんの旅行の移動方法と注意点
- 妊婦さんの旅行の持ち物リスト
をご紹介します。
妊娠中は、万が一のリスクを考えると旅行はおすすめできません。
もし行く場合も、自分と赤ちゃんの身を守るために特別な配慮が必要となります。
旅行前に注意点を知って、十分に準備しておきましょう。
妊婦さんはいつからいつまで旅行できる?妊娠時期別の注意点
万が一のリスクを考えて、基本的には妊娠中の旅行はおすすめできません。
また、妊娠中の時期によって安全性は大きく異なるため、以下3つの時期に分けて解説していきます。
- 妊娠初期|控えるのが無難
- 妊娠中期|行くなら体調が安定している時
- 妊娠後期|長距離はNG
順番に見ていきましょう。
妊娠初期の旅行|控えるのが無難
妊娠初期は流産リスクが高く、つわりも強い時期のため、基本的に旅行は避けるべき期間だといえるでしょう。
身体的な負担が大きく、急な体調変化も起こりやすいため、長距離の移動はひかえたほうが安全です。
どうしても移動が必要な場合は、かならず医療機関で相談して、無理のない範囲で計画を立ててください。
つわりがある人は、旅行を楽しめない可能性も考慮すべきでしょう。
体調が優れず、家から出るのも億劫に感じる人も多い妊娠初期は、安静にして母体と胎児の健康を優先するのが無難です。
妊娠中期の旅行|行くなら体調が安定している時
妊娠中期は、つわりが落ち着き体調も安定する「安定期」と呼ばれる時期です。
経過が順調であれば、妊娠中期は飛行機利用にも適した時期と言われています。(※1)
ただし行程にはゆとりをもたせ、長時間の歩行や過度な疲労を避けることが大切です。
あくまでも体調が安定していることが前提であり、旅行計画前にはかならず医療機関で相談しましょう。
旅行先での緊急時に備え、現地の医療機関情報も事前に確認しておくことが重要です。
ただし、旅先で体調が急変しても、急な飛び込み受診には対応してもらえないリスクがあります。
(※1)出典:藤田医科大学 中部国際空港診療所「健康アドバイス」
妊娠後期の旅行|長距離の旅行はNG
妊娠後期はお腹が大きくなり、体への負担が増加する時期です。
早産のリスクも高まるため、長距離の旅行は避けるべきでしょう。
実際に世界保健機関(WHO)は、妊娠36週以降(多胎妊娠の場合は32週以降)の飛行機搭乗をひかえるよう勧告しています(※2)。
それでも飛行機を利用する場合、出産予定日28日前からは医師の診断書が必要となるケースがあります(※3)。
(※2)出典:公益社団法人全国大学保健管理協会「海外留学 健康の手引き」2025年4月 第五版
(※3)出典:高知県子ども・福祉政策部 子育て支援課 母子保健・子育て支援室「妊娠期」
妊婦さんの旅行の移動方法と注意点
旅行にどうしても必要な移動。
ここからは、妊婦さんの旅行での移動方法と注意点をご紹介します。
車
車は、座りながら自分のペースで移動できます。
ただし妊娠中期以降は、座った姿勢が大きくなったお腹に負担になるため、1時間に1回程度は休憩を入れましょう。
また、妊婦さんが自分で運転するのはおすすめしません。
パートナーなど、なるべく一緒に旅行する人に運転してもらいましょう。
なおシートベルトは、妊娠中でもかならず着用が必要です。
腰ベルトを腰骨に近い低い位置にして、肩ベルトはお腹の側面を通すようにしましょう。
高速道路では休憩施設の位置を事前に確認し、混雑する時期や渋滞しやすいルートは避けるのが賢明です。
旅行中に体調の変化を感じたら、無理せず休憩や中止の判断も必要です。
新幹線や電車
電車や新幹線は時間通りに移動できるため、スケジュール管理がしやすい交通手段です。
新幹線を利用する際は、立ちつづけることによる負担を避けるため、指定席を予約しておくと安心です。
妊婦さんが新幹線・電車に長時間座る場合は、「エコノミークラス症候群」に注意しましょう。
「エコノミークラス症候群」とは、血液の循環が悪くなり、血管内に血の塊ができて、血管が突然詰まる症状です。
「脚をマッサージ+多めの水分補給」をすることで予防できます。
また新幹線の場合は、
- トイレの場所に近い
- 窓側より通路側
など、動きのとりやすい座席がおすすめです。
また温度調節ができるように上着を用意して、夏は冷房対策、冬は出入口付近の冷え対策をしましょう。
飛行機
飛行機を利用する場合は、前方の通路側がおすすめです。
理由として、
- トイレに行きやすい
- 乗務員に声をかけやすい
- 揺れが少ない
などがあげられます。
また妊娠中は、新幹線と同様に普段よりも血栓ができやすいため、エコノミークラス症候群を避けるために脚や体を動かしたり、こまめな水分摂取を心がけましょう。
妊娠中の飛行機搭乗については、以下の記事でも詳しく解説しています。
妊婦さんの旅行の行き先
妊娠中は予想外の出来事も起こりやすいため、どうしても旅行に行くなら、自分とお腹の赤ちゃんが無理ない行き先にするのが無難です。
- 身体への負担が少ない片道1~2時間くらいまでの距離
- 人混みを避けられる
- ゆっくり休憩したり、くつろげる
- 移動手段が豊富(辺鄙ではない)
といった条件の場所がよいでしょう。
妊婦さんの旅行先例
〇旅館、ホテル
〇温泉
温泉に入ることで胎児への影響はありませんが、長い時間つかるのは避けましょう。
またホテルなどでマッサージを受ける際には、かならず妊娠中であることを伝え、妊婦さんでも安全に使用できる精油を選んでもらいましょう。
妊婦さんが避けたほうがよい旅行先例
×キャンプ
×テーマパーク
×マリンスポーツ
ジェットコースターなど危険を伴うアトラクションは基本的にNGです。
またマリンスポーツは、水圧の変化や酸素濃度が胎児へ影響してしまうので避けたほうがよいでしょう。
妊婦さんの旅行の持ち物
- 母子手帳
- 健康保険証
- 万が一の際に連絡できる旅行先近くの医療機関リスト
- 身体を冷やさないための上着など
なかでも忘れずに持っていきたいものは、不測の事態に備えての母子健康手帳・保険証です。
緊急の場合に受診できる医療機関のリストもあげておくとよいでしょう。
ただし、医療機関によっては、旅先での急な飛び込み受診に対応してもらえないリスクがあります。
また、自宅から1、2時間の距離でも、気温差が大きい地域もあります。
温度調整できる上着などを忘れないように注意しましょう。
妊婦さんの旅行に関するQ&A
ここでは妊婦さんの旅行について、よくある3つの質問をまとめました。
順番に見ていきましょう。


実際、インターネット上では“マタニティ旅行(マタ旅)”という言葉も浸透し、妊婦向けの旅行プランが多く紹介されています。
しかし、日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医および日本周産期新生児医学会(母体・胎児)専門医としての立場からは、妊娠中の旅行は基本的におすすめできません。
もちろん、日本には妊婦の旅行を明確に禁止するガイドラインは存在しません。
旅行に出かけたいお気持ちは十分理解できます。
ただ、妊娠中はいつ何が起こるか予測が難しく、「万が一」が起こった際にどう対処するかを考える必要があります。
たとえば、旅先で突然の陣痛や破水、出血などが起きた場合、かかりつけ医のいる医療機関から遠く離れていれば、迅速な対応ができません。
長距離の移動を伴う場所では、救急車も分娩予約をしている施設まで搬送してくれないことがあります。
その結果、見知らぬ土地で入院、早産、さらにはNICUでの新生児管理が必要になる可能性もあるのです。
温泉そのものは、38〜40℃程度のぬるめのお湯に短時間入る程度であれば医学的に大きな問題はありません。
ただし、妊娠中は体温調節が不安定になりやすく、のぼせや脱水、転倒のリスクもあるため、慎重な判断が求められます。
「旅行が可能かどうか」ではなく、「今、本当に行くべきかどうか」。
その問いを大人としてご自身に投げかけてみてください。

しかし、それらは“快適さ”への配慮であり、“医学的な安全”を保障するものではありません。
特に以下のようなケースが起こりうることを念頭においてください:
- 妊娠中期に旅行をしていた妊婦さんが旅先で破水し、その土地で長期入院となった
- 妊娠中に予定外の早産となり、NICUに赤ちゃんが入院。母親はマンスリーマンションを借りて滞在することに
- 海外や遠方で分娩することになり、精神的・経済的負担が大きくなった
こうした事態は決して特別ではなく、どの妊婦さんにも起こりうる現実です。
施設選びに安心感を求めるのは自然なことですが、それ以上に大切なのは、「今は旅行に行くべき時期かどうか」という視点です。

妊婦さんは、ホルモンの影響で眠気・注意力の低下・集中力の乱れが起きやすく、つわりや頻尿、腰痛など身体的不調も重なります。
そのため、自分自身が思っている以上に運転に必要な判断力や反応速度が低下している可能性があります。
また、万が一移動中に体調が急変した場合、自身が運転していれば対処が遅れがちです。
できる限り、パートナーや同伴者に運転を任せましょう。
さらに、移動時間が長くなると、静脈血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)のリスクも高まります。
これは飛行機だけでなく、新幹線や自家用車でも同様です。
シートベルトは妊娠中でも必ず着用してください。
腰ベルトは腹部を避けて骨盤の下に、肩ベルトは胸の中央から腹部の側面にかけて通すのが正しい装着方法です。
まとめ
妊娠中の旅行を検討している方には、「安定期だから大丈夫」といった言葉が安心材料になることがあるかもしれません。
しかし、「安定期」という医学用語は存在せず、妊娠中に安全が保証される期間はありません。
陣痛や破水は予測できません。
旅先や移動中にそれが起これば、母体・胎児ともに重篤なリスクを抱えることになります。
旅行は「思い出」になるかもしれませんが、「後悔」になる可能性もあります。
あなたと赤ちゃんの命を守るために、あえて旅行を控えるという選択をすることは、極めて理にかなった、そして尊重されるべき判断です。
赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?
赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。
幹細胞は新しい医療への活用が進められており、もしもの時に役立てられる可能性があります。
- 出産後わずか数分の間にしか採取できない貴重な赤ちゃんのものです。
- 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
- どちらにも幹細胞がたくさん含まれています。
- 再生医療分野など、さまざまな活用が進んでいます。
- それぞれ異なる幹細胞が含まれているため、両方を保管しておくことで将来の利用の選択肢が広がります。
実際に保管・利用した方のお声
出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。

高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま
さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています
元気に産まれたと思っていましたが、生後半年頃から左手をほとんど使おうとしないことに気付き、1歳頃にやはり何かおかしいと思ってMRIを撮ってもらうことにしました。結果1歳5ヶ月で脳性まひとわかりました。
2歳の誕生日にステムセルからハガキが届き、出産時に保管したさい帯血がもしや役に立つのではと思い至りステムセルに問い合わせました。ちょうど臨床試験への参加者を募集していて、運よく2歳5ヶ月のときに参加することができました。
輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。
さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。
その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。
医師からのメッセージ

総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生
応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療
近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。
さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
保管するなら、ステムセル研究所の「HOPECELL(ホープセル)」
株式会社ステムセル研究所が提供する「さい帯・さい帯血ファミリーバンクHOPECELL(ホープセル)」は、日本国内で最も選ばれている保管サービスです。
ステムセル研究所は、25年以上の保管・運営実績がある日本初のさい帯血バンクで、国内最多となる累計80,000名以上のさい帯血を保管しています。

研究所

研究所
国内では脳性まひに対する、赤ちゃんご自身やごきょうだいのさい帯血投与の研究が行われています。海外の臨床研究では、投与により運動機能および脳神経回路の改善が報告されています。また自閉症スペクトラム障害(ASD)に対して、さい帯血の投与によりコミュニケーション能力や社会への順応性が向上する可能性が期待されており、大阪公立大学にてお子さまご自身のさい帯血を投与する臨床研究が開始されます。

研究所
無料パンフレットをお送りします!
さい帯・さい帯血保管についてより詳しく知っていただけるパンフレットをご自宅へお送りします。
赤ちゃんの将来に備える「さい帯・さい帯血保管」をぜひ妊娠中にご検討ください。

この記事の監修者
助産師 坂田陽子 先生
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー