妊娠後期における下痢の原因とは?対処方法や注意点も解説

記事監修者:助産師 坂田陽子 先生
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

妊娠後期に入り、下痢が頻発するようになっていませんか。
妊娠後期では女性ホルモンの分泌が促進され、下痢が起こりやすい状態になっています。
しかし女性ホルモンの分泌以外にも、下痢が起こる原因はあり、注意しなければいけない症状もあります。
この記事では、おもに以下のような内容を解説していきます。
・妊娠後期に下痢が起こる原因
・予防・対処方法
・注意点
この記事を読むと、妊娠後期に起こる下痢への対策がわかり、安心して出産を迎えられるようになりますよ。
妊娠後期における下痢の原因5点
妊娠後期に起きる下痢には、さまざまな原因があります。
・ホルモンの分泌
・ウイルスや細菌による感染症
・抗生物質や鉄剤の服用
・ストレス
・お腹の圧迫
それぞれの原因について、順番に内容を解説していきます。
原因1:ホルモンの分泌
妊娠後期に入ると、母体は出産に向けて本格的に準備を始め、女性ホルモンを増やしていきます。
女性ホルモンのなかには腸の働きを活発にするものがあり、下痢を引き起こす原因となるのです。
原因2:ウイルスや細菌による感染症
妊娠期間中は抵抗力が低下しており、妊娠していないときよりも感染症にかかりやすい状態になっています。
食中毒や胃腸炎などにも注意が必要です。
頻度は非常に稀ですが、「カンピロバクター」や「リステリア」に感染すると新生児髄膜炎や胎児敗血症の原因になることもあります。
原因3:抗生物質や鉄剤の服用
妊娠中は、貧血になるケースが多く、産婦人科で鉄剤を処方されてる人もいるでしょう。
鉄剤を服用すると消化器に負担がかかるため、副作用で下痢を引き起こす可能性があります。
また、抗生物質を服用すると腸内細菌のバランスが崩れるため、下痢になる場合があります。
原因4:ストレス
妊娠中は、さまざまなマイナートラブルやホルモンバランスの変化によって、いつも以上にストレスを感じやすい状態となっています。
些細なことでイライラしてしまったり、感情の起伏が激しくなったと感じる妊婦さんも多いのではないでしょうか。
このような精神的なストレスによって自律神経が乱れてしまうことで、下痢を引き起こすこともあります。
原因5:お腹の圧迫
妊娠後期になると、おなかの赤ちゃんがぐんっと成長することで、子宮も大きくなっていきます。
大きくなった子宮は、体内で胃腸などの臓器を圧迫してしまいます。
それによって消化不良が起こり、下痢の原因となります。
妊娠後期の下痢に対する3つの安全な対処法
妊娠後期に下痢が続くと「赤ちゃんは大丈夫?」と心配になりますが、適切な対処法を知っていれば安心です。
・水分・電解質の補給
・消化によい食事への調整
・整腸剤の活用
順番に見ていきましょう。
対処法1:水分・電解質の補給
まずは下痢で失われた水分と電解質を速やかに補うことが最優先です。
経口補水液は、失われた水分や電解質を体に素早く吸収できるよう設計された飲み物で、感染性胃腸炎による下痢・嘔吐の脱水状態に適しています。
ただし経口補水液は脱水症状があるときに飲むものであるため、脱水症状の予防をしたい場合にはスポーツドリンクを選びましょう。
一度に大量に飲むのではなく、少量ずつこまめに摂取することが大切です。
水分補給の際は、常温または人肌程度に温めたものを選び、冷たい飲み物は胃腸を刺激するため避けてください。
対処法2:消化によい食事への調整
下痢のときは、胃腸に負担をかけない食事に切り替えることも重要です。
食物繊維を多く含む
△野菜
△きのこ
△海藻
△豆類
などは便秘予防に効果的ですが、下痢のときは控えめにしましょう。
〇おかゆ
〇白身魚
〇バナナ
など消化のよい食品を中心に、少量ずつ頻回に摂取してください。
なかでも生ものには注意が必要で、感染リスクを避けるため加熱調理したものを選びましょう。
症状が落ち着いてきたら、徐々に通常の食事に戻していくことで腸内環境の回復を促せます。
妊娠中の食事ポイント5つ|OK/NGの食べ物一覧
対処法3:整腸剤の活用
整腸剤の活用も下痢に有効な手段です。
しかし自己判断での市販薬使用は避け、かならず医療機関で相談しましょう。
妊娠中の下痢には、腸内細菌を正常化して整腸作用を発揮する薬が処方される場合があります。
症状が改善しない場合や悪化する場合は、ほかの消化器疾患が隠れている可能性もあるため、早めに医療機関で相談することが大切です。
【いまからできる】妊娠後期の下痢を予防する3つの対策
様々な原因で起こる妊娠後期の下痢ですが、日常生活でできる3つの予防方法があります。
・身体を冷やさない
・食事に気をつける
・ストレスを溜めない
それぞれ内容をご紹介していきます。
予防法1:身体を冷やさない
とくにおなかは温めて過ごすことが大切です。
転倒や温度、水分補給に注意しながら、入浴をするのもよいでしょう。
ただし入浴する際は、急な血圧の変化を避け、37〜40℃の湯温で入るようにしましょう(※1)。
身体を温め過ぎない半身浴もおすすめです。
冷たい食べ物の摂取は控えましょう。
(※1)出典:JCHO北海道病院産婦人科「母親学級のしおり」
予防法2:食事に気をつける
消化の悪い食事、火の通りが不十分な食事には注意しましょう。
味付けの濃いものや辛いものも、胃腸に負担をかけます。
飲料水、飴やガムなどの人口甘味料は腸に吸収されづらい性質をもっています。
人工甘味料は腸の働きを活発にし、下痢を引き起こすこともあるので、下痢でつらい時は摂取くぉなるべく控えましょう。
予防方法3:ストレスを溜めない
散歩やストレッチなどで身体を動かしたり、眠れるときにしっかりと睡眠をとったりするなど、ストレスを軽減できる方法を見つけてみましょう。
ゆったりとした気持ちで過ごすことが何よりも大事です。
妊娠後期の下痢で注意したい5つの症状

以下のような症状が続く場合は、我慢せずに病院で受診しましょう。
・1日に10回以上の下痢をする(※2)
・嘔吐や腹痛などの症状を伴っている場合
・発熱がある
・下痢症状がひどく、1日様子をみても治らない
・便に血が混ざっている
下痢の症状が重かったり、長引いたりするケースでは、原因を突き止めてから治療する場合があります。
とくに便に血が混ざっているときは、ほかの病気を患っている可能性があるため、注意が必要です。
下痢がつらくても、自己判断で市販の下痢止めを服用するのは厳禁です。
医療機関で相談し、対処方法を仰ぎましょう。
(※2)出典:珠洲市役所|病院広報誌はあとのおと「食中毒について」令和2年8月1日発行
妊娠後期に下痢を繰り返しても胎児に影響はないのか?
妊娠中に下痢をしてしまうことで、赤ちゃんへ直接影響することは少ないでしょう。
しかし下痢が続くことで、母体の体力低下や脱水のリスクがあるため注意が必要です。
また感染による下痢の場合は、胎児に感染すると新生児髄膜炎や胎児敗血症の原因となることがあります。
下痢に伴って、腹痛や嘔吐など他の症状がみられる場合には、早めに受診しましょう。
妊娠後期の下痢に関するQ&A
ここでは妊娠後期の下痢について、よくある3つの質問をまとめました。
順番に見ていきましょう。

特に、臨月が近づくと「お腹がゆるくなってきた」と感じる方が増えます。
ただし、ずっと下痢が続く/水様便が何日も止まらない/食欲がなく脱水ぎみといった場合は、感染性胃腸炎や別の原因の可能性もあるため、産婦人科に相談しましょう。

「胎動が激しくなると、なんとなくお腹もゴロゴロする…」と感じる方は多いですが、それは腸が刺激されて動きやすくなるためかもしれません。
胎動のあとに強い下腹部痛や頻繁な下痢がある場合は、他の要因(子宮の収縮や消化不良など)が関係している可能性もあるため、無理せず休んで様子を見ましょう。

これを「お産前のサイン」として感じる方も少なくありません。
また、下痢のような腹痛に加えて次のような症状がある場合は、陣痛やおしるしの可能性があります。
・お腹の張りが定期的にくるようになった
・下腹部の痛みが10分〜15分間隔で繰り返す
・少量の出血や粘液が混じったおりものが出た
・便意のような感覚が続く
ただし、激しい下痢・発熱・嘔吐を伴う場合は、感染症の可能性もあるため、迷わず病院に連絡してください。
まとめ
妊娠後期の下痢は、女性ホルモンの影響だけでなく、
・感染症
・薬剤の副作用
・ストレス
・子宮による臓器圧迫
など複数の原因で発生します。
とくに妊娠中は免疫力が低下しており、食中毒にかかりやすく重症化しやすいため注意が必要です。
下痢の対処法として、もっとも重要なのは脱水予防です。
経口補水液やスポーツドリンクを少量ずつこまめに摂取し、消化によい食事(おかゆ、白身魚、バナナなど)を心がけましょう。
整腸剤の使用も有効ですが、自己判断での市販薬服用は避け、必ず医療機関で相談することが大切です。
予防策としては以下の3点が効果的。
予防項目 |
詳細 |
体温管理 |
おなかを温める、半身浴の活用 |
食事管理 |
生もの・刺激物を避け、十分加熱した食品を摂取 |
ストレス軽減 |
適度な運動、十分な睡眠 |
一過性の下痢であれば胎児への直接的影響は少ないとされていますが、1日10回以上の下痢、発熱、血便、嘔吐を伴う場合は早急な受診が必要です。
感染による下痢は流産や早産のリスクを高める可能性があるため、症状が続く場合は我慢せず医療機関に相談しましょう。
赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?
赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。
幹細胞は新しい医療への活用が進められており、もしもの時に役立てられる可能性があります。
- 出産後わずか数分の間にしか採取できない貴重な赤ちゃんのものです。
- 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
- どちらにも幹細胞がたくさん含まれています。
- 再生医療分野など、さまざまな活用が進んでいます。
- それぞれ異なる幹細胞が含まれているため、両方を保管しておくことで将来の利用の選択肢が広がります。
実際に保管・利用した方のお声
出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。

高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま
さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています
元気に産まれたと思っていましたが、生後半年頃から左手をほとんど使おうとしないことに気付き、1歳頃にやはり何かおかしいと思ってMRIを撮ってもらうことにしました。結果1歳5ヶ月で脳性まひとわかりました。
2歳の誕生日にステムセルからハガキが届き、出産時に保管したさい帯血がもしや役に立つのではと思い至りステムセルに問い合わせました。ちょうど臨床試験への参加者を募集していて、運よく2歳5ヶ月のときに参加することができました。
輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。
さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。
その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。
医師からのメッセージ

総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生
応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療
近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。
さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
保管するなら、ステムセル研究所の「HOPECELL(ホープセル)」
株式会社ステムセル研究所が提供する「さい帯・さい帯血ファミリーバンクHOPECELL(ホープセル)」は、日本国内で最も選ばれている保管サービスです。
ステムセル研究所は、25年以上の保管・運営実績がある日本初のさい帯血バンクで、国内最多となる累計80,000名以上のさい帯血を保管しています。

研究所

研究所
国内では脳性まひに対する、赤ちゃんご自身やごきょうだいのさい帯血投与の研究が行われています。海外の臨床研究では、投与により運動機能および脳神経回路の改善が報告されています。また自閉症スペクトラム障害(ASD)に対して、さい帯血の投与によりコミュニケーション能力や社会への順応性が向上する可能性が期待されており、大阪公立大学にてお子さまご自身のさい帯血を投与する臨床研究が開始されます。

研究所
無料パンフレットをお送りします!
さい帯・さい帯血保管についてより詳しく知っていただけるパンフレットをご自宅へお送りします。
赤ちゃんの将来に備える「さい帯・さい帯血保管」をぜひ妊娠中にご検討ください。

この記事の監修者
助産師 坂田陽子 先生
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー