妊娠初期は流産しやすいと聞き、不安になっていませんか。
事実、日本産科婦人科学会の調査によると、流産のうち約80%が妊娠初期(妊娠12週未満)に起こっているという結果が報告されています(※1)。
しかし、妊娠初期に注意すべきポイントをおさえておけば、妊娠初期に流産する確率は下げられる可能性があります。
この記事では、おもに以下の内容を解説していきます。
・妊娠初期の流産率
・妊娠初期に流産しやすい行動
・流産の体験談
この記事を読むと、妊娠初期での流産に対する不安がやわらぎますよ。
(※1)出典:日本産科婦人科学会「流産・切迫流産」
【統計結果】妊娠初期は流産しやすい
日本産科婦人科学会が公表している情報によると、妊娠のうち15%前後が流産になるといわれています。
また、妊娠した女性の約40%が流産しているとの報告もあり、流産は多くの女性が経験しているのです。
さらに流産の約80%は妊娠初期(妊娠12週未満)に起こっています(※2)。
(※2)出典:日本産科婦人科学会「流産・切迫流産」
妊娠初期に流産が多い3つの理由
妊娠初期に流産が多い理由として、おもに以下の3点があげられます。
・胎児の染色体異常
・着床の問題
・ホルモンバランスの乱れ
順番に見ていきましょう。
原因1:胎児の染色体異常
妊娠初期に流産が多いのは、そのほとんどが受精卵の染色体に異常があるためです。
実際に岡山大学や富山大学が共同で作成した資料によると、妊娠初期の流産の「約80%」は、胎児(受精卵) の偶発的な染色体異常だといわれています(※3)。
卵と精子の染色体にある遺伝子情報を元に胎児の体を作り上げるのですが、受精の際に染色体の数が違ってしまうなどの異常が見られた場合には生命を維持することができません。
染色体に異常があったものはそのほとんどが初期で妊娠の継続ができないため、妊娠初期での流産が多くなります。
染色体は細胞が分裂するときに正しくコピーされるのですが、それがうまくいかないことがあります。
コピーがうまくいかないというのは、どうしても起こりうることなのです。
原因2:着床の問題
着床とは受精卵が子宮の内側に到達することをさし、妊娠成立に欠かせません。
この着床が上手くできずに、流産してしまうケースもあるのです。
たとえば子宮の形に問題があったり、子宮の内側の状態が着床に適していないことなどがあげられます。
ただし、流産の原因が着床にあると特定することはむずかしいです。
原因3:ホルモンバランスの乱れ
妊娠初期におけるホルモンバランスの乱れは、流産のリスクを高めます。
とくに問題となるのは「黄体機能不全」と呼ばれる症状で、卵巣が十分な量のプロゲステロンを分泌できない状態です。
実際に日本霊長類学会が公表している研究論文では、流産の「約12%」が内分泌異常であり、黄体機能不全などに起因しているといわれています(※3)。
また甲状腺機能異常(甲状腺機能亢進症や低下症)も妊娠初期の流産リスクを高める要因です。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などの内分泌疾患も、ホルモンバランスの乱れを通じて流産リスクを高める可能性があります。
出典:(※3)J-STAGE|山海 直,小原 実穂(医薬基盤研・霊長類)「流産を繰り返すカニクイザルへの性ホルモン投与」2023年日本霊長類学会大会 p. 51
妊娠初期の流産率は?【加齢とともに増加】
妊娠初期に流産する確率は以下の表の通り、妊娠した時の年齢が上がるほど上昇しています。
妊娠時の年齢 | 流産・死産率 |
21~22歳 | 8.4% |
23~24歳 | 10.2% |
25~26歳 | 8.9% |
27~28歳 | 9.9% |
29~30歳 | 11.6% |
31~32歳 | 14.4% |
33~34歳 | 21.8% |
出典:国立社会保障・人口問題研究所|妊娠企図の延期と子ども数(2011年)より一部抜粋して表作成
【注意】妊娠初期に流産しやすい行動5選
妊娠12週までの流産は染色体の異常であることが多く、防ぐことは難しいもの。
しかしそれ以降は、流産になる原因をできるだけ遠ざけることで、流産の可能性を低くできる可能性があります。
妊娠中に避けたい、流産しやすくなる行動は以下の5つです。
・喫煙
・アルコール摂取
・コンドームを付けない性交渉
・身体に負荷をかける行動
・偏食
順番に解説していきます。
行動1:喫煙
たばこ煙草に含まれるニコチンには血管を収縮させる作用があり、血流量が減少します。
また、一酸化炭素は酸素を体中に運ぶヘモグロビンの量を減少させます。
このことによってお腹の中の赤ちゃんが低酸素状態に陥ったり、 胎盤の機能低下が起きたりすると発育不全による流産や早産の可能性が高まります。
行動2:アルコール摂取
妊娠に気づくか気づかないか、4週ごろの妊娠超初期であればアルコール摂取の影響はほぼないといわれています。
しかし、その後の妊娠初期は胎児の器官形成が行われる時期であり、胎盤を通じてアルコールが赤ちゃんの体内に届くので、赤ちゃんは肝臓でアルコール成分を分解しなければなりません。
摂取したアルコールが赤ちゃんに影響し流産や死産、器官の発育に異常が現れることがあります。
少量であれば影響が少ないといわれてもいますが、この量なら絶対に大丈夫というデータもないため、妊娠に気づいた後の飲酒はしないようにしましょう。
行動3:コンドームを付けない性交渉
妊娠期間中もパートナーとの性交渉は可能ですが、お腹の赤ちゃんの為に気を付けて欲しいのが感染症対策です。
コンドームの使用は細菌の感染予防にもなります。
細菌感染による炎症が子宮に広がると流産につながりますので、必ずパートナーと理解し合ってコンドームを使用するようにしましょう。
行動4:身体に負荷をかける行動
例えば妊娠前から続けていたジョギングのような運動は、すぐにやめる必要はありません。
しかし妊娠に気づいたら、転倒したり体をぶつけるような運動や重いものを持ち上げたり踏ん張ったりする運動を続けていくのはよくありません。
ハードな運動は流産へつながる可能性がありますので、子宮のある腹部に力が加わる運動は避けるようにしましょう。
ですが、基礎体力向上のためには適度な有酸素運動は有効ですので、日ごろから激しい運動をしていた人は運動の種類を変えて楽しむようにしましょう。
行動5:偏食
妊娠初期における偏食などの食習慣は、胎児の健康的な発育に悪影響を与えてしまい、流産のリスクを高める可能性があります。
たとえば極端な低カロリー食や特定の栄養不足などです。
とくに、
・葉酸
・鉄分
・カルシウム
・タンパク質
の不足には注意が必要です。
妊娠初期に限ったことではありませんが、過度の糖分や脂肪の摂取も問題で、妊娠糖尿病や過度の体重増加につながります。
また生の魚や肉、未殺菌の乳製品などは食中毒のリスクがあるため、ひかえましょう。
「具体的に、どんな食べものを食べたらよいのだろう」
「つわりで思いどおりの食事が取れない」
という人は、下記を参考にしてみてください。
妊娠初期における食事の悩みが解消され、安心して妊娠生活を送れるようになりますよ。
【体験談】妊娠初期の流産と兆候
私は妊娠初期のある日、不安な腹痛と共に目が覚めました。
前日に軽い出血があり、念のため病院を受診して「安静」を言い渡された後でした。
でも前日はまだ赤ちゃんに異常はなく、安静にしていればきっと大丈夫だと思っていたのです。
しかし、あまりの腹痛に「ダメかもしれない」と直感しました。
全身から血の気が引いたことを今でも思い出します。
その後、すぐ病院を受診。
診察結果を聞くために部屋に入ると、先生がテーブルの上にティッシュの箱を出しているのが見えました。
そして、流産であることが伝えられました。
正確には流産が進行している途中で、まだおなかの中に赤ちゃんがいる状態でした。
「この時期の流産はお母さんのせいではありません。赤ちゃんの方の問題なのです」
そのように先生からは説明されましたが、深い絶望と悲しみ・・・
何がいけなかったのだろう、自分の何かに原因があったのではないだろうか、と考えずにはいられませんでした。
流産経験者の私から伝えたいこと
この命は、生まれてくる運命を持っているのか。
妊娠初期の流産は染色体異常で防ぐことができないとわかっていても、ご自分のことを責めてしまう方もおられます。
その矛先が自分以外に向くこともあるかもしれません。
でも、仮にご自身にそのような日が来ても、どうぞご自分も周囲も責めることなく、ご自身のお子さんと短い時間でも一緒にいられたことを誇りに思ってください。
そして、起こるかわからない未来を不安に思っていまを過ごすより、新しい命が宿ったことに感謝して、マタニティライフを楽しんでください。
お母さんが明るく幸せな気持ちでいることが、おなかの赤ちゃんにとっては一番です。
いま、この瞬間を大事に、幸せな気持ちで過ごしていきましょう。
妊娠初期の流産しやすい行動に関するQ&A
ここでは妊娠初期の流産しやすい行動について、よくある3つの質問をまとめました。
順番に見ていきましょう。
土肥先生
妊娠12週までに流産する割合は、流産の約85%を占めており、妊娠の25%が流産に至ります。
土肥先生
土肥先生
まとめ
妊娠初期のうち、12週までの流産は、染色体の異常など赤ちゃん側に問題があるため防ぎようがないものです。
もし起こってしまっても、お母さんができることは無かったはずです。
しかしその後については、少しの知識があれば流産のリスクを下げることも可能です。
絶対に気を付けたいアルコールや喫煙、過度な運動を避けたり、性交渉の際にコンドーム使用を徹底することで、赤ちゃんを大切に守ってあげましょう。
チャンスは出産時の一度きり。赤ちゃんの将来の安心に備えるさい帯血保管とは
うまれてくる赤ちゃんやその家族のために、おなかに赤ちゃんがいる時しか準備できないことがあるのをご存知ですか?
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さい帯血とは、赤ちゃんとお母さんを繋いでいるへその緒を流れている血液のことです。
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このさい帯血は、長期にわたって保管することができ、現在は治療法が確立していない病気の治療に役立つ可能性を秘めています。
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※ほかの保管者の声はこちらから
▼さい帯血保管について、もっと詳しく
この記事の監修者
坂田陽子
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー