妊娠初期に出血が起きる9つの原因とは?対処手順や体験談も紹介

坂田陽子

記事監修者:坂田陽子

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

「妊娠発覚後に出血があったけど、大丈夫なのだろうか」

「いつまで出血が続くのだろうか」

と不安になっていませんか。

まだまだ妊娠序盤、急に出血が起きたら、心配したり焦ったりしてしまいますよね。

しかし、心配し過ぎないでください。

アメリカ家庭医学会(American Academy of Family Physicians)が公表している資料によると、妊婦さんの「25%」は妊娠初期(資料内では妊娠12週まで)に出血を経験するといわれているからです(※1)。

そして妊娠発覚前なら、それは着床出血かもしれません。

着床出血と生理の違いについて、詳しく知りたい人は下記の記事を参考にしてくださいね。

着床出血と生理の違いを解説!妊娠検査薬を使うタイミングや注意したい症状も紹介

この記事では、おもに以下の内容を解説していきます。

・妊娠初期に起きるの出血の9つの原因
・妊娠初期に出血したときの対処手順
・【体験談】私の妊娠初期の出血

この記事を読むと、妊娠初期の出血の原因がわかり、どのように行動すればよいかわかりますよ。

(※1)出典:Hendriks E, MacNaughton H, MacKenzie MC. First Trimester Bleeding: Evaluation and Management「Am Fam Physician」2019 Feb 1;99(3):166-174. PMID: 30702252.

妊娠初期に起きる出血の9つの原因

妊娠初期の出血で考えらえる原因とその特徴は、以下の9つです。

原因 出血量 血色
着床出血 少量 赤~茶
絨毛膜下血腫 少量~大量 赤~茶
切迫流産 少量~大量
早期流産 少量~大量
異所性妊娠 少量~大量
胞状奇胎 少量もしくはおりものに混じる程度 褐色~赤
前置胎盤 少量~大量 赤~ピンク
子宮腟部びらん 少量もしくはおりものに混じる程度 赤~茶
子宮頸管ポリープ 少量もしくはおりものに混じる程度 赤~茶

順番に見ていきましょう。

1.着床出血(量:少量、色:赤~茶)

受精卵が子宮の中に着床する時に起きる出血で、妊娠による生理現象です。

生理時より短い期間でおさまる傾向にあります。

胎盤が子宮に形成される過程で、赤ちゃん側の細胞である絨毛が子宮内膜の細い血管を破って入り込み、子宮内膜の血管が傷つけられることで出血が起こるとされています。

2.絨毛膜下血腫(量:少量~大量、色:赤~茶)

受精卵が子宮内膜に着床した時、子宮内膜の血管が傷つけられ、子宮を包む絨毛膜と子宮内膜の間で出血することがあります。

その際にできた血の塊が絨毛膜下血腫です。

公益社団法人 日本産婦人科医会が公表している情報によると、絨毛膜下血腫が起こる頻度は「4〜22 %」といわれています(※2)。

少量の出血なら子宮に吸収されますが、量が多いと腟の外にまで漏れ出てくることがあります。

妊娠初期に見られる出血のほとんどを占めるとも考えられています。

血種が吸収され、感染を起こさなければ悪影響はありませんが、出血の量によっては安静を指示されることも。

なお、まれな症例ではありますが、妊娠中期以降も絨毛膜下血種による性器出血や子宮収縮といった症状が続く場合は、

・約15%が流産
・妊娠が継続できても約80%は早産
・予定日どおりに出産できる割合は10%以下

とも報告されています(※3)。

(※2,3)出典:公益社団法人 日本産婦人科医会「3.絨毛膜下血腫/ 感染性流産による流産」

3.切迫流産(量:少量~大量、色:赤)

切迫流産とは、妊娠22週未満の状態で、胎児が子宮内にあって流産へ進行する可能性のある出血などの症状を伴う状態をさします(※4)。

一般財団法人女性労働協会(厚生労働省委託事業)が公表している情報では、切迫流産は妊娠22週未満であればどの期間でも起こりえますが、とくに「妊娠12週まで」の期間にみられやすいともいわれています(※5)。

切迫流産は、少量の出血が断続的に見られるのが特徴です。

大量の出血や下腹部痛を伴うと、流産のリスクが高くなります。

重量物を持ち上げたり、長時間の立ち仕事を行っている人は切迫流産のリスクを高める可能性があるという報告も(※6)。

出血が少量で強い腹痛がなく超音波検査で胎児の心拍が確認されれば、妊娠を継続できます。

特別な治療法はなく、安静に過ごす経過観察になりますが入院が必要となる場合も。

出典:

(※4)出典:国立研究開発法人国立成育医療研究センター「妊娠中の出血!切迫流産っていったい何??」

(※5)一般財団法人女性労働協会(厚生労働省委託事業)「働く女性の心とからだの応援サイト 妊娠出産・母性健康管理サポート」切迫流産(妊娠22週未満)

(※6)一般財団法人 女性労働協会(厚生労働省委託事業)「働きながら安心して妊娠・出産を迎えるために」

4.早期流産(量:少量~大量、色:赤)

流産は妊娠22週未満に妊娠が継続できなくなること(※7)で、全妊娠の8~15%に起こります(※8)。

中でも妊娠12週未満に起こるものを早期流産といい、流産の9割を占めます(※9)。

妊娠12週までに起こる流産のほとんどは、胎児の染色体異常が原因です(※10)。

出典:

(※7)一般財団法人 女性労働協会(厚生労働省委託事業)「切迫流産(妊娠22週未満)」

(※8,10)国立研究開発法人国立成育医療研究センター「流産について」

(※9)厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)「反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)の相談対応マニュアル」平成24年3月発行

5.異所性妊娠(量:少量~大量、色:赤)

受精卵が子宮内膜以外の卵管、卵膜、腹膜などに着床してしまった妊娠のことを異所性妊娠といいます。

全妊娠の1〜2%の頻度で発症し、以前は子宮外妊娠と呼ばれていました(※11)。

少量の赤い出血が続き、徐々に出血量が増えて腹痛を伴うようになります。

 妊娠検査薬で妊娠陽性の判定は出ますが、超音波検査で子宮の中に赤ちゃんがいないことから異所性妊娠が判明します。

胎児が成長できる環境ではないので、妊娠の継続は不可能です。

母体の命に関わる可能性がある病気なので、妊娠検査薬で妊娠を確認したら、早めに産婦人科を受診し、超音波検査で胎嚢(赤ちゃんを包む袋)が子宮の中にあるかどうかを確認してもらいましょう。

(※11)出典:J-STAGE|矢澤 浩之(福島赤十字病院 産婦人科),帆保 翼(福島県立医科大学 産婦人科)ほか「当院における異所性妊娠大量出血症例の手術成績と管理の現状」日産婦内視鏡学会 2021 年 37 巻 1 号 p. 30-37

6.胞状奇胎(量:少量もしくはおりものに混じる程度、色:褐色~赤)

胎盤をつくる絨毛組織が異常増殖を起こし、粒のような状態になって子宮を満たしている状態で、胎児はその中に吸収されてしまいます。

和歌山県立医科大学 産科婦人科が提供している情報によると、胞状奇胎の頻度は500〜1,000妊娠に1回程度(0.1〜0.2%)です(※12)。

また「40歳以上」の高齢妊娠では、胞状奇胎の頻度が上昇するともいわれています(※13)。

手術で子宮内の絨毛を取り除く処置をする必要があり、妊娠の継続はできません。

超音波検査で診断されますが、自覚症状として、断続的な出血や褐色のおりものがあったり、つわりがひどかったりします。

(※12,13)出典:和歌山県立医科大学 産科婦人科「絨毛性疾患」

7.前置胎盤(量:少量~大量、色:赤~ピンク)

胎盤が正常より低い位置(腟に近い側)に付着してしまい、子宮の出口(内子宮口)の一部または全部を覆っている状態です。

獨協医科大学病院産科婦人科が公表している研究論文によると、前置胎盤が起こる頻度は「1~2%」といわれています(※14)。

超音波検査で発見されることがほとんどで、無症状の場合が多いですが、痛みが無いのに急に出血してくる場合もあります。

少量の出血が数回起こることが多いですが、1回目の出血がいきなり大出血の場合も。

前置胎盤になると帝王切開での分娩となります。

出典:(※14)J-STAGE|多田 和美,獨協医科大学病院産科婦人科,総合周産期母子医療センター産科部門「基幹周産期施設における前置胎盤症例取扱いの実態と推移」2016 周産期学シンポジウム抄録集 p. 65-69

8.子宮腟部びらん(量:少量もしくはおりものに混じる程度、色:赤~茶)

子宮腟部びらんは、子宮の入口付近である子宮腟部が赤くただれている状態です。

ほとんどは女性ホルモンが活発な時期に多く見られる生理現象で病気ではありません。

妊娠していない時でも出血しやすく、性交渉や内診の刺激で出血することもあります。

細菌や刺激への抵抗力が弱いため、炎症を起こすと出血が見られることも。

炎症が治まると、出血も止まります。

9.子宮頸管ポリープ(量:少量もしくはおりものに混じる程度、色:赤~茶)

子宮頸管という子宮の入り口にできるイボのようなもので、多くの場合、良性で無症状です。

共愛会病院 産婦人科が公表している研究論文によると、子宮頸管ポリープは、婦人科を受診する人の「1~3%」にみられると報告しています(※15)。

通常は数mm から2~3cm の大きさで、多くは、卵胞ホルモン(エストロゲン)の影響でできるといわれています(※16)。

組織がやわらかく充血しやすいため、性行為や排便時のいきみなどの刺激でも出血する場合も。

各医療機関の判断によって異なりますが、出血がある場合は切除して経過観察を行います。

(※15,16)出典:J-STAGE|佐藤 賢一郎,福島 安義(共愛会病院 産婦人科)「酸化セルロースの充填が有用であった子宮頸管ポリープ切除後の難治性出血の1例」道南医学会ジャーナル 2020 年3巻1号 p. 65-67

妊娠初期に出血したときの対処手順

妊娠初期に出血があったら、落ち着いて以下の手順で対処を進めましょう。

1.出血の色、量、においを確認する
2.病院に電話連絡して、出血したことを伝える
3.病院からの指示に従う

いざという時に慌てないためにも、出血した場合の対処法を知っておきましょう。

順番に解説していきます。

対処法1.出血の色、量、においを確認する

出血があることを確認したら、色や量、においを観察して、メモに残しておきましょう。

医療機関で説明する際に、言葉では伝わりにくいケースもあるため、可能であればスマホのカメラなどで画像を撮影しておくと正確に状況を伝達できます。

対処法2.病院に電話連絡して、出血したことを伝える

以下のポイントを的確に伝えるようにしましょう。

・出血の状態(対処法1でチェックしたもの)
・いつから出血しているか
・おなかに痛みや張りがあるか
・37.5度以上の発熱やその他の不調があるか

対処法3.病院からの指示に従う

すぐに受診するか、自宅安静をして様子を見るかは、病院の指示に従います。

胎児心拍がすでに確認できている場合、しばらくして出血が止まるようであれば、自宅安静の指示が出る場合も。

病院を受診するように指示があれば、車かタクシーを利用し、安静な姿勢で移動します。

公共交通機関の利用は避けましょう。

【体験談】私の妊娠初期の出血

私自身、妊娠初期に出血した経験があります。

夫の転勤で引っ越しがあり、無理をして動いてしまった後に出血したのです。

幸い出血は一度だけで大事には至らず、数日の安静で通常の生活に戻れました。

「流産してしまったのではないか」と不安で眠れなかったのを覚えています。

妊娠初期の出血に関するQ&A

ここでは妊娠初期の出血について、よくある3つの質問をまとめました。

順番に見ていきましょう。

質問
着床出血が起こる確率はどのくらい?

回答者
土肥先生

着床出血が起こる確率は、妊娠した女性の約25%程度と言われています。

生理予定日の1週間ほど前から始まり、2~3日ほど少量の出血が続くことが多い傾向にあります。

一般的には着床出血はさらっとした出血で、量も少なく、3日程度で終わるので期間も短いとされています。

質問
どのくらい出血が続いたら病院に相談するべき?

回答者
土肥先生

妊娠初期に出血が続いた場合は、出血の量や色、妊娠月数にかかわらず、病院で診察を受けることをおすすめします。

ただし「生理の多い日くらいに大量の鮮血が出た」、「血のかたまりが出た」、「腹痛を伴う」という場合にはすぐに病院へ連絡して受診しましょう。

質問
妊娠初期の出血を予防する方法はある?

回答者
土肥先生

妊娠初期の出血を予防する方法はありませんが、出血の程度や症状に応じて適切に対処することが大切です。

妊娠初期に出血があった場合は、まずかかりつけの産婦人科医に連絡して相談しましょう。

まとめ

妊娠初期に起きる出血の原因と特徴は以下のとおりです。

原因 出血量 血色
着床出血 少量 赤~茶
絨毛膜下血腫 少量~大量 赤~茶
切迫流産 少量~大量
早期流産 少量~大量
異所性妊娠 少量~大量
胞状奇胎 少量もしくはおりものに混じる程度 褐色~赤
前置胎盤 少量~大量 赤~ピンク
子宮腟部びらん 少量もしくはおりものに混じる程度 赤~茶
子宮頸管ポリープ 少量もしくはおりものに混じる程度 赤~茶

これらの出血は量や色がさまざまで、少量から大量出血まで幅広いです。

出血の原因によっては、妊娠継続に影響を与える可能性があります。

出血の状態(色、量、におい)を確認・記録して、医療機関で状況を説明しましょう。

妊娠初期の出血は多くの妊婦さんが経験する現象ですが、不安を感じるのは自然なことです。

しかし、適切な対応と医療機関のサポートにより、多くの場合は問題なく妊娠を継続できます。

出血があっても慌てずに行動し、医師の指示に従いましょう。

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この記事の監修者

坂田陽子

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

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