妊婦検診でほぼ毎回おこなう尿検査。もし「尿蛋白(にょうたんぱく)が陽性です」と言われたら、体や赤ちゃんにどんな影響があるのでしょうか?
妊娠中は、尿蛋白が出やすい状態です。疲労やストレス、つわりによる栄養低下などで尿蛋白が出ることも。ただし尿蛋白は、腎機能の低下や妊娠高血圧症候群を発症しているケースもあるため注意が必要です。
この記事ではおもに、以下の内容を解説します。
- 尿蛋白とは
- 尿蛋白が出る理由
- 尿蛋白が出たときの対策4点
この記事を読むと、尿蛋白で出た際の対策がわかり、安心して妊娠生活を送れますよ。
尿蛋白とは?
尿蛋白とは「尿に含まれる蛋白」のことです。尿に蛋白質が混じっている状態をさします。蛋白質は体に必要な栄養素なので、通常、尿にはほとんど排泄されません。
しかし妊娠中は、全身の血液量が増えることで腎臓に負担がかかり、尿中に蛋白が出やすくなります。妊娠に伴う生理的な変化といえますが、腎臓機能の低下、腎臓病、妊娠高血圧症候群の可能性もあるため、程度によっては注意が必要です。
とくに高血圧の場合には「妊娠高血圧症候群」が疑われます。
【注意】妊娠高血圧症候群とは?
妊娠高血圧症候群は、血圧の値と尿蛋白量が診断の基準となります。
・収縮期血圧140mmhg以上(重度の場合は160mmhg以上)
・拡張期血圧90mmhg以上(重度の場合は110mmhg以上)
・1日当たりの尿蛋白0.3g以上
妊娠高血圧症候群の自覚症状はほとんどなく、妊婦健診で指摘をされて初めて発覚するケースが多いです。まれに、頭痛・目の前がチカチカする・吐き気や嘔吐・上腹部の痛み・重度のむくみ等の症状が現れることもあります。
万が一このような症状を感じた際には、すぐに病院へ連絡しましょう。
・どのような場合に診断されるか
妊娠高血圧症候群は、血圧の値と尿蛋白量が診断の基準となります。
・収縮期血圧140mmhg以上(重度の場合は160mmhg以上)
・拡張期血圧90mmhg以上(重度の場合は110mmhg以上)
・1日当たりの尿蛋白0.3g以上
・対策
日常生活でできる対策方法をご紹介します。
① 妊婦健診の正しい受診
自覚症状がほとんどなく、妊婦健診で発覚することが多い妊娠高血圧症候群。そのため、医師の指示通りに正しい期間で必ず妊婦健診を受けましょう。早期に発見できれば、治療も症状も軽度で、赤ちゃんへの影響も最小限になります。
② 食事に気を付ける
高血圧の予防のためには、塩分を抑えた食事をこころがけましょう。食塩摂取の目標量は18歳以上の女性の場合、一日6.5g未満とされています。減塩に気を付けることで、むくみの予防にもつながります。
③ 十分な睡眠や休息をとる
忙しくストレスの多い生活は、血圧が上がる原因となってしまいます。特に妊娠後期になると寝つきも悪くなり、夜中に起きてしまうこともあるかと思います。しかし横になるだけでも体は休息がとれるので、あまり気にしすぎず、ゆったりと過ごしましょう。
妊婦健診で尿蛋白が出るのはなぜ?
腎臓は血液をろ過し、不要なものを尿として排出する働きがあります。妊婦さんの腎臓は自分の血液だけでなく、赤ちゃんの血液もろ過しているのです。
ろ過する血液の量が多いと腎臓には大きな負担がかかり、機能が低下します。結果、妊婦さんの尿には蛋白が混じりやすくなってしまうのです。妊娠中の運動不足も腎機能の低下を招きます。
さらに妊娠中には免疫力が低下して、膀胱炎などにかかりやすく、尿蚕白が陽性になることも。
あなたは大丈夫?尿蛋白検査の結果3種
尿蛋白の検査結果は、採尿したカップに試験紙を浸し、色の変化で判定する「試験紙法」と呼ばれる尿検査で判定されます。
(-)陰性 | (±)弱陽性(擬陽性) | (+)陽性 | |
状態 | 尿に蛋白が出ていない状態。 | 陽性まではいかない微量の尿蛋白が検出されている状態。 | 尿に蛋白が出ている状態。 |
詳細 | 尿検査のたびに尿蛋白(±)になってしまう場合は腎機能に何らかのトラブルが発生していることを考慮に入れて精密検査をすることもある。 | (1+)(2+)(3+)(4+)の4段階があり、数字が大きいほど尿により多くの蛋白が出ていることを意味します。数値が大きいほど、腎臓の働きが大きく低下していると考えられる。 |
妊婦健診で行われる尿蛋白の検査は、腎臓の健康状態を把握するだけでなく、妊娠高血圧症候群を早期発見するためにも重要です。尿蛋白は妊娠高血圧症候群が疑われるサインの一つです。腎臓の機能が低下したまま過ごしていると、妊娠高血圧症候群になるリスクが高くなります。
尿蛋白を出さないための対策4点
妊婦健診で一度尿蛋白が陽性になったとしても、かならず病気であるというわけではありません。続けて尿蛋白を出さないために、妊婦さんが気をつけることは以下の4点です。
・食生活
・飲み物
・体重管理
・睡眠と休養
対策1:食生活
塩分や糖分の過剰摂取は腎臓に大きな負担をかけます。食事は薄味を心がけましょう。とくに塩分の摂りすぎは、高血圧のリスクも高めます。塩分の摂取量は7~10g/日に抑えられるとよいでしょう。また蛋白質を摂りすぎると、血液中の蛋白質量が増え、腎臓でろ過しきれずに尿に蛋白が出る場合があります。しかし、蛋白質は赤ちゃんの成長のためには欠かせない大切な栄養素です。妊娠中には蛋白質の摂りすぎにも注意し「肉・魚・卵」などの動物性蛋白質と「豆・大豆製品」などの植物性蛋白質をバランスよく摂りましょう。
対策2:飲み物
水分は過不足なく、バランスよく摂ることが大切。水分摂取量の目安は1日2リットルです。妊娠中はカフェインゼロのものを選んで飲むようにしましょう。
対策3:体重管理
食事は内容だけでなく、量にも気をつけましょう。体重が増えることで腎臓への負担も大きくなるのです。しかし、無理なダイエットは赤ちゃんの成長に影響が出ます。適正体重を理解し、上手に体重管理をすることが大切です。
下記では、妊婦さんもできる運動を紹介しているので参考にしてくださいね。
内部リンク:妊婦体操で汗を流し、心と体をケアしよう!
対策4:十分な睡眠と休養
疲れやストレス、睡眠不足などにより、ホルモンバランスが乱れると尿蛋白が出やすくなります。また、これらは高血圧のリスク因子にもなります。妊娠中は、なるべく無理をせずに睡眠を十分にとり、疲れたときには無理をせず、心身ともにゆっくり休養しましょう。
まとめ
妊娠中は腎臓に負担がかかるため、尿蛋白が出やすい状態です。尿蛋白が出る状態を放置すると妊娠高血圧症候群になるリスクが高まり、母子ともに危険な状態になる可能性もあります。妊娠高血圧症候群を早期発見するためには、妊婦健診を毎回きちんと受けることが大切です。リスクを早期に発見・対応することで、お母さんと赤ちゃんの命を守り、安全な出産を迎えられます。日頃の生活習慣に気をつけながら、楽しい妊娠生活を過ごしてくださいね。
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▼さい帯血保管について、もっと詳しく
この記事の監修者
坂田陽子
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー