妊娠おめでとうございます。
出産までの間はお母さんと赤ちゃんは一心同体、お母さんの食事が赤ちゃんの栄養になると聞くと、体の中に入る食べ物には気を使いますね。
赤ちゃんとお母さんの身体の為にバランスよく栄養を摂る事は大切ですが、それと同じように妊娠中に食べるべきではない食品を知ることも大切です。
母子手帳にも書かれていたり母親学級などで紹介されたりすると思いますが、その危険性を知らないまま妊娠期間を過ごしていたお母さんも少なからずいらっしゃいますので是非このコラムを役立ててください。
今回は妊娠中、特に気をつけたい食事についてまとめます。
◯生ものは危険がいっぱい
妊娠中に食べてはいけないものとして厚生労働省も注意喚起をしているのが生ものです。
ではなぜ生ものを食べてはいけないのでしょうか。
妊娠中の女性は健康的な成人に比べて免疫機能が低下しています。
健康的な成人では食中毒を起こさなくても妊娠中のお母さんでは感染してしまうことがあるのです。
これから紹介するものの中には妊娠中のお母さんだけでなく、胎盤を通して赤ちゃんにも感染させてしまう危険性があります。
お母さんは気が付かないほどの軽症だとしても、赤ちゃんは症状が重いまたは流産という場合もあります。
以下の細菌や寄生虫に気をつけた食事をとってください。
・リステリア
・トキソプラズマ
・アニサキス
・ノロウイルス
・サルモネラ
◯生肉
【リステリア】
特に注意をしたいのがリステリアです。
リステリアは細菌で、土壌、河川、動物の腸管内など自然の中に存在しています。
リステリアに感染して重症化することはまれですが、妊娠中の女性や高齢者や免疫機能が低下している人は注意が必要です。無症状の場合もありますが、発熱や筋肉痛の他、敗血症や髄膜炎(リステリア症)など重篤な状態になる事があります。
また、妊娠中に感染することでリステリアが胎盤や胎児に感染し、流産や産まれた新生児がリステリア症になっていることがあります。妊娠している女性は健康な成人より『20倍』リステリア症になりやすいとも言われています。リステリアは70度以上の加熱により死滅しますが、4度以下の低温や、12%食塩濃度下でも増殖ができてしまうのが怖いところです。
つまり、一見安全そうな冷蔵庫での保存や塩漬けしている食品でも食中毒を起こす恐れがあります。
【トキソプラズマ】
トキソプラズマはヒト、豚、鶏、牛、鹿の肉や、猫の排泄物に寄生する原虫です。
多くの成人はすでに感染して抗体をもっていますが、妊娠中に初めて感染するとその約3割に胎児感染が起こるという報告があります。妊娠中の感染で妊婦さん本人が重症化することはほとんどありませんが、胎盤を通じて流産や、赤ちゃんが脳や眼などの神経に異常がでる先天性トキソプラズマ症を発症することがあります。
トキソプラズマは早期であれば抗生物質により赤ちゃんへの感染率を下げることができます。
こちらは食事だけでなく、妊娠中に新しく猫を飼わない、猫のフンの始末をしないなどの対応も必要です。
どちらも気をつけるべき食品は以下のものです。
生ハム、パテなどの食肉加工品
スモークサーモンなどの魚介類加工品
生野菜
ナチュラルチーズ、未殺菌乳など非加熱の乳製品
(プロセスチーズ、クリームチーズ、ヨーグルトは避ける必要はありません。)
感染しないために気をつけるべき食事と習慣
・生野菜や果物は食事の前によく洗う。
・期限内に食べるようにする。
・開封後は期限に関わらず速やかに消費する。
・加熱してから食べる。
・生肉が触れた手、まな板、包丁等はよく洗う。
◯生魚と生卵
サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、イカなどの魚介類に寄生していることがあるアニサキスという寄生虫や、加熱が不十分な貝類などから感染するノロウイルス、生卵に付着している可能性があるサルモネラ菌など食中毒を起こしやすい食品には十分気をつけましょう。
これらは直接赤ちゃんに影響を及ぼすわけではありませんが、お母さんが感染してひどい下痢や脱水をおこすと子宮収縮を引き起こしてしまいます。
免疫力が低下していますのでこれらの食材を含んだ食事には気をつけてください。
◯アルコールは絶対にダメ!
妊娠前ならば美味しい食事と共に美味しいお酒を飲んでいたお母さんも多いと思いますが、妊娠中と授乳中にはアルコール厳禁です。アルコールは胎盤を通じて赤ちゃんに影響し、胎児性アルコール症候群を引き起こします。
具体的には低体重、顔面の奇形、脳障害に加えADHDやうつ病などの精神疾患もみられます。
こちらは治療法がありませんので、妊娠に気がついたらすぐに禁酒をしてください。
とはいえ妊娠から授乳までの長い間美味しいお酒が飲めないのはなかなかつらいという方は、アルコールが全く含まれていないノンアルコール飲料を探してみてください。
今はかなり本格的なノンアルコールスパークリングワインなども販売されています。
“飲んだつもり”ではありますが、お母さん方のリラックスタイムになりますように。
◯過剰摂取に注意
【カフェイン】
カフェインには血管を収縮させる作用があるため、赤ちゃんに届く酸素が少なくなることがあります。
また赤ちゃんはカフェインを排出する力が低いので、体の中に長い間カフェインが溜まることになり早産や発育不全の原因と言われています。
世界保健機関(WHO)では1日のカフェイン接種量を200mg〜300mg程度にするよう求めています。
コーヒーならマグカップ2杯程度です。
ところがカフェインはコーヒー以外にもココア、紅茶、緑茶、栄養ドリンクにも含まれています。
特に栄養ドリンクではカフェイン含有量が表示されていますので是非チェックしてください。
【水銀】
特に小さい魚をたくさん食べているような大型魚(マグロ、キンメダイ、メカジキ)などには多くのメチル水銀が含まれています。
メチル水銀が体の中に多く溜まると神経障害や発達障害を引き起こす可能性があります。
魚はDHAやタンパク質が多く含まれヘルシーな食事に欠かせないものですが、カフェインと同様に赤ちゃんが排出しにくい有害物質があることに注意しなければなりません。
1日に食べる量が80gだとして、上記に挙げた魚はだいたい週に一度にしておきましょう。
◯さいごに
おなかの中で赤ちゃんを育てるお母さんは赤ちゃんやご自分の体のことについて心配することも多いと思います。
日々の食事の内容についても栄養バランスに気をつけたり、量も足りないだろうか多すぎないだろうかと気にされたりする方もいるでしょう。
今回は食べるのに気をつけなければいけない食品についてご紹介しましたが、それを知ることによって妊娠中も安心して美味しい食事をとってください。
この記事の監修者
坂田陽子
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー