妊娠中や出産時の出血。それは、
「流産するのではないか」
「胎児になにか影響があるのではないか」
「生まれた赤ちゃんや産後の自分の体は大丈夫なのか」
など、妊娠している女性にとって出血はとても気になる不安材料のひとつです。
そこで、
■妊娠時期別・出血の種類と対策
■危険な出血を見極める!出血の「色」と「量」
■妊娠中に出血があったときの行動マニュアル
■出産時(普通分娩・帝王切開)の出血量
についてご紹介します。
妊娠中の危険な出血・安心してよい出血や、正しい行動、出産時の出血量基準を知ることで、妊娠生活を安心したものにしましょう。
妊娠時期別・出血の種類と対策
妊娠中の出血には、妊娠初期・中期~後期の時期によって、種類が異なります。
妊娠初期の出血について
妊娠初期の出血は特に気になるところです。日本産科婦人科学会によりますと「妊娠初期に、少量の出血や軽い腹痛を感じることがあります。正常の経過の妊娠中でもこのような症状が起こる場合がありますし、流産や切迫流産で起きる場合もあります。
・少量の出血や軽い腹痛の場合→すぐに医療機関を受診したとしても有効な対処法がないため、すぐに救急外来を受診する必要はなく、翌日あるいは予定された健診の受診で充分とと考えられる。
・生理の時より出血量が多い場合、腹痛がひどい場合→異所性妊娠や進行流産の可能性がああるため夜間・時間外であっても医療機関を受診しましょう。」とあります。
引用:公益社団法人 日本産科婦人科学会「流産、切迫流産:妊娠初期に少量の出血があったときは?」より
http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=4
妊娠中期から後期の出血について
妊娠中期から後期にかけて出血の原因によくあげられる症状として切迫早産、常位胎盤早期剥離、前置胎盤などが挙げられます。
【切迫早産】
妊娠22週以降で妊娠37週より前の出産を「早産」といい、早産の一歩手前である状態を「切迫早産」といいます。子宮収縮が頻回に起こり、子宮の出口が開いてしまって赤ちゃんが出てきそうな状態や赤ちゃんを包む膜が破れて羊水が漏れている状態(破水)のことです。
治療としては、子宮口が開かないように子宮収縮抑制剤を投与します。また切迫早産の原因となる腟内の細菌感染を除去するため抗生剤投与することもあります。また、子宮収縮が軽くて子宮口が開いていない場合には外来通院による治療が可能ですが、症状が増悪した場合には入院管理にて治療を行います。
妊娠32週より前に破水した場合には、赤ちゃんが自分で呼吸ができる状態になるまで抗生剤を投与して細菌感染を抑え、できるだけ胎内で成長できるようにします。妊娠34週以降であれば、赤ちゃんは自分で呼吸できる可能性が高いので、抗生剤を使用しながら感染する前に出産し、生まれた後に治療室で赤ちゃんの治療を行います。
なお、子宮口が開きやすい体質(頸管無力症)の場合には、状況により子宮の出口を縛る手術(子宮頸管縫縮術)を行うことがあります。
【常位胎盤早期剥離】
赤ちゃんがまだ子宮内にいるうちに、胎盤が子宮から剥がれてしまう状態です。お母さん・赤ちゃんともに生命が危険な状態に陥るため緊急性の高い病態です。
原因としては、妊娠高血圧症候群、子宮内感染、外傷(交通事故)などが挙げられます。
はっきりとした症状がないことも多いのですが、性器出血・強い下腹部痛・胎動減少を認めた場合には救急外来を受診していただき、超音波検査・胎児心拍陣痛図・血液検査等にて詳しく調べる必要があります。
治療としては、常位胎盤早期剥離と診断された場合には早期に赤ちゃんを娩出する必要があるため、緊急帝王切開術を行います。なお、大量出血による播種性血管内凝固症候群(DIC)に陥った場合には、さらに出血が止まらなくなるため、速やかにDICに対する薬物療法・輸血を開始します。
【前置胎盤】
前置胎盤は、妊娠中期から後期に出血を起こす代表的な異常で、子宮の出口(内子宮口)の全部または一部を胎盤がおおう状態を指します。全分娩の約0.5%にみられ、帝王切開分娩となります。出血が多量になれば、緊急帝王切開になりますが、妊娠週数や出血の程度によっては、保存的に経過を見てから、帝王切開となることもあります。
これは危険な出血?妊娠中の出血を見極める方法
妊娠中に出血があったら、「色」と「量」を確認することが大切です。
妊娠中の出血の「色」
出血したばかりの血液は、時間がたつほど
→真っ赤(鮮血)やピンク
→赤褐色
→茶色
→薄茶色
へと変化します。
出血が赤・ピンク色の場合は胎盤がはがれている可能性もあるので、すぐに病院に連絡をとりましょう。
妊娠中の出血の「量」
次に、「量」ですが緊急度が高い順に
→サラサラとした血が流れている
→血のかたまりが出る
→生理2日目くらいの量
→ショーツに500円玉くらいの量
→少量の出血が一度で止まる
→ショーツに血が少しつくくらい
→おりものに血が混じるくらい
が目安です。
「サラサラした鮮血が流れてくる」、「ゴルフボール大の血のかたまりが出てくる」、「ナプキンからしみ出すくらいの出血」などは救急車を呼ぶレベルの緊急事態です。すぐに産院を受信しましょう。
妊娠中に出血があったときの行動マニュアル
妊娠中に出血があったときに、落ち着いて正しく行動するための流れをご紹介します。
1 出血の色と量をチェック
まずは落ち着いて、出血の色と量をチェックします。産院に正確に伝えられるよう、状態を覚えておきましょう。出たばかりの鮮血だった場合は、緊急度が高くなります。
2 産院に連絡
必ず出血の状況を把握している本人が電話しましょう。出血の色、量、出血の様子、いつ、どこで何をしていたときに出血したのか、出血以外の症状はないかを明確に伝えましょう。
3 安静、または受診
すぐに受診するか、自宅安静をして様子を見るのかは産院の指示に従います。母体や胎児の命にかかわる危険のある「常位胎盤早期剝離(じょういたいばんそうきはくり)」の可能性がある場合は、緊急手術や入院になることがほとんどです。
出血があったときは、とにかく落ち着いて産院に電話を。自分で判断せずに、医師の指示に従いましょう。
普通分娩の出血量はどのくらい?
日本産科婦人科学会用語集では「正常分娩の出血量は500mL 未満とされており、それを超える量の出血を分娩時異常出血という」 と定義されています。
しかし、単胎の赤ちゃんを経膣分娩で出産した場合、出血量800mlまでが全体の90%を占めると言われています。そのため、500ml以上の出血が起こることも珍しくはありません。経膣分娩での出血が1000ml以上ある場合、輸血も考慮されます。
帝王切開の出血量の基準
帝王切開の場合の出血量は、経膣分娩よりもさらに多い傾向にあり1000mL を超える量の出血を分娩時異常出血と定義されています。単胎の帝王切開で1,500mL、多胎の帝王切開で2,300mL までが全体の90%を占めるとの報告もされており、1000mlを超える出血は十分起こりえます。
帝王切開の場合は2000mlを超える出血のある場合には輸血が考慮されます。また全前置胎盤のように、出産時の出血量が多くなることが予想される場合には、「自己血貯血」といって、妊娠中にあらかじめ自身の血液を採取し保管しておく場合もあります。
まとめ
妊娠中の出血の原因は様々です。出血があったときは、とにかく落ち着いて産院に電話で確認をとり、自分で判断せずに、医師の指示に従いましょう。
また普通分娩や帝王切開など、出産時は出血量が多くなります。
出産時のリスクを減らし、産後の肥立ちをよくするためにも、妊娠中~後期になったら鉄分不足に気を付けることが必要です。
不安な時間を長く過ごすよりも、少しでも妊娠に伴う不安材料を取り除いて、マタニティライフを楽しみましょう。
チャンスは出産時の一度きり。赤ちゃんの将来の安心に備えるさい帯血保管とは
うまれてくる赤ちゃんのために、出産準備とともに、いましか準備できないことがあるのをご存知ですか?
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▼さい帯血保管について、もっと詳しく
この記事の監修者
坂田陽子
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー