妊娠初期~後期・出産に伴う出血とその見分け方を解説

記事監修者:坂田陽子
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

妊娠中や出産時の出血。
それは、妊娠している女性にとって
「流産するのではないか」
「胎児になにか影響があるのではないか」
「生まれた赤ちゃんや産後の自分の体は大丈夫なのか」
など、不安材料のひとつです。
そこで、
・妊娠時期別・出血の種類と対策
・危険な出血を見極める!出血の「色」と「量」
・妊娠中に出血があったときの行動マニュアル
・出産時(普通分娩・帝王切開)の出血量
についてご紹介します。
妊娠中の危険な出血・安心してよい出血や、正しい行動、出産時の出血量基準を知ることで、妊娠生活を安心したものにしましょう。
妊娠時期別・出血の種類と対策
妊娠中の出血は、妊娠初期~後期など時期によって症状が異なります。
順番に確認していきましょう。
妊娠初期の出血について
妊娠初期の出血は、多くの妊婦さんが経験する現象です。
実際にアメリカ家庭医学会が公表している資料では、妊婦さんの「25%」は妊娠初期に出血を経験すると報告されています(※1)。
妊娠初期の出血はかならずしも流産を意味するわけではありませんが、注意が必要な症状のひとつです。
出血の量や持続時間、症状によっては、切迫流産や流産の兆候の可能性があります。
少量の出血で腹痛がない場合は、自宅で安静が推奨されていますが、月経のような多量の出血や強い腹痛を伴う場合は、速やかに産婦人科に連絡をとりましょう。
妊娠初期に出血があると不安になるのは自然なことですが、落ち着いて状況を判断し、必要に応じて医療機関に相談してください。
妊娠中期から後期の出血について
妊娠中期から後期にかけて出血の原因によくあげられる症状として、
・切迫早産
・常位胎盤早期剥離
・前置胎盤
・子宮頚部びらん
・内診
・転倒
などがあげられるため、順番に解説していきます。
原因1:切迫早産
「切迫早産」とは、早産(妊娠22~37週未満の出産)になりかかっている状態のことです。(※2)
切迫早産になると、
・下腹部の張り
・生理痛のような、下腹部の痛みや腰痛
・少量の出血
といった症状がみられます。
切迫早産は、安静にすることで問題なく妊娠継続できる可能性があります。(※3)
妊娠中に出血がみられた場合は、すぐに医療機関を受診し、医師の指示に従いましょう。
切迫早産の症状や対策について詳しく知りたい人は、こちらの記事も参考にしてください。
(※2)出典:広島県医師会「知っておきたい 産婦人科の救急」
(※3)出典:国立成育医療研究センター「妊娠中の出血!切迫流産っていったい何??」
原因2:常位胎盤早期剥離
赤ちゃんがまだ子宮内にいる状態で、胎盤が子宮から剥がれてしまうことを、常位胎盤早期剥離といいます。
全妊娠の0.4~1.5%の確率で起こる(※4)といわれており、胎盤剥離に伴って、子宮壁から出血することがあります。
しかし、出血量・血の色(鮮紅色か暗赤色か)などは、胎盤が剥がれるスピードなどによってまちまちで、一概にはいえません。
・性器出血
・下腹部痛
・胎動の減少
といった症状がみられる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
胎盤は、赤ちゃんに栄養や酸素を送るための大切な器官のため、胎盤が剥離すると赤ちゃんの命に関わります。
常位胎盤早期剥離と診断された場合は、速やかに赤ちゃんをおなかから出す必要があるため、緊急帝王切開術がおこなわれます。
(※4)出典:MSDマニュアル家庭版「常位胎盤早期剥離」
原因3:前置胎盤
前置胎盤とは、胎盤が子宮下部の開口部を覆うように付着している状態です。
前置胎盤があると、妊娠20週以降に、突然の鮮血による性器出血・大量出血などが起こることがあります。
腹痛は伴わないことが多いため、突然の性器出血があった場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
前置胎盤がある状態だと、流産・早産・胎盤剥離や、胎盤からの大量出血で母子ともに危険な状態に陥るリスクがあります。
前置胎盤と診断された場合は、
・安静
・出血が止まれば、妊娠36~37週で早めの分娩
・場合によっては帝王切開
などの措置が取られます。
前置胎盤は分娩800件に1件の割合で起こるといわれていますが、うち90%は分娩時までに自然解消されます。(※5)
(※5)出典:MSDマニュアル家庭版「前置胎盤」
原因4:子宮頚部びらん
子宮頸部びらんは、女性ホルモンの増加により、子宮頸部の粘膜が傷つきやすくなった状態です。
そのため、少量の出血が起こりやすくなります。
通常は、妊娠中であっても治療の必要がない生理的な変化ですが、発熱や下腹部痛を伴う場合は、早めの受診が必要です。
また、感染予防の観点から、清潔な下着の使用や過度な運動を控えることが推奨されています。
原因5:内診
内診による刺激で、一時的に少量の出血が見られる場合もあります。
妊娠中は子宮への血流が増加し、子宮頸部の血管も通常より脆くなっているため、軽い刺激でも出血しやすくなっているのです。
通常、内診後の出血は少量で一時的なものであり、心配する必要はありません。
ただし、
・鮮やかな赤色の出血や大量の出血
・持続的な出血
などが見られる場合は、医療機関で相談しましょう。
また内診後に強い腹痛や破水のような症状が現れた場合も、受診してください。
原因6:転倒
妊娠中期から後期にかけて、体重の増加やバランスの変化により転倒のリスクが高まります。
転倒後に出血が見られなくても、問題が生じている場合があるため、注意が必要です。
転倒後に出血が発生した場合、
・出血量や血の性質・状態
・随伴症状(腹痛など)
を観察して医療機関で受診しましょう。
転倒を予防するためには、日常生活での注意が欠かせません。
・滑りにくい靴の着用
・階段の昇降はなるべく控える
・ゆっくりとした動作を心がける
・手すりの活用
などを行って事前に防ぎましょう。
これは危険な出血?妊娠中の出血を見極める方法
妊娠中に出血があったら、「色」と「量」を確認することが大切です。
妊娠中の出血の「色」
出血したばかりの血液は、時間がたつほど
・鮮血やピンク色
・赤褐色
・茶色
・薄茶色
へと変化します。
鮮やかな赤・ピンク色の場合は出血して間もない状態で、胎盤剥離などが進行している可能性もあります。
すぐに医療機関に連絡をとり、受診しましょう。
妊娠中の出血の「量」
次に、「量」ですが緊急度が高い順に
・サラサラの血
・血のかたまり
・生理2日目くらいの量の血
・ショーツに500円玉くらいの量の血
・少量の血(ショーツに少しつくくらい)
・おりものに血が混じるくらい
が目安です。
「サラサラした鮮血」「ゴルフボール大の血のかたまり」「大量出血」「腹痛を伴う出血」などは危険な出血の可能性があります。
すぐに医療機関を受診しましょう。
妊娠中の出血が続く場合の対処法
妊娠中に出血が続くとき、まずは以下のポイントを記録しておきましょう。
・出血量
・出血の性質や状態
・腹痛・腰痛などほかに見られる症状
次に医療機関へ連絡して、記録した内容を話しましょう。
出血が始まった時期も伝えられると、症状の診断が正確になります。
医師が軽度と判断すれば自宅で安静にして、激しい運動や性行為は控えることになるでしょう。
一方で大量出血や強い腹痛が現れたときは、速やかに医療機関へ向かってください。
状況によっては救急車の利用も検討します。
医療機関では超音波検査や血液検査を実施して、出血の原因や胎児の様子を確認します。
長期的な出血の場合は貧血を引き起こす危険性もあります。
体調の変化に気を配り、定期的な受診を心がけましょう。
妊娠中に出血があったときの行動マニュアル
妊娠中に出血があったときに、落ち着いて正しく行動するための流れをご紹介します。
1 出血の色と量をチェック
まずは落ち着いて、出血の色と量をチェックします。
医療機関に正確に伝えられるよう、状態を覚えておきましょう。
出たばかりの鮮血だった場合は、緊急度が高くなります。
2 医療機関に連絡
必ず出血の状況を把握している本人が電話しましょう。
出血の色、量、出血の様子、いつ、どこで何をしていたときに出血したのか、出血以外の症状はないかを明確に伝えましょう。
3 安静または受診
すぐに受診するか、自宅安静をして様子を見るのかは医師の指示に従います。
母体や胎児の命にかかわる危険のある「常位胎盤早期剝離(じょういたいばんそうきはくり)」の可能性がある場合は、緊急手術や入院になることがほとんどです。
出血があったときは、とにかく落ち着いて医療機関に電話を。
自分で判断せずに、医師の指示に従いましょう。
普通分娩の出血量はどのくらい?
正常分娩の出血量は「500mL未満」とされており、それを超える量の出血は分娩時異常出血と定義されています(※6)。
しかし、単胎の赤ちゃんを経膣分娩で出産した場合、出血量800mlまでが全体の90%を占めるといわれています(※7)。
そのため、500ml以上の出血が起こることも珍しくはありません。
経膣分娩での出血が1,000ml以上ある場合、輸血も考慮されます(※8)。
出典:
(※6)出典:日本産婦人科学会・日本産婦人科医会「産科婦人科診療ガイドライン 産科編2023」
(※7)出典:抄録:日本産科婦人科学会雑誌「当院での分娩時出血量の検討」
(※8)出典:J-STAGE|名古屋大学医学部附属病院輸血部(山本 晃士)「産科大量出血の病態と輸血治療」2012 年 58 巻 6 号 p. 745-752
帝王切開の出血量の基準
帝王切開の場合の出血量は、経膣分娩よりもさらに多い傾向にあり、1,000mL を超える量の出血が分娩時異常出血と定義されています(※9)。
単胎の帝王切開で1,500mL、多胎の帝王切開で2,300mL までが全体の90%を占めるとの報告もされており、1,000mlを超える出血は十分起こりえます(※10)。
帝王切開の場合は2,000mlを超える出血のある場合には輸血が考慮されます(※11)。
また全前置胎盤のように、出産時の出血量が多くなることが予想される場合には、「自己血貯血」といって、妊娠中にあらかじめ自身の血液を採取し保管しておく場合もあります。
出典:
(※9)出典:日本産婦人科学会・日本産婦人科医会「産科婦人科診療ガイドライン 産科編2023」
(※10)出典:近畿大学病院「輸血ハンドブック」第 11 版 近畿大学病院輸血・細胞治療センター
(※11)出典:J-STAGE|名古屋大学医学部附属病院輸血部(山本 晃士)「産科大量出血の病態と輸血治療」2012 年 58 巻 6 号 p. 745-752
妊娠中の出血に関するQ&A
ここでは妊娠中の出血について、よくある3つの質問をまとめました。
順番に見ていきましょう。


ただし、出血量が増えたり、水っぽい出血が見られたり、腹痛や発熱が伴う場合は、産婦人科を受診しましょう。

気になる症状があれば産婦人科を受診しましょう。

繰り返す場合は速やかに産婦人科を受診してください。
まとめ
妊娠中の出血の原因は、比較的安心なものから危険なものまで様々です。
出血があったときは、とにかく落ち着いて、
・出血の量、色、性質や状態(さらさら、かたまり、大量、茶色など)
・出血の理由(転倒など思い当たるものがあれば)
・出血した時期
などを確認しましょう。
上記の情報をもとに医療機関に確認をとり、自分で判断せずに、医師の指示に従いましょう。
また普通分娩や帝王切開など、出産時は出血量が多くなります。
出産時のリスクを減らし、産後の肥立ちをよくするためにも、妊娠中~後期になったら鉄分不足に気を付けることが必要です。
不安な時間を長く過ごすよりも、少しでも妊娠に伴う不安材料を取り除いて、マタニティライフを楽しみましょう。
赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?
赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。
幹細胞は新しい医療への活用が進められており、もしもの時に役立てられる可能性があります。
- 出産後わずか数分の間にしか採取できない貴重な赤ちゃんのものです。
- 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
- どちらにも幹細胞がたくさん含まれています。
- 再生医療分野など、さまざまな活用が進んでいます。
- それぞれ異なる幹細胞が含まれているため、両方を保管しておくことで将来の利用の選択肢が広がります。
実際に保管・利用した方のお声
出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。

高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま
さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています
元気に産まれたと思っていましたが、生後半年頃から左手をほとんど使おうとしないことに気付き、1歳頃にやはり何かおかしいと思ってMRIを撮ってもらうことにしました。結果1歳5ヶ月で脳性まひとわかりました。
2歳の誕生日にステムセルからハガキが届き、出産時に保管したさい帯血がもしや役に立つのではと思い至りステムセルに問い合わせました。ちょうど臨床試験への参加者を募集していて、運よく2歳5ヶ月のときに参加することができました。
輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。
さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。
その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。
医師からのメッセージ

総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生
応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療
近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。
さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
保管するなら、ステムセル研究所の「HOPECELL(ホープセル)」
株式会社ステムセル研究所が提供する「さい帯・さい帯血ファミリーバンクHOPECELL(ホープセル)」は、日本国内で最も選ばれている保管サービスです。
ステムセル研究所は、25年以上の保管・運営実績がある日本初のさい帯血バンクで、国内最多となる累計80,000名以上のさい帯血を保管しています。

研究所

研究所
国内では脳性まひに対する、赤ちゃんご自身やごきょうだいのさい帯血投与の研究が行われています。海外の臨床研究では、投与により運動機能および脳神経回路の改善が報告されています。また自閉症スペクトラム障害(ASD)に対して、さい帯血の投与によりコミュニケーション能力や社会への順応性が向上する可能性が期待されており、大阪公立大学にてお子さまご自身のさい帯血を投与する臨床研究が開始されます。

研究所
無料パンフレットをお送りします!
さい帯・さい帯血保管についてより詳しく知っていただけるパンフレットをご自宅へお送りします。
赤ちゃんの将来に備える「さい帯・さい帯血保管」をぜひ妊娠中にご検討ください。

この記事の監修者
坂田陽子
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー