妊婦さんがなりやすい坐骨神経痛の症状とは?原因や5つの治し方も解説

坂田陽子

記事監修者:坂田陽子

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

妊娠しておなかが大きくなるにつれ、

・お尻から足先にかけてピリピリとしびれる
・腰を反らすとしびれる
・お尻が痛くて長時間座れない
・足の付け根が痛い

といった症状に悩まされていませんか?

その症状、「坐骨神経痛」かもしれません。

妊婦さんは、大きくなったお腹やホルモンの影響で「坐骨神経痛」になりやすいのです。

しかし坐骨神経痛になっても、対処方法はあります。

この記事では主に、以下のような内容を解説していきます。

・妊婦さんでも安心な坐骨神経痛の治し方5選
・妊婦さんの坐骨神経痛NG治療法
・坐骨神経痛を予防する方法

お尻から足にかけてのしびれや痛みにお悩みの妊婦さんは、不快感を少しでも和らげるために、ぜひ参考にしてくださいね。

きっと、妊娠生活を楽に過ごせるようになりますよ。

坐骨神経痛の症状とは?

坐骨神経痛とは、お尻から下肢にかけて痛み・しびれがあらわれる症状です。

坐骨神経は、骨盤の一部である「坐骨」→お尻の筋肉である「梨状筋(りじょうきん)」→足の末梢神経にかけ、約1mにわたって通っています(※1)。

坐骨神経痛は、腰の椎間板や脊柱管が圧迫されることで起こります。

そのため腰椎椎間板ヘルニア・腰椎脊柱管狭窄症などの症状がある人は、坐骨神経痛になりやすいです。

また加齢などによって、坐骨を保護するお尻の筋肉(梨状筋)が衰えることも、坐骨神経痛の原因になります。

(※1)出典:柔道整復師・鍼灸師の日本医学柔整鍼灸専門学校「坐骨神経痛とは」

妊婦さんが坐骨神経痛になりやすい4つの原因

坐骨神経痛になる妊婦さんが多いのは、おもに以下4点が原因です。

・体重増加
・ホルモンバランスの変化
・子宮の成長
・運動不足

順番に見ていきましょう。

原因1:体重増加

妊娠中は、胎児の成長に伴い体重が増加します。

妊娠前の体型によって異なりますが、普通体型の人(BMI18.5以上25.0未満)であれば、10〜13kg程度です(※2)。

おもに腹部の重さが増し、体の重心が変化します。

結果として、腰椎や骨盤にかかる負荷が増大するため、坐骨神経痛になりやすいのです。

とくに、ずっと座っていたり立ちっぱなしなど、同じ姿勢を長時間していると、坐骨神経が圧迫されやすくなり、症状が顕著になります。

(※2)出典:国立研究開発法人国立成育医療センター「妊娠中の体重増加曲線」

原因2:ホルモンバランスの変化

妊娠中はリラキシンを始めとする、さまざまなホルモンの分泌量が増加します。

なかでもリラキシンは、出産に備えておもに骨盤周りの靭帯を柔軟にする働きがあります(※3)。

しかし体全体の靭帯の緩みも引き起こすため、姿勢の維持がむずかしくなり、坐骨神経への負担が増加しやすくなるのです。

(※3)出典:J-STAGE|東京大学大気海洋研究所・生理学分野 日下部 誠「真骨魚類リラキシンの生理作用の探索」比較内分泌学 2014年40巻153号 p.116-120

原因3:子宮の成長

妊娠が進むと子宮が大きくなって腹部が前方にせり出し、姿勢のバランスが崩れやすくなります。

あまり意識していないかもしれませんが、姿勢のバランスを調整するため、無意識のうちに腰を反らせる姿勢をとっています。

このような姿勢は腰部の筋肉や靭帯に負担をかけ、結果として坐骨神経を圧迫して痛みを引き起こしてしまう可能性があるのです。

原因4:運動不足

妊娠中は体調の変化や安静が必要なことから、運動量が減少しがちですよね。

しかし運動不足は、以下のような問題を引き起こす可能性があるのです。

・筋力低下
・血液循環の悪化

筋力低下は姿勢の維持をむずかしくするため、坐骨神経痛を引き起こしやすくします。

また血行不良も、神経組織への酸素供給や代謝を悪くするため、坐骨神経痛を引き起こす原因として考えられているのです。

体型や体質、生活習慣など個人によって異なりますが、これらの要素が組み合わさって坐骨神経痛が引き起こされやすくなります。

産後も坐骨神経痛になりやすい

出産後に坐骨神経痛を発症する人もいるようです。

産後の坐骨神経痛は、出産の際に骨盤が緩み、周辺の筋肉が凝り固まって引き起こされます。

また妊娠・出産によって骨盤や関節のズレが生じると、腰痛や坐骨神経痛が引き起こされることもあります。

歩けない・・・妊娠さんの坐骨神経痛を治す方法5選

坐骨神経痛にはマッサージ・ストレッチ・ツボ押しなどさまざまなセルフケア方法があります。

なかでも妊婦さんにおすすめの、安心な坐骨神経痛の治し方を5つご紹介します。

方法1:テニスボールでマッサージする

筋肉の緊張をとるため、腰~お尻をマッサージすると効果的です。

ただし妊婦さんは、うつ伏せ状態でのマッサージはできません。

そこでおすすめするのが、テニスボールを使ったマッサージ方法です。

テニスボールを使ったマッサージの手順は、以下のとおり。

1. 仰向けになってお尻を軽く浮かせる
2. テニスボールを2つほど、腰周辺の背骨左右に置く
3. テニスボールを転がすように身体を動かす

自分の体重でマッサージの強さを調節できるため、妊婦さんにも負担の少ないマッサージ方法です。

腰に置いたテニスボールを徐々にお尻の方に動かすと、腰~お尻全体を気持ちよくマッサージできますよ。

ただ長時間仰向け・腰を浮かせた姿勢は、お腹の大きな妊婦さんにとっては負担が大きいものです。

テニスボールでのマッサージは、無理なく短時間で行うように注意してください。

方法2:お尻~太もものストレッチ

坐骨神経痛の緩和には、お尻~足の筋肉の緊張をとることも大切です。

前屈は坐骨神経痛に効果的なストレッチですが、お腹の大きい妊婦さんは姿勢も限られますよね。

妊婦さんにおすすめするのは「両足を開脚した前屈」です。

以下の手順で前屈を行いましょう。

1. 床に座り両足を広げる
2. 片方の足裏を、もう片方の足の付け根につける
3. 無理のない程度に前に倒れる

上記の手順で、伸ばした足の太もも裏・内側、腰、お尻などが気持ちよく伸びます。

お腹に負担をかけない程度にストレッチしましょう。

方法3:坐骨神経痛に効くツボを押す

お尻や足には筋肉の緊張や張りをとるなど、坐骨神経痛の症状緩和に効くツボがあります。

痛くない程度に、こぶしなどで気持ち良く押してみましょう。

坐骨神経痛に効くツボは、以下の3点です。

・坐骨点(ざこつてん):お尻の出っ張りの一番高い所の左右に位置するツボ。お尻に力を入れるとくぼむところ。股関節周りの血行を良くし、お尻の筋肉の緊張をほぐす。
・委中(いちゅう):ひざ裏の真ん中にあるツボ。足のしびれや張りを緩和する。
・承扶(しょうふ):お尻と太ももの境目にあるツボ。お尻や股関節の動きをよくして、痛みを緩和する。指でお尻を持ち上げるようにしてツボを押すのがポイント。テニスボールをお尻と太ももの境目に置いた状態で座るのも効果的。

方法4:マタニティ整体へ行く

セルフケアでは坐骨神経痛が緩和せず、痛みがつらい場合は、整体院に行くのもおすすめです。

マタニティ整体という妊婦さん専用の整体院も存在します。

妊婦さんには禁忌のツボやマッサージもあるため、マタニティ整体であれば安心です。

近くにマタニティ整体がないか探してみましょう。

方法5:無理せず休養する

坐骨神経痛や腰痛を感じるときは、無理に動かず、ゆっくりして腰を休めることも重要です。

坐骨神経痛は、時間の経過とともに自然に治ることも多い症状です。

仕事や家事などの「立ち仕事」「重い物の持ち運び」などはできる限り同僚や旦那さんにお願いし、腰に負担をかけない生活を心がけましょう。

【注意】妊婦さんの坐骨神経痛でNGな治療法

腰が痛いと、湿布を貼りたくなりますよね。

しかし湿布の中には、妊婦さんには禁忌とされる成分が含まれているものもあるのです。

自己判断で、市販の湿布を使うことは控えましょう。

産婦人科で坐骨神経痛や腰痛について相談すれば、妊婦さんにも安心な湿布を処方してもらえますよ。

妊婦さんが坐骨神経痛を予防する4つの方法

腰に負担がかかり続ける妊娠中・産後は、坐骨神経痛がいつ起こってもおかしくありません。

妊婦さんの坐骨神経痛がひどくなると、出産時にいきみにくくなるというリスクも。

腰が痛いな、足がしびれるな、と感じたら坐骨神経痛の要注意サインです。

妊婦さんが坐骨神経痛にならないための予防法を4つご紹介します。

予防方法1:高め・硬めの場所に座る

座るときは、腰とお尻に負担の少ない座り方をしましょう。

・骨盤がやや前傾した姿勢になる高めの椅子
・お尻が沈み込まない硬めの座面

を選ぶのがポイントです。

正座やあぐらもおすすめです。

予防方法2:シムス位で寝る

寝るときは、腰に負担の少ない寝方をしましょう。

妊婦さんにおすすめなのはシムス位。

シムス位で横向きになることで、大きくなったおなかの重みによる負担を軽減できます。

シムス位で横になる手順は以下のとおりです。

1. 身体の左側を下にして横になる
2. 右足を前方に出す
3. 右膝を床につける

予防方法3:お風呂で腰~お尻を温める

腰やお尻の筋肉を意識的に緩めるのも大切です。

入浴で下半身をしっかり温めましょう。

下半身が温められて血行がよくなると、筋肉の緊張やこりがほぐれます。

ただ妊娠中はのぼせやすくなる人も多いため、ぬるめのお湯にゆっくり浸かるようにしてくださいね。

予防方法4:骨盤ベルトを使う

妊婦さんの坐骨神経痛や腰痛を予防するグッズとして心強いのが、骨盤ベルトです。

骨盤ベルトは妊娠中に大きくなったお腹を下から支え、腰への負担を軽減します。

骨盤ベルトを巻くことで靭帯が緩んだ骨盤が安定し、腰や恥骨の痛みを和らげたり、歩く時に足の運びを楽にする効果も。

さらにくわしく骨盤ベルトの効果や付け方、注意点などを知りたい人は、下記を参考にしてみてくださいね。

身体に負担をかけずに生活したい人は必見です。

妊婦さんはいつから骨盤ベルトをした方が良いの?付け方や効果も解説

妊娠中の坐骨神経痛に関するQ&A

ここでは妊娠中の坐骨神経痛について、よくある3つの質問をまとめました。

順番に見ていきましょう。

質問
妊娠中の坐骨神経痛は何科を受診すればいいの?

回答者
土肥先生

妊娠中に坐骨神経痛を発症した場合は、整形外科を受診するのが一般的です。

どこに行けばいいのか分からない場合は、かかりつけの産婦人科でご相談ください。

質問
とくに足の付け根が痛いのですが、対処法はありますか?

回答者
土肥先生

足の付け根に痛みを感じる原因として、円靭帯痛も考えられます。

円靭帯痛は、子宮を支える円靭帯が引っ張られて起こる痛みで、妊娠初期から中期に左右どちらかの足の付け根や脇腹の下の方に引っ張られるような痛みが現れます。

円靭帯痛を緩和する方法はあまりなく、痛みが非常に強くなってきたらかかりつけの産婦人科へ相談しましょう。

質問
妊娠中の坐骨神経痛は胎児に影響しますか?

回答者
土肥先生

妊娠中の坐骨神経痛が胎児に影響することはありません。

しかし、坐骨神経痛がひどくなると、出産時にいきみにくくなるリスクがあるため、違和感があれば早めに対処しましょう。

まとめ

自分の体重だけでなく、大きなお腹と赤ちゃんを日々支える妊婦さん。

どうしても腰に負担がかかり、坐骨神経痛や腰痛が起こることがあるでしょう。

また坐骨神経痛や腰痛は、骨盤がゆるんだ産後もつづく悩みでもあります。

坐骨神経痛が起こったら、無理のない範囲でマッサージ・ストレッチなどのセルフケアやマタニティ整体などに行って、つらい症状を緩和しましょう。

また座り方や寝方に気をつけ、お風呂で下半身をあたためて、腰に負担のない生活を心がけましょう。

今回紹介した方法を実践すると、きっと楽に妊娠生活を送れるようになりますよ。

チャンスは出産時の一度きり。赤ちゃんの将来の安心に備えるさい帯血保管とは

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■出産の時だけのチャンスだから(愛知県 美祐ちゃん)

■さい帯血が本当の希望になりました(東京都 M・Y様)

※ほかの保管者の声はこちらから

▼さい帯血保管について、もっと詳しく

この記事の監修者

坂田陽子

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

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