〇切迫早産ってどういう状態?
切迫早産とは、早産となるリスクが高いと考えられる状態…つまり早産の一歩手前の状態のことをいいます。赤ちゃんが生まれそうな兆候がある、ということです。
子宮収縮が規則的に起こり、子宮の出口(子宮口)が開き、赤ちゃんが出てきそうな状態のことです。破水が先に起きることもあります。
37週を超えた妊娠週数であれば、赤ちゃんが出てくる兆候があっても問題ないですが、早い週数に生まれてしまっては赤ちゃんにとって大変なことがあります。
1つ目は未熟性です。特に分娩日数が早い場合には臓器が未熟であるため頭蓋内出血や未熟児網膜症を起こすことがあります。また、肺や腸への負担が大きく、退院後も酸素が必要な場合もあります。脳性麻痺のリスクも上昇します。特に妊娠30週未満での分娩には注意が必要です。
2つ目は感染に弱い点です。早い週数で生まれる赤ちゃんは体重も小さいですし、抵抗力が弱いため、感染症を起こしやすい状態にあります。
つまり、切迫早産になってしまうと、早産のリスクがあり、さまざまな危険性が高い状態にあるということです。
〇知っておきたい~早産について
ここで改めて、早産の定義を確認します。
妊娠から出産までの期間が通常よりも短くなってしまうことを「早産」といいます。
具体的には、正期産とよばれる「妊娠37週0日から妊娠41週6日まで」の期間より前になる出産のことをいいます。
国によって早産の規定は異なっています。日本では妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産を「早産」と呼びます。妊娠22週未満の出産は流産と言い、早産とは区別されます。
早産になると、前述のとおり、赤ちゃんにトラブルが生じるリスクが高くなります。
早産で生まれた赤ちゃんは、妊娠後期の正期産に近い週数の生まれであっても、呼吸障害などを起こすリスクが高くなります。また、早く生まれた赤ちゃんほど重篤な障害の可能性が高くなります。
〇早産の兆候は?
切迫早産の代表的な症状は、子宮が収縮することでおなかが定期的に張ったり痛んだりする、腰がだるい、または、おりものの異常(出血、おりものの突然の増加)などがあります。また、破水することもあります。
「子宮収縮感」に関しては、特に注意が必要なこともあります。妊娠の早い週数で、頻回の子宮収縮をそのままにしておくことで、赤ちゃんが早く生まれる兆候につながることを理解してください。
例えば、「仕事中はおなかの症状は気にならないけれど、帰宅してからは子宮収縮をよく感じる」という方もいます。仕事中は意識が仕事に集中しているために、子宮収縮に気が付きにくい状況もあるかもしれません。また、仕事の内容がデスクワークであっても、座っている姿勢が長時間であれば、想像よりもおなかに負担がかかっていることもあります。
早い週数での、「規則的かつ頻回な子宮収縮感」「性器出血」「おりものの異常」、このような症状が1つでもあったら、次の健診を待たずに、かかりつけの先生に相談しましょう。
また、自覚症状がなくても、検査をしたら早産の兆候があったという場合もあります。
妊婦健診は、必ず受けるようにしましょう。
〇産院に連絡するときに伝えること
いつもと違う症状を感じたとき、慌てずに、まずは落ち着いてください。
そして、産院に連絡をする内容の整理をしましょう。
以下の項目をチェックしてください。
・妊娠週数
・その症状がいつから出ているのか
・痛みの強さや持続時間を具体的に(「15分おきにつる」「座っていられないほどの痛みが30分以上続いている」など)、いつもの張りとの違い(「いつもは横になればすぐ治るのに今は治まらない」など)
・他の症状(出血の量・色、おりものの変化、胎動が減ったなど)
これらの項目を正しく伝えることで、先生や助産師さんの正確な判断材料になり、正しい処置を行うことができます。
〇切迫早産の治療
切迫早産の治療では、子宮収縮の程度によって治療が大きくことなります。
比較的軽い場合は、子宮口が開かないように、子宮収縮をおさえる目的で子宮収縮抑制剤(通称:はりどめ)の内服薬を使うことがあります。
また、切迫早産の原因の一つでもある細菌感染が疑われれば、抗菌薬を使用することもあります。子宮収縮の程度が比較的軽い場合は外来通院による治療で問題ありません。
ところが、子宮収縮が強く認められ、子宮口の開きが大きくなってきている状態では入院治療となります。
子宮収縮抑制剤の点滴や、早産に備えてステロイドの投与で赤ちゃんの肺や消化管の成熟を促すこともあります。
その他に、症状はないが子宮口が開きやすい状態の子宮頚管無力症があります。この場合、どんどん子宮口が開き、流産や早産になってしまうので状況により頸管(子宮の出口)をしばる手術をおこなうこともあります。
妊娠34週未満で破水した場合は、抗菌薬で感染を抑えながら入院安静にしたり、妊娠34週以降ならばそのまま出産したりする場合もあります。
赤ちゃんや母体の状態によっては、帝王切開など人工的に早産にする場合もあります。
〇さいごに
切迫早産に関わらず、妊娠中には色々なリスクに気を配り、疲れてしまうことがありますよね。でも、疲れてママの免疫力が下がってしまっては大変です。
一番大切なのは、日頃から無理のない妊娠生活を送ることです。
妊婦健診をきちんと受け、心とからだの健康に気を付けてマタニティライフを楽しんでいってくださいね!
この記事の監修者
坂田陽子
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー