初めての出産をひかえていると「出産(分娩)はどんな流れで進んでいくのだろう?」と不安や心配になりますよね。
実は分娩の過程は3つに分かれ、陣痛の間隔や感じる痛みも異なります。
また初産であれば、陣痛が始まってから胎児が分娩されるまで12~16時間ほどかかるのです(※1)。
この記事では、おもに以下の内容を解説していきます。
・分娩が始まる3つのサイン
・自然分娩の流れ
・分娩後の生活
この記事を読むと分娩の流れがわかるため、出産前に心の準備ができますよ。
(※1)出典:日本産婦人科医会「産科における看護師の業務」(2005年9月5日発行)
分娩開始までの流れと3つのサイン
自然分娩の開始前には、以下3つのサインがあります。
・おしるし
・陣痛
・破水
3つのサインが現れる順番には、個人差があります。
いずれかのサインが見られたら、分娩が近いと考えておきましょう。
順番に解説していきます。
分娩開始のサイン1:おしるし
子宮口が開き始めると出てくる、出血が混じったおりもののことです。
おしるしの量や色には個人差があり、鮮血やピンク色、茶色などさまざまです。
一般的には粘り気のある少量の出血で、下着に少量つく程度から生理時のような量まで幅があります。
おしるしが見られても陣痛がすぐに始まるわけではなく、数日かかる場合も。
出産が近づいてきたサインではありますが、おしるしだけで分娩になることはありません。
清潔なナプキンをあて、ほかのサインが出てくるまで、慌てず落ち着いて普段通りの生活を続けましょう。
分娩開始のサイン2:陣痛
最初は不規則に、次第に規則的でおなかの痛みが強い張りに変わっていきます。
一般的に初めての出産では、陣痛が始まってからお産が終わるまで12~16時間前後かかります(※1)。
ただ個人差が大きく、20時間以上かけてお産をする人も(※2)。
10分間隔の痛み(もしくは1時間に6回以上の痛み)が定期的に訪れるようになったら、陣痛の始まりといわれています(※3)。
ただし上記の段階では、分娩まではまだ長い時間を要します。
かかりつけの医療機関からは、連絡するタイミングなどの説明(たとえば、初産婦なら「10分以内の規則的に繰り返す陣痛を感じたら連絡してください」など)があるでしょう。
そのため痛みを感じ始めたら、まずは陣痛の間隔をカウントするようにしましょう。
(※1)出典:日本産婦人科医会「産科における看護師の業務」(2005年9月5日発行)
(※2)出典:国立成育医療研究センター「出産に際して知っておきたいこと」 |
(※3)出典:名寄市立総合病院 看護部「4.お産の経過」
分娩開始のサイン3:破水
破水とは、胎児を包んでいた卵膜が破れて、羊水が外に流れ出てくることです。
破水の量や様子は個人差が大きく、大量に流れ出る場合もあれば、少量ずつ漏れ出る場合もあります。
「パンッ」という音を感じることも。
破水した場合は、清潔なナプキンをあて、すぐに分娩予定の医療機関へ連絡をしましょう。
なお破水後の入浴やシャワーは、感染リスクがあるため厳禁です。
なかには尿漏れやおりものとの区別がつかない場合もあるため、判断できない場合も医療機関へ連絡しましょう。
自然分娩の流れ3ステップ
分娩のサインから胎児が産まれてくるまでの過程は、どのようになっているのでしょうか。
分娩の進み方は、以下「分娩第1期〜分娩第3期」の3つに分けられます。
分娩時期 |
分娩第1期 |
分娩第2期 |
分娩第3期 |
所要時間 |
約13時間 |
2~3時間 |
15~30分 |
陣痛の間隔 |
2~10分で徐々に短くなる |
1~3分 |
– |
陣痛の持続時間 |
30~90秒で徐々に長くなる |
60~90秒 |
– |
特徴 |
・子宮口が全開になるまでの時期 |
・下腹部圧迫感 |
・弱い陣痛が起こる |
出典:西宮市保健所地域保健課「マザークラス」(令和6年3月)
くわしく見ていきましょう。
分娩第1期
陣痛の始まりから子宮口が全開大になるまでの期間を分娩第1期といいます。
陣痛が始まってから分娩第一期をぬけるまでの所要時間は初産で「約13時間」です(※4)。
さらに、分娩第1期は4つの段階に分かれているため、順番に解説していきます。
潜伏期
子宮口が0〜2.5cmになるまでの段階です(※5)。
陣痛の間隔は10分以内(1時間に6回以上)ですが、まだ耐えられる程度の痛みで持続時間も短いです。
加速期
子宮口が2.5〜4cm開くまでの段階です(※6)。
陣痛は2〜4分間隔になり、強さもだんだん増していきます(※7)。
極期
子宮口が8〜10cm開くまでの段階です(※8)。
お産の過程でも一番苦しい時期といえます。
陣痛間隔は約3分毎から1~2分毎にまで縮まり、持続時間も長くなっていきます(※9)。
赤ちゃんの頭が、骨盤の中に深く入ってきますから、いきみたくなる間隔が出てくることが多いです。
減速期
子宮口が約9〜10 cmになるまでの段階です。
児頭がさらに骨盤内に下がってきます(※10)。
出典:
(※4,5,6,9,10)国立研究開発法人国立成育医療研究センター「出産に際して知っておきたいこと」
(※7)高萩市 子育て支援課「出産が近づくころ~出産まで」
(※8)名寄市立総合病院 看護部「4.お産の経過」
分娩第1期の過ごし方のポイント
この時期は陣痛をいかに乗り越えるかが大切です。
痛みでパニックにならないように、一番楽な姿勢を探して痛みを逃がしていきます。
また、ここで体力を使い切ってしまうと微弱陣痛になって分娩が長引いたり、出産時に力が入らなかったりという状況になってしまいます。
呼吸法やリラックス法を上手に活用して、リラックスして過ごすようにしましょう。
陣痛の合間に行う食事や水分補給も大切です。
分娩第1期で注意が必要な症状
下記のような症状がつづく場合は、注意が必要です。
・腹痛がつづく
・おなかが板のように固い
・胎児の胎動が感じられない
上記の症状とともに少量の出血がみられた場合は、出産よりも先に胎盤がはがれてしまう「常位胎盤早期剥離」の可能性があります。
胎児と母体の命にかかわる危険な状態であり、大至急の対応が必要です。
すぐにかかりつけの医療機関へ連絡しましょう。
ほかにもいつもと違う症状を感じたり、判断に迷ったりする場合は、遠慮せずにかかりつけの医療機関に相談するようにしてください。
分娩第2期
子宮口が全開になってから胎児が出てくるまでの期間です。
胎児の頭が骨盤に入り、旋回しながらゆっくりと出てきます。
初産の場合、分娩2期の所要時間や陣痛の間隔などは以下のとおりです(※11)。
・所要時間:2~3時間
・陣痛の間隔:2分前後
・陣痛の持続時間:60~90秒
(※11)出典:西宮市保健所地域保健課「マザークラス」(令和6年3月)
陣痛は分娩1期よりもさらに強くなり、いきみたいという感覚が出てくるため、医師や助産婦の指示に従っていきみます。
徐々に陣痛のときに胎児の頭が見え隠れするようになるでしょう。
会陰部に大きなかたまりがはさまったように感じるようになり、痛みも最大に強くなります。
いきみ方のコツ
胎児と母体への負担を軽減するためにも、以下のようないきみ方のポイントをおさえておきましょう。
ポイント |
詳細 |
姿勢 |
・あごをひき、両手で分娩台の取っ手をしっかり握る |
タイミング |
「いきんでいいですよ」という合図を待ち、焦らず、気持ちを整えてからいきむ |
呼吸法 |
・陣痛が来たら深呼吸を2回ゆっくり行う |
息継ぎ |
・息の続く限り長くいきむ |
出典:高知県子ども・福祉政策部 子育て支援課 母子保健・子育て支援室「2. 分娩第二期」
いきみの回数や時間は個人差がありますので、自分のペースを大切にしながら、助産師の指示に従いましょう。
分娩第3期
胎児が産まれてから胎盤が出てくるまでの期間であり、所要時間は「15~30分」です(※12)。
赤ちゃんが産まれると子宮は収縮し、おへその部分まで下がってきます。
しばらくすると、後陣痛と呼ばれる子宮の収縮が起こり、胎盤がはがれて、分娩は終了します。
分娩終了後は医師によって、
・体温や脈拍数の確認
・子宮収縮の様子
・出血量の確認
・痛みの確認
などが行われ、母体や胎児をサポートします。
(※12)出典:西宮市保健所地域保健課「マザークラス」(令和6年3月)
自然分娩以外の方法が選択される可能性もある
すべての分娩が自然経過で進むわけではなく、状況に応じて医療介入が必要になる場合があります。
たとえば以下のような状況では、帝王切開や誘発分娩が選択されるケースも考えられます。
・胎児の状態が悪化
・分娩の進行が遅い
・母体に合併症がある
・胎位異常
帝王切開の流れや誘発分娩について、くわしく知りたい人は下記も参考にしてください。
▼帝王切開
帝王切開による出産の流れは?入院前から手術後までを徹底解説を把握しよう!
▼誘発分娩
陣痛促進剤とは?分娩までにかかる時間や費用の目安など紹介
分娩の種類について知りたい人は、こちらの記事もおすすめです。
分娩とは?種類や所要時間など初産婦さんの疑問を徹底解説
【しばらくは安静】分娩後の生活
初産で自然分娩の場合、産後の入院期間の目安は5~6日です(※13)。
お母さんはこの期間に分娩後の体を休め、沐浴や授乳など赤ちゃんのお世話の指導を受けます。
退院後1~2週間はできる限り安静に過ごしましょう。
赤ちゃんの睡眠時間に合わせて寝起きし、しっかりと休息をとりましょう。
十分な休息が産後うつの予防にもつながります。
産後1か月検診で体に問題がなければ普段の生活に戻ることができます。
しかし、体の回復には6~8週間かかります(※14)。
無理をせず、少しずつ体調を整えていきましょう。
(※13)出典:日本医科大学付属病院「入院について」
(※14)出典:日本赤十字社 前橋赤十字病院「第4章 お産後と育児について」
分娩の流れに関するQ&A
ここでは分娩の流れについて、よくある3つの質問をまとめました。
順番に見ていきましょう。
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土肥先生
陣痛の痛みが収まっている間に、食べられるものを摂るようにしましょう。
特に出産では大量の汗をかくので、こまめな水分補給は大切です。
無痛分娩の場合には飲食ができないことがあるため、病院の指示に従いましょう。
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土肥先生
また付き添いの方に腰をマッサージしてもらう、テニスボールなどでお尻を圧迫するなどの方法も効果的です。
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土肥先生
計画無痛分娩では、あらかじめ入院日を決めておき、陣痛誘発剤などを用いて人工的に陣痛を起こして出産する方法が取られます。
また無痛分娩では、痛みが少ないためいきみにくく、自然分娩に比べて吸引分娩や鉗子分娩の確率が上がります。
まとめ
分娩にかかる時間には個人差があります。
分娩に異常があるかどうかは、所要時間だけでなく、胎児の大きさや姿勢、陣痛の強さなど色々な要因によって判断されるのです。
標準より早かったり遅かったりしても、それだけで不安になる必要はありません。
また、陣痛中はとても辛く感じると思いますが、痛みを感じているときは同時に赤ちゃんも頑張っていることを思い出してください。
お母さんとお父さんに会おうと必死に頑張っている赤ちゃんのことを思うと、自然と力も湧いてくるものです。
新しい命の誕生を迎えるその瞬間まで、リラックスしながらマタニティライフを楽しみましょう。
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この記事の監修者
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坂田陽子
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー