2021年8月31日
赤ちゃん・子育て

【管理栄養士が教えます】赤ちゃんの成長に大切な栄養のお話

坂田陽子

記事監修者:坂田陽子

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

<赤ちゃんの成長>

妊娠はわずか0.1~0.2mmの受精卵が着床することで成立します。受精卵が子宮内膜に着床して間もないこの時期は胎芽期と呼ばれ、妊娠7週頃の赤ちゃんの大きさは約1cmで体重4gほどです。妊娠8週目に入ると、胎芽期から胎児期に移行し赤ちゃんはおなかの中で成長していきます。そして出産時期には身長約50cm、体重約3,000gになります。赤ちゃんは生まれてからの成長も目覚ましく、1才までに身長は約1.5倍、体重は約3倍になります。

赤ちゃんが成長するためにはお母さんと赤ちゃんの適切な栄養摂取が不可欠です。今回は赤ちゃんがどのようにして体内に栄養を取り入れ成長していくのか、赤ちゃんの成長段階と共にお話していきます。

 

<おなかの中の赤ちゃんの栄養>

おなかの中の赤ちゃんは胎盤を通じてお母さんの血液の中の栄養を吸収しています。

妊娠中の栄養はお母さんの必要量に加え、赤ちゃんの成長と共にその需要が増してきます。この時期のお母さんの栄養状態が赤ちゃんの健康に大きく影響します。

妊娠前の瘦せすぎや妊娠中のダイエットが、胎児発育不全や低出生体重児のリスク因子になることが研究で明らかになっています。低出生体重児は全身の器官が十分に成熟する前に生まれることが多く、入院治療が必要となることがあります。おなかの中の赤ちゃんが順調に発育するためにお母さんがしっかり栄養を摂ることが大切です。1日3回バランスのよい食事を心がけましょう。

日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、妊婦さんのエネルギー付加量は妊娠初期で+50kcal、妊娠中期で+250kcal、妊娠後期で+450kcalとなっています。また、たんぱく質の付加量(推奨量)は妊娠中期で+5g、妊娠後期で+25gとなっています。

 

<赤ちゃんの授乳栄養>

生まれてから1才までは、人の一生のうちで最も著しく成長する時期です。赤ちゃんの成長において栄養は不可欠な要素です。生後 5~6 カ月頃までの赤ちゃんにとって、唯一の栄養源は母乳やミルクです。授乳栄養には母乳による母乳栄養、ミルクによる人工栄養、母乳とミルクの両方を用いる混合栄養があります。

・母乳栄養

母子健康手帳には「新生児には母乳が基本です。」と書かれています。母乳栄養は赤ちゃんの病気を防ぎ、赤ちゃんとお母さんの絆を強くします。特に、初乳と呼ばれる出生後 2日間分泌される母乳は免疫物質を多く含み、たんぱく質、ミネラルが豊富に含まれているので、新生児に必要な栄養が与えられ、アレルギー予防にもつながるため非常に重要だとされています。

母乳栄養には、赤ちゃんの疾病・死亡率が低い、赤ちゃんが必要とする栄養素を全て含んでいる、赤ちゃんの消化・吸収・代謝の負担が少ない、アレルギーの心配が少ない、細菌などを含まず衛生的、手間がかからず経済的、お母さんとの接触が赤ちゃんの情緒的発達によい、お母さんの産後の回復を促す等のメリットがあります。

母乳栄養の場合、お母さんの体内の代謝亢進と赤ちゃんの需要に応じるために、お母さんに必要な栄養量は増加します。母乳の分泌を促すためにも和食中心のバランスのとれた食事を意識しましょう。日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、授乳婦さんのエネルギー付加量は+350kcal、たんぱく質の付加量(推奨量)は+20gとなっています。また、十分な睡眠、こまめな水分補給、ストレスをためない、体を冷やさない等の生活面での意識も大切です。

・人工栄養

母乳分泌の不足、お母さんや赤ちゃんの体調による授乳禁忌、お母さんの仕事の都合等によっては人工栄養を頼ることになります。ミルクは栄養成分を母乳に近づけて作られているため、人工栄養が栄養面で劣るということはありません。ミルクには母乳栄養で不足しているビタミンD、ビタミンK、カルシウム、鉄などが多く含まれています。

粉ミルクは製品によって決められた通りの濃さに溶かすことが大切です。調乳する際には必ず手を洗い、一度沸騰させた70℃以上のお湯でミルクをしっかり溶かし、十分に冷まして体温ぐらいになっていることを確認してから飲ませましょう。飲み残しや調乳後2時間以上たったミルクは必ず捨てましょう。

最近では哺乳瓶に注いでそのまま飲ませることのできる液体ミルクが注目されています。調乳の手間がないのでお出かけ、夜間の授乳、赤ちゃんを預ける時等に便利です。また、衛生的で災害時に備えることもできます。

・混合栄養

混合栄養とは授乳の一部を人工栄養で補うことです。母乳を与えた後に不足分をミルクで補う方法と、母乳栄養と人工栄養を別々に行う方法があります。前者は母乳の分泌不足のため赤ちゃんの1回の栄養所要量を満たせない場合に用いる方法で、最初に母乳を 飲ませてその後にミルクを補充します。後者はお母さんが仕事をしている場合等に用います。母乳の分泌量を減少させないためにできるだけ授乳回数を減らさないことが望ましいです。

母乳栄養が推進されるなかで、やむを得ず人工乳栄養や混合栄養を選択するお母さんの中には、赤ちゃんに対する罪悪感や失敗感から精神的に落ち込む人も少なくありません。現在のミルクは優れた品質であることを理解し、母乳栄養に固執することなく必要に応じて無理なく人工栄養、混合栄養を選択しましょう。人工栄養を母乳栄養に近づけるための工夫として抱いて授乳する、衛生的に処理する、決められた通りの濃さにする等が挙げられます。また、母乳栄養のように赤ちゃんの要求に従って欲しがるだけ飲ませる自律授乳という方法もあります。人工栄養で自律授乳を行う場合、ミルクの与えすぎには注意しましょう。

 

<赤ちゃんの離乳栄養>

母乳やミルクを飲んで栄養を摂ってきた赤ちゃんが、形のある食べ物をかみつぶすことができるようになり、必要な栄養の大部分を母乳やミルク以外から摂れるようになるための練習過程を離乳といいます。

離乳食には固形物を食べる練習、成長のための栄養補給、かむ力を育てるトレーニング、食べ物の味・香りの経験、食べる楽しさの経験、食文化の経験等の役割があります。

離乳の開始は5~6カ月頃が適当です。赤ちゃんの発育、発達の状況に合わせて進めましょう。生後5~6か月頃は1日1回なめらかにすりつぶした状態の食べ物を与えます。母乳やミルクは赤ちゃんが欲しいだけ与えます。この時期は離乳食を飲み込むこと、その舌触りや味に慣れさせることが主な目的で、離乳食から補給される栄養は少なくて大丈夫です。

7~8カ月頃から1日2回食で食事のリズムをつけていきます。いろいろな味や舌ざわりを楽しめるように食品の種類を増やしていきましょう。下でつぶせるくらいの固さが目安です。母乳やミルクは離乳食の後に2回と、別で3回程度与えます。

9~11カ月頃から1日3回食に進めていきます。この頃になると歯ぐきでつぶせるくらいの固さの食べ物が食べられるようになってきます。離乳食の後の母乳やミルクは少しずつ減量し、中止していきます。離乳食とは別に赤ちゃんの栄養補給のために母乳やミルクを1日に2回程度与えます。

生後12~18ヵ月頃になって、形のある食べ物を歯ぐきでかみつぶすことが出来るようになると、栄養の大部分を母乳やミルク以外の食べ物から摂れるようになります。これで離乳が完了します。食事は1日3回となり、そのほかに1日に1~2回間食を用意しましょう。1歳以降は牛乳をコップで与えます。

 

<まとめ>

赤ちゃんの成長のために必要な栄養についてお分かりいただけたでしょうか。赤ちゃんの発育、発達段階に合わせて必要な栄養量や栄養摂取の方法は変化していきます。それぞれの段階に応じてお母さんと赤ちゃんの適切な栄養摂取を心がけましょう。

この記事の監修者

坂田陽子

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

出産に備える
大切な情報