高齢出産は帝王切開が安心?

坂田陽子

記事監修者:坂田陽子

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

高齢出産とは

高齢出産とは、35歳以上で子供を出産することです。日本産婦人科学会では35歳以上の初産婦を高齢初産と定義し、一般的にはこの高齢初産のことを高齢出産といいます。
以前は30歳以上の初産婦を高齢出産と定義していましたが、30歳以上の初産婦が増えたことに加え、WHOをはじめとする諸外国でも同様の定義がなされているため、35歳に引き上げられました。
厚生労働省の統計によれば2019年の出生数に占める母親が35歳以上(初産以外も含む)の割合は約29%でした。10年前の約24%、20年前の約12%と比較すると、高齢出産が増加傾向にあることがわかります。
高齢出産増加の背景には女性の高学歴化とそれに伴う社会進出に加え、近年の生殖補助医療の発達が高齢女性の妊娠率を上昇させていることがあります。

高齢出産に伴う5つのリスク

①卵子数
女性の卵子数は年齢変化によって減少していきます。日本産婦人科学会によると、思春期から生殖適齢期には30~50万個の卵子が37歳くらいまでに2万個に減少するそうです。また、女性の妊娠しやすさは、おおよそ32歳位までは緩やかに下降しますが、卵子数の減少と同じくして37歳を過ぎると急激に下降していくようです。

②流産率
高齢出産の場合、母体や赤ちゃんへのリスクが高くなり、妊娠初期に起きる流産の多くは受精卵の染色体異常が原因と報告されています。
高齢妊娠では染色体の異常が起きやすくなるため、母親の年齢が高いほど流産の危険性も高くなります。34歳以下の妊娠の流産率が10%以下なのに対し、35歳~39歳では13.1%、40~44歳では24.1%、45~49歳では36.6%となっています。

③赤ちゃんに関わる疾患の出現率
赤ちゃんにさまざまな先天的な障害や病気が起きやすくなるというのも高齢出産のリスクの1つです。
母体の年齢と先天異常の出現率は比例するという事実もあり、高齢出産に伴って増える先天異常にはダウン症、心室中隔欠損症などの心奇形、内反足、先天性横隔膜ヘルニアなどがあります。

④母子に関わる疾患の発症率
妊娠中の疾患である妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病も母体の年齢が高くなるにつれて発症するリスクが高まります。妊娠高血圧症候群は妊娠20週以降、分娩後12週までに高血圧がみられる場合、または高血圧にたんぱく尿を伴う場合につけられる診断で、たんぱく尿がある場合は妊娠高血圧腎症ともいわれます。

また、早産、上位胎盤剥離、けいれん(子癇)、視覚障害、脳出血、肝臓・腎臓障害、心不全などを引き起こしたり、胎児の発育障害や胎盤機能不全、胎内死亡などを起こすこともあります。
妊娠糖尿病は妊娠中に血糖値が高くなる疾患で、流早産、妊娠高血圧症候群、羊水過多症、巨大児に基づく難産を引き起こします。32週以降の子宮内胎児死亡のリスクも高まり、新生児の低血糖や呼吸機能の問題が生じることもあります。

⑤持病の悪化
年齢が高くなると妊娠前から持病のある方も多くなります。そのために産前、産後のトラブルが増えたり、妊娠の影響で持病が悪化したりすることもあります。
持病があることで、さまざまな産科的リスクが複合的に高まります。母子の命を守るために慎重な管理が必要になります。

高齢出産では経腟分娩と帝王切開どちらが安心?

分娩方法には、産道から赤ちゃんを出す経腟分娩、おなかを切開して赤ちゃんを取り出す帝王切開があります。
高齢出産でも年齢の他に特別な問題がなければ経腟分娩での出産が可能です。しかし、高齢の妊産婦さんは軟産道が硬く難産になりやすいといわれているため、場合によっては分娩途中で医療の助けを借りることもあります。お産は自然の営みです。特に問題がなければ経腟分娩を基本に考えます。順調に進めば、子宮に切開を加える帝王切開よりも経腟分娩の方が母体への負担は軽く済みます。
一方、帝王切開は手術です。不安だからという理由だけで行うことはできません。帝王切開でのお産は経腟分娩ではリスクが高いと判断された場合に行われるものです。高齢出産の場合、帝王切開の方が安心と思う方も少なくありませんが、必ずしもそうとは限りません。自然に任せることのリスクと手術をすることのリスクを考え、リスクがより少ない方を選ぶようにします。

経腟分娩、帝王切開それぞれに考えられるリスク

①自然に任せる経腟分娩のリスク
・おしりや足が先に出てきて頭がつかえてしまう恐れのある骨盤位
・子宮破裂を起こす恐れのある帝王切開術や子宮手術の既往歴
・分娩途中で出血が増えると母子ともに危険な状態になる低置胎盤
・筋腫のできている部位によって分娩の進行を妨げる恐れのある子宮筋腫
・分娩途中で胎位が変わったり胎児が苦しくなったりする恐れのある多胎
・母体の血圧コントロールが乱れ合併症が起きる恐れのある妊娠高血圧症候群

②帝王切開の手術をすることのリスク
・周辺臓器の損傷や癒着、腸閉塞、術後の再出血など術中・術後に合併症の起こる可能性がある
・帝王切開での出産は次回以降も帝王切開となる可能性が高い
・麻酔による影響、術後の傷の痛みと傷跡が残る
事前に経腟分娩は難しいと判断できれば、手術日時を決めて予定帝王切開が行われます。しかし、高齢出産で増えてくるのが経腟分娩でも大丈夫だけれど、通常よりはリスクが高いと予測されるケースです。この場合、施設や医師の方針、妊産婦さん自身の希望などを考え合わせながら帝王切開にするかどうかを決めます。経腟分娩にトライする場合でも、危険な兆候が見られたら緊急帝王切開に切り替えます。

目次
  1. まとめ

まとめ

高齢出産をされる方の中には、やっと授かった赤ちゃんを出来るだけ自然な形で迎えたいと考える方も多いかと思います。帝王切開に対して抵抗感がある方もいることでしょう。一方で、帝王切開の方が安心と考えている方もいるかと思います。
お産へのこだわりは人それぞれです。高齢出産でいくつかのリスクを抱えている場合、施設や分娩方法について自分の理想を追求するのが難しいこともあります。
しかし、どんな出産であれ、大切な赤ちゃんが家族の一員になることに変わりありません。不安なことがあれば定期健診の際に医師や助産師に相談しましょう。

潜在的なリスクを抱えている高齢出産だからこそ、安全性を最優先に出産に臨んでください。

 

赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?

赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。

幹細胞は新しい医療への活用が進められており、もしもの時に役立てられる可能性があります。

さい帯・さい帯血保管のポイント!

  1. 出産後わずか数分の間にしか採取できない貴重な赤ちゃんのものです。
  2. 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
  3. どちらにも幹細胞がたくさん含まれています。
  4. 再生医療分野など、さまざまな活用が進んでいます。
  5. それぞれ異なる幹細胞が含まれているため、両方を保管しておくことで将来の利用の選択肢が広がります。

実際に保管・利用した方のお声

出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。

高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま

さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています

元気に産まれたと思っていましたが、生後半年頃から左手をほとんど使おうとしないことに気付き、1歳頃にやはり何かおかしいと思ってMRIを撮ってもらうことにしました。結果1歳5ヶ月で脳性まひとわかりました。
2歳の誕生日にステムセルからハガキが届き、出産時に保管したさい帯血がもしや役に立つのではと思い至りステムセルに問い合わせました。ちょうど臨床試験への参加者を募集していて、運よく2歳5ヶ月のときに参加することができました。
輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。

さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。

その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。

医師からのメッセージ


総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生

応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療

近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。

さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

保管するなら、ステムセル研究所の「HOPECELL(ホープセル)」

株式会社ステムセル研究所が提供する「さい帯・さい帯血ファミリーバンクHOPECELL(ホープセル)」は、日本国内で最も選ばれている保管サービスです。

ステムセル研究所は、25年以上の保管・運営実績がある日本初のさい帯血バンクで、国内最多となる累計80,000名以上のさい帯血を保管しています。

どうやって保管するの?
ステムセル
研究所
出産時に産科施設で採取されたさい帯・さい帯血は、ステムセル研究所の高レベルのクリーンな環境で専門スタッフが処理・検査を行います。国内最大級の細胞保管施設にて、約-190℃の液体窒素タンク内で長期間大切に保管されます。また、ステムセル研究所は厚生労働省(関東信越厚生局)より「特定細胞加工物製造許可」を取得しており、高品質と安全性を実現しています。
保管したさい帯血は何に使えるの?
ステムセル
研究所

国内では脳性まひに対する、赤ちゃんご自身やごきょうだいのさい帯血投与の研究が行われています。海外の臨床研究では、投与により運動機能および脳神経回路の改善が報告されています。また自閉症スペクトラム障害(ASD)に対して、さい帯血の投与によりコミュニケーション能力や社会への順応性が向上する可能性が期待されており、大阪公立大学にてお子さまご自身のさい帯血を投与する臨床研究が開始されます。

さい帯・さい帯血保管は高いと聞いたのですが…
ステムセル
研究所
さい帯またはさい帯血のどちらか一方を10年間保管する場合、月々2,980円(税込)で保管することができます。出産時にしか採取・保管することができない貴重な細胞なので、お子さまの将来に備えて保管される方が増えています。

無料パンフレットをお送りします!

さい帯・さい帯血保管についてより詳しく知っていただけるパンフレットをご自宅へお送りします。

赤ちゃんの将来に備える「さい帯・さい帯血保管」をぜひ妊娠中にご検討ください。

この記事の監修者

坂田陽子

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー