妊婦さんに葉酸が必要な3つの理由とは?摂取量の目安や含まれる食材も解説

助産師 坂田陽子 先生

記事監修者:助産師 坂田陽子 先生

助産師/看護師/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

「葉酸って本当に必要なの?」
「妊娠中はどれくらい摂取すればいいの?」
「葉酸が不足するとどうなるの?」

上記のように悩んでいるのではないでしょうか。

葉酸の重要性は耳にしたことがあっても、具体的にどのような効果があるのか、どれだけ摂取すべきかわからないですよね。

葉酸は胎児の健やかな成長に欠かせない栄養素であり、妊娠期によって適切な摂取は異なります。

そこでこの記事では、おもに以下の内容を解説していきます。

・そもそも葉酸とは?
・妊婦に葉酸が必要な3つの理由
・妊娠時期別の葉酸摂取量と葉酸を含む食材

この記事を読むと、葉酸の重要性を理解でき、母子ともに出産に向けて健康に過ごせるようになりますよ。

そもそも葉酸とは?

葉酸とは水溶性ビタミンB群の1つで、ビタミンB12とともに赤血球の生産を助けるはたらきがあります(※1)。

妊娠中には貧血にもなりやすいため、予防として必要な栄養素にもなります。

また、細胞分裂や遺伝情報にかかわるDNA(遺伝子を保存)やRNA(遺伝子を運ぶ)の合成に必要とされます(※1)。

沢山の細胞が赤ちゃんの遺伝子データとしてつくられていくために必要な栄養素なのです。

(※1)出典:国立国会図書館|レファレンス協同データベース「葉酸のはたらきと、どの食材に多く含まれているか知りたい。」

妊婦に葉酸が必要な3つの理由

妊婦に葉酸が必要な理由として、おもに以下の3つがあげられます。

・胎児の神経管閉鎖障害を予防するため
・赤血球をつくり貧血を予防するため
・胎児の正常な発育を促すため

順番に解説していきます。

理由1:胎児の神経管閉鎖障害を予防するため

葉酸は、胎児の脳やせき髄のもとになる「神経管」が正常につくられるために欠かせない栄養素です。

妊娠初期は、胎児の神経管が形成される大切な時期であり、この時期に葉酸が不足すると「神経管閉鎖障害」という先天性の異常が起こるリスクが高まることがわかっています(※2)。

神経管閉鎖障害には、

・二分脊椎症
・無脳症
・髄膜瘤

などがあり、日本ではとくに「二分脊椎症」が多くみられます。(※3)

二分脊椎症を発症すると、生まれたあとに背中の手術が必要になったり、水頭症や歩行障害、排せつ障害などの治療のため生涯にわたるリハビリが必要になる場合も。

多くの研究から「妊娠の1か月以上前〜妊娠3か月まで」の間に、十分な葉酸を摂取すると、神経管閉鎖障害の発症リスクを大きく減らせることが明らかになっています(※2)。

(※2)出典:厚生労働省「葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果」

(※3)出典:山口県ホームページ「山口県母子保健ガイド・葉酸摂取促進」

理由2:赤血球をつくり貧血を予防するため

葉酸は血液中の「赤血球」をつくる働きをします。

赤血球は、体中に酸素を運ぶ役割を担っており、その中にはヘモグロビンという色素成分が含まれているのです。

妊娠すると、胎児に栄養や酸素を届けるために血液量が増加するため、より多くの赤血球が必要になります。

赤血球の合成には、ビタミンB12とともに葉酸が深くかかわっており、葉酸が不足すると貧血の原因にもなるのです(※4)。

貧血になると、

・疲れやすさ
・めまい
・息切れ

などの症状が出て、妊娠中の体調管理がむずかしくなります。

妊娠中は自身の健康を守り、元気に赤ちゃんを育むためにも、葉酸をしっかり摂取して赤血球をつくり貧血を予防することが大切なのです。

▼妊娠中の貧血症状や対策について詳しい記事はこちら

妊娠後期に起こる貧血の原因とは?対処法や胎児への影響も解説

(※4)出典:二本松市役所「妊娠前から葉酸をとりましょう!」

理由3:胎児の正常な発育を促すため

葉酸は、胎児が健康に育つためにも欠かせない栄養素です。

おもに妊娠初期〜中期にかけて、胎児の体の基礎となる組織や臓器がつくられていきますが、このときに葉酸が細胞の増殖と成長をサポートしています。

厚生労働省では、妊娠中期〜後期には通常の食事から摂取する葉酸に加えて、さらに1日240μgの摂取が推奨されています(※5)。

これは、胎児の発育が進むにつれて葉酸の必要量も増えていくためです。

葉酸が十分に摂取されると、胎児の細胞分裂がスムーズに進み、体の組織や臓器が正常に形成されていきます。

したがって妊娠初期だけでなく、妊娠期間を通じて葉酸を意識的に摂取することが、胎児の健やかな成長と発育につながるのです。

(※5)出典:厚生労働省「葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果」

妊婦さんに必要な葉酸の摂取量

葉酸は妊娠をしていないときにも赤血球をつくるために必要となり、通常240μg/日を食事から摂取することが推奨されています(※6)。

また妊娠活動期~妊娠初期には、通常の240μgに加えて、400μg/日の摂取が必要だと言われています(※6)。

中期~後期には通常の240μgに加えて240μg、授乳期には通常の240μgに加えて100μgの摂取が必要と言われています(※6)。

食材に含まれる葉酸は熱に弱く水に溶けやすいので、ゆでたり焼いたりすると体への吸収率は50%ほどになってしまいます(※7)。

妊娠活動期~中期までは食事だけで摂取することはむずかしいので、ぜひサプリメントも活用してみてください。

 (※6)出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」令和元年12月

(※7)出典:厚生労働省「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について」

【一覧表】葉酸を含む食材とその含有量

葉酸を含む食材と、その含有量を一覧表にまとめました(※8)。

食品名 1食あたりの重量(g) 葉酸(μg)1食あたり
玉露(浸出液) 150 225
なばな(洋種、茎葉、ゆで) 80 192
グリーンアスパラガス(ゆで) 100 180
からしな 50 155
さつまいも(皮むき、蒸し) 200 100
ほうれん草(ゆで) 80 88
えだまめ(ゆで) 30 78
いちご 80 72
はくさい 100 61
しゅんぎく(ゆで) 60 60

これらの食品を普段の食生活に組み込んで摂取すると効果的です。

なお葉酸の上限量は1,000μgです(※8)。

かならず適正量を守って摂取してくださいね。

(※8)出典:厚生労働省「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針~妊娠前から、健康なからだづくりを~解説要領」令和3年3月

妊婦さんと葉酸に関するQ&A

ここでは妊婦さんと葉酸の関係について、よくある3つの質問をまとめました。

順番に見ていきましょう。

妊娠初期〜中期にかけて、葉酸を意識して摂取しなかったけど大丈夫?
坂田先生
妊娠初期は赤ちゃんの脳や神経が作られる大切な時期で、葉酸が必要とされます。

ただし、気づかずにあまり摂れていなかったとしても、今から意識すれば大丈夫です。

葉酸はほうれん草やブロッコリー、納豆、いちごなど身近な食材にも含まれています。

食事から意識してとり入れるようにしましょう。

医師から特別な指示がない限り、遅れて摂り始めても問題ありません。

葉酸をとりすぎるとどうなる?
坂田先生
通常の食事やサプリメントで少し多めに摂っても問題はありませんが、サプリメントを何種類も併用してしまうと過剰になることがあります。

極端に摂りすぎると、ビタミンB12不足を見逃してしまったり、胃の不快感などを感じる場合があります。

基本的には、1日あたり400マイクログラムを目安にとれば十分です。

葉酸不足のサインはある?
坂田先生
葉酸が不足すると、貧血のような症状(だるさ、めまい、顔色が悪いなど)が出ることがあります。

ただし、自覚症状がないことも多いので、健診で血液検査の結果を確認するのが確実です。

食事のバランスを整えることが何より大切で、無理にサプリだけで補おうとする必要はありません。

さいごに

妊娠に気づいていない頃から細胞分裂は始まってしまいますが、葉酸は普段からバランスのよい食事をしていれば、極端に不足することはないでしょう。

悪阻で食事ができないときは、無理に食べようとせず、サプリメントからだけでも摂取しましょう。

心配でしたら医師に相談してみてくださいね。

よい出産が迎えられることを願っています。

赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?

赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。

幹細胞は新しい医療への活用が進められており、もしもの時に役立てられる可能性があります。

さい帯・さい帯血保管のポイント!

  1. 出産後わずか数分の間にしか採取できない貴重な赤ちゃんのものです。
  2. 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
  3. どちらにも幹細胞がたくさん含まれています。
  4. 再生医療分野など、さまざまな活用が進んでいます。
  5. それぞれ異なる幹細胞が含まれているため、両方を保管しておくことで将来の利用の選択肢が広がります。

実際に保管・利用した方のお声

出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。

高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま

さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています

元気に産まれたと思っていましたが、生後半年頃から左手をほとんど使おうとしないことに気付き、1歳頃にやはり何かおかしいと思ってMRIを撮ってもらうことにしました。結果1歳5ヶ月で脳性まひとわかりました。
2歳の誕生日にステムセルからハガキが届き、出産時に保管したさい帯血がもしや役に立つのではと思い至りステムセルに問い合わせました。ちょうど臨床試験への参加者を募集していて、運よく2歳5ヶ月のときに参加することができました。
輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。

さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。

その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。

医師からのメッセージ


総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生

応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療

近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。

さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

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ステムセル
研究所
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この記事の監修者

助産師 坂田陽子 先生

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー