さい帯血の保管で悩む2つのポイントとは?さい帯血を利用した治療例や料金の目安も解説

記事監修者:坂田陽子
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

出産をひかえており、さい帯血を民間バンクに保管すべきか悩んでいませんか。
さい帯血は出産の際にしか採取できないため、保管できる機会は限られています。
またさい帯血は、現在は十分な治療法が確立していない病気が改善する可能性を秘めているのです。
しかし、保管するデメリットや費用なども気になりますよね。
この記事では、おもに以下の内容を解説していきます。
・さい帯血を民間バンクへ保管すべきか悩む2つのポイント(デメリット)
・さい帯血を民間バンクへ保管する費用の目安
・さい帯血を利用した3つの治療例
この記事を読むと、さい帯血を民間バンクで保管するかどうか決断できるようになりますよ。
【家族を守る】さい帯血の民間バンクへの保管とは?
さい帯血には、幹細胞といわれる、血液の成分・神経などの身体のもとになる細胞が多く含まれていて、白血病などの治療に活用されています。
また、再生医療の分野でとくに活用が期待されており、自閉症スペクトラム障害(ASD)や脳性まひなどの治療にも役立つ可能性があります。
無限の可能性を秘めたさい帯血ですが、保管できる場所は「公的バンク」と「民間バンクの」2種類があり、それぞれ用途・保管期間・費用などが異なります。
比較項目 | 公的バンク | 民間バンク |
利用目的 | 第三者の患者さんのために使用 | 契約者とその家族のみが使用可能 |
保管期間 | 最長10年(※1) | 保管先による。
ステムセル研究所の場合:10年 or 20年で選択可能(※2) |
費用 | 無料で提供可能 | 有料で、初期費用と年間保管料が必要 |
公的バンクへのさい帯血保管は無料で、自身や家族のためではなく、治療を待つ誰かのために寄付するものです。
一方、民間バンクへのさい帯血保管は有料で、赤ちゃん本人の万が一に備えるものです。
また、赤ちゃん本人だけでなく、家族の治療にも使える可能性があるなど、家族みんなのお守りとして保管できることが特徴です。
民間バンクにおいて、厚生労働省に事業届出をしている企業は2社のみであり、ステムセル研究所がそのひとつです。(※1)
民間バンクと公的バンクの違いについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
(※1)出典:厚生労働省|臍帯血プライベートバンクからの事業の届出状況等について
(※2)出典:ステムセル研究所「採取から保管まで」
さい帯血を民間バンクへ保管すべき?悩む2つのポイント(デメリット)
民間バンクにさい帯血保管を検討する際、多くの人が悩むおもなポイントは以下の2点です。
・費用がかかること
・採取できるタイミングが限られること
順番にくわしく見ていきましょう。
ポイント1:費用がかかること
さい帯血保管を検討する際、最も気になるのが費用ではないでしょうか。
民間バンク国内最大手のステムセル研究所では、以下のような料金体系でさい帯血の保管が可能です。
プラン名 | 詳細 | 料金 |
ONEホーププラン | さい帯・さい帯血のどちらかを保管 | ・10年保管:月々2,980円(総額357,600円) ・20年保管:月々3,530円(総額423,600円) |
Wホーププラン | さい帯・さい帯血の両方を保管 | ・10年保管:月々3,980円(総額477,600円) ・20年保管:月々5,080円(総額609,600円) |
※上記価格はすべて税込価格
一見すると高額に感じるかもしれませんが、月々の支払いで考えると、一般的な医療保険の掛け金と遜色ない金額だといえるでしょう(※3)。
また分割払いの選択肢があり「最大120回」までの分割が可能で、手数料が無料となっている点も特徴です。
さらに一括払いや多胎児割引など、各種割引制度も用意されているため、実質的な負担を軽減できます。
さい帯血保管は、将来の医療技術の進歩に備える保険ともいえるでしょう。
※ステムセル研究所の料金・プランについて詳しくはこちら
民間バンクへのさい帯血保管の費用については、以下の記事でより詳しく解説しています。
(※3)出典:PR TIMES|株式会社WDC「医療保険の見直し、約3割がネット保険検討と回答。女性1,000人に医療保険の意識調査を実施」
ポイント2:採取できるタイミングが限られること
さい帯血は、出産時のわずか数分間しか採取のチャンスがありません。
このタイミングを逃すと、二度と採取することはできないのです。
なお採取を希望していても、早産や緊急帝王切開の場合、採取できない可能性があります。
さらに出血多量など出産時の状況によっては、母子の安全を優先するために採取を中止する場合も。
さい帯血保管は、将来の医療に備える選択肢のひとつです。
上記のポイントを踏まえ家族でよく話し合い、納得のいく決断をしましょう。
さい帯血を利用した3つの治療例
ここからは、実際にステムセル研究所に保管したさい帯血を、治療に活用した3事例をご紹介します。
1:脳性まひ
2:低酸素虚血性脳症
3:脳室周囲白質軟化症
それぞれ難病を抱えた子どもが、保管していた自身やきょうだいのさい帯血投与をうけたあと、どのような治療経過をたどったのか詳しく解説します。
治療例1:脳性まひ
脳性まひとは、運動困難と筋肉のこわばりを特徴とする病気で、出生前から出産直後などに起きた脳の損傷などを原因とします。
治療を受けた子どもの状況は以下のとおりです。
・左手と左足に麻痺
・1歳5ヶ月の時に脳性麻痺と診断
・歩けるが転びやすく、少し歩いては転びを繰り返す状況
2歳5ヶ月の時に臨床研究へ参加し、さい帯血輸血をした翌日には、転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになり、地域の小学校の普通級に集団登校で通っています。
出典:ステムセル研究所「さい帯血情報2023年6月号Vol.126」
治療例2:低酸素性虚血性脳症
低酸素性虚血性脳症とは、何らかの原因で新生児の脳への酸素供給や血流が滞ることによって引き起こされる脳障害です。
治療を受けた子どもの状況は以下のとおりです。
・7歳で、寝返り・座位など自力行動ができない
・てんかん発作あり
さい帯血投与直後には、以下のような改善が見られました。
・毎日あった部分痙攣が24時間ほど止まった
・投与から1か月後には粗大運動ができるように
・脚を緊張・弛緩もできるように
・認知機能も改善し、言葉への理解度が向上
出典:ステムセル研究所「さい帯血情報2022年8月号Vol.123」
治療例3:脳室周囲白質軟化症
脳室周囲白質軟化症とは、出生時に何らかの原因で脳室周囲白質という部分が虚血状態になり局所的に壊死してしまう疾患です。
治療を受けた子どもの状況は以下のとおりです。
・5歳で、座位保持、立位、独歩不可の状態
・手足に麻痺
さい帯血の投与から1か月ほど経過し、座位が保てるようになり、緊張が緩和するなど、徐々に改善している効果がみられています。
出典:ステムセル研究所「さい帯血情報2022年5月号Vol.122」
【自閉症スペクトラム障害(ASD)にも】さらに広がるさい帯血治療の可能性
公立大学法人大阪大阪公立大学と株式会社ステムセル研究所は「自閉症スペクトラム障害に対する自家臍帯血有核細胞を用いた治療法の開発」を実施すると発表しました。
自閉症スペクトラム障害(以下ASD)は、発達障害のひとつであり、社会性、言語能力、認知能力などに支障をきたす疾患で、100人に1人の割合で発症しているといわれています。
現在、ASDに対する有効な原因療法は確立されていません。
ASDの症状が発症するメカニズムのひとつに、脳内の免疫系が過剰に反応し、脳神経機能に異常をきたしていることが挙げられます。
免疫を抑制する細胞を含む臍帯血を投与することにより、脳神経機能が改善することが期待されています。
出典:ステムセル研究所「「自閉症スペクトラム障害に対する自家臍帯血有核細胞を用いた治療法の開発」に関する研究者主導臨床研究契約の締結について」
さい帯血を民間バンクに保管している人の割合
2024年に民間バンクのステムセル研究所にさい帯血を保管している人の割合は、以下のとおりでした。
保管する人の割合 | 約1% |
2024年のさい帯血検体数 | 8,559本(※4) |
2024年の国内出生数 | 約68.5万人(※5) |
ステムセル研究所に保管されるさい帯血検体数は年々増加傾向(※4)にあり、2024年3月31日時点の累計保管件数は86,733件となっています。(※6)
増加の背景としては、再生医療や研究への進展への期待や、赤ちゃん本人だけではなく、きょうだいや家族への利用の期待が高まっていることが挙げられます。
(※4)出典:株式会社ステムセル研究所「2024年3月期 決算説明資料」2024年 5月14日
(※5)出典:日本総研「2024年の出生数は68.5万人、婚姻数は47.5万組の見通し」
(※6)出典:株式会社ステムセル研究所「事業実績に関する報告」
さい帯血はどうやって採取・保管する?
ステムセル研究所でさい帯血採取・保管をする流れは以下のとおりです。
・出産時に医師や助産師、看護師にさい帯血を採取してもらう
・出産後48時間以内にステムセル研究所の細胞処理センターに届けられ、幹細胞などを分離する作業が行われる
・細胞処理センターに運ばれるまでは、常にさい帯血の温度を記録し、異常がないかチェックする
・さい帯血の細胞分離から保管までを、法律の基準を満たす細胞調整室で、十分な技術トレーニングを受けた技術者が無菌的操作により細胞を分離する
さい帯血保管の契約までの流れ5ステップ
ステムセルでさい帯血を保管するまでの流れは以下のとおりです。
・ステムセル研究所ホームページより資料請求のページにアクセス
・出産予定日の1か月前までに申し込み
・送付される資料の手順に沿って手続きを進める
・出産予定の医療機関に「依頼書(同意書)」を提出
・契約後にさい帯血採取に必要なキットが届く
さい帯血保管に関するQ&A
ここではさい帯血保管について、よくある3つの質問をまとめました。
順番に見ていきましょう。

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後日、担当者よりご連絡をさせていただきます。

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まとめ
さい帯血を保管するにあたり、かに手間や金銭的な負担は生じます。
しかしながら、今現在治療法のない病気に対して、今後の研究への期待が大変に高まっている点を踏まえると、さい帯血保管は貴重な家族の財産になる可能性があります。
赤ちゃんにとっては、出産時が一生に一度のチャンスです。
家族と、ぜひさい帯血保管について検討しましょう。
赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?
赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。
幹細胞は新しい医療への活用が進められており、もしもの時に役立てられる可能性があります。
- 出産後わずか数分の間にしか採取できない貴重な赤ちゃんのものです。
- 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
- どちらにも幹細胞がたくさん含まれています。
- 再生医療分野など、さまざまな活用が進んでいます。
- それぞれ異なる幹細胞が含まれているため、両方を保管しておくことで将来の利用の選択肢が広がります。
実際に保管・利用した方のお声
出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。

高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま
さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています
元気に産まれたと思っていましたが、生後半年頃から左手をほとんど使おうとしないことに気付き、1歳頃にやはり何かおかしいと思ってMRIを撮ってもらうことにしました。結果1歳5ヶ月で脳性まひとわかりました。
2歳の誕生日にステムセルからハガキが届き、出産時に保管したさい帯血がもしや役に立つのではと思い至りステムセルに問い合わせました。ちょうど臨床試験への参加者を募集していて、運よく2歳5ヶ月のときに参加することができました。
輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。
さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。
その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。
医師からのメッセージ

総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生
応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療
近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。
さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
保管するなら、ステムセル研究所の「HOPECELL(ホープセル)」
株式会社ステムセル研究所が提供する「さい帯・さい帯血ファミリーバンクHOPECELL(ホープセル)」は、日本国内で最も選ばれている保管サービスです。
ステムセル研究所は、25年以上の保管・運営実績がある日本初のさい帯血バンクで、国内最多となる累計80,000名以上のさい帯血を保管しています。

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国内では脳性まひに対する、赤ちゃんご自身やごきょうだいのさい帯血投与の研究が行われています。海外の臨床研究では、投与により運動機能および脳神経回路の改善が報告されています。また自閉症スペクトラム障害(ASD)に対して、さい帯血の投与によりコミュニケーション能力や社会への順応性が向上する可能性が期待されており、大阪公立大学にてお子さまご自身のさい帯血を投与する臨床研究が開始されます。

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無料パンフレットをお送りします!
さい帯・さい帯血保管についてより詳しく知っていただけるパンフレットをご自宅へお送りします。
赤ちゃんの将来に備える「さい帯・さい帯血保管」をぜひ妊娠中にご検討ください。

この記事の監修者
坂田陽子
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー